2019.10.26  ようやく決まった中国共産党4中全会――習近平の中国(7)
田畑光永 (ジャーナリスト)
                      
 中国を観察している人間としては、この数日、なんとなく落ち着かなかった。というのは他でもない。23日の本欄(習近平の中国 6)でも触れたが、今月中に開くとすでに8月に予告された中国共産党の第19期4中全会という会議について、月末まで1週間となっても音沙汰がなかったからである。
 しかし、結局、一昨日の午後、その会議が28日から北京で開催されるという発表があって、とにかく変事はなさそうだと警戒心を解くことができた。そんな会議のひとつくらいどうでもいいではないか、というむきもあろうが、じつはこの会議は重要な意味を持っている。
 ごく簡単に説明すると、中国共産党は5年に1回、全国大会を開く。「第19期」というのは直近の大会が結党以来98年間での19回目の大会であったことを示している。最近では2012年に第18回大会、17年に第19回大会が開かれたから、現在は19回から20回に至る間の期間だが、その間に開かれる中央委員会総会を「第19期○中全会」と呼ぶ。
 中央委員会総会は大会から大会までの期間における党の最高意思決定機関であり、大会で選ばれた200人余の中央委員と170人余の同候補委員で構成される。そして大会終了後に最初に開かれる総会で、中央委員の中から25人の政治局員、さらにその中から7人の同常務委員という最高指導部が選ばれて、5年間の党の執行体制が決まる。
 最近では、共産党大会は秋に開かれるが、その大会の翌春に開かれる全国人民代表大会という国の立法機関の総会で、政府も新しい顔ぶれになるのが慣例なので、その前に共産党は第2回中央委員会総会を開いて、全人代に推薦する首相以下、国家機関の主要ポストの顔ぶれを決める。共産党独裁政権であるから、全人代では勿論、その通りに決まる。
 こうして党大会から半年後の春に党・政府双方の新しい陣容が整い、その期の治世が始まるのだが、それがまた半年あまり経過して各機関が回転し始めた秋に3回目の中央委総会が開かれる。ここでその期の重要な政策方針が決められる。つまり第○期の3回目の中央委総会、「3中全会」は残り4年の政治の方向を決める重要な会議なのである。
 歴史的に見ても文化大革命の後、鄧小平の改革・開放路線の始まりを告げたのは1978年秋の第11期3中全会であり、最近では300数十項目の改革案を決めて、今もそれが生きている(ことになっている)のは、前期つまり2013年の第18期3中全会であった。
 しかし、今の第19期はちょっと事情がちがう。というのは昨18年の全人代で憲法を改正して、国家主席の任期について「2期10年まで」という制限を廃止することになったために、昨年春には2中全会の後にもう1度、中央委総会(3中全会)を開いて、党として憲法改正を決めた。したがって、秋に開かれるはずの通常の3中全会は4中全会となった。
 つまり今期は通常の3中全会にあたる会議が4中全会として昨秋開かれるはずだったのだが、なぜかそれが開かれなかった。つまり党大会で新体制は発足したが、肝心のどういう政治をおこなうか、共産党としては何も言わないまま、これまで2年間を過ごして来たことになる。昨年来の米との「新冷戦」、それにともなう経済の下振れなどへの対策に追われてのことかなど、いろいろ推測は行われたが、理由はなにも説明されなかった。
 それにしても19期としての施政方針ともいうべきものを党として決めずに月日が流れて行くのはいいことではないはずである。それに党規約では中央委総会は年に1度は開かなければならないことになっているが、秋に開いたとしても昨年2月の「3中全会」以来、1年半以上が経過することになる。
 そして、ようやく「4中全会を10月に開く」という方針がさる8月30日の党中央政治局会議で決定、発表された。同時に4中全会の主な議題も明らかにされた。しかし、それは「中国の特色ある社会主義制度を堅持し完全なものとすることを研究し、国家の統治体系、統治能力の現代化を推進するための若干の問題を研究する」という、抽象的にすぎて中身を想像することはできないものであった。
 ともあれ4中全会は開かれることにはなったのだが、それきりまた音沙汰なしで10月も下旬となったので、「やはりなにかおかしいのでは」という疑心が広がりつつあったのである。
 あとは会議の結果を待つだけだが、最近の中国の言い方によれば、今の世界は「百年見なかったような大激動期」ということだから、4中全会ではその大激動への対処方針をどのように明らかにするか、が第1の見ものである。
 また昨年来、頓挫―再開を繰り返してきた米中貿易摩擦をめぐる閣僚協議もようやく第1段階の内容がまとまり、協定文の作成が進行中といわれている。5月から6月にかけて国内に反米感情が高まった経緯もあり、米との交渉についてどういう報告がなされるか。
 加えて、今年の中国経済は一段と停滞色を強め、1~9月の経済成長率は6.2%、7~9月に限ってみれば6%と、今年の目標範囲である6~6.5%の下限をキープできるかどうか、の瀬戸際にいる。これまで以上の景気対策が打ち出されるかどうかも注目点である。
 さらに6月以来続いている香港の大衆運動は、当初の「逃亡犯条令改正反対」から全般的な民主化運動の様相を帯びてきた。英からの返還時に高らかに謳われた「一国二政度」が骨抜きになった現状から国際世論は運動の側に同情する声が高まりつつあるだけに、たんに「暴力行為、破壊行為」と断ずるだけでない、選挙制度などで大所高所に立った中国政府の見識も求められるところである。
 こう見てくると、28日からの4中全会はまる1年のブランクの後というだけでなく、答えるべき課題の多い環境の中で開かれる。2期目の習近平政治の行方が占えるのではないか。
(191025)
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