2020.07.04  今こそ脱米入亜へ
          韓国通信NO642

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 朝鮮半島の雲行きがあやしい。南北間の和解友好ムードが一変、3年前に逆戻りした感さえある。米朝交渉の行き詰まりが影を落としている。
 2017年、ほぼ同時期にトランプと文在寅は大統領に就任した。就任以降の朝鮮半島をめぐるアメリカ、韓国、北朝鮮の動きを追ってみた。
 トランプ大統領はオバマ前大統領とは対照的に国際協調路線からアメリカ第一主義へ急転換、外交的にもイランと北朝鮮への敵愾心をむき出しにした。CIAの金正恩暗殺計画が伝えられ、北朝鮮を「テロ支援国家」と糾弾し、もはや戦争は避けられない雰囲気だった。
 金正恩側がトランプを「老いぼれ」「狂った犬」「不倶載天の敵」「死刑に値する」と叫べば、トランプ側は「チビのロケットマン」「狂った男」と、子どもの喧嘩のような個人攻撃を浴びせたのは記憶に新しい。
 核攻撃の「準備はできた」と公言したトランプが突如2018年6月シンガポールで金正恩と会談を行い、世界を驚かせた。
 首脳会談で米朝の国交正常化、朝鮮半島の完全な非核化を目指す共同声明が発表された。
今こそ脱米入亜へ
 <写真/史上初の米朝首脳会談>

 歴史的な米朝会談の実現に大きく寄与したのは他でもない韓国の文在寅大統領だった。注目された2018平昌冬季オリンピックへ北の選手団が参加し、南北関係改善への期待が膨らんだ。
 オリンピックの余韻も冷めない4月27日、文在寅大統領は就任後初めて南北首脳会談に臨んだ。その模様は日本でも生中継され、韓国へ足を踏み入れた金正恩が文在寅を北に招じ入れた感動的な場面を憶えている人も多い。文在寅、金正恩両首脳は「板門店宣言」を発表。朝鮮戦争の終戦と平和協定の締結と朝鮮半島の非核化を約束した。さらに軍事境界線での敵対行為の中止、非武装地帯(DMZ)を「平和地帯」とすることが盛り込まれた。歴史を後戻りさせない、戦争の危機を回避、平和を誓いあった南北新時代の幕開けにふさわしいものだった。
 翌5月に再び板門店で南北首脳会談が開かれ、翌6月に上記米朝会談が開かれた。9月には文在寅が平壌を訪問。約半年の間に3回の首脳会談が開かれたのは前代未聞、南北の経済交流計画の青写真も示された。
 一方、米朝首脳会談は2019年2月にベトナムのハノイ、次いで同年9月に板門店で行われたが、トランプ大統領は満面の笑みで「良き友」金正恩を称えるばかりだった。
 二つの首脳会談を振り返ったが、その後は確たる進展がないまま足踏み状態が続いた。

<進展しない米朝と南北関係>
今こそ脱米入亜へ
 最近、北側の強行姿勢に注目が集まっている。脱北者団体が北側批判の大量のビラを北に向けて飛ばしたのが発端となった。 「板門店宣言」違反を問われると韓国政府は謝罪したが、北側は納得せず、開城工業団地内の南北共同連絡事務所を爆破し、軍事行動も辞さないという強硬姿勢だ。<写真上>。現在のところ軍事行動は「留保」されているが、雪解けムードが凍りついた感は否めない。
 韓国の右翼勢力は文在寅政権を親北(アカ)政権と断じたうえで、北から裏切られたと手を叩いて喜ぶ。星条旗と韓国の国旗(太極旗)を掲げる親米右翼は、南北の関係改善より対決を望む勢力だ。
 日本にもやや似た傾向が見られる。
 普段、韓国と北朝鮮の関係改善に関心のない日本のマスコミは、関係悪化となると大騒ぎ。文在寅政権が苦境に立たされると報道にボルテージが上がり、金正恩の妹、金与正(キム・ヨジョン)については芸能ニュース並みの低レベルの報道が溢れる。朝鮮半島に対する日本人の屈折した心理について誰か説得力のある説明ができる人はいないのか。
 風船によるビラ飛ばしが南北関係悪化の原因といわれるが、北朝鮮の苛立ちの背景には米朝関係の成果が現れず、経済制裁が続くことへの不満がある。それが兄弟国である韓国に向けられた。「八つ当たり」みたいに見えるが、南北分断70年、和解と統一には、山あり谷あり、紆余曲折が予想される。朝鮮半島の和解と平和を望む日本人としてどう向い合うかが問われる。

