2020.07.08
小池百合子都知事の再選
―機会主義者との対決が選択肢―
20年7月5日に都知事選が終わった。午後8時の開票開始に当確が出た。
小池50%、宇都宮・山本合計で40%なら1割の変動で接戦になると予想していたが大甘であった。実際は小池60%(366万票)、宇都宮と山本計で24%に終わり小池圧勝である。
《小池の勝因はなにか》
一つは、小池本人の選挙用「長所」である。
強烈な権力志向。男性操縦術。テレビ取扱術の熟知。
高い演技力。状況適応力。対立軸の隠蔽。日和見力。ファッション。
哲学・思想・信条を発信しない。基本理念は新自由主義+日本会議的偏狭。
一言でいえば「高性能な機会主義者」の強みである。
二つは、プラス要因としてのコロナ危機である。
安倍政権の状況掌握と鈍い反応に比べ上記の特長を駆使した演技が優越した。
例えば「東京アラート」赤色橋の提示である。電通的宣伝以外の何者でもない。しかし
これが受けたのである。
三つは、野党とメディアと有権者の壊滅である。
「日本共産党」と「れいわ新選組」が僅かに野党的。でもその内容は「真面目に資本主義を実行せよ」というもので、微温的な社民的政策である。米民主党左派よりも温和である。
メディアは政党の哲学を示さない。専ら政治家幹部の離合集散と平板な政策の陳列に終始している。私はこれを学芸会報道と呼んでいる。弁士が原稿を読むだけで討論がない。
有権者は75年間の「戦後民主主義」体験によって、自らの日常行動・投票行動が政治を動かす(山本太郎演説の核心)という実感を失った。欧米、香港、韓国のリベラルに劣ること数段である。
《見通しは如何》
2021年年初の日米首脳は現在と異なる人物であろう。
それまでの間、小池はコロナ退治と五輪成功を目指すが、客観情勢は逆風だ。
特にコロナは「大恐慌」以来の打撃を世界資本主義に与えるだろうからである。
とはいえ、彼女は様々な仕掛けを駆使して都政から国政への道を上ろうとしよう。
我々の力は小さい。しかしグローバルな金融資本主義への対峙以外に選択肢は存在しないと私は考えている。(20/07/06)
都知事選結果を見て
このままでは前途がない野党勢力
「小池勝利」は予想されていたことだから、とくに感慨はない。だが、野党勢力について言えば、敗北するにしても、もう少し健闘するのではないかと私は思っていた。
なぜなら、小池候補はこの4年間の都政にこれといった業績を残していない上に、選挙直前に、その経歴に疑問を呈する本が刊行されたからである。さらに、このところ、安倍政権への支持率が下降しつつあることに象徴されるように、小池候補が属する保守陣営に対する有権者の信頼がゆらぎ、その分、リベラル・左翼を中心とする野党勢力への期待が増すのでは、などと考えていたからだ。が、野党勢力は予想以上の惨敗ぶりであった。
なぜ、惨敗したのか。それについては、すでに論評され尽くされているから、ここで繰り返すのは野暮というものだろう。でも、すでに言い尽くされたことを、この際、あえて一言いっておきたい気持ちを抑えることができない。
政治の世界では、野党が与党に勝つためには、これだけは忘れてはならないという必須条件が2つあると思う。一つは、野党が別々に候補を立てるのではなく、統一候補を立てるということだ。「敵」が候補を一本化して迫ってくるというのに、野党の側がバラバラでは勝てっこない。こんなことは、いわば常識である。もう一つは、選挙戦を開始するのは早ければ早いほどいい、ということだ。これもまた常識だ。
しかし、今回の都知事選では、こうした常識が顧みられなかった。野党勢力が小池都政に代わる都知事を誕生させたいという意欲があったら、4年前の都知事選の直後から、次期都知事選に向けての準備をスタートさせるべきであった。具体的には、その時点で野党統一候補を決め、それを支える地盤固めと有権者への働きかけに全力を傾けるべきであったが、そんな気配はついにみられなかった。
結局、今回の知事選では、公示直前に統一候補の擁立に失敗し、都知事選に臨む野党陣営の陣立ては、立憲民主・共産・社民、国民民主、れいわ新選組という3頭立てになった。これでは、勝てっこなかった。こうなってしまったのには、野党第1党の立憲民主党の執行部の責任が大きい、と思えてならない。
私が強調したいのは。こうした野党陣営の「常識違反」が今回の都知事選に留まらないということだ。いや、終戦から75年間、野党陣営はずっとこうした「常識違反」を国政で繰り返して来たように思う。こうした状況から脱しない限り、おそらく野党陣営は政権を
取れないだろう。
総選挙が近い。そこでは、こうした「常識違反」を繰り返さないで、と望む有権者が少なくないはずだ。
半澤健市 (元金融機関勤務)
