2021.03.22 「生協、お前もか」。幹部が取引先からゴルフ接待
           コープこうべ、組合長と常務理事を解職
                  
岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 「生協、お前もか」。3月7日付の日本経済新聞朝刊社会面に載った2段の記事が目に入った時、私は心の中でそう叫ばずにはいられなかった。そこには、生活協同組合「コープこうべ」(神戸市)の組合長らが、取引先の企業から長期間にわたってゴルフ接待を受けていたため、内部規定違反として解職された、と報じられていたからである。コープこうべと言えば、戦前から約100年にわたって日本の生協運動をリードしてきたわが国きっての模範生協である。時あたかも、総務省の幹部官僚たちが通信・放送関係の企業から接待を受けたと追及されている真っ最中。「公正」を旗印とする生協運動に長いこと関心を持ってきた者としては、軽視できない不祥事だ。

 コープこうべは神戸市東灘区に本部を置く生協で、組合員は171万人。
 コープこうべが3月6日に発表した「組合長の解職についてのお知らせとお詫び」によると、同月5日に開いた理事会で、木田克也組合長と榎本裕一常務理事を5日付で解職したという。
 そのことについて、「お知らせとお詫び」は「木田氏と榎本氏は、当生協の常勤役員等服務内規ならびに接待に関する内規に反する行為があり、今後の業務執行に問題が生じると判断がいたしました」と述べ、内規違反の内容については「職員からの内部通報を受け……調査の結果、木田氏と榎本氏は2018年8月から2020年12月の間、20回以上にわたり取引先からゴルフの接待を受けているにもかかわらず、所定の手続きがなされていないことが判明しました。また、出張先にてゴルフの接待を受ける予定であることを隠匿し、虚偽の行程表を提出し常勤理事会の決済を受けていたことも判明しました」としている。

 日経の記事には「(コープこうべの)内規では、接待を受ける際は昼食代程度とし、事前と事後に申告するよう定めている」とある。また、3月7日付の毎日新聞電子版は「組合長は27回、常務理事は29回、組合が取引する約20事業者からゴルフに招かれ、業者がプレー代金を支払っていた。出張先の北海道や宮崎県など国内各地のほか、タイでプレーしたこともあった。代金は1回あたり『最低2万5000円くらい』(山口理事長)という」と報じている。

 経済取引にからんでのゴルフ接待。これが営利を目的とする株式会社同士のことなら誰も問題にしないだろう。しかし、今回のケースは、非営利を原則とする経済・社会団体の生協の役員が取引先からゴルフの接待を受けていたというものだから、メディアもこれは問題だとして取り上げたものと思われる。

 生協の基本は「公正」「正直」「誠実」
 協同組合の世界的な組織である国際協同組合同盟(ICA、本部・ジュネーブ)は1995年の第31回ICA100周年記念マンチェスター大会で「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」を採択したが、そこには「協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とする。協同組合の創設者たちの伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、他人への配慮という倫理的価値を信条とする」とある。要するに、協同組合は「公正」や「正直」に徹すべし、というわけである。

 「ICA声明」が採択されるまで、ICAでは、協同組合のアイデンティティをどう規定するかをめぐり、長期間にわたって議論が交わされた。その過程で、私が最も印象に残っているのは、1988年の第29回ストックホルム大会で、当時のL・マルコスICA会長(スウェーデン)が提起した協同組合の基本的価値だった。マルコス会長は、協同組合の基本的価値として①参加②民主主義③誠実④他人への配慮、の4つを挙げていた。
 私は驚いた。協同組合の基本的価値の1つが「誠実」とは。経済的な活動する団体で活動のモットーとして「誠実」を掲げたところなんて、それまで出合ったことかなかったからである。私は、マルコス提案に大いに感激し、共感した。

 こうしたICAでの論議を見てきた私は、生協とは、「公正」や「正直」、そして「誠実」を基礎とし活動する市民組織なんだ、と思うようになった。そして、人びとが「健康で文化的な生活」を営むことができる社会を実現させるためには、こうした市民組織が増え、供給高が増すことが望ましいと考えるようになり、その発展を願うようになった。

 日本における生協組合員は3000万人近くになり、その70%以上が地域生協の組合員で、その世帯加盟率は38%に達する。今や、日本最大の消費者団体である。
 これも、日本の生協が「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」にうたわれている、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基礎とし、正直、公開、社会的責任、他人への配慮という倫理的価値を信条とする活動を続けてきたからではないかというのが、私の見方だ。それだけに、今回の、コープこうべの一部役員の不祥事は、生協への信頼を損ないかねない重大な事態と私に映ったわけである。

 しかも、不祥事を起こしたコープこうべが、日本ではもっとも由緒ある名門の生協だったことが、私のショックを倍加させた。
 コープこうべの前身は、1921年に発足した「神戸購買組合」である。設立で中心的役割を果たしたのは“生協の父”といわれるキリスト教社会運動家の賀川豊彦であった。その後、「神戸消費組合」と改称。戦後、生協法施行により「神戸生協」と改称するも、1961年に灘生協と合併して「灘神戸生協」となる。さらに、1989年に「コープこうべ」と改称した。今年は、発足から100周年にあたる。
 生協の全国組織は、1951年に結成された日本生活協同組合連合会だが、これまでに10人の会長を輩出している。うち7人が、コープこうべの出身者。現行の会長もコープこうべ出身者である。こうした一例からしても、コープこうべが、これまで日本の生協運動の中で占めてきた位置と役割が分かろうというものだ。つまり、日本の各生協は、コープこうべを模範と仰いで活動してきたと言っても過言でない。

 相次ぐ模範生協の不祥事に驚き
 それだけに、私が今回の不祥事から受けた衝撃は大きかったわけだが、私のショックを倍加させた要因は他にもあった。それは、最近の、もう一つの生協の不祥事である。
 それは、2019年11月初めのことで、東北の新聞各紙で報道された。その内容は、みやぎ生協(仙台市)の理事長が、私的な飲食費を、取引先との飲食などに使う「渉外費」として不適切に決済していたことへの責任をとり、理事会で辞任の意向を示した、というものだった。つまり、生協のトップが、取引先との関係で使う生協の予算を、私的な飲み食いに流用していたというのだ。
 内部通報で明らかになったというが、報道では、理事長1人、もしくは経理部長と2人での私的な飲食を「渉外費」として決済した事例が11件(37万円分)、常勤理事26人のうち16人の間でも不適切な決済が26件(69万円分)あったという(日経)。

 わが国では、生協への世帯加盟率が50%を超す道県が4つある。北海道、宮城県、兵庫県、福井県である。その宮城県での最大の生協が、みやき生協だ。そんなこともあって、みやぎ生協もまた、これまで模範生協と言われてきた。

 相次ぐ模範生協での不祥事。その原因はいったいどこにあるのだろうか。
 コープこうべの「組合長の解職についてのお知らせとお詫び」は「第三者を含めた検討組織を立ち上げ、組織統治のあり方を検証し、改革に取り組んでまいります。これらの進捗については、あらためてご報告します」としている。どんな報告がでてくるのか注目したい。


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