2019.10.04  立憲民主、国民民主、社保の野党3党統一会派結成が市民と野党共闘体制の崩壊につながる恐れはないか、
          程遠い野党連合政権への道(1)

広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

  2009年8月、民主は衆院選で308議席を獲得して大勝し、自民から政権を奪取した。だが、野田内閣による消費税増税(当面8%、数年後10%)実施を巡って党内が分裂した結果、12年12月衆院選では自民294議席に対してわずか57議席と惨敗し、政権を失った。それ以降も離合集散を繰り返し、16年に民主と旧維新の合流で民進党が生まれたかと思いきや、翌17年には希望の党をめぐって再び分裂するという有様で、これでは国民に信頼されるわけがない。

 それからというものは、政党支持率では立憲民主は10%に届かず、国民民主に至っては泡沫政党レベル(1%)でしかない。当然のこととして、2019年参院選では17年衆院選に比較して立憲民主は1108万票(比例代表得票数、以下同じ)から792万票へ▲316万票、国民民主は968万票(希望の党)から348万票へ▲620万票の大量票を失うという無残な結果となった。

 17年衆院選の瞬間風速的な「立憲ブーム」がその後も続くと錯覚したのか、枝野代表は「永田町の数合わせにはくみしない」と立民主導のスタンスを崩さず、野党共闘には極めて消極的だった。だが、19年参院選の結果には衝撃を受けたようで、19年8月には立憲民主と国民民主が衆参両院で「会派をともにする」との合意文書を交わすことになった。立憲民主単独では、国会運営で野党第1党のリーダーシップをとることが難しいと判断したからだろう。

 しかし、枝野代表の突然の心変わりがいかにも不自然だと映ったのか、有権者の多くが両党の合意には納得していない。共同通信が8月17、18両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、事実、以下のような結果が出ている。
 【問】立憲民主党は、国民民主党などに対し一つの衆院会派で活動するよう要請しました。あなたはこの立憲民主党の動きを評価しますか、評価しませんか。
 【回答】「評価する」30.2%、「評価しない」50.3%、「分からない・無回答」19.5%
 この数字は、民進党時代に大分裂した立憲民主と国民民主が、具体的政策への言及もなく、ただ「大きい塊をつくる」という理由だけで合流することへの不信感が依然として根強いことを示している。それはまた、国民の期待を裏切った民主党政権への失望と落胆があまりにも大きく、小手先細工では修復不可能であることを示している。

 もう一つの問いは、野党協力・連携のあり方を全体として問うもので、いわば「野党共闘のフレーム」に関する質問である。
 【問】あなたは、野党の協力に仕方についてどう思いますか。
 【回答】「できるだけ多くの野党が一緒になり、政権交代を目指す政党をつくる」21.0%、「野党はそれぞれの党を維持した上で、国会や選挙で協力して与党に対抗する」36.7%、「野党は政策課題ごとに与党に是々非々で対抗する」32.9%、「分からない・無回答」9.4%
 結果は「野党連合政権」2割、「野党共闘」4割弱、「各党独自路線」3割強というもので、全体としては「野党共闘+α」が多数を占めると言ったところだ。要するに、政権交代とまでにはいかないが、自公政権の腐敗や専横ぶりをチエックする野党勢力の強化が必要であり、そのためには国会や選挙での野党共闘が必要だというものだ。

 立憲民主と国民民主との間で「会派をともにする」合意が成立した後、会派名や人事をめぐっての交渉が難航して妥協に妥協を重ねた挙句、漸く統一会派が結成されたのは1カ月後のことである。それも立憲民主と国民民主だけではなく、野田前首相の率いる「社会保障を立て直す国民会議」(社保)を含めた3党派による統一会派の結成だ。何のことはない。旧民進党から分裂した野党3党派が再び野党統一会派を結成するだけの話ではないか。9月19日午後、国会で記者会見に応じた3党会派代表の写真をみたが、まるで野田内閣の亡霊をみるようでやりきれない気持ちになった。私の友人などは「見たくないものを見てしまった」と話していたが、多くの人たちが多分そう感じたのではないか。

 おまけに、これまで旧民進とは一線を画してきた社民までが方針転換して統一会派に参加するのだという。自民とほとんど体質の変わらない野田氏が一角を占める統一会派に、社民までが加わっていったいどんな野党勢力をつくるというのか、まったく見当がつかない。統一会派結成を契機に立憲民主に入党した安住元財務相は統一会派の国対委員長に就任し、「2大政党勢力で政権を争う体制を作らないといけない」と語ったという(朝日19年9月20日)。立憲民主が旧民主・民進の復活によって自民との「2大政党制」を目指すのであれば、これは旧民主党時代の姿と寸分も変わらない。それはまた、市民と野党共闘の間で結ばれた政策協定の趣旨にも反することになり、共闘体制の崩壊にもつながる恐れがある。

 これに対して、これまで野党共闘に取り組んできた共産はどのような態度を表明しているのであろうか。赤旗(19年8月28日)の「野党連合政権構想について、志位委員長会見 一問一答から」によれば、3党派の統一会派結成(の可能性)といった複雑な情勢には全く触れず、〝野党共闘一直線〟ともいうべき戦略と方針が提起されている。要点は、次期総選挙において国会で多数を占める野党連合政権を実現するためには、(1)政権をともにつくるという野党間の確かな政治的合意が必要であること、(2)政策については、政策的一致点を確認して魅力あるものに充実させるとともに、不一致点については政権運営の障害にならないようにきちんと処理して政策合意をすること、(3)総選挙での選挙協力とりわけ小選挙区における候補者調整は、政権合意を基礎に進めたいこと―の3点である。

 この呼びかけは、過去3回の国政選挙(2016年参院選、17年衆院選、19年参院選)における野党共闘が一定の成果を挙げたものの、政権合意を抜きにした選挙協力であったために、結果は共産の一方的サービス(候補者降ろし)に終わり、共産自体は党勢の後退を余儀なくされるという苦い経験と反省に基づくものだろう。参院選1人区32選挙区での候補者調整だけでも大変な犠牲を強いられたのに、衆院選小選挙区は全国で289もあるのだから、きちんとした政権合意のない候補者調整には応じられないとの意思表明でもある。

 共産からすれば大義のある呼びかけのつもりだろうが、3党派の統一会派結成に見られるように「2大政党制」の復活を企む潮流が再び浮上するといった複雑な政治情勢の下では、このような呼びかけが各党に素直に受け止められるとは到底考えられない。結局のところ、「本気の野党共闘」は選挙協力しなければ野党各党の命運が尽きる、あるいは命運が尽きる恐れがあるギリギリのところまで行かなければ実現しないのではないか。(つづく)
Comment
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack