2020.07.15 中印国境紛争が示唆するもの(続)

          ――八ヶ岳山麓から(318)――

阿部治平 (もと高校教師)

前編でとり上げた中印国境衝突地点の地理を、画像資料を使って補足しておきたい。

1.ガルワン渓谷とコンカ峠
図1、左上の赤〇がガルワン渓谷、右下の赤い正方形がコンカ峠である。62年戦争当時もガルワン渓谷は両軍対峙地点であった。ガルワン渓谷から直線距離で80キロのコンカ峠が中国軍補給基地であった。現在もその役割は変らない。
中印国境紛争が示唆するもの(続)

2.ガルワン渓谷実効支配線
図2はGooglemapsを使用したものだが、赤のラインが実効支配線。ラインの右が中国、左がインド。AFP記事によると、「ガルワン渓谷にある境界線のインド側に、中国軍が『構造物』を建設したという」という。これが正しければ、➡の場所のどこかに中国側が「構造物」すなわち陣地を構築したらしい。
八ヶ岳山麓(318)写真2
図2.ガルワン渓谷と実効支配線(Googlemapsより作成)

3.ガルワン渓谷中国軍駐屯地
図3は、5月22日付AFP掲載の映像を逆さまにしたものである。こうするとこの写真が図2のガルワン渓谷映像の青〇の位置の写真であることがわかる。Googlemaps上の縮尺では、青○の位置は実効支配線からおおむね4~5キロ中国側にある。
この映像には深緑色のバラックが約35棟見える。トラックの影などからするとバラック1棟は、およそ長さ6m、幅5m、高さ2m超程度である。居住用ならば、1段ベッド、通路や荷物置場を考慮して6人部屋程度とみれば、210人を収容できる。
中型トラックが7輌、軍用四輪駆動車が8~9輌停車している。自衛隊の同サイズのトラックは22人乗車可能だから、これから類推すると一度に200人の輸送が可能である。その他の色のバラックは、食堂、娯楽や業務用かもしれない。以上から、ここは最前線を支援する中継地点で、2個中隊(「連」)規模の臨時的施設と判断できる。

中印国境紛争が示唆するもの(続)
図3.中国軍中継地
(米人工衛星企業マクサー提供(2020年5月22日撮影)。(c)SATELLITE IMAGE c2020 MAXAR TECHNOLOGIES / AFP)

4.中国軍基地の変化
図4,5いずれもコンカ峠の恒久的な基地である。
図4の「撮影日不明」の画像には、本部と思しき建物・その後方に兵舎らしい建物がならび、丸い貯水池・太陽光発電パネルがある。周辺に溝があるが排水のためか用水か不明。
これを図5の「5/22撮影」の映像と比べると、一段と整備拡張されたことがわかる。幹線道路舗装が拡張し、施設全体は有刺鉄線(?)で囲まれている。軍用トラックなどと、その影の長さから正面の本部らしい建物はおよそ長さ40m、幅10m、高さは車両の3倍程度の建物だと思われる。後方の兵舎(?)は拡充されている。
大型トラック、軍用車両も増加しているが、太陽光発電パネルには画像からは変化が見られない。道路を挟んで、ヘリパッドは1機分から3機となり、新たに軍用車両(戦車?)が並んでいる。斜面に「能打仗打勝仗(戦えば必ず勝つ)」のスローガンがある。
ガルワン渓谷とコンガ峠間は作戦展開のためには遠すぎるので、図3のような中継基地がほかにも作られている可能性がある。もちろんインド軍もこれに匹敵するか、それ以上の施設を随所に設けているものと思われる。
八ヶ岳山麓(318)写真4
図4.コンカ峠の基地(撮影日不明、Googlemaps)

八ヶ岳山麓(318)写真5    図5.AFP掲載のコンカ峠の基地(5/22撮影)(›米人工衛星企業マクサー提供(2020年5月22日撮影)。 (c)SATELLITE IMAGE c2020 MAXAR TECHNOLOGIES / AFP)
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