2020.11.11 学術会議への政府介入は「人間存在の否定」
―保阪・上野対談の衝撃―

半澤健市 (元金融機関勤務)

 日本学術会議会員任命への政権の介入に対して多数の意見が表明されている。
多くは政権への批判、介入への反対である。
それらの中で、月刊誌「世界」(20年12月号)に掲載された、保阪正康・上野千鶴子両氏(以下敬称略)の対談が卓越している。ただしこの場合の「卓越」は、「深刻」「過酷」「困難」を意味しているのだが。

 昭和史研究者の保阪は、今回の事件が戦前の滝川幸辰事件や美濃部達吉の天皇機関説排撃事件との共通性を否定しない。しかし保阪は、もっとラジカルに、菅政権によるこの介入の本質は、「パージ」であり「人間存在に対する否定」である、と評価して次のように言う。

「今回はこれほどわかりやすい形で任命拒否をする菅義偉首相の傲岸さ、市民意識の欠如、すべてが象徴されていると思います。安倍政権の延長どころか、彼らが作ってきたある種のファシズム的な方向をさらに一歩進める内閣だと。今後は私たちの存在そのものにかかわるような問題がパージという形で突き付けられてくると予感しています。アカデミックパージから各分野での異端狩りですね」。

 社会学者の上野(東大名誉教授)は、2005年から2014年まで、学術会議の正会員であった。本件に関する彼女の最初の印象は「そこまでやるか」、「とうとうきたか」の二つであった。

 この対談は中身が濃くて要約がむずかしい。
しかし私(半澤)なりに、キーワードを拾い対談者の言わんとすることを次に掲げる。

学問の自由の弾圧には、扇動・攻撃・威圧・権力、の四段階がある。
それぞれにアクター(演技者)が登場する。それも初めは直接国民に関係あるようには見えない。滝川・美濃部事件に即しての保阪の説明は、私には強い説得力をもった。

上野は、「事件の本丸は学術会議潰しだと思います」、「政権は人文科学系の御用学者を作りたいのだと思います」と言う。
東日本大震災の復興計画で、2011年以降の危機管理は、災害専門家だけでは済まないことがわかった。さらに今度のコロナ禍である。人文科学系の知も動員して「それこそ総合的、俯瞰的に対応せざるを得ないことがわかった」のである。

次に何が起こるのか。上野は、「私が恐れているのは、国立大学の学長の任命拒否です。(略)次に狙われるのは科研費と学内経費で、科研費に関してはすでに始まっています」、「自民党の杉田水脈(すぎた・みお)という扇動者、というか攻撃者がすでに登場しています」。

 この事態に対して、「戦後民主主義」を、濃淡の差はあれ、奉じてきた人々はどう戦うべきか。抵抗すべきか。今回は、私の受けた強い衝撃を伝えるだけで終わるが、これを契機に学術会議問題の重さを考えていきたい。(2020/11/07)



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