2019.12.26 安倍内閣支持率下落は一時的現象か
本格的下落のはじまりか(その3)

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

12月14、15両日に行われた共同通信調査では、第3期の「内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率が下がる」傾向が本格化しつつあることが明らかになった。内閣支持率は「支持」48.7→42.7%(▲6.0ポイント)、「不支持」38.1→43.0%(△4.9ポイント)と不支持が支持を上回って逆転した。また、自民支持率も41.8→36.0%(▲5.8ポイント)と時事通信(▲7.1ポイント)に次ぐ下落幅となった。この傾向を分析した京都新聞は、次のように伝えている(2019年12月16日)。
「共同通信社の世論調査で内閣不支持率が42.7%へと6.0ポイント下落し、11月の前回調査と合わせた下げ幅は11.4ポイントに達した。不支持率が僅差で上回り、調査結果からは『桜を見る会』問題で安倍晋三首相ら政権幹部への有権者の不信感が増幅している現状が浮かぶ。(略)『気を引き締めないといけない。自民党支持率にも影響し始めている』。首相周辺は取材に対し、危機感を強調した。内閣支持率と連動するように、自民党支持率も5.8ポイント減の36.0%に下がっており、桜を見る会問題が自民党のイメージ悪化に波及したとの認識を示した形だ」

今回の共同通信調査の特徴は、安倍政権が末期に近づきつつあるとの認識から、「桜を見る会」の疑惑ばかりでなく「安倍首相の下での憲法改正」「安倍首相の総裁4選」「日本経済の先行き」など国政の重要課題についても幅広く取り上げていることだ。憲法改正については「賛成」31.7%、「反対」54.3%と前回より差が開き、総裁4選については「賛成」28.7%、「反対」61.5%といずれも賛成は3分の1にも満たない。日本経済の先行きに至っては「不安+ある程度不安」が87.9%と圧倒的比重を占めている。もはや政権の舵取り役として「安倍政権は御用済み」という世論が、国民の大勢を占めてきていると言える。

産経調査もまた、内閣支持率が「支持」45.1→43.2%(▲1.9ポイント)、「不支持」37.7→40.3%(△2.6ポイント)と接近しており、不支持率が40%を超えたのは今年3月以来9カ月ぶりだという。一方、政党支持率の方は大きな変化がなく、共同通信調査のような自民支持率の下落は見られず30%台半ばで安定している。ただ、これまで安倍首相に憲法改正を強く迫ってきた産経紙としては、内閣支持率の下落が国政の課題達成を困難にしていることが心配でならないらしく、この点に大きな紙面を割いている。
「世論調査で、首相主催の『桜を見る会』への招待者選定をめぐる安倍晋三首相の説明について、『納得できない』との回答が74.9%に上った。国民の根強い不信感は安倍内閣の支持率や憲法改正の賛否にも影響しているとみられ、ボディブローのように政権の足元を脅かしつつある。(略)女性の方が安倍政権に厳しい傾向は、内閣の支持・不支持率にも表れている。女性では、40代を除く全ての年代で『支持しない』が『支持する』を上回った。50代では47.3%が『支持しない』と回答し、『支持する』37.8%を約10ポイント上回った」

共同通信調査と産経調査に共通することは、「内閣不支持上回る、政権不信感『桜』で増幅」(京都新聞)や「首相に『桜』で不信感、改憲賛否にも影響」(産経新聞)との見出しにも見られるように、もはや国民の安倍政権に対する不信感が頂点に達し、それも女性の不信感がもはや修復不可能なレベルに達しているということだ。この事態を安倍政権に近いジャーナリストはどう見ているのだろうか。毎日新聞特別編集委員の山田孝男氏は、『風知草』(毎日新聞コラム、2019年11月18日)で次のように語る。
「時ならぬ桜騒動は、身内に厚く、問い詰められれば強弁――という、憲政史上最長政権の〈不治の病〉再発を印象づけた。見過ごされていた首相の公私混同、政権の慢心を丹念に調べた共産党の追及は鮮やかだった。これを小事と侮れば政権は信頼を失うが、『桜を見る会』の運営が天下の大事だとは思わない。大嘗祭もつつがなく終わり、令和への転換が進む。世界激動の今日、国際的な課題を顧みず、観桜会が『最大の焦点』になるような国会のあり方自体、改める時ではないか」

この主張はテレビでも盛んにコピーされ、少なくないキャスターやタレントからも同様のメッセージが発信されている。天下国家の大事を論じなければならない国会が、こんな些末なことに何時までもかかわっていてよいのか――、一見尤もらしい主張である。しかし、事の本質は山田氏の前半の指摘にあるのであって、後半の主張にあるのではない。国民は「桜を見る会」疑惑の中に安倍首相の宰相としての「不治の病=公私混同・身びいき・えこひいき・強弁・居直り・すり替え・屁理屈・嘘つき・逃げ回り...」に気付き、もう嫌だと言っているだけのことなのである。安倍夫妻のような「チャチな男とノーテテンキな女」に6年間もダマされてきたことを嘆き、そして怒り、心の底から嫌気がさしているだけのことなのである。

同じ毎日新聞のコラムでも、土曜サロンの「松尾貴史のちょっと違和感」(2019年12月7日)の方がはるかに的を射ている。
「この案件は関係者が安倍夫妻、副総理、官房長官、内閣府、自民党関係者、安倍晋三後援会、ホテルニューオータニ、そして招待者1万8000人というおびただしさなので、ウソで蓋をしようとすればするほど、つじつまの合わないところが出てきて疑惑が数珠つなぎに引っ張り出される構造になっている。森友学園や加計学園の疑惑は何となくほとぼりが冷めているだけなので、もしこの桜を見る会についてのスキャンダルが長引けば、さらに政権の体質自体が問題であることがどんどん顕在化して、ダメージは大きくなっていくだろう」

「桜を見る会」疑惑の本質は、松尾氏が指摘する通り、まさに安倍政権の〝体質〟の問題なのである。安倍首相夫妻の公私混同・身びいきの性癖が「国政の私物化」をもたらし、天下国家の大事を歪める根底(土台)となっているからだ。この土台を取り換えることなく、新しい時代を迎えることはできないし、国際的な課題はおろか人類史的な課題にも向き合うこともできない。

事実、12月15日に閉幕した第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、グテーレス事務総長が自然災害の頻度が増し、人的、経済的な被害が大きくなっているとして、「気候変動は長期的な問題ではない。今まさに私たちは危機に直面している」と指摘し、「各国の今のままの努力では不十分なのは明らかだ。足りないのは政治的な意思だ。会議では各国に責任感とリーダーシップを見せてもらいたい。約束を引き上げるような明確な行動を期待している」と述べたにもかかわらず、日本代表の小泉環境相は何一つ温暖化対策への積極的な取り組みを示すことができなかった(各紙、2019年12月16日)。

私たちは、もうそろそろ「みみっちい首相へ別れの手紙」を書く時が来たのであり(朝日新聞「多事奏論」、編集委員・高橋純子、2019年12月18日)、古い瘡蓋(かさぶた)を取り除いて新しい時代を迎える時が来たのである。

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