2008.10.15
アメリカ大統領選、民主党オバマ氏圧勝か
経済危機深刻化で共和党マケイン氏失墜
終盤を迎えたアメリカ大統領選挙では、民主党候補バラク・オバマ上院議員の勝利が確実な情勢である。連日行われている世論調査でオバマ候補は共和党候補ジョン・マケイン上院議員をリードし続けている。11月4日の投票日までにこうした形勢が逆転することは考えられず、むしろオバマ氏圧勝という結果が出るような予感がする。
9月中旬に米大手投資銀行リーマン・ブラザーズ社が破綻したことで一挙に重大化した金融危機は、あれよあれよという間にグローバル経済危機に拡大、世界中の株価は大暴落を続けた。この危機が8年間政権の座にあったブッシュ共和党政権の信用を失墜させたのは当然であり、その結果がオバマ氏に有利、マケイン氏に不利に働いた。さらに、マケイン氏がリーマン破綻後に「米経済は健全だ」と頓珍漢なコメントをして経済音痴ぶりを自ら暴露してしまい、共和党支持者の失望を買ったことも大きい。
年初から民主党大統領候補の座を争った予備選で、オバマ氏が対抗馬のヒラリー・クリントン上院議員を破り、08大統領選挙がマケイン対オバマの対決となった6月以来、世論調査ではずっとオバマ氏がマケイン氏をリードしてきた。9月初め共和党大会でマケイン氏が副大統領候補に予想外の女性アラスカ州知事サラ・ペイリン氏(44)を指名、このサプライズ人事が「ペイリン旋風」を巻き起こした。この段階でマケイン=ペイリン組は初めて民主党のオバマ=バイデン組をリードした。8月末の党大会で民主党副大統領候補に指名されたのは上院議員歴35年のジョー・バイデン上院外交委員長(65)だったが、これは予想通りの人事だった。
これより先、北京五輪が始まった8月8日に火を噴いたグルジア紛争でマケイン氏がロシアの武力行使を糾弾する激しい演説を行ったのに対し、折から出身地ハワイで夏休みを楽しんでいたオバマ氏ははっきりしたコメントを出さなかった。この機会を捉えて、軍人出身であることで、アメリカ軍最高司令官つまり大統領の最適任者であることを訴えてきたマケイン氏の人気が高まったことも事実だ。しかし9月中旬にウォール街に端を発したグローバル金融危機が本格化した時点で、マケイン氏の経済音痴ぶりが暴露されたことをきっかけに、オバマ陣営は再び優位を取り返した。
さらにこのころ米ABCテレビとのインタビューの場で、ペイリン氏が米国の2003年イラク侵攻作戦の根拠となった「ブッシュ・ドクトリン」(「悪の枢軸」に対する先制攻撃論)に無知だったことが明るみに出て、副大統領候補として力量不足ではないかとの見方が広がり、ペイリン効果はしぼんでしまった。さらに10月10日には、アラスカ州調査委員会でペイリン知事が妹の前夫の警察官を解雇するため、職権を乱用したとの結果が発表され「ペイリン効果」はいっそう低下した。
伊藤力司 (ジャーナリスト)
終盤を迎えたアメリカ大統領選挙では、民主党候補バラク・オバマ上院議員の勝利が確実な情勢である。連日行われている世論調査でオバマ候補は共和党候補ジョン・マケイン上院議員をリードし続けている。11月4日の投票日までにこうした形勢が逆転することは考えられず、むしろオバマ氏圧勝という結果が出るような予感がする。
9月中旬に米大手投資銀行リーマン・ブラザーズ社が破綻したことで一挙に重大化した金融危機は、あれよあれよという間にグローバル経済危機に拡大、世界中の株価は大暴落を続けた。この危機が8年間政権の座にあったブッシュ共和党政権の信用を失墜させたのは当然であり、その結果がオバマ氏に有利、マケイン氏に不利に働いた。さらに、マケイン氏がリーマン破綻後に「米経済は健全だ」と頓珍漢なコメントをして経済音痴ぶりを自ら暴露してしまい、共和党支持者の失望を買ったことも大きい。
