2020.02.11  米国よる低出力核弾頭の潜水艦配備に反対
          平和アピール七人委が緊急の訴え

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 世界平和アピール七人委員会は2月10日、「米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備に反対する」と題するアピールを発表した。米国防総省がこのことを発表したのは2月4日だが、七人委はこの措置はこれからの世界政治に極めて深刻な影響を与えかねないとして、「配備反対」の緊急アピールを出したものだ。

 アピールによれば、七人委は、米国防総省が「潜水艦に低出力の核弾頭を実戦配備したことで米国と同盟国がいかなる攻撃を受けても速やかに応じられる態勢が整ったので、抑止力が高まった」としていることを重視する。そして、こうした米国防総省の言明を「いかなる場合にも速やかに対応できるということは、先制攻撃にも使えることを意味する」「米国が非核兵器攻撃に対して核兵器を使うことがあるとの政策を持ち、核兵器の第一撃も否定していないことを考えれば、今回の措置は明らかに核兵器使用の危険性を増大させるものである」と憂慮する。

 こうした危惧の上に立って、アピールは「核兵器は非人道的であり、いかなる場合の使用と威嚇も禁止すべきであることは、被爆者をはじめとする日本国民大多数の考えであり、世界各地の核実験の被害者や核兵器禁止条約の賛同国をはじめとするグローバル市民社会の世論でもある」「米原子力潜水艦への新たな配備は、今年発効から50年を迎える核不拡散条約の核兵器保有国の義務にも明白に違反するものであり、決して見過ごすことができるものではない」と訴えている。

 なお、米国防総省が潜水艦に実戦配備した新型の核弾頭について、七人委アピールは「低出力核弾頭」としているが、日本のメデイアでは「小型核弾頭」としているところがある。

 世界平和アピール七人委は、1955年、物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは139回目。

 現在のメンバーは武者小路公秀(国際政治学者、元国連大学副学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙論・宇宙物理学者、総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家、東京音楽大学客員教授)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授、宗教学)の7氏。

 アピールの全文は次の通り。

米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備に反対する
世界平和アピール七人委員会

 私たち世界平和アピール七人委員会は、米国原子力潜水艦への低出力核弾頭の初めての実戦配備が核兵器使用の危険性を高めることを危惧するので、配備に反対し、米国を含むすべての核保有国が核兵器の削減と廃棄への道を進むことを求める。
 米国防総省は、低出力の核弾頭W76-2を潜水艦発射弾道ミサイルに装備していることを2月4日に初めて発表した。これはトランプ政権の2018年の「核態勢見直し」の方針に沿うものであって、アメリカ科学者連盟のサイトに1月29日に掲載された論文「米国が新たに低出力潜水艦用核ミサイルを配備」と符合するものである。
 この論文などによれば、米国が保有する14隻の戦略原子力潜水艦はそれぞれ20基の弾道ミサイルを搭載してきたが、この弾頭は爆発力が90キロトンの水爆W76-1、あるいは455キロトンの水爆W88だった。これらの原子力潜水艦の一つであり大西洋岸の基地に所属するテネシーに、昨年5キロトンといわれる低出力核弾頭W76-2を2基初めて装備した。W76-2は、W76-1を改造して水爆の起爆装置としての原爆部分だけを爆発させるものだとされる。そして昨年末から「テネシー」が隠密裏の哨戒任務につき、1月11日に帰港したというのである。
 米国防総省は、米国と同盟国がいかなる攻撃を受けても速やかに応じられる態勢が整ったので、抑止力が高まったという。
 しかし、潜水艦の隠密性は地上発射ミサイルより、また戦略爆撃機よりはるかに高い。いかなる場合にも速やかに対応できるということは、先制攻撃にも使えることを意味する。これまでも判断の誤りがあったこと、さらに米国が非核兵器攻撃に対して核兵器を使うことがあるとの政策を持ち、核兵器の第一撃も否定していないことを考えれば、今回の措置は明らかに核兵器使用の危険性を増大させるものである。そして広島・長崎を攻撃した原爆より爆発力が小さいといっても、いったん使用されれば放射性物質は全世界を覆うことになり、爆発力のより大きい核兵器の使用への道をひらくことにもなる。
 核兵器は非人道的であり、いかなる場合の使用と威嚇も禁止すべきであることは、被爆者をはじめとする日本国民大多数の考えであり、世界各地の核実験の被害者や核兵器禁止条約の賛同国をはじめとするグローバル市民社会の世論でもある。昨年日本を訪問したローマ教皇フランシスコの訴えもこれと軌を一にするものであったことは記憶に新しい。米原子力潜水艦への新たな配備は、今年発効から50年を迎える核不拡散条約の核兵器保有国の義務にも明白に違反するものであり、決して見過ごすことができるものではない。
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