2020.05.21  コスタリカ(Costa Rica)に学ぶ その1
          韓国通信 NO638
 
小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)
         
中南米コスタリカは、パナマとニカラグアに接し、人口500万人たらずの面積5万1千キロ㎡の小さな国である。希少な鳥類の存在と美しい自然で知られる。旅番組で紹介されることがあるが、観光地の紹介が中心で、世界で数少ない軍隊を持たない国として紹介されることはあまりない。一度行ってみたい国のひとつ。時間はあるが貧乏な私にはなかなか手が届かない。
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『週刊金曜日』1279号でジャーナリスト伊藤千尋氏がコスタリカのコロナ事情を紹介している。
伊藤氏は元新聞記者。これまで氏の記事や講演をとおして、コスタリカを身近に感じてきた。サッカーが強く、日本人のファンも多い。伊藤氏からはコスタリカを紹介するというより、学ぶという姿勢が鮮明に伝わってくる。

コスタリカのコロナ感染者は742人、死亡者6人、回復者399人である(5月4日現在)。約1400万人の東京の感染者が約4600人、死者141人(5月5日現在)と比べてみても断然少ない。

<感染者が少ない理由> 
コスタリカ政府の対応は迅速で厳しいものだった。3月初めに最初の感染者が発生すると直ちに大統領は早々と非常事態を宣言し、入国制限、学校閉鎖、夜間の外出禁止に踏み切った。大統領は自分の言葉で、連日国民に語りかけ危機の克服を訴えた。我慢を求めるだけでなく、医療、生活、経済を具体的に保証する有言実行だった。
国民はそれを冷静に受け止め政府を信頼したという。  
日本で最初のコロナ感染者が出たのは1月。政府も国民も中国の武漢に広がった新型コロナ感染を他人事のように考え、オリンピック一色だった。オリンピック開催を断念したのは感染者1383人死者43人の時点だから、危機感はなかったに等しい。コスタリカ政府の迅速な対応は驚くばかりだが、厳しい規制を国民が受け入れた理由は、政府に対する国民の信頼度が日本とはまるで違うという。「日本は国民の健康ではなく、経済の落ち込みを心配している。コスタリカ政府は国民が必要とすることを実行する。こちらのほうが正しい民主主義だ」とコスタリカ在住の日本人の感想を引用して、日本のはるか先を行く人権国家コスタリカを紹介している。

<大統領・国会議員の任期は1期4年>
政府と国民の信頼関係がなければ何事もうまくいかないのは当然だが、伊藤氏はさりげなくコスタリカでは大統領、国会議員に再選がないため、政治に対する安心感があると指摘する。長期政権による独裁化の不安がない。どんなに優秀な指導者であっても任期満了で大統領も議員もやめなければならない。もし日本ですべての議員が1期4年で辞めるとしたらどうなるのか想像したらいい。単なる制度の違いというより、政治と政治家に対する考え方がまるで違う。
同じ人間がいつまでも政治をする必要はないとコスタリカの人たちは考えている。政治には継続が必要、長期安定政権が好ましいと考えるわが国とは真反対である。地球の裏側に位置するコスタリカ。偶然にも軍隊を持たない憲法を持つという共通点も興味深い。
自公政権が支える「安倍一強体制」の弊害がコロナ騒ぎで明らかになった。国民不在の長期政権。コスタリカの1期4年制がとても新鮮に映る。
長期政権を支える世襲議員たち、彼らは国会議員の約半数を占める。本人の能力、人格とは関係なく、祖父や父親の「七光り」で議員になった彼らが、政治腐敗の温床となっている。マスクをしているだけの有象無象の政治家たち。コロナ騒ぎを奇貨として憲法をかえる絶好のチャンスとうごめく政治家たち。彼らの頭には外出、仕事もできず不安に駆られている国民の存在は全く見えていないようだ。
コスタリカの大統領と国会議員たちの活躍ぶりが目に浮かぶ。「人類の目的は人々が幸せになること」と語った南米の最貧国ウルグアイのムヒカ大統領を思い出す。
収賄容疑で逮捕されても、夫婦揃って選挙違反に問われても議員の席にしがみつくほど日本の国会議員はオイシイ仕事になってしまった。すべての国会議員は一期4年でやめさせたい。
コロナ後の社会。特に日本には大きな犠牲と深い傷跡が残るはずだ。真剣な検証と反省が必要になる。コスタリカを始め被害を最小限に抑えた世界各国の成功例は大いに参考になるはずだ。コスタリカから学ぶことも多い。

<コスタリカから学ぶ>
世界第三位の経済大国が膨大な軍事費を使い、教育、福祉、医療を切り捨ててきたことが厳しく問われなければならない。
アメリカに追随して政治と経済を歪め、貧困を生みだした責任も問われる。
コスタリカの一人当たりの所得は日本の3分の1位以下という貧しい国だが、「コロナを乗り切り、もっと豊かな国にしよう」という弱冠40才のバラード大統領の呼びかけに耳を傾けた国民。政治不信が渦巻く日本ではあり得ないことだ。首相の姿も見たくない、声も聞きたくない人が急増している。
コスタリカは国際紛争を外交の力で解決してきた。戦争より話し合いを重視する平和国家。従って軍事費はゼロ。軍事費を教育にまわし、健康で文化的な国づくりを進める福祉国家が評価され、国連の調査「幸福度ランキング」は世界15位、日本は無残にも62位(2020年版)。コスタリカの人から同じ平和憲法を持つ日本に頑張って欲しいと言われても顔があげられない。
生産性の向上、働き方を変えろといわれても、今後大量に生まれる失業者はどうすればいいのか。途方に暮れ、今を生きられない人たち。老後の不安が募る。今回のコロナ禍は幸福について私たちが考える最後の機会なのかも知れない。
最後にまたもや世界ランキングである。「報道の自由度ランキング」。わが国は先進国中で最低の66位、韓国の42位がよく知られているが。コスタリカは7位である。今回のコロナ問題でコスタリカ政府は隠し事をせず率直に国民に語りかけたと言われる。今回、NHKは政府の指定公共機関に指定され、形式的にも実質的にも政府の広報機関となった。公正さと批判力をもたない報道機関はNHKとともに退場するほかない。
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