年初から民主党大統領候補の座を争った予備選で、オバマ氏が対抗馬のヒラリー・クリントン上院議員を破り、08大統領選挙がマケイン対オバマの対決となった6月以来、世論調査ではずっとオバマ氏がマケイン氏をリードしてきた。9月初め共和党大会でマケイン氏が副大統領候補に予想外の女性アラスカ州知事サラ・ペイリン氏(44)を指名、このサプライズ人事が「ペイリン旋風」を巻き起こした。この段階でマケイン=ペイリン組は初めて民主党のオバマ=バイデン組をリードした。8月末の党大会で民主党副大統領候補に指名されたのは上院議員歴35年のジョー・バイデン上院外交委員長(65)だったが、これは予想通りの人事だった。
これより先、北京五輪が始まった8月8日に火を噴いたグルジア紛争でマケイン氏がロシアの武力行使を糾弾する激しい演説を行ったのに対し、折から出身地ハワイで夏休みを楽しんでいたオバマ氏ははっきりしたコメントを出さなかった。この機会を捉えて、軍人出身であることで、アメリカ軍最高司令官つまり大統領の最適任者であることを訴えてきたマケイン氏の人気が高まったことも事実だ。しかし9月中旬にウォール街に端を発したグローバル金融危機が本格化した時点で、マケイン氏の経済音痴ぶりが暴露されたことをきっかけに、オバマ陣営は再び優位を取り返した。
さらにこのころ米ABCテレビとのインタビューの場で、ペイリン氏が米国の2003年イラク侵攻作戦の根拠となった「ブッシュ・ドクトリン」(「悪の枢軸」に対する先制攻撃論)に無知だったことが明るみに出て、副大統領候補として力量不足ではないかとの見方が広がり、ペイリン効果はしぼんでしまった。さらに10月10日には、アラスカ州調査委員会でペイリン知事が妹の前夫の警察官を解雇するため、職権を乱用したとの結果が発表され「ペイリン効果」はいっそう低下した。
世論調査でリードされ続けたマケイン陣営は10月初めから、オバマ氏に対する中傷攻撃を開始した。ひとつは、民主党予備選段階で問題化し、一応決着していたジェレミア・ライト牧師とオバマ氏の関係を蒸し返したことだ。ライト師はオバマ夫妻の結婚式を司祭したり、オバマ家の二人の娘の洗礼式を行うなどオバマ家導師の役割を務めたシカゴの黒人教会の牧師。一躍脚光を浴びたライト師は人種問題で激烈な白人攻撃をしたり、これまでのアメリカの横暴の歴史が「9・11テロ」を招いたなどの言辞を辞さなかった。オバマ氏は予備選段階で、ライト師との絶縁を宣言してこの問題を収拾した。
マケイン陣営が次にオバマ氏人格攻撃の材料に使ったのが、1960-70年代のベトナム反戦運動の時代に最も過激だったウェザー・アンダーグラウンド(Weather Underground)という団体の指導者だったビル・エアーズ氏とオバマ氏の関係だ。ウェザー・アンダーグラウンドは反戦を強烈に訴える手段として、建造物などに爆弾を仕掛ける戦術を実行した。エアーズ氏はベトナム反戦運動から40年後の現在、イリノイ大学シカゴ校の教授である。マケイン陣営は、オバマ氏がかつて爆弾戦術まで使ったエアーズ氏と深い関係があるとするTVコマーシャルを流し始めた。ペイリン氏に至っては選挙集会で「オバマ氏はテロリストの友人である」とまで発言した。
シカゴ大学の講師を勤めたことのあるオバマ氏とイリノイ大学シカゴ校の教授のエアーズ氏が、大学教授などが多く住むシカゴ知識人住宅街の隣人であることは紛れもない事実だ。また1990年代シカゴで教育関係のボランティア運動の場で、オバマ氏とエアーズ氏が協力し合う関係にあったことも、オバマ氏は認めている。しかしこのことをもって、過激な反戦運動の指導者だったエアーズ氏とオバマ氏が過激思想の同志だと思わせるTVコマーシャルは、取り込もうとした穏健な無党派層には逆効果だった。
