2019.07.19 WTOの裁定で解決を!悪化する一方の日韓関係
「報復」を即時撤回せよー朝日新聞社社説は良識だ

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 悪化する日韓関係。日本政府は7月1日、韓国向け輸出の規制を強めると発表し、一方的にその実施に着手した。規制の対象となるのは、スマホやテレビの電子部品、半導体基板に塗る感光材、半導体洗浄に使うフッ化水素など3品目、すべて、韓国の高度な電子部品・製品の生産に不可欠な原材料。国際的に日本のシェアが大きく、韓国も、日本からの輸入への依存度が大きい。日本は輸出をスムーズにするため、2004年に指定した韓国をはじめ、米国など27か国を安全保障上問題がない「ホワイト国」に指定、軍事転用が可能な技術や製品の輸出手続きを包括的に実施し、個別審査を簡略化するなど優遇してきた。
 今回、日本政府は、一方的に韓国を「ホワイト国」から外した。そのため韓国への輸出手続きが個別の審査となり、日数がかかるうえ、不都合な障害が起こりかねない。政府はこの制裁措置について、韓国政府に対応を求めていた諸問題が、大阪での20ヵ国首脳会議までに解決しなかったことを理由の一つに挙げた。それは、韓国最高裁判所の元韓国人徴用工らへの損害賠償判決への対抗措置で、報復ではないと否定はしたが、「韓国との信頼関係のもとで輸出管理に取り組むことは困難だ」(西村官房副長官)と説明した。日韓の主要メディアはすべて、徴用工問題への対抗あるいは制裁措置だと報道した。その後、両国政府は、事務レベルの協議を行ったが、まったく進展せず、2週間が過ぎた。
 もはや、日本・韓国二国間での交渉では解決の見込みはないと思う。国際的な経済、貿易紛争を調停し、解決に導く国連のWTO(世界貿易機関)に提訴し、解決方策を委ねるしかない。そのためには、一方的な報復、輸出規制を解除しなければならないだろう。
 この件では、国内主要メディアのうち、日本政府に対し即時撤回を要求した朝日新聞の社説が最も明快だった、と思う。記録のためにも、全文を紹介しようー


(2019年7月3日付け朝日新聞社社説 全文転載)
対韓輸出規制 「報復」を即時撤回せよ
 政治的な目的に貿易を使う。
 近年の米国と中国が振りかざす愚行に、日本も加わるのか。自由貿易の原則を捻じ曲げる措置は即時撤回すべきである。
 安倍政権が、韓国への輸出の規制を強めると発表した。半導体をつくる材料の輸出をむずかしくするほか、安全保障面で問題のない国としての優遇をやめるという。
 日韓には、戦時中に朝鮮半島から労務動員された元徴用工への補償問題がくすぶっている。韓国政府が納得のいく対応をとらないことに、日本側が事実上の対抗措置にでた格好だ。 
 大阪でのG20会議で議長だった日本は「自由で公平かつ無差別な貿易」を宣言にまとめた。それから2日後の発表は、多国間合意を軽んじる身勝手なすがたをさらしてしまった。
 かつて中国は尖閣問題をめぐり、レアアースの対日輸出を止めた。米トランプ政権は安全保障を理由に鉄鋼などの関税を上げた。国際社会はこうした貿易ルールの恣意的な運用の広がりを強く案じているさなかだ。
 日本政府は徴用工問題を背景に認めつつ、「韓国への対抗措置ではない」などとしている。全く説得力に欠ける。なぜいま規制なのか、なぜ安全保障にかかわるのか、具体的な理由を国内外に堂々と表明すべきだ。
 日本は今後の貿易をめぐる国際論議で信用を落としかねないうえ、日韓双方の経済活動に悪影響をおよぼす。そんな規制に矛盾した説明で踏み切るのは、無責任というほかない。
 今のところ、半導体の材料輸出そのものを禁じてはいない。だが審査期間が長引けば、供給や生産に響く。規制の運用によっては、かなりの生産が止まるとの見方も出ている。
 韓国と取引する日本企業にも被害が跳ね返る公算が大きい。将来的には韓国企業が供給元を変える可能性もある。
 政治の対立を経済の交流にまで持ち込むことが、日韓関係に与える傷は計り知れない。
 確かに徴用工問題での韓国政府の対応には問題がある。先月に示した解決への提案は、日本企業の資金が前提で、日本側には受け入れがたいものだ。
 しかし、今回の性急な動きは、事態を一層こじらせている。機を合わせるように、韓国の司法当局は、日本企業の株式を現金化する手続きを一歩進めた。韓国は世界貿易機関(WTO)への提訴も検討するといい、報復の応酬に陥りかねない。
 日韓両政府は頭を冷やす時だ。外交当局の高官協議で打開の模索を急ぐべきである。国交正常化から半世紀以上、隣国間で積み上げた信頼と交流の蓄積を破壊してはならない。

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