2019.07.26 山本太郎政権の可能性
          ―参院選2019の結果をみて―
 
半澤健市 (元金融機関勤務)

《山本太郎政権は夢物語だろうか》 
 何を夢想しているのかと思う読者が多いだろう。しかしそういう読者も、この夢の実現を、一瞬は考えたのではないだろうか。下記は一つのイメージ提示である。

 前回2013年の参議院選挙時に山本太郎の街頭演説を聴いた。
 タダゴトではないと感じた。彼の出現は、一時のユーフォリア(多幸感)ではないと感じたのである。今回は、代表的な演説をネットで見ただけだが、会場の熱狂は十分に―というより更に―高まっていると感じられた。「れいわ新選組」は、「政界の野良犬」で終わるのか。それとも政権奪取の可能性があるのか。

 衆院選には100人の候補者を出したいと言っている。今までとは状況が違ってくる。政策ブレイン、組織の専門家、カネの出納人、メディア戦略家。全力投球で助けるプロフェショナルが要る。もちろん、山本自身の魅力と選挙運動の過程で「弾みがついて」党勢急拡大の希望はある。すでに国民民主党や共産党の党首が提携の打診を始めている。山本の強烈な個性と実績がこういう声を呼び起こすのである。

 7月19日に横浜駅頭で催した「市民連合」主催の演説会をネットで見た。一つの理想型があった。学者山口二郎(法大教授)、役人経験者前川喜平(元文科次官)、共産党書記局長小池晃、応援山本太郎の布陣である。そして応援の対象は共産党候補者浅賀由香であった。残念ながら結果は次点に終わったが、実に明るいキャンペーンであると見た。

《21世紀における人民戦線》 
 実際は、山本内閣というより野党連合政権への「れいわ」の少数名入閣が現実的であろう。しかし連合政権が、オルガナイザー山本のラジカルな人気に依存して、山本の副総理はあり得る。山本の演説で、もっとも拍手が多いのは、「あなたが政治の主人なんですよ」と叫ぶときである。これは民主政治の核心を突いたセリフだ。山本の演説が山本を閣僚へと招くのである。 

 山本太郎入閣の連立政権は決して夢ではない。その幅の広い連立政権が実現すれば、近代日本で初めて「人民戦線」の誕生となるかも知れない。
 これは、20世紀のフランスやスペインに出現した国際共産主義の戦略に連動した「人民戦線」とは違う。彼らの歴史は決して幸せなものではなかった。
 1934年に誕生したフランス人民戦線は、36年にレオン・ブルム首相で政権を握ったが、ほぼ一年で崩壊した。36年成立のスペイン人民戦線もフランコの反革命に破れ、39年に崩壊している。だから私のいう日本の「人民戦線」は、30年代のそれとは成立事情が異なる。

 とはいえ、日米同盟は「ファシズム」に限りなく近い没落途上の二カ国の同盟である。
 21世紀の人民戦線もまた、30年代のそれと通底する部分をもつことになるだろう。
 安倍晋三が「悪夢」だったという民主党政権は、おのれの失政だけで崩壊したのではない。「悪い奴」らによる印象操作やフェイク情報により自壊を早めたのである。鳩山由紀夫は、辺野古問題で外務官僚に騙されたと証言している。人民戦線を包囲する多様なアクターの力は決してヤワではない。反「人民戦線」側は、人格破壊を狙う硬軟のテロリズム、天皇制の「活用」までを、武器にするであろう。

 戦後民主主義に共感する私の世代は、生きている間に「山本太郎政権」に象徴される人民戦線の誕生を見たいと思う。人びとが「国のかたち」を決める民主政治を実現したいと思う。閉塞感を一掃する晴天をみたい私は、自分なりの蟷螂の斧を振り上げ続けるつもりである。(2019/07/23)