さて、ウォール街発のグローバル金融・経済危機が深刻化する中で、1980年代のレーガン共和党政権がサッチャー英政権とともに広めた「市場原理主義」あるいは「ネオ・リベラリズム」(新自由主義)こそが危機を招いたのではないか、という分析が広がった。シカゴ大学のフリードマン教授が唱えた資本主義市場では「レッセ・フェール」(laissez faire)つまり自由放任を貫いて全てを「神の手」に任せば万事解決するというシカゴ学派の学説にそって、規制緩和を続けてきたレーガン政権、パパ・ブッシュ政権、そして現在のジョージ・ブッシュ政権の政策が破綻したのではないか。
ブッシュ大統領は、米最大手投資銀行ゴールドマン・サックスの会長からスカウトしたポールソン財務長官やアメリカ中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の進言に従って、金融機関が保有する不良債権を最高7000億ドル(約70兆円)まで買い取るという金融安定化法を上下両院で採択させ、資金不足に陥った金融機関に多額の公的資金を注入するなどとの緊急対策を打ち出して、現下の危機を脱出させようと大童だ。しかしシカゴ学派の理論では、ビジネスに失敗した企業は市場から消えるべきである。それなのに公的資金を危ない銀行や保険会社に流入させることなぞ、自由市場の原則に真っ向から反することではないか。ネオ・リベラルを標榜したブッシュ共和党政権の正当性は傷つき、マケイン氏の不人気を募らせた。
「ブッシュ・ドクトリン」で始めたアフガニスタンとイラクでの反テロ戦争が泥沼に陥っている中で、「100年に1度」とまで言われる深刻な経済危機はブッシュ共和党政権が招いたとされているのだから、マケイン陣営は辛い。世論調査でオバマ氏にリードされている上に、共和党が信奉してきた「市場原理主義」路線が破綻した以上、マケイン氏には寄って立つ瀬がなくなった。しかもオバマ氏の人格を傷つけようとしたエアーズ氏絡みのネガティブ・キャンペーンは失敗した。2004年の大統領選挙戦では、9月までリードしたケリー民主党候補を破ったのは、ベトナム戦争に従軍して勲章をもらったケリー氏の実像は憶病な指揮官官だったとするTVコマーシャルを流し続けた共和党の戦術の効果だったが、2008年には中傷戦術は成功していない。
さて11月4日の投票は一般選挙民がオバマ氏かマケイン氏のどちらかに投票するのだが、米国憲法で定められた大統領選挙法は、各州ごとに選ばれた選挙人による間接選挙によることになっている。ちまり正式にはアメリカ大統領は、全米50州から選ばれる総数538人の選挙人の投票でで決められ、538人の過半数である270人をどちらが獲得するかだ。50州のほとんどは、一般投票で勝利した側にその州の選挙人の全てを与える「総取り制」を採用している。だから選挙人の多い大州で勝つかどうかが重要だ。
伝統的に民主党は米大陸の東海岸と西海岸に広がる州で強く、共和党は中西部と南部に広がる保守的農村州で強い。つまり民主党、共和党はそれぞれ伝統的地盤を持っていて、勝負は無党派層を多く抱える激戦州、つまりその時の気分で民主党か共和党とか揺れ動くスウィング州(swing state)と呼ばれる激戦州をどちらが取るかである。10月6日現在で、CNNテレビ局が作成した分析によると、オバマ氏が260人の選挙人を確保したのに対しマケイン氏が獲得した選挙人は189人、どちらに転ぶか分からないスウィング州は99人の選挙人を数えている。
この激戦州は10月中旬段階で、フロリダ(選挙人27人)、オハイオ(同20人)、バージニア、ミズーリ、ウィスコンシン、コロラド、ネバダ、ニューハンプシャーの8州である。終盤の選挙戦勝負どころはこの8州に絞られてきたが、世論調査ではこの8州でもオバマ氏優位の傾向が強いという。