<不真面目だったトランプ大統領>
 非核化交渉と国交正常化が進まないのは何故か。
 経済力と軍事力では比較にならない超大国と小国が対等な交渉が出来るはずはない。北朝鮮がアメリカと話し合う力の源を「核」に求めるのは当然かも知れない。しかしこの理屈に固執する限り、解決の道は開けないと筆者は考えてきた。
 小国は武力では超大国に勝てない。北が核兵器を完全に廃棄することは敗北を意味するのだろうか。核の抑止力に依存する日本の一市民が言うことなので説得力がないのは覚悟の上だが、北朝鮮は平和国家を宣言、核を廃棄、さらに進めて「核兵器禁止条約」に加盟してほしい。非核化を誓った韓国は当然同調する。核の「抑止力」を否定して核の全面廃棄に踏み出すなら想像を絶する衝撃を全世界に与える筈だ。非核化を念仏のように主張する「唯一の戦争被爆国」日本の立場はどうなるのか。世界の非核保有国は喝采を送り、核保有諸国は世界に恥を晒すに違いない。世界は平和国家を決して見殺しにはしない。
 米朝交渉が進展しないのは、核保有にこだわる北朝鮮にも責任の一端がある。しかしアメリカの責任はもっと重い。アメリカ政府内の意見がまとまらない、米朝関係改善の意欲が感じられない。
 更迭された大統領補佐官ジョン・ボルトンの回顧録が出版され、側近が見たトランプの事情が明らかになった。アメリカンファーストで突き進んできたトランプが突如として「チビのロケットマン」と罵った相手と嬉々として会談した理由。ボルトンの指摘は想像した通りだった。トランプ大統領は世界中を敵にまわしてやりたい放題、異論をはさむ側近をクビにする典型的な自己中心主義者だ。 軍事力を背景に金儲けするのが大統領の仕事と思い込んでいる奇人。批判には一切聞く耳を持たない「新型独裁者」でもある。
 北朝鮮を一瞬のうちに吹き飛ばすと豪語したトランプが突然米朝会談に合意したのは、世界から注目されたい、「ならずもの」国家に手を差し伸べ、トランプの寛容さをアピールすることだった。    
 緊張緩和がアメリカの軍需ビジネスには致命的と考えたボルトンを始めとする戦争屋は、後先を考えない偽善者トランプにハラハラした。同盟国に大量の兵器を買わせ、米軍駐留費の大幅な増額を求めるのはアジアの緊張緩和と明らかに矛盾する。冷静なボルトンはそれを見逃さなかった。
 ボルトンが米朝会議には終始消極的だったのは回顧録を読むまでもなく明らかだった。そして意見対立がもとで政権から去った。トランプにとって邪魔なボルトンがいなくなれば米朝交渉が前進しても良さそうだが、トランプにとって米朝交渉はもはや賞味期限切れ。大統領選挙に忙しくて金正恩に構ってはいられない。トランプにはもともと分断国家の悲劇は眼中になかった。

<さよならトランプ>
 何てことはない。北朝鮮と韓国はトランプの気まぐれにつき合わされたことになる。
 北朝鮮の核問題を協議する日・米・中・ロ・南韓・北韓による六か国協議は2008年以来中断したまま、日本は北朝鮮との公式協議の場を持たない唯一の国だ。アメリカの顔色を窺い、拉致問題以外に関心を示さない日本は6者会議の「お荷物」だった。非核化、南北の対立緩和への努力、戦後補償と国交正常化について努力をした形跡はない。
 安倍首相がトランプの「お友だち」でいられるのもあとわずか。ゴルフと金で結ばれた二国間関係も終わりに近づいた。国際社会を引っ掻きまわした「トランプアァースト」によってアメリカの威信と信頼は深く傷ついた。私たち日本人も、そろそろ、アメリカ依存の生活習慣、思考回路から脱皮すべきではないか。

<アジアのことはアジアで>
 朝鮮半島の分断にアメリカがかかわったのは事実だが、何故アメリカが統一問題にまで決定権を持つのか不思議だ。そろそろ当事者による自主的話し合いにまかせたらいい。トランプ大統領の「フザケタ」米朝会談を見ればその感は強くなるばかりだ。
 アジアにおける存在感の薄れた日本は、トランプ頼りから脱して、「平壌宣言2002」の続きを誠実に履行して朝鮮半島の平和に寄与したらどうだろう。小泉首相に随行して平壌宣言に関わった安倍晋三にその資格は十分にある。相手にされない可能性はあるが、首相としてやり残した大切な仕事に変りはない。退陣前の花道は憲法改悪などではない。北朝鮮を敵視し続けたために解決のメドが立たない拉致問題解決の道筋をつける仕事が残されている。

特別定額給付金が振り込まれた !   100,000円
 何故もらったのか、正確に説明出来る人がいるだろうか。調べてみたが総務省の説明は悪文のお手本みたいなもの。「外出を自粛して、見えざる敵と闘い、国難を克服するための家計への支援」だそうだが、「医療従事者に感謝して」というくだりが、意味不明でわかり難い。政府の混乱ぶりがわかる。何故、10万円なのか、何故一回限りなのかもわからない。政権は10万円で内閣支持率が上がると踏んだようだが、支持率が上がらないので買収作戦は見事失敗。バタバタ決まった特別給付金。心のこもらないバラマキで政府への不信は募るばかり。国難を克服するために外出や商売の自粛を求めるなら、もっときめ細かい補償が必要だ。銀行に振り込まれた金は自動振替の決済資金に使われた。
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