Comment
6年前の拙稿と今回選挙後の山本太郎氏の地上波ナマ出演の模様です。
■半澤健市「山本太郎の選挙演説を聴く」(2013/07/26)
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2465.html#comment
■「そもそも総研」に山本太郎生出演(テレビ朝日2019/07/25)
https://www.youtube.com/watch?v=z3DHVj2knj4
半澤健市 (URL) 2019/07/26 Fri 08:43 [ Edit ]
山本太郎の今回の活動に大変関心があります。
井垣寿子 (URL) 2019/07/26 Fri 11:11 [ Edit ]
https://www.tbsradio.jp/399025
荻上:
 現在の安倍政権について、舩後さんはどういう風にご覧になってますか?
舩後:
 消費税増税はデフレを20年以上長引かせることになっているので全くいただけません。現在 、自民党ホームページにも改革などの左傾化した言葉があるそうですがご存知ですか?総理の祖父の岸元総理は、上司にアカと言われ激怒したそうです。それを知っているはずの安倍総理があえて左傾化した言葉を使うのは勇気あることだと思いますし、その根底には安倍政権が野党に対して柔軟な態度で接するという思いがあるような気がします。もしそうならその点については評価致します。
荻上:
 最後にこの6年間の議員生活に向けての抱負や課題について教えてください。
舩後:
 全ては教育にありと考えています。
(中略)
 日本を弱体化するために GHQ が導入した教育や文化が要因
(後略)
(引用終わり)
 「改革が左翼用語」「安倍が野党に対して柔軟」「日本を弱体化するために GHQ が導入した教育」だの、どう見ても櫻井よしこ辺りのウヨ暴言と同レベルとしか思えませんが、実はこれ、荻上チキのTBSラジオ番組に出演したれいわの障害者議員・舩後氏の放言です。
 こうした人間性を知った上で山本氏が舩後某氏を比例上位に付けたとは思いません。おそらく「障害者業界の有名人」レベルの認識で「信頼する誰かに勧められるがままに」擁立したのでしょうがこれではれいわの「衰退と滅亡」も遠い日ではない、つうかれいわは潰れた方がいい気すらしてきました。こういうことが俺の知る限り「筆坂のセクハラ問題」など一部例外を除けば「まずない」ですから共産は安心して支持できます。
 れいわみたいな新参者はこういうのがあるから怖くてうかつには支持できません。
 しかし荻上チキも今回もなかなかのお手柄と言うべきでしょう。まあ今回は荻上が厳しく突っ込んだわけではなく舩後氏が勝手に失言しただけですが。
 こんな「右翼陰謀論」では野党各党はもちろん、れいわ支持層ですら「何でこんなトンデモウヨ老人がれいわの議員なんだ!」と反発し、離反していくのではないか。
「しめしめ、これでれいわに奪われた票も数ヶ月でかなり取り戻せそうだ、N国党や維新、安倍自民ならまだしも、こんなウヨ老人を支持する人はれいわの支持層には少ないんじゃないか(共産支持者の俺)」というのは半分は冗談ですが、半分はマジです。れいわがこんなに酷いのならマジで「共産への票のカムバック」がある程度期待できるでしょう。しかしこれが選挙期間中にもっと世間に知られてれば「共産の比例議席数が減らずに済んだのではないか」と思うとつらい。
 それはともかく山本氏も「あなた、大阪で辰巳氏を応援演説したこととと、こんなトンデモウヨ老人を擁立して議員にしたこととどう両立してるんですか?。明らかに矛盾じゃないですか?。舩後氏のこうした人間性を知った上で候補にしたのなら勿論、知らずに誰かに勧められるまま、候補にしたのでも無責任ですよ!」と俺みたいな人間に問い詰められたらどうする気なんですかね?。
 共産支持者の俺なんか「ダメじゃん、れいわ」「正直そんなに期待してないんだけどここまで酷いとは思わなかった」「やっぱ共産しかねえわ」感が半端ないんですが。れいわを過去にべた褒めしてきた「自称リベラル」の半沢さんが今れいわについて何を思うか教えていただければ幸いです。さすがに批判されますよね?
bogus-simotukare (URL) 2019/08/15 Thu 22:17 [ Edit ]
山本太郎氏の街宣や三橋貴明氏らのMMTに関する講義を聞いて,「れいわ新選組」の『8つの緊急政策』がよくできているなと感心して,れいわ応援の文章を書いてきた。
 今もその方針に変わりはない。しかし一抹の不安もあった。それはれいわの候補者9人が全員当選したとして,太郎氏と意見が異なってきた場合,党(団体)としてどうなるのかということである。離党して与党や他の党へ向かうことがあるのか,ないのかという不安である。
 候補者は『8つの緊急政策』に賛成して立候補を承諾した訳だからこの点については100%意見が異なることはない。しかしその他の政策やご自分の考えは太郎氏とたくさんの点で異なることは大いに推測できる。
 例えばある面で舩後氏が右翼寄りの発言をした場合,木村氏や安富氏が教育について偏見を披露した場合,党内で議論の対象となることはあるとしても基本的に自由なのではないのだろうか。そうでなければ教授会が大嫌いな安富教授が「れいわ新選組」に参加するはずがない。
 9月14日,大西ツネキ氏は萩市で単独講演会をしている。先日は太郎氏が共産党志位委員長と「共闘」の件で合意した。他の方々もそれぞれに活動しているのであろう。またインタヴュ-もたくさん受けるに違いない。そのとき,右翼的な意見や超左翼的な意見を表明することがあるに違いない。それをいちいち咎めるのはどうか。ある左翼的知識人は舩後氏の発言を「監視しなければならない」とまで言い切った。公安調査庁某課長並みの発言である。
 しかし「れいわ」支持者は党の公約が『8つの緊急政策』の早期実現を目指してれいわ議員を増やすことを期待している。TV出演禁止物体がTVやラジオに出演し出した直後の,共同通信社の世論調査によれば「れいわ」支持が2.1%から約2倍の4.3%にハネ上がった。要するに「れいわ新選組」の存在は選挙前に「ほとんど」知られていなかった。それにも関わらず220万票を集めた。
 山本太郎氏は18日から全国行脚をする予定だそうだが,知名度はますます上がるに違いない。すなわち『8つの緊急政策』に賛同する人々は増えるだろう。それに対していくつかのブログやコメントは早くもれいわへの失望感を表し,批判をし出した。もちろん批判が出る事は「れいわ新選組」の選挙参謀も10人も自覚しているに違いない。しかしそれ故に批判は批判として受け入れつつ,横の広がりを拡げていくべきであろう。身銭を切って500円,1000円なりを寄付してくれた3万3千人の寄付者やこれからの支持者のためにも,横の繋がりをさらに深めるべきであろう。
 最後に申し添えたいが,2つの政策を加えて『10の緊急政策』を打ち出してほしい。太郎氏の街宣では全てではないが,公営住宅の増設とベーシック・インカム(BI)導入の必要性を訴えていた。今後の街宣ではこれらをもっともっと強調すべきだろう。前者は給料の約4割を住宅費に抜き取られる人々に歓迎され,後者は預金0%である若者や,貧困に苦しむ人々を最速に救う方法であると,考える。
箒川 兵庫助 (URL) 2019/09/15 Sun 18:17 [ Edit ]
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