2019.12.25 安倍内閣、支持率下落は一時的現象か
本格的下落のはじまりか(その2)

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

12月前半は、「内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない」という第2期と、「内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率も下がる」という第3期が交錯する複雑な時期である。毎日調査(11月30日、12月1日)の結果が前者に相当し、時事通信調査(12月6~9日)の方は後者に当たる。これまで質問や回答の内容にはあまり触れなかったので、毎日調査の主だった結果をまず紹介したい。私が特に注目したのは女性の回答だ。
(1) 内閣支持は42%(▲6ポイント)、不支持は35%(△5ポイント)となって、支持・不支持率が接近した。特に、女性の支持率が男性46%よりも8ポイント低く38%になったのが目立つ。
(2) 「国の税金を使って開く『桜を見る会』に、安倍首相の地元後援会関係者らが多数、招待されていたことが明らかになりました。あなたはどう思いますか」との質問に対しては、「問題だと思う」65%、「問題だとは思わない」21%で、問題視する回答が問題視しない回答の3倍に上った。女性は70%対14%で5倍だった。
(3) 「野党は『桜を見る会』に反社会的勢力の関係者が参加していたと指摘しています。あなたは、誰の推薦でどのような人物が『桜を見る会』に招待されていたのか、政府は明らかにすべきだと思いますか」との質問に対しては、「明らかにすべきだ」64%、「明らかする必要がない」21%で、これも「すべき」が「必要ない」の3倍に上った。
(4) 「『桜を見る会』の招待者名簿を取りまとめている内閣府は、野党の議員から国会で『桜を見る会』に質問を受けたその日に名簿をシュレッダーで廃棄していました。政府は廃棄と国会質問は一切関係がないと説明していますが、この説明に納得できますか」との質問に対しては、「納得できる」13%、「納得できない」72%で、「できない」が「できる」の5倍強となった。女性は9%対72%で8倍となった。

 いずれの回答も政府への批判が圧倒的であり、否定側の回答が肯定側の回答の3倍から6倍(女性は5倍から8倍)に達している。問題は「桜を見る会」の疑惑に対する不信感がこれほど大きいにもかかわらず、安倍首相夫妻による国政私物化の真相究明を妨げている自民・公明・維新の与党支持率がいっこうに下がらないことだ。毎日新聞の与党支持率は、自民36→36%、公明3→3%、維新4→4%、合計43→43%と微動もしていない。一方、野党支持率は、立民10→8%、国民1→1%、共産3→4%、社民1→0%、れいわ1→2%、合計16→15%と却って低下している。これは「支持政党なし」が34→35%とほとんど変わらないためだが、それにしても与野党支持率の差が3倍もあるのでは話にならない。

他方、時事通信がそれから1週間後の2019年12月6~9日に実施した世論調査によると、安倍内閣支持率は40.6%(▲7.9ポイント)、不支持率35.3%(△5.9ポイント)となり、支持・不支持率がかなり接近している。首相主催の「桜を見る会」をめぐり、安倍首相が多数の後援会関係者を招いていたことや、マルチ商法を展開したジャパンライフの元会長も招待されていたことなどが批判を浴び、支持率に影響したとみられる―と同社は分析している。

これを時事通信調査の時系列でみると、今回の内閣支持率の下落幅の大きさ(▲7.9ポイント)は2018年3月以来のことだという。前回は、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん問題が国会の焦点となっていた時のことで、支持率は40%割れの39.3%(▲9.4ポイント)、不支持率は40.4%(△8.5ポイント)と支持・不支持が逆転した。いずれも安倍首相絡みの不正隠しを、与党・官僚が総ぐるみで行ったことが背景となっている。今回は支持・不支持が逆転するまでに至っていないが、それでも下落幅の大きさは注目に値する。

