2008.11.18
アクセント
ことば (38) 日本語のアクセント
日本語のアクセントはやっかいだ。東京に通算で30数年も生活しているというのに、私はいまだにアクセントで迷う。寿司屋でカウンターに座って刺身を注文する際、たとえば、「あじ」や「さば」がほしいとき、アクセントで戸惑ってしまう。鯵(あじ)は「あじ」と「あ」を高く発音しなければならない。アクセントをつけずに「あじ」とフラットに発音すると味(あじ)になる。鯵(あじ)や味(あじ)、橋(はし)や箸(はし)、端(はし)など、同音異義語はアクセントで区別する場合が多い。おー、恐ろしや、複雑怪奇な世界。
まぐろ、はまち、とろ、あじ、さば、こはだ、いくら、うに、あかがい、うなぎ、あなご、あわび、いか、たこ、あまえび、しゃこ、かずのこ…など、それぞれにアクセントがある。とても頭では覚えきれない。アクセントはまさに、「習うより慣れよ」の世界だ。本当は「あじ」を食べたいのに、アクセントに自信がなくて「こはだ」を注文したなどと、地方出身者なら誰でも一度は経験する話だ。この手の苦労は東京やその周辺で生まれ育った人にはわからない。
何せ、東京語のアクセントには、頭高(あたまだか)、中高(なかだか)、尾高(おだか)、平板(へいばん)の4種類の型があり、単語によってそれぞれ異なるのである。
頭高型: 「あじ」、「とろ」、「うに」、「たこ」、「あわび」、「しゃこ」、箸(はし)
中高型: 「あかがい」、「あまえび」
尾高型: 「なまこ」、橋(はし)
平板型: 「まぐろ」、「はまち」、「さば」、「いか」、「うなぎ」、「こはだ」、「あなご」、「かずのこ」、味(あじ)、端(はし)
田舎から東京に出て来ると、まず面食らうのが東京語のアクセント。そのパターンの多様性に驚く。ちなみに、私の田舎は鹿児島県鹿屋市吾平町(かのやし・あいらちょう)。鹿児島弁には多様性どころか、どうもアクセントそのものがないような気がする(あるいは平板調のアクセントのみ)。ただし、アクセントについて、特に方言のアクセントについては、正式に学習したことがないので間違っているかもしれない。しかし、ここに記述したこと(文章)をためしに鹿児島弁で読んでみたら、すべての語を起伏のない平板調のアクセントで読んでいる自分に気づいた。頭高は皆無。たぶん尾高型か平板型のどちらかだと思うが、判断に迷う。どちらの型も単語レベルでは起伏がなく区別できないが、助詞(てにをは)を補足すると違いがわかる。ひょっとしたら、鹿児島弁はどうも、尾高型が圧倒的に多いのかもしれない。
松野町夫 (翻訳家)
日本語のアクセントはやっかいだ。東京に通算で30数年も生活しているというのに、私はいまだにアクセントで迷う。寿司屋でカウンターに座って刺身を注文する際、たとえば、「あじ」や「さば」がほしいとき、アクセントで戸惑ってしまう。鯵(あじ)は「あじ」と「あ」を高く発音しなければならない。アクセントをつけずに「あじ」とフラットに発音すると味(あじ)になる。鯵(あじ)や味(あじ)、橋(はし)や箸(はし)、端(はし)など、同音異義語はアクセントで区別する場合が多い。おー、恐ろしや、複雑怪奇な世界。
まぐろ、はまち、とろ、あじ、さば、こはだ、いくら、うに、あかがい、うなぎ、あなご、あわび、いか、たこ、あまえび、しゃこ、かずのこ…など、それぞれにアクセントがある。とても頭では覚えきれない。アクセントはまさに、「習うより慣れよ」の世界だ。本当は「あじ」を食べたいのに、アクセントに自信がなくて「こはだ」を注文したなどと、地方出身者なら誰でも一度は経験する話だ。この手の苦労は東京やその周辺で生まれ育った人にはわからない。
何せ、東京語のアクセントには、頭高(あたまだか)、中高(なかだか)、尾高(おだか)、平板(へいばん)の4種類の型があり、単語によってそれぞれ異なるのである。
頭高型: 「あじ」、「とろ」、「うに」、「たこ」、「あわび」、「しゃこ」、箸(はし)
中高型: 「あかがい」、「あまえび」
尾高型: 「なまこ」、橋(はし)
平板型: 「まぐろ」、「はまち」、「さば」、「いか」、「うなぎ」、「こはだ」、「あなご」、「かずのこ」、味(あじ)、端(はし)
田舎から東京に出て来ると、まず面食らうのが東京語のアクセント。そのパターンの多様性に驚く。ちなみに、私の田舎は鹿児島県鹿屋市吾平町(かのやし・あいらちょう)。鹿児島弁には多様性どころか、どうもアクセントそのものがないような気がする(あるいは平板調のアクセントのみ)。ただし、アクセントについて、特に方言のアクセントについては、正式に学習したことがないので間違っているかもしれない。しかし、ここに記述したこと(文章)をためしに鹿児島弁で読んでみたら、すべての語を起伏のない平板調のアクセントで読んでいる自分に気づいた。頭高は皆無。たぶん尾高型か平板型のどちらかだと思うが、判断に迷う。どちらの型も単語レベルでは起伏がなく区別できないが、助詞(てにをは)を補足すると違いがわかる。ひょっとしたら、鹿児島弁はどうも、尾高型が圧倒的に多いのかもしれない。
