2020.04.22 平和運動、脱原発運動の集会が軒並み中止に
コロナウイルス禍の余波で

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、反核平和、護憲、脱原発を掲げる集会・デモが軒並み中止に追い込まれている。これらの社会運動に関わる団体にとって、集会・デモは自らの理念を市民に訴えるための最大の示威行為であるだけに、コロナウイルス禍のためにそれを中止せざるを得ないという事態は大変な打撃で、各団体は集会・デモに代わる運動形態の模索に苦慮している。

 例年、3月から5月にかけての時期は、社会運動団体にとって、最も運動に力を入れるシーズンだ。なぜなら、3月は東日本大震災に伴って東京電力福島第1原子力発電所が世界最悪レベルの事故を起こした月であり、5月には日本国憲法(平和憲法)の制定を記念する「憲法記念日」があるからである。それだけに、社会運動団体は毎年、これらの点を踏まえて、それぞれ運動を盛り上げるための集会やデモに力を注いできた。加えて、今年は広島・長崎に原爆が投下されてから75年になるため、「被爆75年」を機に原水爆禁止運動を再び盛り上げようと、関係団体はさまざまな企画を計画していた。

 しかし、3月に入ると、日本でも新型コロナウイルスに感染する人たちが増え始めた。このため、人が大勢集まる集会やイベントは集団感染の場となるのでは、との見方が社会運動団体の間で急速に広がり、感染者を出すまいとの決断から主要な集会やイベントを相次いで中止する事態となった。

 反核平和・護憲・脱原発関係で、まず中止になったのは、3月21日に東京・亀戸中央公園で開く予定だった「さようなら原発全国集会」である。主催は「さようなら原発一千万署名市民の会」。同会は福島第1原発事故(2011年3月11日)の直後に脱原発の実現を目指してスタートした市民団体で、以来、毎年3月に東京都内で「全国集会」を開いてきたが、今年はやむなく中止せざるをえなかった。
 同会は、来年に10万人規模の「全国集会」を計画している。というのは、来年が福島第1原発の事故から10周年に当たるからである。そこで、今年の集会をその“前哨戦”と位置づけていた。それだけに、中止を決めた3月9日に発表された、同会呼びかけ人・鎌田慧さん(ルポライター)の声明は「安倍政権が原発の再稼働を狙っている折り、コロナウイリス問題で集会を中止するのは痛恨の思い」と述べていた。

 コロナウイリス禍は国際政治にも打撃を与えた。その一つが、4月27日から5月22日までニューヨークの国連本部で開かれる予定だった核不拡散条約(NPT)再検討会議が延期を余儀なくされたことである。NPT再検討会議は5年ごとに開かれることになっているだけに、今回会議の延期は核軍縮問題の進展に影響が出そうだ。

 NPT再検討会議の延期は、内外の原水爆禁止関係団体にも影響を及ぼした。なぜなら、日本の原水爆禁止関係団体と国際NGOが、NPT再検討会議に連動して4月24、25の両日、ニューヨークで「原水爆禁止世界大会ニューヨーク」を開こうとしていたからである。
 これには、日本の原水爆禁止日本協議会(原水協)、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が代表団を派遣することになっていた。日本生活協同組合連合会(日本生協連)もニューヨークで被爆の証言活動を予定していた被団協代表団をサポートするため生協組合員の代表団を派遣することにしていた。
 が、これらの計画も、NPT再検討会議が延期になったことで、水泡に帰した。「原水爆禁止世界大会ニューヨーク」は中止となり、各団体も代表団の派遣を取りやめた。
 その代わりに、世界大会実行委員会は4月25日、インターネット上で「オンライン世界大会」を開催する。

 極めつけは、来たる5月3日(祝日)に東京・江東区有明の東京臨海広域防災公園での開催が予定されていた「平和といのちと人権を!5・3憲法集会」が中止になったことだ。
 これは護憲関係団体が憲法記念日に統一して開く恒例の集会で、今年は6回目。第1回は2015年に横浜市の臨海パークで開かれ、約3万人が集まったが、翌2016年から会場を東京臨海広域防災公園に移した。以来、参加者が年々増え、昨年(2019年)は6万5000人にのぼった。
 護憲関係団体は今年2月から「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」を開始しており。関係者は、5・3憲法集会を署名運動に弾みをつけるイベントにしたいと考えていた。それだけに、関係者は「まことに残念」と語る。
 集会中止に伴い、集会実行委員会は、3日午後1時から、国会正門前での各界代表のスピーチをインターネットで中継する。

 今夏の反核平和運動もコロナウイルス禍で様変わりしそうだ。
 例えば、原水協は、8月に開く予定の2020年原水禁止世界大会について、従来通りではない形での開催を検討することになった。従来通りの開催形態とは、内外の大勢の参加者による集会だ。ところが、今年はコロナウイルス禍で参加者が一同に会せなくなるおそれがあるうえ、海外代表も日本への入国が出来ない可能性があり、これまでと同じやり方では世界大会を開けない場合を想定しなければ、と判断したという。いまのところ、世界大会をオンライン化することも考えられているようだ。

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