2019.10.09 「野党共闘から野党連合政権へ」を掲げる共産の内部事情、党勢後退の危機をどう乗り越えるのか、
          程遠い野党連合政権への道(3)

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 次期総選挙が近いのか、このところ共産が急な動きを見せている。志位委員長が〝本気の野党共闘〟の実現をめざして「野党共闘から野党連合政権へ」を打ち出したかと思うと(8月27日)、れいわ山本代表との初めての党首会談で消費税を将来廃止する方向で合意し(9月12日)、今度は「消費税廃止をめざし緊急に5%減税を」の呼びかけを発表する(9月30日)というスピード展開だ。

 ところが、強気一方の志位委員長の記者会見の翌々日(8月29日)、「しんぶん赤旗と党の財政を守るために」との財務・業務責任者の悲痛な訴えが掲載された。「日刊紙・日曜版の読者が8月1日の申請で100万を割るという重大な事態に直面し、この後退がしんぶん赤旗発行の危機を招いている」というのである。訴えはこうも続けられている。「しんぶん赤旗の事業は党の財政収入の9割を占めるという決定的な役割を担っています。しんぶん赤旗の危機は、党財政の困難の増大そのものです。しんぶん赤旗の後退は、中央も地方党機関も財政の弱体化に直結します。党の役割が大きくなり、党活動の強化が求められているそのときに支えとなる財政が足りない―これほど悔しいことはありません」。

 この事態は「悔しい」といった個人の感情レベルのものではなく、疑いもなく党財政が存亡の危機に直面しているということではないか。政党交付金を拒否して党運営を続けてきた共産にとっては未曽有の財政危機であり、この危機を乗り切れるかどうかが、今後の党の命運を左右するといっても過言ではない。折しも第7回中央委員会総会が9月15日に開かれ、総会決議が翌16日の赤旗紙上に掲載された。主たる内容は、来年1月の第28回党大会開催の決定、及びそれに向けた〝党勢拡大大運動〟の提起である。志位委員長は、冒頭のあいさつで「党勢という面でも、世代的継承という面でも、現状は率直に言って危機的であります」と述べている。党勢面での危機とは、党員数と機関紙読者数が恐ろしい勢いで減っていること、世代的継承の危機とは若手党員が極端に少ないことを指しているのだろう。

 総会決議は、1980年以降、党勢が後退を続けている主たる原因を「社公合意」(1980年)による共産排除の「壁」に求め、そのことによって職場の党組織、若い世代の中での党建設が極度の困難にさらされたことを挙げている。確かに社公合意が社共共闘・革新統一路線を崩壊させ、革新陣営に大きな打撃を与えたことは間違いない。しかし、1990年代後半の「自公連立政権」の成立によって社公合意は崩壊し、その後「自社さ政権」への参加によって社会党が党是を棄てたことから社会党そのものが消滅した。社公合意はすでに過去のものとなっており、その否定的影響はせいぜい20世紀止まりである。だから、21世紀に入ってから現在に至る(20年近い)党勢後退の原因を、外部要因である40年前の「社公合意」に求めるのはいささか筋違いというものだろう。この論法は、内部矛盾を外部要因にすり替えるようなもので恐ろしく説得力がない。

 総会決議では危機的状況を脱するために、「党員拡大でも赤旗読者拡大でも前大会時(2017年1月)の回復・突破」という〝党勢拡大大運動〟が提起された。この方針は率直に言って老体にカンフル注射を打つようなもので、本格的な回復には結び付くとは思えない。なぜなら、20年以上も続いてきた構造的な後退傾向を、僅か4カ月の「大運動=突撃」で克服できるなどとはとても考えられないからだ。2年半前に開かれた第27回党大会時の党勢は、党員30万人、機関紙読者110万部というものだった。それが現時点では党員28万人、機関紙読者100万部割れというのだから、党員数は2年半で2万人(8千人/年)、機関紙読者数は10万部以上(4万部以上/年)減ったことになる。注目さ、れるのは、毎年8千人もの党員が減っていく中に少なくない離党者が含まれていることだ。

