2020.08.18 NHK経営委員会森下委員長の辞任問題と情報公開
クローズップ現代のかんぽ報道              

隅井孝雄 (ジャーナリスト)

 NHKの報道番組「クローズアップ現代」は1993年4月に始まり、2016年3月までは国谷裕子さんがキャスターを務めていた時代はきらめきのあるNHKの看板番組だった。以前は月曜~木曜の放送だったが、今は火曜~木曜の週3日(週2日だけの時あり)。国谷時代のきらめきはなくなったとはいえ、今でもしばしば政治、経済、社会に鋭く切り込む姿勢を保ち続けている。
 ▼「クロ現」で「かんぽ報道」波紋呼ぶ
 この番組で2018年に放送された「郵便局が保険の押し売り~郵便局員たちの告白」(4/24)は一種のスクープ取材であり、大きな反響を生んだ。いわゆる「かんぽ報道」の先駆けであった。
 続編の放送が企画され、取材の一環としてネット動画を公開した(18年7月)。取材結果の一部を明らかにするとともに、情報提供を募る内容だった。しかし郵政グループ三社社長(日本郵政、かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行)連名で、誹謗、中傷だとの抗議文が届くとともに、取材を拒否する旨の通告があった。続編で「かんぽ生命保険の不正」を扱う道は断たれた。(その後「クロ現」では、初回の放送から、1年3ヵ月後の19年7月31日、そして20年1月15日、20年1月16日にようやく「かんぽ生命の検証」を放送した)。
 ▼経営委員会、郵政への会長謝罪を強要
 一方、NHKの意思決定機関である経営委員会は2018年10月23日、上田良一会長(2018年当時)を呼びつけ、厳重処分にするとともに、日本郵政に会長として謝罪することを要求した。
 上田会長は「(首脳部が)個別の番組に介入することが表に出れば、NHK全体の非常に大きな問題になる」という見解を表明したと伝えられていたが、経営委員会の厳重処分に抗しきれなかったとみられる。日本郵政への会長謝罪を主導したのは、石原進経営委員長(当時)と森下俊三委員長代行(当時)であった。
▼放送法の禁じ手違反明白
 放送法は第三条と第三十二条に以下のような条文がある。
第三条、放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、また規律されることがない。
第三十二条(経営委員の権限等)
委員は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない。
 2. 委員は、個別の放送番組の編集について、第三条の規定に抵触する行為をしてはならない。
「クローズアップ現代+」のかんぽ報道に関する経営委員会の一連の動きは、放送法によって禁じられている行為であることは明白だ。
 ▼経営委員長辞任要求と経営委情報公開
 2019年12月、安倍内閣は森下氏を経営委員長に起用した。以後、市民の反発はさらに強まり、「経営委員会の個別番組への干渉を禁じた放送法に反する」として、森下氏の辞任を求めるとともに、18年当時の経営委員会の議事録公開を要求する動きが急速に強まった。7,204筆の個人署名(5/8提出)、全国視聴者組織24団体(6/8提出)にのぼる。
 また「かんぽ報道」問題については、毎日新聞が、議事内容も含めた、2ページにわたる巨大記事で「経営委強引さ鮮明」と報じ(6/29)、朝日新聞が3回にわたり特集を組んだ(6/30,7/1,7/2)。また研究者、法律家22人も、会長を厳重注意した問題で森下委員長の辞任と、当時の議事録の開示を求めている。
 NHK自体が設置している「情報公開、個人保護審議委員会」が、視聴者組織や、毎日新聞などが出した「開示請求」に対し今年5月に全面開示を答申したにもかかわらず、経営委員会は公開済みの一部の発言要旨を切り張りして出しただけで、実質不開示のままだ。
 ▼市民組織、国会請願署名に動く
 このような現状のもと、NHKの公共性を強く求める市民運動組織24団体は、森下経営委員長の罷免と、と経営委の情報公開をもとめて、国会に請願する署名行動を開始した(8/9)。
 1.衆議院のしかるべき委員会に森下俊三氏を参考人として招致し、森下氏に「放送法」に違反する行為、職務上の義務違反に相当する行為があった事実を徹底的に究明すること。
 2.森下俊三氏をNHK経営委員から罷免するよう、安倍内閣総理大臣に意見を提出すること。
 私自身も3年以上にわたって、「クロ現、かんぽ報道」に対する日本郵政三社の介入、干渉を受け入れた経営委員会の行為を問題視し、森下経営委員長の辞任と、当時の議事録の全面開示を求め続けている。
 朝日新聞や毎日新聞がいまだにこの問題に関する調査報道を続け、経営員会の正常化と、NHKに対しての郵政介入干渉に抗し、公正な報道を求め続けていることは心強い。
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