2021.06.09   出入国管理政策の抜本的改革を求める
         世界平和アピール七人委が訴え

岩垂 弘 (ジャーナリスト)
  
 世界平和アピール七人委員会は6月8日、「人権尊重を!出入国管理政策の抜本的改革を求める」と題するアピールを発表した。スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが本年3月に名古屋出入国在留管理局の収容先で亡くなったが、入管側の対応はサンダマリさんの人権を侵害するもので国際的な人権基準を満たしていないとして、日本政府に対し真に人権を尊重する出入国管理政策へ転換するよう強く求めている。

 世界平和アピール七人委は、1955年、ノーベル賞を受賞した物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは147回目。
 現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)の6氏。
 アピールの全文は次の通り。


        人権尊重を! 出入国管理政策の抜本的改革を求める
                          世界平和アピール七人委員会

 法務省・出入国在留管理庁(入管庁)の人権侵害は、従来からさまざまに指摘されてきた。入管庁は、難民申請者を母国への送還を免れるために難民申請や在留延長申請を繰り返す不法滞在者だとし、彼らを施設に長期「収容」し、母国へ強制送還する例が度々生じてきた。収容施設でほぼ毎年複数の死亡者が出ているという事実は、日本の入管制度が収容者に過酷な状況を強いている証拠と言わざるを得ない。

 入管制度をより厳格なものへ変えようとする出入国管理及び難民認定法「改正」案が審議されているさなか、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が3月に名古屋出入国在留管理局の収容先で亡くなった。ウィシュマさんに面会していた支援者は「面会をするたびに体調が悪化していた」と述べ、「すぐに入院させるべき」と何度も申し入れたが、職員は拒否し続け、死を迎えるに至ったと証言している。
 
  この状況が国際的な人権基準を満たしていないことは明白である。3月末、国連人権理事会の特別報告者と恣意的拘禁作業部会は、日本政府の入管政策を厳しく指弾した。日本政府の人権に配慮する意識が著しく低いことが国際的な批判を浴びたのであった。「姉は大好きな国で亡くなった。姉のビデオと最終報告書を見せてほしい」とウィシュマさんの二人の妹は涙ながらに訴えたが、入管側は「調査中」を繰り返すのみである。母親のスリヤラタさんも「娘は動物でなく人間だ。入管はなぜ『点滴して』と言ったのにしなかったのか。原因が知りたい。警察に捜査してほしい」と訴えている。
 
 2019年のデータでは、日本国内で難民申請を行った外国人は1万375人に上ったが、実際に認められた事例はわずか44人で、認定率は0.4%に過ぎない。同年のOECD諸国の難民認定率が10%を軽く超えていることと比べると圧倒的に低い。日本政府は安上がり労働力としてしか外国人を受け入れておらず、外国からの移住者の人権を尊重する制度と思想が根本的に欠如している。そして、そのことが国内でよく認識されていない。
 
入管庁の権限を強化するための法改正に対する反対運動が広がり、とりわけ若者が立ち上がって声を挙げ、廃案に追い込んだ。若者を鼓舞した人権意識の高まりが社会に勇気を与えるものとなった。私たちは、これまでの外国人に冷たい受け入れ制度を根本的に改め、真に人権を尊重した出入国管理政策へと転換するよう日本国政府に強く求めたい。

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