2020.09.25  影も形も感じられない合流新党・立憲民主党の存在感、このままでは次期総選挙で野党は惨敗する
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

 菅官房長官が首相に就任したのは9月16日、メディア各社はこの日と翌日の両日にかけて緊急世論調査を実施した。その結果が18日に報じられたが、各社とも60~70%台の高支持率を記録しており、菅内閣の支持率の高さには驚くばかりだ。この件について何人かの友人と意見交換したが、「アベチャンに早く辞めてもらいたかったからだろう」というのが一致した意見だった。安倍長期政権に飽いた世論の高まりが「アベチャン以外なら誰でもいい!」との空気になり、そこに菅内閣が登場したというわけだ。だから、この高支持率はいわば「瞬間風速」的な支持率であり、これがいつまで続くかは目下のところわからない。

 菅内閣の高支持率発進に比べて見るに堪えないのは、野党各党の低迷ぶりだ。各社世論調査の政党支持率、次期総選挙で投票したい政党を並べてみると以下のような結果になる。

【朝日新聞】
 〇政党支持率、自民41%、立憲6%、公明3%、維新2%、共産2%、
支持政党なし38%
 〇投票したい政党、自民48%、立憲12%、公明6%、維新8%、共産4%、          わからない15%
【毎日新聞】
 〇政党支持率、自民44%、立憲12%、公明4%、維新8%、共産5%、        支持政党なし22%
 〇投票したい政党、自民44%、立憲15%、公明4%、維新8%、共産5%、          なし10%、わからない7%
【共同通信】
 〇政党支持率、自民47.8%、立憲7.0%、公明3.4%、維新4.7%、共産4.0%、        支持政党なし28.0%
 〇投票したい政党、自民44.4%、立憲9.0%、公明5.9%、維新6.1%、共産4.5%、         わからない25.8%

 与党側の自民・公明・維新を合わせると、政党支持率は46~56%、投票したい政党は56~62%となり、次期総選挙では与党側が過半数を占めることは確実だ。これに対して野党側の立憲・共産の政党支持率は8~17%、投票したい政党は13.5~20%でしかなく、与党側の3分の1にも達しない。次期総選挙においても、与党側の改憲勢力が3分の2を占めるような事態は決して不思議ではないのである。

 その最大の原因は、合流新党・立憲民主党の不振・不評にあることは論を俟たない。共同通信調査の結果分析には、次のような注目すべき指摘がある(京都新聞9月18日)。

 「共同通信社の全国緊急電話世論調査で、旧『立憲民主党』と旧『国民民主党』などが合流して新たにできた立憲民主党の支持率は7.0%だった。9月上旬の調査では旧立民は10.7%。単純比較できないが、目立った合流効果は見えず、伸び悩んだと言えそうだ...。次期衆院選の比例投票先についても立民は9.0%で、9月上旬の調査で聞いた『合流新党』15.7%から減少。幹部は『結党したばかりで、まだ何もしていない。地道に政策を訴えていくしかない』と強調した。また立民への期待を聞いたところ、『期待する』は36.9%、『期待しない』は55.8%だった」

 合流新党・立憲民主党は、衆参両院合わせて150人近い勢力を擁する野党第一党になったにもかかわらず、政党支持率は僅か7%、次期総選挙での投票先が9%というのはいったいどうしたことだろうか。しかも、合流前の立憲民主党から政党支持率も投票先比率も大幅に減少している。これでは、新党結成が却ってマイナス方向にしか働いていない。

 合流新党・立憲民主党が不振・不評なのは、「まだ何もしていない」からではなくて、合流前に嫌と言うほど「すべきでないことをした」ためだ。長期にわたってゴタゴタ話しを繰り返し、不毛の駆け引きと取引を続けてきたことが野党の存在意義を失わせ、新党イメージを決定的に傷つけたのである。なかでも、国民民主党の玉木代表に最後まで振り回されたことの影響が大きい。もともと自分が代表にならなければ合流する気のない同氏を相手にしていたずらに時間を浪費し、安倍内閣が末期症状を呈しているにもかかわらず、「政権交代」をアピールできる新党結成の絶好のチャンスを逃してしまったのである。

 こんな野党の醜態をむしろ「好機」と捉えたのが与党側だったのではないか。安倍前首相の持病悪化を口実にして突如辞任表明に踏み切り、野党側に付け入る隙を与えず、あっという間に菅内閣への「政権委譲」を実現してしまったのである。このことが野党側の醜態と相まって菅内閣への支持を集め、それが驚くような高支持率となってあらわれたのだと言えよう。菅内閣は「スピード感」を政権の特質として打ち出しているが、野党側がいつまでもモタモタしているようだと、これからもイニシアティブをとることは難しい。

 加えてもう一つ、合流新党・立憲民主党の不振・不評の原因を挙げるならば、それは合流新党の代表に選ばれた枝野氏に人を惹きつける魅力がないことだろう。先日も民放テレビ番組に出演した枝野氏の話しぶりを観たが、能面のような無表情で場の雰囲気もわきまえず自説を一方的に喋り続ける有様には心底閉口した。このことは友人たちの間でも期せずして話題になり、「あれではダメだ!」「もっと魅力的な人物に替えなければ」と図らずも意見が一致した。

 政治家は自分の表情をつくるというが、枝野氏には長い政治キャリアにもかかわらず、それが見られないというのはいったいどうしたことか。民進党代表の前原氏の策動で野党第一党が崩壊した時に「枝野コール」が起って以来、枝野氏の表情にはさしたる進化の跡がない。立憲民主党がその後振るわなかった原因を全てそれに押し付けるつもりはないが、もっと人間的な魅力のある「彫りの深い顔」を代表に迎えられないものだろうかと思わずにはいられない。
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