時事通信調査のもう1つの大きな特徴は、自民支持率が前月比で23.0%(▲7.1ポイント)と大幅に下落したことだ。2018年3月の自民支持率は25.2%(▲3.3ポイント)だから、自民支持率が20%台前半に落ち込んだことは注目に値する。与党総ぐるみで安倍首相の不正を隠し、野党の真相解明を妨げるために国会延長に応じず、審議を拒否したことが、国民から激しく批判されているのである。安倍首相はもはや「死に体」と見なされているので、今後の政治情勢にとっては自民支持率の下落の影響の方が大きい。次の総裁を誰に代えても自民支持率が下落していれば、選挙戦は著しく困難になるからである。

これに対して、野党支持率の方は相変わらず低迷している。立憲3.8%、共産2.0%、れいわ0.7%、国民0.6%、社民0.2%、全部足しても僅か7.3%でほとんど動きがない。ただその一方で、注目されるのは今回の6割にも及ぶ「支持政党なし」の急増ぶりだろう。「支持政党なし」は61.1%(△5.6ポイント)となり、今年3月以来の60%台に乗った。これは、自民離れ層が「支持政党なし」に移行したものと思われ、今後の政治情勢が極めて流動的であることを物語っている。野党各党がこれから「政党支持なし層」をどれだけ取り込めるか、そこに安倍内閣打倒の全てが掛かっていると言ってもいい。

これまで安倍政権が比較的安泰だったのは、野党が押しなべて弱体化している一方、自民支持層が岩盤のように分厚く安定しているからだと言われてきた。いかなる政治状況においても自民を支持する保守固定層が常に3~4割台を占め、野党の進出を許してこなかったからだ。ところが、安倍政権の長期化による腐敗の極みが「身内政治=国政の私物化」という形で顕わになり、それが官僚機構まで巻き込んで国の統治機構の根幹が侵される事態(いわゆる「忖度」行政による公文書捏造や破棄など)にまで浸透してきたことは、さすがの保守固定層においても〝自民離れ〟を引き起こさざるを得なかったのである。

 内閣支持率と自民支持率が〝今年最大の下げ幅〟となったことに関して、時事通信は次のように分析している。
「政権内では、なおくすぶる首相主催『桜を見る会』をめぐる問題が直撃したとの見方は強く、反転へのきっかけがつかめない状況に危機感がにじむ。首相官邸幹部は(12月)13日、支持急落に関し『ずいぶん下がった』と深刻に語った。自民党幹部は『やはり桜が大きかった』と指摘した。11月8日に国会で取り上げられて以降、『桜』問題は拡大を続けた。首相後援会や首相夫人の昭恵氏の関与、共産党が名簿提出を求めた日の廃棄、反社会的勢力とされる人物の参加などが相次いで指摘された。10月に2閣僚が辞任しても支持率は堅調だったが、『桜』問題は野党が連日追及、メディアも大きく取り上げたことが響いたとみられる。別の自民党幹部は『桜ももちろんだが、長期政権のおごりが原因だ。緊張感がない』と述べ、政権の緩みに警鐘を鳴らした」
「自民党内には、支持率低下は『今が底』(参院幹部)、『3割台にならなければ大丈夫』(中堅議員)と強がる声もある。ただ、内閣支持率に連動して自民党支持率が大きく下落したのは今年初めてのケースだ。党関係者は『解散は当分できない。これでやれば自爆だ』と語る。一方、世論調査では『支持する政党はない』が前月比5.6ポイント増の61.1%に上った。野党各党の支持率は横ばいで、自民党から離れた支持は野党に向かわなかったとみられる。立憲民主党の福山哲郎幹事長は『無党派層の支持を得るような発信をしていく』と強調した。公明党からは『(支持急落は)桜が響いているが、またすぐ上がるだろう。野党も全然伸びていない』(幹部)との楽観論も出ている」

 このように、与党内でも時事通信調査の結果に関しては議論が大きく分かれている。内閣支持率が「今が底」で「またすぐ上がる」と見るのか、それとも自民党支持率の下落と連動して本格的な下落段階に入るのか、目下のところはまだ先が見えてこない。その回答が、果たして12月中旬(12月14、15両日)に行われた共同通信調査と産経調査の結果を通して得られるのかどうか、確かめてみたい。(つづく)

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