2019.07.18 韓国「バッシング」 鳴りやまず
  韓国通信NO607
          
小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 従軍慰安婦問題から始まり(もっと遡れば歴史認識)、徴用工問題、自衛隊機照射問題、ついに輸出制限措置にまでエスカレートした日韓関係は今や「泥仕合」の観を呈している。日本政府の強硬姿勢に歩調を合わせてマスコミは「最悪の日韓関係」とはやし立てるばかり。「子供じみてないか」と眉をひそめる人も多い。
 政府発の一方的な韓国批判とそれに同調するマスコミ報道、政府の提灯持ちをする学者が続々と登場することには驚くばかりだ。

 おととしから昨年にかけて、拉致と核問題で北朝鮮の脅威を煽りまくった安倍政権は、今度は矛先を変えて韓国との対立を煽っているように見える。いささかウンザリするが、政権維持のために隣国を敵視することで失うものは大きい。
 こんな時こそ過去から学び、現実に起きている問題と冷静に向かい合うべきと思うのだが、マスコミも何を恐れているのか、おとなし(音無し)い。不勉強なのか、わかっていながら発言しないのか。政府の主張を鵜呑みにするようでは、ジャーナリズムも死んだに等しい。相手がハンコを押したから日韓併合条約も日韓条約も有効だと平然と言い切るなら、強制連行によって奴隷のように働かされた徴用工や慰安婦たちは切り捨てられ、眼中から消える。それでいいのか。日本政府の非情、横着ぶりに気づくはずだ。

<おろそかにされる事実。 悪用された韓国国会議長の「天皇発言」>
 韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が米国ブルームバーグ社のインタビューで、従軍慰安婦問題の解決には「日本を代表する首相か※天皇(日王)の心のこもった謝罪(おわび)が必要」と発言したため日本で物議を醸した(2019/2/7) 。「天皇に謝れとは非常識」と、政府も右翼が血相を変え、そして一般市民も戸惑い、怒った。
 ※ハングルによる発言内容を検証する。まず、「首相か天皇」の「か」は韓国語で助詞나(ナ)の訳である。日本語の「か」と同じ意。従って「首相と天皇」ではなく、かなりざっくばらんに「首相でも天皇でも」という表現になる。また、天皇については「天皇」ではなく「日王」と表現しているが、韓国では一般的表現である。日本の「王」という表現に日本人は少し戸惑うはずだ。

 日本政府は直ちに抗議し発言の撤回を求めた。日韓関係を悪化させたことに気づいた文議長は、訪韓した鳩山由紀夫元首相との会談で、「(発言)で傷ついた人たちに謝罪する」と謝罪した(2019/6/13付韓国聨合ニュース)。
 この謝罪発言は、大騒ぎしたわりには日本で大きく報じられた形跡はない。そのため国会議長の発言は多くの人の記憶にいまだに不信感として残ったままだ。そればかりか日韓関係の不信材料のひとつとして文議長発言をいまだに非難し続けるマスコミもかなり多い。
 文氏の謝罪は、鳩山氏の発言-「韓国の国民感情からすれば理解できないわけではないが、日本の国民感情からすれば認められない」という主張に応えたものだ。鳩山発言は日韓相互の理解のためには柔軟で適切な発言だった。それに比べ、過日のG20大阪サミットでは文大統領との会談を拒絶した安倍首相の硬直した姿勢が際立つ。和解の糸口を見出す努力もなかった。

<安倍首相の責任逃れ>
 さらに問題なのは、文議長発言のカナメ、「安倍首相の謝罪」という指摘が、日本政府によって無視されたこと。それはマスコミも同じだが。首相は「天皇の責任発言」を鬼の首を取ったように批判するばかりで、自分に向けられた注文には知らんぷりするという図である。
 文議長の発言は「首相か天皇」という発言で、あらぬ方向に発展したが、あくまでも従軍慰安婦問題の現状を憂慮したものだった。2015年の政府間合意については当初から金銭の支払いとともに「誠意」が必要という議論があった。これに関連して国会で安倍首相が「直接お詫びをする気はないか」と質問され、「ない」と答弁したため首相の不誠実さが浮き彫りとなった。拙速な両政府の合意に、元従軍慰安婦たちと韓国国民から激怒の声があがり深刻な状況となっていた。文議長の発言の真意は慰安婦問題の解決のために日本側の誠意を求めたものだった。

 「天皇の責任」問題と慰安婦問題が完全にすり替えられてしまった。
 安倍首相は文議長の天皇発言を奇貨として、文議長からあらためて問われた謝罪を無視したばかりか、10億円で「不可逆的な解決をした」とうそぶき、問題を更に大きくしてしまった。これでは日本の内閣支持率45%の人たちは支持しても、韓国の99%は認めない。安倍内閣では慰安婦問題も徴用工問題も解決できないのは明らかとなった。
 天皇を防波堤にして自分に問われた問題を回避するのは天皇の政治利用という疑問もわく。
 最近の安倍内閣には、かつて日本の植民地とした国に対する軽視と侮蔑の姿勢が目に余る。アジア侵略の事実を認めないし、反省もない。トランプ頼みで拉致問題解決を期待したが、「当事者で話し合え」とたしなめられ?  「条件を付けずに金正恩委員長と話し合う」と言いだしても、相手にされないのは当然だろう。日本のマスコミを味方につけても海外から相手にされないようではアジアのなかで孤立するばかりだ。隣国の韓国と北朝鮮軽視がひょっとして安倍政権の墓穴を掘ることになるかも知れない。 

ドキュメンタリー映画「主戦場」が面白い

 日系2世のミキ・デサキ監督が慰安婦問題をめぐる論争を描いた映画。慰安婦問題をめぐって桜井よしこ等そうそうたる論客が発言。編集は一切なし、いわば各人が云いたい放題。結論は見た人にまかされる。
 余りの反響の大きさに登場する右派論者の一部が公開後に上映中止を求めて提訴した。これまで主張してきた内容が「あまりにもみっともない」と狼狽 (うろた)えたのかも知れない。監督は「日韓に横たわる問題の解決を望み、日韓間の相互理解になれば」と映画製作の動機を語った。4月上映開始後異例のロングラン、大ヒットとなった。この時期お薦めしたい映画だ。

北海道から広島まで 反核平和行進を続けるアン・スルギ(21)さん
 8月6日に開かれる広島原水禁世界大会に参加するために韓国の女子学生が来日した。5月6日に根室を出発、今月20日に我孫子に到着予定だ。通訳をかねて、彼女と2時間あまり行進することになった。真夏の徒歩による行進である。体調を整えて最後のゴール広島まで頑張ってほしい。天王台西公園から9時出発、11時半に手賀沼公園で集会後、柏へバトンタッチ。
 彼女に拍手を送ろう。一緒に歩きませんか ! 核兵器禁止条約調印を求める署名にもご協力を。
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