2020.12.18 トランプ政権最後の1年(30)
イスラエルに最後のプレゼント アラブ4国、26年ぶりにイスラエルと国交正常化

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

 1か月後にバイデン新大統領との交代するトランプ米大統領は、最後の外交”成果“として10日、アラブ連盟加盟国モロッコはイスラエルとの国交を正常化すると発表した。イスラエルのネタニヤフ首相は「歴史的な日が来ることを信じてきた」と大喜び。モロッコのムハンマド国王は、現地住民が独立を求めて武力抵抗を続けている、南西部の西サハラの独立を米国が認めないことを約束したため、トランプ氏が求めたイスラエルとの国交正常化を受け入れた。これで、イスラエルと国交を結んだアラブ諸国は、アラブ連盟加盟22ヵ国中6か国になった。
 トランプ氏ほど親イスラエルで、イスラエルの利益に貢献してきた米大統領はいない。トランプ氏の娘イヴァンカさんの結婚相手がユダヤ教徒のクシュナーさんで、イヴァンカさんが改宗したことは良く知られている。またトランプ氏の有力な支援地盤がキリスト教プロテスタント福音派であることも知られている。しかし、なぜ、あれほど中東で親イスラエル、反パレスチナの政策を強行したのか。なぜ、任期終了直前に、イスラエルとモロッコはじめアラブ諸国の国交回復に力を注いだのか。その成果は4ヵ国だけだったが。
 トランプ氏は4年前の就任間もなく、最初の中東アラブ諸国として、石油大国サウジアラビアを訪問、米国製兵器の大規模輸出を取り決めた。その一方、就任後間もなかったサルマン国王は、米側が水面下で求めたイスラエルの承認、国交正常化はきっぱり断った。
 その後、トランプ氏は機会があるごとに、アラブ諸国にイスラエルとの国交正常化を働きかけたが、すべて失敗していた。
 1945年に発足したアラブ連盟に加盟する22ヵ国は、48年に発足したイスラエルを国家承認してこなかった。イスラエル発足直後からアラブ諸国とイスラエルは、4回の中東戦争を繰り返した。92年のイスラエルの総選挙で労働党が勝利、ラビン党首が首相になってから、イスラエルとアラファト議長の下のパレスチナ代表(PLO)の交渉が始まり、93年にクリントン米大統領の下、ワシントンでパレスチナ暫定自治宣言に合意、調印。94年から、イスラエル占領下の東エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザ3地域でパレスチナでの先行自治が始まったが、イスラエル側は自治拡大を妨げ、逆にパレスチナ自治区として配分された東エルサレム、ヨルダン川西岸地区でイスラエル入植地を拡大、現在に至っている。
 94年、パレスチナでの先行自治が始まるとともに、ヨルダンとエジプトはイスラエルと国交を正常化した。しかし、それ以後、イスラエルと国交を結ぶアラブ諸国はなかった。そして今年、大統領選挙を前にしたトランプ氏は、ペルシャ湾岸の小国アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン、アフリカのスーダンに働きかけてイスラエルとの国交を受け入れさせた。そして西サハラ独立を目指す勢力に苦慮するモロッコに働きかけ、大統領選挙直前にイスラエルとの国交正常化を受け入れさせたのだった。
 UAE(人口977万人)とバーレーン(人口161万人)はペルシャ湾岸の小国だが、豊かな産油国で近代化を進めている。大国サウジアラビアと対岸のイランに挟まれ、さまざまな圧力を受け、米国との関係強化に期待している。
 スーダン(人口4,281万人)はアフリカ大陸北東部。面積はアフリカ大陸で3番目だが、内戦、クーデターが繰り返され、アラブ諸国の中では、貧しい国に入る。米政府は1993年、テロ支援国家に指定している。なぜ、トランプ政権の働きかけに応じて、イスラエルと国交正常化したのか、わからない。(了)
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