20年7月5日に都知事選が終わった。午後8時の開票開始に当確が出た。
小池50%、宇都宮・山本合計で40%なら1割の変動で接戦になると予想していたが大甘であった。実際は小池60%(366万票)、宇都宮と山本計で24%に終わり小池圧勝である。
《小池の勝因はなにか》
一つは、小池本人の選挙用「長所」である。
強烈な権力志向。男性操縦術。テレビ取扱術の熟知。
高い演技力。状況適応力。対立軸の隠蔽。日和見力。ファッション。
哲学・思想・信条を発信しない。基本理念は新自由主義+日本会議的偏狭。
一言でいえば「高性能な機会主義者」の強みである。
二つは、プラス要因としてのコロナ危機である。
安倍政権の状況掌握と鈍い反応に比べ上記の特長を駆使した演技が優越した。
例えば「東京アラート」赤色橋の提示である。電通的宣伝以外の何者でもない。しかし
これが受けたのである。
三つは、野党とメディアと有権者の壊滅である。
「日本共産党」と「れいわ新選組」が僅かに野党的。でもその内容は「真面目に資本主義を実行せよ」というもので、微温的な社民的政策である。米民主党左派よりも温和である。
メディアは政党の哲学を示さない。専ら政治家幹部の離合集散と平板な政策の陳列に終始している。私はこれを学芸会報道と呼んでいる。弁士が原稿を読むだけで討論がない。
有権者は75年間の「戦後民主主義」体験によって、自らの日常行動・投票行動が政治を動かす(山本太郎演説の核心)という実感を失った。欧米、香港、韓国のリベラルに劣ること数段である。
《見通しは如何》
2021年年初の日米首脳は現在と異なる人物であろう。
それまでの間、小池はコロナ退治と五輪成功を目指すが、客観情勢は逆風だ。
特にコロナは「大恐慌」以来の打撃を世界資本主義に与えるだろうからである。
とはいえ、彼女は様々な仕掛けを駆使して都政から国政への道を上ろうとしよう。
我々の力は小さい。しかしグローバルな金融資本主義への対峙以外に選択肢は存在しないと私は考えている。(20/07/06)
都知事選結果を見て
このままでは前途がない野党勢力
岩垂 弘 (ジャーナリスト)
「小池勝利」は予想されていたことだから、とくに感慨はない。だが、野党勢力について言えば、敗北するにしても、もう少し健闘するのではないかと私は思っていた。
なぜなら、小池候補はこの4年間の都政にこれといった業績を残していない上に、選挙直前に、その経歴に疑問を呈する本が刊行されたからである。さらに、このところ、安倍政権への支持率が下降しつつあることに象徴されるように、小池候補が属する保守陣営に対する有権者の信頼がゆらぎ、その分、リベラル・左翼を中心とする野党勢力への期待が増すのでは、などと考えていたからだ。が、野党勢力は予想以上の惨敗ぶりであった。
なぜ、惨敗したのか。それについては、すでに論評され尽くされているから、ここで繰り返すのは野暮というものだろう。でも、すでに言い尽くされたことを、この際、あえて一言いっておきたい気持ちを抑えることができない。
政治の世界では、野党が与党に勝つためには、これだけは忘れてはならないという必須条件が2つあると思う。一つは、野党が別々に候補を立てるのではなく、統一候補を立てるということだ。「敵」が候補を一本化して迫ってくるというのに、野党の側がバラバラでは勝てっこない。こんなことは、いわば常識である。もう一つは、選挙戦を開始するのは早ければ早いほどいい、ということだ。これもまた常識だ。
しかし、今回の都知事選では、こうした常識が顧みられなかった。野党勢力が小池都政に代わる都知事を誕生させたいという意欲があったら、4年前の都知事選の直後から、次期都知事選に向けての準備をスタートさせるべきであった。具体的には、その時点で野党統一候補を決め、それを支える地盤固めと有権者への働きかけに全力を傾けるべきであったが、そんな気配はついにみられなかった。
結局、今回の知事選では、公示直前に統一候補の擁立に失敗し、都知事選に臨む野党陣営の陣立ては、立憲民主・共産・社民、国民民主、れいわ新選組という3頭立てになった。これでは、勝てっこなかった。こうなってしまったのには、野党第1党の立憲民主党の執行部の責任が大きい、と思えてならない。
私が強調したいのは。こうした野党陣営の「常識違反」が今回の都知事選に留まらないということだ。いや、終戦から75年間、野党陣営はずっとこうした「常識違反」を国政で繰り返して来たように思う。こうした状況から脱しない限り、おそらく野党陣営は政権を
取れないだろう。
総選挙が近い。そこでは、こうした「常識違反」を繰り返さないで、と望む有権者が少なくないはずだ。
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