2019.12.24 安倍内閣、支持率下落は一時的現象か
本格的下落のはじまりか(その1)

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

安倍首相主催の「桜を見る会」をめぐって政治情勢がにわかに流動化してきた。安倍首相の「身内政治=国政私物化」の姿がここまで赤裸々に暴露されているにもかかわらず、知らぬ存ぜず一点張りで逃げ切ろうとする醜態が国民の激しい怒りを呼んでいるためだ。当人は国会延長を要求する野党の追及を振り切り「逃げ切った」と思っているらしいが、野党はもとより国民がそんなことで納得するわけがない。正月が来れば「その内にみんな忘れてくれる」なんて甘い夢は見ない方がいいのである。

この間の世論状況の推移を各社の世論調査で追ってみると、僅か2カ月足らずの間に世論が大きく動いていることがわかる。画期の区分は、(1)内閣支持率も自民支持率も下がらない、(2)内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない、(3)内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率も下がる、の3期である。このような区分をするのは、安倍政権に対する支持は、首相自身に対する評価と自民党全体に対する評価の二重構造になっていて、内閣支持率が下がっても自民支持率が下がらなければ、自民党政権が安泰だからである。自民党政権の危機は、その両方が連動して本格的に下がるときに初めて訪れることになる。

11月前半までは、第1期の「内閣支持率も自民支持率も下がらない」時期が続いていた。11月になって最初に行われた時事通信調査(11月8~11日)は、政府が首相主催の「桜を見る会」を来年度中止を決定した11月13日以前だったためか、2閣僚辞任や大学入試への英語民間試験の導入見送りなど不祥事が相次いだにもかかわらず、内閣支持率は48.5%(△4.3ポイント)、不支持率は29.4%(▲3.6ポイント)となり、支持率が逆に上昇していた(マジか!)。

一方、政党支持率の方は、「自民」30.1%(△2.6ポイント)で断トツ1位を維持しており、それに比べて「立憲」3.1%(▲2.7ポイント)で公明3.7%を下回る始末、その他野党はいずれも2%以下で見る影もない。「支持政党なし」55.5%(▲0.5ポイント)が過半数を占めているように、国民多数が〝野党離れ〟にある状況の下で、安倍政権はこのまま不祥事をやり過ごせると踏んでいたのである。

しかし、安倍首相が来年度の「桜を見る会」中止を決定した11月13日以降、情勢は少し変り始めた。11月半ばから後半にかけて、世論動向は第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない」へ移行した。これまで相対的に高い支持率が続いてきた読売調査(11月15~17日)と産経調査(11月16、17日)においても、読売「支持」54→49%(▲6ポイント)、「不支持」34→36%(△2ポイント)、産経「支持」51.7→45.1%(▲6.6ポイント)、「不支持」33.0→37.7%(△4.7ポイント)となって、下落傾向が明らかになってきた。50%台を恒常的に維持していた読売・産経の内閣支持率が、過半数割れの状態に落ち込む傾向がはっきりと出て来たのである。

また、支持率が低かった朝日調査(11月16、17日)においても「支持する」45→44%(▲1ポイント)、「支持しない」32→36%(△4ポイント)となった。首相が来年度の「桜を見る会」中止を決定してからというものは、程度の差はあれ支持率が下落し、不支持率が上昇した。安倍首相の「臭い物に蓋をする」姿勢に少なくない国民が失望したのだろう。ただしこの段階では、まだ不支持率が支持率を上回るような状況ではなかった。

一方、「自民」支持率の方は、読売42→37%(▲5ポイント)、産経37.7→36.2%(▲1.5ポイント)、朝日45.7%で変わらずと各社まちまちだった。野党は「立憲」にやや上昇傾向がみられるものの(読売5→7%、産経7.3→7.8%、朝日7.8→9.8%)、「支持政党なし」がほとんど動いていないので(読売38%変わらず、産経39.4→38.7%、朝日30.0→26.5%)、こちらの方はそれほど大きな変化はなかったと言える。

読売・産経・朝日から約1週間遅れで、共同通信調査(11月23、24日)と日経調査(11月22~24日)が行われた。この1週間は、野党側の「桜を見る会」への追及によって招待者の実態が次々と明らかになり、安倍首相夫妻や政権幹部、自民党関係者による「桜を見る会」の私物化が暴露された1週間だった。おまけに招待者名簿が野党の資料請求当日に破棄されたとあって、証拠隠滅も露骨かつ組織的に行われていたことが判明した。こんな有様だから、私などは内閣支持率が一気に10%程度下がってもおかしくないと思っていたのである。

ところが、内閣支持率は共同通信「支持」54.1→48.7%(▲5.4ポイント)、「不支持」34.5→38.1%(△3.6ポイント)、日経「支持」57→50%(▲7ポイント)、「不支持」36→40%(△4ポイント)と思ったほど下がらなかった。また、政党支持率の方も共同通信が「自民」44.6→41.8(▲2.8ポイント)とやや下落したものの、「立憲・国民・共産・社民・れいわ」の全てを合わせても16.6→16.2%(▲0.4ポイント)と変化がなく、「支持政党なし」28.9→30.4%(△1.5ポイント)が少し増えただけだった(日経は数字が明示されていない)。つまり、この段階では〝自民離れ〟が〝野党支持〟へ移行しておらず、「支持政党なし」に途中下車している程度の変化しか見られなかったのである。

この状態を日経は次のように解説している。
「安倍晋三首相は20日に通算在任日数が憲政史上最長となった。日本経済新聞社の22~24日の世論調査で、2012年12月に発足した第2次安倍政権以降の仕事ぶりについて質問すると『評価する』と答えた人が55%、『評価しない』が34%だった。長期政権を評価する声が過半に達したが、一方で『安倍政権に緩みがあると思う』と答えた人も67%にのぼった」
「首相主催の『桜を見る会』をめぐる問題などで内閣支持率は7ポイント下がったが、それでも50%あり、首相への評価は底堅い。10人の名前を挙げて『次の政権の首相にふさわしいと思うのは誰か』を聞いたところ、安倍首相は前回10月調査の16%とほぼ横ばいの14%で、順位は同じ3位だった」
「一方、政権の緩みには厳しい意見が目立つ。9月の内閣改造から1カ月半で菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相と2閣僚が相次いで辞任したことを受け『政権に緩みがあると思う』と答えた人は67%に上った。『あるとは思わない』の27%を大きく引き離した」

この解説は、日経の編集方針の基調である、(1)安倍長期政権の仕事ぶりは国民に広く評価されている、(2)安倍内閣の支持率は底堅い、(3)不祥事は政権の「緩み」から生じるもので本質的な欠陥に基づくものではない、との政治認識に基づいている。キーワードは「緩み」であり、続出する自民政権の不祥事の原因をすべて党内の「緩み」に求めるというものだ。この論調は、国民に対して自民政権の継続が国政の前提との印象を与えるもので、ここからは〝政権交代〟の主張は出てこない。安倍政権の腐敗を「政権の緩み」にすり替え、「党内改革」によって体制の延長を図ると言う典型的ストーリーとなっている。(つづく)

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