2019.09.12  どこまで続く「こざかしい見栄っ張り」政治―安倍改造内閣を見て思う

田畑光永 (ジャーナリスト)

 第4次安倍内閣第2次改造内閣と称する内閣が発足した。第4次というのは安倍晋三氏が衆議院の首班指名選挙で首班(つまり首相)に4回目の指名を受けて作った内閣であり、第2次改造というのは改造2度目という意味である。そうか「安倍晋三君を内閣総理大臣に指名するに決しました」という衆院議長の声をわれわれは4回も聞かされたわけなのだ。
 最初は2006年9月だった。小泉(純一郎)内閣(2001~06)の後を受けて発足した第1次安倍内閣は翌7年7月の参院選で惨敗。安倍は9月、首相在任1年で退任した。これで終わっていればよかった。ご記憶にあると思うが「三角大福中」と言われた田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、(鈴木善幸)、中曽根康弘の時代もそうだったが、わが国はその後、より短命政権の時代となった。
 中曽根から安倍の前任の小泉まで、歴代総理の名前を書きだしてみると、竹下登、宇野宗佑、海部俊樹、宮沢喜一、細川護熙、羽田孜、村山富市、橋本竜太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎である。その在任期間は、中曽根と小泉の5年5か月が例外的な長さであって、ほかに2年を越えたのは橋本の2年6か月と海部の2年2か月の2人だけ。あとは全員2年未満、短いほうの筆頭は宇野と羽田の2か月である。
 安倍もこの短命の列に収まったのなら文句はない。ところがどうした風の吹き回しか、民主党政権時代の3年をはさんで、その安倍が復活して、今や歴代在任日数で2800数十日、第2位に上り詰めている。このまま無事に月日が過ぎれば、あと2か月余で桂太郎を抜いて憲政史上最長政権の記録を塗り替えるというのだから、国民としてはなんともいえない焦慮に駆られるではないか。
 なぜこの内閣が長続きするのか。さまざまな説があろう。基本的には90年代から実施された小選挙区制がそれなりに定着して、自民党内の権力の一極集中化が進み、党内野党が存在しにくくなったこと。また時代の変化が速いために、多少なりとも「変革」を掲げなければならない野党がきちんとした立ち位置を確保できず、保守の唱える「安定」が有権者の逃げ込み場所となっていること。そして残念ながら民主党時代の3年間、与党内でぶざまな党内抗争が続き、政治に対するアパシーを助長してしまったことも否定できまい。
 それに国民も健忘症にすぎる。モリカケにはっきり見て取れた安倍政権の権力私物化が、ほんのわずかな時間しか経っていないのに、すでにはるか忘却の彼方へ遠ざかり、史上空前の財務省内の大量公文書偽造さえもはや存在しなかったごとくである。
 どうすればいいか、直截な方法はない。政権の所業を睨みつけているしかない。
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 安倍という人は知らない。報道で見るだけである。私にはこざかしい見栄っ張りとしか見えない。かれの口癖、「戦後○十年、未解決のこの問題を私たちの(つまり私の手で)世代で解決したい」は、かれの名誉欲の発露に他ならない。教育基本法の改正しかり、北方4島の問題しかり、慰安婦問題をはじめ戦争責任に関することどもしかり、そしてもっとも重視する憲法9条の改訂しかり、である。
 どれも大事な問題である。だから手を出すなとは言わない。しかし、かれの手法は真正面から議論を戦わせようというのではい。「子供に自衛隊は憲法違反なの?と聞かれる自衛隊員の苦しみをほっておいていいのか」といったたぐいの形式論理で議論を避け、あとは議会で数を恃んで目的を達しようとする。率直に言って、こういう人物に大事なことは任せられない。
 11日の改造内閣の顔ぶれは、私には再来年9月に待っている自民党総裁としての任期切れにさらに連投をねらう布陣としか見えない。
 11日夕の記者会見で首相が真っ先に口にしたのは、新内閣には13人の初入閣者がいるということであった。首相と公明党枠1人を除くと18人だから新顔が多いとはいえる。政治家にとって閣僚に登用されることは大きな目標だから、いつその順番が回ってくるかは死活的な問題である。
 では、今回の改造でのその13人の内訳を見よう。まず目につくのは話題の38歳、小泉進次郎環境相とスケートの橋本聖子五輪担当相だが、この2人と公明党枠の赤羽一嘉国土交通相は普通の自民党内の大臣競争では別格だからひとまず除いて残りの10人を並べてみると、すぐに気づくことは首相官邸で直接、安倍に仕えた人物が5人もいることだ。河合克行(党総裁外交特別補佐→法務相)、萩生田光一(官房副長官→文科相)、江藤拓(首相補佐官→農林水産相)、衛藤晟一(首相補佐官→一億総活躍・少子化担当相)、西村康稔(官房副長官→経済財政・経済再生担当相)の各氏である。このほかにも経済産業相となった菅原一秀氏は菅官房長官に近い人間として知られている。
 となると、大臣競争の中から選ばれたいわゆる入閣待機組からは4人しか大臣になれなかったわけである。そこで官邸組6人(菅原氏を含む)と待機組4人の平均年齢を計算してみたところ、官邸組は57.1歳、待機組は65.2歳だった。この結果は安倍官邸に取り立てられることが、どれほど今の政界での出世に有利かを如実に示している。何事にせよ、党内から安倍に反対する声はますます出にくくなることは間違いない。
内閣改造では派閥の割り振りが注目される。今回もそれぞれに出入りはあるが、なんといっても、安倍のライバルと見られる石破茂支持勢力からは1人の入閣者もいないことが見逃せない。いや、この言い方は間違っている。石破は「1人も入閣者なし」どころではない痛手を被ったはずだ。
 それは先ほど触れた小泉進次郎環境大臣だ。小泉はこれまでの総裁選では石破支持を公言していた。権力のない石破にとっては、人気の小泉の支持は大きな励ましとなったろう。しかし、その小泉も入閣すれば、抜擢に安倍の恩を感じないわけにはいくまいし、何より大臣在職中に総裁選となったら、反安倍は口にしずらい。安倍は石破を徹底的に踏みつけたのだ。
 というわけで、今回の内閣改造を見ると、安倍はこれからいろんな人間の名前を出しながら、最後は「やっぱり安倍」という流れを作ろうとしているとしか見えない。桂太郎を抜くどころの話ではない。圧倒的な長期政権記録をあの男が作るとしたら・・・想像するだに気持ちが暗くなる。それを阻む道はどこにあるのだろうか。
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