11月4日の投票日には大統領選挙だけでなく、2年ごとに3分の1ずつ改選される米連邦上院と、2年ごとに全議席が改選される米連邦下院の選挙、さらに一部の州知事選挙も同時に行われる。これまで述べたように共和党のマイナス要因が目立つ今回の選挙戦を通じ、2009年以降の米議会は上下両院とも民主党が優位に立つとの観測が一般的である。
以上列挙したように、今度の大統領選ではオバマ氏が圧倒的に優位に立っている。しかし唯一の不確定要素がある。それは言うもはばかりたいことだが、オバマ氏暗殺という突発異常事態が起こらないかという問題である。「アメリカの原罪」と言われる人種問題、事実上銃が野放しになっていること、ケネディ兄弟、マーチン・ルーサー・キング牧師、ブラック・パンサー指導者らが暗殺されたアメリカ現代史を顧みると、オバマ氏暗殺が絶対にないとは言い切れない。現在オバマ氏には「シークレット・サービス」(secret service)と呼ばれる大統領警護隊が、四六時中付き添っている。それでも民衆と接することで成り立つ選挙キャンペーンは、暗殺を試みようとする者にとってチャンスがある。オバマ暗殺事件が起こらないことを願いつつ。
マケイン陣営が次にオバマ氏人格攻撃の材料に使ったのが、1960-70年代のベトナム反戦運動の時代に最も過激だったウェザー・アンダーグラウンド(Weather Underground)という団体の指導者だったビル・エアーズ氏とオバマ氏の関係だ。ウェザー・アンダーグラウンドは反戦を強烈に訴える手段として、建造物などに爆弾を仕掛ける戦術を実行した。エアーズ氏はベトナム反戦運動から40年後の現在、イリノイ大学シカゴ校の教授である。マケイン陣営は、オバマ氏がかつて爆弾戦術まで使ったエアーズ氏と深い関係があるとするTVコマーシャルを流し始めた。ペイリン氏に至っては選挙集会で「オバマ氏はテロリストの友人である」とまで発言した。
シカゴ大学の講師を勤めたことのあるオバマ氏とイリノイ大学シカゴ校の教授のエアーズ氏が、大学教授などが多く住むシカゴ知識人住宅街の隣人であることは紛れもない事実だ。また1990年代シカゴで教育関係のボランティア運動の場で、オバマ氏とエアーズ氏が協力し合う関係にあったことも、オバマ氏は認めている。しかしこのことをもって、過激な反戦運動の指導者だったエアーズ氏とオバマ氏が過激思想の同志だと思わせるTVコマーシャルは、取り込もうとした穏健な無党派層には逆効果だった。
さて、ウォール街発のグローバル金融・経済危機が深刻化する中で、1980年代のレーガン共和党政権がサッチャー英政権とともに広めた「市場原理主義」あるいは「ネオ・リベラリズム」(新自由主義)こそが危機を招いたのではないか、という分析が広がった。シカゴ大学のフリードマン教授が唱えた資本主義市場では「レッセ・フェール」(laissez faire)つまり自由放任を貫いて全てを「神の手」に任せば万事解決するというシカゴ学派の学説にそって、規制緩和を続けてきたレーガン政権、パパ・ブッシュ政権、そして現在のジョージ・ブッシュ政権の政策が破綻したのではないか。
ブッシュ大統領は、米最大手投資銀行ゴールドマン・サックスの会長からスカウトしたポールソン財務長官やアメリカ中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の進言に従って、金融機関が保有する不良債権を最高7000億ドル(約70兆円)まで買い取るという金融安定化法を上下両院で採択させ、資金不足に陥った金融機関に多額の公的資金を注入するなどとの緊急対策を打ち出して、現下の危機を脱出させようと大童だ。しかしシカゴ学派の理論では、ビジネスに失敗した企業は市場から消えるべきである。それなのに公的資金を危ない銀行や保険会社に流入させることなぞ、自由市場の原則に真っ向から反することではないか。ネオ・リベラルを標榜したブッシュ共和党政権の正当性は傷つき、マケイン氏の不人気を募らせた。
