2020.08.01 様変わりのヒロシマ・ナガサキ
コロナ禍で記念行事・集会が縮小や形態変更へ

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 「広島原爆の日」の8月6日と「長崎原爆の日」の8月9日が近づいた。今年は「被爆75年」という節目の年とあって、どちらも例年を上回る大衆的盛り上がりが期待されていたが、新型コロナウイルス感染のパンデミックの影響をもろに受けて、両日とも、記念行事や関連の催しが軒並み縮小や形態変更を余儀なくされるという関係者にとってはなんとも残念な事態となった。

 8月6日は、例年、広島市の主催で、原爆が投下された午前8時15分をはさんで平和記念式典が平和記念公園で行われる。毎年、式典会場には1万1500席(イス)が設けられ、被爆者、各国代表、各界代表らのほか一般市民が着席する。式典会場に入れなかった人たちは、その周りに立ち続けて式典を見守る。式典では、市長が世界に向けて平和宣言を発する。
こうした形で開かれる記念式典への参加者は被爆から75年という歳月を経ても減ることなく、ここ数年の推移を見ても、毎年、約5万人にのぼる。

 だが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ観点から、式典は大幅に縮小される。式典会場に設けられる席は880。例年の1割にも満たない。一般席は設けないから一般市民は式典会場には入れない。そればかりでない。午前5時から同9時まで、平和記念公園への入場を規制する。
 同日夕方から平和記念公園わきを流れる元安川で行われる、恒例の原爆死没者慰霊のための「とうろう流し」(広島市中央部商店街振興組合連合会など主催)も中止となった。
 
 今年の平和記念式典には、国連のグレテス事務総長の出席が予定されていたが、これも中止となった。新型コロナウイルスのパンデミックが進行中であることから、その対策に追われ、広島訪問を断念したと思われる。実現すれば国連事務総長の広島訪問は初めてとなるだけに関係者の落胆も大きい。

 8月9日の長崎市主催の平和祈念式典は、やはり原爆投下時間の午前11時2分をはさんで平和公園で行われる。市長による平和宣言が予定されているが、こちらも縮小が決まった。例年、同公園での式典には約5000人がつめかけるが、今年はコロナ対策で参加者間の間隔を2メートルとするので、設けられる席は500程度。このため、一般市民は式典に参列できない。市は「平和公園でのお参りは式典終了後にしてほしい」と呼びかけている。

 広島の平和記念式典、長崎の平和祈念式典、どちらも自治体による記念行事だが、「8・6」と「8・9」を彩るのは、こうした自治体の記念行事だけではない。民間団体である原水爆禁止関係団体による催しもまた、広島・長崎の惨禍と核兵器廃絶を世界に訴えるための欠かせない行事である。顧みれば、1955年以来、日本の原水爆禁止関係団体は毎年、「8・6」に広島市で、「8・9」には長崎市で、いずれも数千から1万前後の人々を集めて世界大会を開いてきた。
 今年も、原水爆禁止日本協議会(原水協)は「原水爆禁止2020年世界大会」を、8月2日国際会議、同6日広島デー、同9日長崎デーといったスケジュールで開催する。
一方、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)は「被爆75周年原水爆禁止世界大会」を、6日に広島大会と国際シンポジウム、9日に長崎大会というスケジュールで開く。
 ところが、今年の世界大会のやり方は、どちらもこれまで続けてきた全国動員による大規模な大衆集会でなく、少数の参加者によるオンライン方式の大会だ。いずれも、これまで実施したことのない大会の開催形態変更だか、こうせざるをえなかったのは、ひとえに新型コロナウイルス感染の拡大を避けるためである。

 広島の市民グループは、今年も5日夜に恒例の「8・6ヒロシマ平和のつどい」を、通常の集会方式(対面方式)で「まちづく市民交流プラザ」で開く予定だが、コロナ対策上、参加人員を制限することを検討している。

かつては、「8・6」には広島の街頭を、「8・9」には長崎の街頭を、全国からやってきた、「核兵器廃絶」のゼッケンをつけたり、組合旗を掲げた世界大会参加者がぎっしりと埋めた。「原爆ハンターイ」のコールが街中にこだました。そうした見慣れた光景が、今夏は見られそうもない。まさに、様変わりの「ヒロシマ・ナガサキ」である。
 広範な人々が直接参加できない「8・6」と「8・9」の記念行事と催しは、果たしてこれまでと同じような世界に向けての強力な発信力をもつことができるだろうか。

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