2021.03.25 あらためてハンガリーのワクチン状況
盛田常夫 (在ブダペスト、経済学者)

感染増加が止まらない
 3月14日時点のデータによれば、過去24時間の新規感染者は8,863名、死者は162(累計16,952)名、病院で治療を受けている者8,764名、このうち人工呼吸器装着患者は1,005名に上り、感染の増加傾向が止まらない。
 すでに1か月以上も20時以降の外出が禁止され、飲食店の営業は停止され(1週間前まではテイクアウトのみ。現在はテイクアウトも禁止)、食料品店や銀行、郵便局、ガソリンスタンド、薬局を除いては営業停止になっているにもかかわらず、感染者が増え続けている。これは家族内の感染が広がっているためで、家庭内の若いひとたちに感染が広がっているからである。
 ハンガリー政府はこの増加傾向を止める手段はワクチン接種しかないと宣言しており、接種登録を呼びかけている。現在のところ、接種登録者は300万人(人口の3割)、3月14日現在、第2回目の接種を終えた人の数は130万人と発表されている。政府は「どのワクチンも有効性があり、ワクチンの選ばないように」と呼びかけており、政府首脳は中国製ワクチンを打つところをテレビで放映している。
 オルバン首相は中国製やロシア製のワクチンがなければ、接種率はこれほど高くなっていないとして、ハンガリー政府の戦略が正しいことを強調している。一方、野党はEUの承認を受けていないワクチン接種は国民を実験に曝すものだと批判している。

あらためてハンガリーのワクチン状況

ワクチン輸入の現状
 ハンガリー政府は野党からの要求に応じて、ロシアと中国からのワクチン輸入に関する契約書を公開した。それによれば、ロシア製スプートニク(2回分)の価格はおよそ17ユーロ、中国製(Sinopharm)の2回分は63ユーロだという。これはハンガリー政府がそれぞれの調達先と交わした契約価格であり、必ずしも公表されている国際価格とは一致しない。ハンガリー政府が契約を公開したのは、EUにたいして、それぞれの製薬会社との契約を公開するように求めていることと整合性を保つためである。
 伝統的手法の中国製ワクチンの価格は他のワクチンに比べてかなり高い。発展途上国向けの無償援助のコストが、価格転嫁されていると考えられる。

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注:価格はハンガリー政府の調達価格

 現在、病院での一般患者の受入れ体制もひっ迫しており、夜、病院へたどり着いた救急患者が空きベッドがなく、廊下で一夜を過ごすことを余儀なくされる事例もおおい。感染増加傾向が減少に向かうまで、現在の厳しい営業禁止措置は解除されないと思われる。

ワクチン戦略
 オルバン首相は、ハンガリーがイスラエル企業と共同で、自前のワクチン製造目指すと表明した。また、セルビアはスプートニクと中国製ワクチンの製造拠点を設立し、国内供給のみならず、輸出を目指すと表明している。
 ワクチンをめぐる外交が今後、さらに活発化すると思われる。
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