 赤旗紙上では「離党者」と言う言葉は滅多にお目にかかれないし、「離党者数」が公表されたこともない。しかし、民主的な政治組織の構成員には参加・脱退の自由が保障されている以上、離党者が出ることは避けられないし、またそれは組織が健全に機能していることを示す証拠でもある。政党は堂々と離党者数を公表すべきだと思うが、公表がためらわれるのは、離党者数が多くなると組織体質に問題があるのではないかと疑われてマイナスイメージを与えるからであろう。

 とはいえ、「危機的状況」と叫ぶだけでその実情を伝える努力をしなければ、組織全体が危機意識を共有できないし、克服するためのエネルギーも湧いてこない。民間企業でも、幹部が売上高減少の原因を示さず、社員にノルマを課して叱咤激励するだけでは誰も付いてこない。原因の所在について、製品に問題があるのか、営業方針や人事管理の方法が間違っているのかなど、具体的な指摘をしなければ手の打ちようがないのである。総会決議では、党員と機関紙読者数の減少数という「結果」だけが示され、それを4カ月で回復(突破)するという「目標」が課されただけで、その「中身」はまったく示されていない。党員数の増減に関して言えば、死亡者数と離党者数の合計が新入党員数を上回れば減少し、下回れば増加するのだから、「中身」は死亡者数、離党者数、新入党員数の3つを明らかにするだけでいいのである。それが示されていないので、総会決議の中の断片的事実を繋ぎ合わせて試算してみよう。

 まず、新入党員数は「第27回党大会以降、新しい党員を迎えた支部は34%」とあるので、支部数を2万とすると、2年半で6800人(2万支部×0.34)、2720人/年増えたことになる。複数の新入党員を迎えた支部もあるだろうから、ここでは3000人/年(2720人×1.1倍)としよう。次に推定死亡者数/年は、30万人(現勢・母数)に死亡率を乗じて得られる。死亡率は年齢構成によって違うが、年齢構成が公表されていないので(実態は65歳以上比率が40%近くに達していると伝えられている)、国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集、『人口の動向、日本と世界』(厚生労働統計協会、2019)から、3つのケースを想定して試算してみる。3つのケースとは日本人口が2025年、2045年、2065年に到達したときの65歳以上人口比率に基づくものである。(1)65歳以上比率30.0%、死亡率12.4‰、推定死亡者数3720人(30万人×12.4‰)の場合、(2)同36.8%、15.5‰、4650人(30万人×15.5‰)の場合、(3)同38.4%、17.7‰、5310人(30万人×17.7‰)の場合である。

 計算式は「党員減少数/年=新入党員数/年-推定死亡者数/年-離党者数/年」という簡単なもので、結果は以下のようになる。(1)▲8000人=3000人-3720人-7280人、(2)▲8000人=3000人-4650人-6350人、(3)▲8000人=3000人-5310人-5690人。離党者数が余りにも大きいので計算をやり直してみたが、簡単な足し算と引き算なのでまず間違いないものと思われる。つまり、党員減少数8000人/年の内訳は、3000人/年の新入党員を迎えているにもかかわらず、それをはるかに上回る死亡者数(3720~5310人/年)と離党者数(5690~7280人/年)によって生じているのである。

 生物である人間には命に限りがあるので、共産の党組織が超高齢化している以上、死亡者数が当分増え続けることは如何ともしがたい。問題は離党者数が死亡者数を上回るレベルに達していることであり、この問題に一言も触れないで〝党勢拡大大運動〟の号令がかけ続けられていることだ。笊(ざる)に幾ら水を注いでも水は溜まらないのだから、まず水漏れを防ぐことが先決ではないか。それが組織活動の原則でもあるからだ。(つづく)

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