「ブッシュ・ドクトリン」で始めたアフガニスタンとイラクでの反テロ戦争が泥沼に陥っている中で、「100年に1度」とまで言われる深刻な経済危機はブッシュ共和党政権が招いたとされているのだから、マケイン陣営は辛い。世論調査でオバマ氏にリードされている上に、共和党が信奉してきた「市場原理主義」路線が破綻した以上、マケイン氏には寄って立つ瀬がなくなった。しかもオバマ氏の人格を傷つけようとしたエアーズ氏絡みのネガティブ・キャンペーンは失敗した。2004年の大統領選挙戦では、9月までリードしたケリー民主党候補を破ったのは、ベトナム戦争に従軍して勲章をもらったケリー氏の実像は憶病な指揮官官だったとするTVコマーシャルを流し続けた共和党の戦術の効果だったが、2008年には中傷戦術は成功していない。
さて11月4日の投票は一般選挙民がオバマ氏かマケイン氏のどちらかに投票するのだが、米国憲法で定められた大統領選挙法は、各州ごとに選ばれた選挙人による間接選挙によることになっている。ちまり正式にはアメリカ大統領は、全米50州から選ばれる総数538人の選挙人の投票でで決められ、538人の過半数である270人をどちらが獲得するかだ。50州のほとんどは、一般投票で勝利した側にその州の選挙人の全てを与える「総取り制」を採用している。だから選挙人の多い大州で勝つかどうかが重要だ。
伝統的に民主党は米大陸の東海岸と西海岸に広がる州で強く、共和党は中西部と南部に広がる保守的農村州で強い。つまり民主党、共和党はそれぞれ伝統的地盤を持っていて、勝負は無党派層を多く抱える激戦州、つまりその時の気分で民主党か共和党とか揺れ動くスウィング州(swing state)と呼ばれる激戦州をどちらが取るかである。10月6日現在で、CNNテレビ局が作成した分析によると、オバマ氏が260人の選挙人を確保したのに対しマケイン氏が獲得した選挙人は189人、どちらに転ぶか分からないスウィング州は99人の選挙人を数えている。
この激戦州は10月中旬段階で、フロリダ(選挙人27人)、オハイオ(同20人)、バージニア、ミズーリ、ウィスコンシン、コロラド、ネバダ、ニューハンプシャーの8州である。終盤の選挙戦勝負どころはこの8州に絞られてきたが、世論調査ではこの8州でもオバマ氏優位の傾向が強いという。
11月4日の投票日には大統領選挙だけでなく、2年ごとに3分の1ずつ改選される米連邦上院と、2年ごとに全議席が改選される米連邦下院の選挙、さらに一部の州知事選挙も同時に行われる。これまで述べたように共和党のマイナス要因が目立つ今回の選挙戦を通じ、2009年以降の米議会は上下両院とも民主党が優位に立つとの観測が一般的である。
以上列挙したように、今度の大統領選ではオバマ氏が圧倒的に優位に立っている。しかし唯一の不確定要素がある。それは言うもはばかりたいことだが、オバマ氏暗殺という突発異常事態が起こらないかという問題である。「アメリカの原罪」と言われる人種問題、事実上銃が野放しになっていること、ケネディ兄弟、マーチン・ルーサー・キング牧師、ブラック・パンサー指導者らが暗殺されたアメリカ現代史を顧みると、オバマ氏暗殺が絶対にないとは言い切れない。現在オバマ氏には「シークレット・サービス」(secret service)と呼ばれる大統領警護隊が、四六時中付き添っている。それでも民衆と接することで成り立つ選挙キャンペーンは、暗殺を試みようとする者にとってチャンスがある。オバマ暗殺事件が起こらないことを願いつつ。
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