2019.08.28 日本政府は韓国政府との間で対話・議論を開始せよ
学者らの声明に賛同署名8千400余

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 韓国人元徴用工の訴訟問題などに端を発した日韓関係の深刻な悪化を憂慮する学者、弁護士、文化人、メディア関係者らが、日本政府による韓国政府との冷静な対話・議論を求めた声明「韓国は『敵』なのか」への賛同署名が、8月15日までに8404人になった。声明の世話人は「賛同署名は8月31日まで継続する」と述べており、賛同署名が最終的にどのくらいになるか、関心を集めている。

 「韓国は『敵』なのか」と題する声明は、7月25日に発信された。それには、呼びかけ人として75人が名を連ねている。大学教授、研究者、弁護士、精神科医、作家、詩人、哲学者、評論家、翻訳家、メディア関係者、元政府代表、元外務省職員らで、石坂浩一(立教大学教員)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)、内田雅敏(弁護士)、岡田充(共同通信客員論説委員)、岡本厚(元「世界」編集長)、田中宏(一橋大学名誉教授)、和田春樹(東京大学名誉教授)の7氏が世話人を務める。
呼びかけ人は、インターネットを通じて市民に声明への賛同署名を求めている。

 声明はかなり長文だが、要点は次の通り。

「私たちは、7月初め、日本政府が表明した、韓国に対する輸出規制に反対し、即時撤回を求めるものです。半導体製造が韓国経済にとってもつ重要な意義を思えば、この措置が韓国経済に致命的な打撃をあたえかねない、敵対的な行為であることは明らかです」。

「国と国のあいだには衝突もおこるし、不利益措置がとられることがあります。しかし、相手国のとった措置が気にいらないからといって、対抗措置をとれば、相手を刺激して、逆効果になる場合があります。特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです。日本の圧力に『屈した』と見られれば、いかなる政権も、国民から見放されます。日本の報復が韓国の報復を招けば、その連鎖反応の結果は、泥沼です。両国のナショナリズムは、しばらくの間、収拾がつかなくなる可能性があります。このような事態に陥ることは、絶対に避けなければなりません」

 「すでに多くの指摘があるように、このたびの措置自身、日本が多大な恩恵を受けてきた自由貿易の原則に反するものですし、日本経済にも大きなマイナスになるものです。しかも来年は『東京オリンピック・パラリンピック』の年です。普通なら、周辺でごたごたが起きてほしくないと考えるのが主催国でしょう。それが、主催国自身が周辺と摩擦を引き起こしてどうするのでしょうか。今回の措置で、両国関係はこじれるだけで、日本にとって得るものはまったくないという結果に終わるでしょう。問題の解決には、感情的でなく、冷静で合理的な対話以外にありえないのです」

 「元徴用工問題について、安倍政権は国際法、国際約束に違反していると繰り返し、述べています。それは1965年に締結された『日韓基本条約』とそれに基づいた『日韓請求権協定』のことを指しています。
 日韓基本条約の第2条は、1910年の韓国併合条約の無効を宣言していますが、韓国と日本ではこの第2条の解釈が対立したままです。というのは、韓国側の解釈では、併合条約は本来無効であり、日本の植民地支配は韓国の同意に基づくものでなく、韓国民に強制されたものであったとなりますが、日本側の解釈では、併合条約は1948年の大韓民国の建国時までは有効であり、両国の合意により日本は韓国を併合したので、植民地支配に対する反省も、謝罪もおこなうつもりがない、ということになっているのです。
 しかし、それから半世紀以上が経ち、日本政府も国民も、変わっていきました。植民地支配が韓国人に損害と苦痛をあたえたことを認め、それは謝罪し、反省すべきことだというのが、大方の日本国民の共通認識になりました。1995年の村山富市首相談話の歴史認識は、1998年の『日韓パートナーシップ宣言』、そして2002年の『日朝平壌宣言』の基礎になっています。この認識を基礎にして、2010年、韓国併合100年の菅直人首相談話をもとりいれて、日本政府が韓国と向き合うならば、現れてくる問題を協力して解決していくことができるはずです」

 「元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業です。まずは被告企業が判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまいました。元徴用工問題と同様な中国人強制連行・強制労働問題では1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年花岡(鹿島建設和解)、2009年西松建設和解、2016年三菱マテリアル和解がなされていますが、その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟みませんでした」

 「日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在していますから、尊重されるべきです。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す『解決済み』では決してないのです。日本政府自身、一貫して個人による補償請求の権利を否定していません。この半世紀の間、サハリンの残留韓国人の帰国支援、被爆した韓国人への支援など、植民地支配に起因する個人の被害に対して、日本政府は、工夫しながら補償に代わる措置も行ってきましたし、安倍政権が朴槿恵政権と2015年末に合意した『日韓慰安婦合意』(この評価は様々であり、また、すでに財団は解散していますが)も、韓国側の財団を通じて、日本政府が被害者個人に国費10億円を差し出した事例に他なりません。一方、韓国も、盧武鉉政権時代、植民地被害者に対し法律を制定して個人への補償を行っています。こうした事例を踏まえるならば、議論し、双方が納得する妥協点を見出すことは可能だと思います」

 「私たちは、日本政府が韓国に対する輸出規制をただちに撤回し、韓国政府との間で、冷静な対話・議論を開始することを求めるものです」
 「いまや1998年の『日韓パートナーシップ宣言』がひらいた日韓の文化交流、市民交流は途方もない規模で展開しています。300万人が日本から韓国に旅行して、700万人が韓国から日本を訪問しています。ネトウヨやヘイトスピーチ派がどんなに叫ぼうと、日本と韓国は大切な隣国同士であり、韓国と日本を切り離すことはできないのです」
「安倍首相は、日本国民と韓国国民の仲を裂き、両国民を対立反目させるようなことはやめてください。意見が違えば、手を握ったまま、討論をつづければいいではないですか」

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賛同署名記入は、https://forms.gle/4Naxt9Aw4WfS1VK39
からできる。
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 「韓国は「敵」なのか」声明の会は、8月31日(土)14時から、韓国YMCAスペースY(東京のJR水道橋駅東口から徒歩7分、都営三田線水道橋駅A1から徒歩7分)で緊急集会「韓国は『敵』なのか」を開く。内田雅敏、和田春樹さんらが発言。参加費500円。

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