2021.01.04  『労働情報』が43年の歴史に幕
          コンビニの店頭に並ぶような気軽な労働雑誌ができないものか

杜 海樹 (フリーライター)

 協同センター・労働情報が発行してきた労働組合運動の専門誌『労働情報』(RJ)が通算1000号の発行を以って2020年12月1日に休刊、12月6日に都内で記念シンポジウムを開催し1977年以来43年の歴史に事実上幕を閉じた。
 
 『労働情報』は労働組合運動に携わっている方々の間では非常に名の通った雑誌であり、創刊当時は中小労働組合のオピニオンリーダー的な存在感を放っていた雑誌であった。『労働情報』の初代編集人は京浜地区での労働組合運動等に尽力されていた樋口篤三氏であった。樋口氏は様々な労働争議に関わりながら1987年まで編集人を務め、以後は協同組合運動やキューバとの友好促進などにも尽力、晩年は『社会運動の仁義・道徳~人間いかに生きるべきか』などを出版、西郷隆盛氏の精神を評価するなど新たなアプローチを示していたが、2009年に惜しまれながら他界した。
 
 日本における多くの労働関連の雑誌は、どこかの組織等が発行しているもの、例えば現在で言えば連合や連合の関連組織が出版する雑誌、全労連や全労連の関連組織が出版する雑誌などで占められており、各種組織から独立した出版社が雑誌を独自に出すケースはほどんど見られなかった。その点『労働情報』は、運営主体が協同センター・労働情報であり、組織を越えて中小労働組合の運動に役立って来たという特異な位置にあった。しかし、労働組合組織率の減少に歯止めが掛からないことや、紙媒体からSNSにメディアが移行しつつあることなどから『労働情報』は惜しまれつつも姿を消すことになった。
 
 ところで話は少し変わるが、労働組合関係の雑誌を一般書店で見かけたことがあるという方はどれくらい居られるであろうか? 大手書店の店先には週刊誌・月刊誌が山積となっているが、多くは料理の雑誌であったり、スポーツの雑誌であったりし、経済コーナーに行けば週刊〇〇〇経済、月刊△△△経済等の雑誌も並んでいる。しかし、労働経済、労働組合の雑誌はというと、残念ながらというか、筆者自身も一度も見かけたことがない。もちろん専門店に出向けば雑誌はある訳であるが、駅前にあるような一般書店で見たことがない。一般書店に並ばなければ、特段、組合と縁がない方々にとっては、労働問題の雑誌は無縁というものであろう。こうした状態にあっては労働組合関係の雑誌は仮に発行されても存続していくことは困難と言わざるを得ない。
 
 また、日本における労働関係の雑誌というものが、あまりにも専門的過ぎて一般的ではないとも感じている。電車やバスに揺られ、営業職や事務職で働くサラリーマンにとって必要な情報は、パソコンに向かう時間が長く眼精疲労をどうしたらよいかといった様な労働安全衛生の問題であったり、通勤途中の子ども達の送り迎えの問題、両親の介護に伴う休暇確保の問題などであったりする訳であり、日常の問題解決が何よりも最優先に求められて来ると思う。そうした求めに対する解決案を雑誌が提示できなければ、存続していくことは相当難しいと言わざるを得ないのであろう。
 
 労働組合の在り方については、各運営主体により様々であることは言うまでもないが、勤労者の求めに応えるという意味合いでは一種のサービス業の範疇にも入って来るのではないだろうかと思う。時代の流れから新型コロナ対策が求められれば、リモート会議の問題に労働の視点からどう応えていくか等の提示はあって然るべきだと思う。そうした身近でタイムリーな問題に応える、コンビニの店頭に並ぶような労働雑誌が実は今ほど求められている時はないのではないかと思うのだが。

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