2019.11.01 バグダーディ殺害作戦はクルド人組織の追跡、監視の成果
トランプ大統領は「米国の成果」だと大宣伝。クルド人を裏切る
NYタイムズ(10月28日)の詳細な調査報道(上)


坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ米大統領は27日、米軍特殊部隊が同日、逃亡、潜伏していたイスラム過激派テロ組織「イスラム国(IS)」の最高指導者バグダーディを急襲、死亡させたと、意気揚々と発表した。
 2週間前の13日、トランプは1千人を超えるシリア派遣米軍全員の撤退を命令。9日から始まっていたトルコ軍のシリア北部クルド人居住地域への侵攻を黙認した。同地域では、クルド人は事実上の自治を順調に実施し、クルド人武装組織YPGによって、平和な生活が維持されていた。ロシア軍も加わったトルコ軍の攻撃に、YPGは当初抵抗しただけで、国境から30キロ撤退した。
 米軍とYPGは5年にわたる「イスラム国」との戦いで協力、YPGが地上作戦、米軍が空爆の主力となった。今年3月「イスラム国」はシリア東部の町で壊滅、最高指導者のバグダーディも姿を消した。
 今回、トルコ軍がシリアに越境攻撃、クルド人が住む町や村を占領した。米国内では、トランプがトルコ軍のクルド人攻撃に暗黙の承認を与え、「クルド人を裏切った」との強い批判が、民主党をはじめ、政界にもメディアにも高まった。
 そのなかでトランプは、米軍特殊部隊がほとんど自力でバグダーディの居場所を突き止め、殺害したと突然、大威張りで発表した。
 これまでにもバグダーディの死亡情報があったが、アサド政権に抵抗する勢力が支配する、最後の地域となったシリア北西部のイドリブ県に隠れていたのだ。
 そのバグダーディの隠れ場所を突き止めたのは、クルド人の武装勢力だった。
 そのクルド人をトランプは裏切った。10月28日のニューヨーク・タイムズは、バグダーディ殺害の真相を追求、「トランプ大統領は、バグダーディ発見のために他国から得られた支援は、ごくわずかにすぎなかったと語っているが、米当局者たちは、クルド人によって得られた特別情報が、バグダーディ発見のために最も重要で、他の国から寄せられた情報全部よりも役立ったと述べている」と報じた。
 電子版では15ページになる、“As Kurds Tracked ISIS Leader, U.S Withdrawal Threw Raid Into Turmoil” から、要点を選んで紹介しよう。

 (シリア・カミシュリ28日)ベン・フバード、エリック・シュミット記者
 「イスラム国(IS)」と戦う米国の同盟者、クルド人武装勢力は、バグダーディが潜む村にスパイを送り込み、孤立している一軒のヴィラを監視させた。住んでいるのがバグダーディであることを確かめるため、長めの白い下着のペアを盗んだ。それらから血液の資料が得られ、DNA鑑定がされた、とクルド人部隊の司令官マズルム・アブディは電話取材に答えた。
 米軍当局者は、クルド人から特別な情報が提供されたかどうか語ろうとはしなかったが、バグダーディを発見するために、クルド人の役割は欠くことができなかった、他の勢力からの情報すべてよりも大きかったと述べた。それは、トランプ大統領が、バグダーディ殺害を発表した際に発言した、米軍以外から得られた情報支援は「ごくわずかだった」とは矛盾する。
 シリアのクルド人兵士たちが、この週末、バグダーディの死となる攻撃で自ら危険を冒しているとき、トランプ氏は5年に及ぶクルド人との同盟関係を突然打ち切った。
 彼はシリア北部からの米軍撤退を決定、クルド人たちに、トルコ軍の侵攻に弱体であることと、米国の裏切りを痛感させた。クルド人兵士たちは、米国との軍事的協力を停止し、彼らの土地を守るために急いで帰郷した。
 「われわれは、米国が約束を守ると思っていた。」とクルド人のYPGにアラブ人も加わっているSDF(シリア民主軍)司令官、アブディ氏は述べ、「しかし結局、弱さと失望が残った」と語った。(続く)







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