東京語のアクセントは、頭高型が一番印象に残る。少なくとも私にはそうだった。以下の語は、東京語ではすべて頭高で発音するが、鹿児島弁にはもちろん、そんな面倒なものはなく、起伏のない平板調のアクセントを使用する。
頭高型: 春(はる)、秋(あき)、雨(あめ)、雲(くも)、みかん、ラジオ、テレビ、カメラ、カラス、カマキリ、こうもり、めがね、ネクタイ、タクシー。
また、私の兄や姉妹もすべて頭高になる。松野(まつの)、翠(みどり)、睦子(むつこ)、好子(よしこ)、明子(あきこ)、洋子(よーこ)、清子(きよこ)、伸子(のぶこ)。
偶然とはいえ、私の苗字や兄や姉妹の名前がすべて頭高型だった。その理由だけでもないのだろうが、上京してまもない頃、私は東京語のアクセントはほぼすべて頭高と独り合点していた。これはもちろん誤りであるが、それほどまでに強烈な印象を植え込まれ、アクセントの不明な語は手当たり次第、だれかれかまわず、私は頭高で発音していた。夏(なつ)2、冬(ふゆ)2、風(かぜ)0、柿(かき)0、時計(とけい)0、町夫(まちお)0などの語を頭高で発音していたので、東京の人は皆、驚いたことだろう。そういえばあの頃、よく外国人と勘違いされていた。私は日本人ですよと何回、言っても信じてもらえなかった。おかしな日本語をしゃべる青年。そんな人物を日本人とは思わない人がいても不思議ではない。今から思えばそういうことだが、当時はしかし憤慨した。アクセントが違うだけなのに、と相手がうらめしかった。
日本語のアクセント辞典は種類が少ない。特にデジタル版のアクセント辞典は非常に少ない。一般的な国語辞典には通常、アクセント表示はない。しかし、『大辞林 第二版』にはアクセント表示があるので重宝する。さらに嬉しいことに、この辞典はインターネット版が無償で使用可能。Yahoo!辞書 http://dic.yahoo.co.jp/ の中に組み込まれている。
『大辞林』のアクセント表示は単純明快だ。
日本語のアクセントは、単語を発音するさいに、その単語の中に含まれる個々の「拍」を高く発音するか低く発音するかによって決まる。拍とは日本語の音の長さの単位をいい、「キャ・シュ・チョ」などの拗音はカナ2字で1拍である。要約すると、単語はアクセントのあるもの(起伏式)と、ないもの(平板式)に大別できる。アクセントのないものは「0」、アクセントが1拍目にあるものは「1」、2拍目であれば [2]、3拍目であれば [3]… のように数値で示す。その位置が語中にあるものを「中高型」、語末にあるものを「尾高型」と言う。「頭高型」「中高型」「尾高型」を総称して「起伏式」と言う。
『大辞林』のアクセント表示:
0 = アクセントがない(平板式): 「まぐろ」、「はまち」、「さば」、「いか」、「こはだ」、「おとな」
1 = アクセントが1拍目(頭高型): 「あじ」、「とろ」、「うに」、「たこ」、「しゃこ」
2 = アクセントが2拍目: 「あかがい」、「あまえび」
3 = アクセントが3拍目: 「おとこが」(男) 例: 男が悪い
注記:
「大人が悪い」: 「大人(おとな)」はアクセントがない(おとな = 0)。「おとなが」にもアクセントが全然出てこない。
「男が悪い」: 「男(おとこ)」はアクセントが3拍目(おとこ = 3)。「おとこ」だけのときは平板調でアクセントが出てこない。しかし「おとこが」と4拍目(助詞など)を含む場合は、「こ」を高く「が」を低く発音する。つまり、3拍目「こ」のアクセントが顕在化する。
アクセントは言語により異なる。日本語は前述の通り、高低アクセント(pitch accent)を使用する。英語は、アクセントのある母音を強く発音する強弱アクセント(stress accent)を使用する。強弱と高低の両方を用いる言語もあるそうな。また、これら以外の音的特徴をもつ言語もある。たとえば、中国語。中国語は、たとえば北京語の四声のように、1音節の内部の音程変化を広範囲に利用する。チェコ語は、あらゆる単語の第1音節が常に強い。スワヒリ語は最後から2番目の音節が常に高い、などなど。
アクセントは訓練により矯正出来るものらしい。
詳しくは東京発音アクセント教室 http://www5a.biglobe.ne.jp/~accent/index.html を参照してください。
それによると、小学生時代をどこで過ごしたかにより、アクセントの訓練内容や期間が異なるという。以下のA地域出身者は一般にアクセント感覚(音感)に乏しいらしい。高低感覚を養うための訓練を十分に行い、自分の声を自由に操れるようにする必要がある。その後標準アクセントのパターンを身につけるため、くり返し練習しコツを学習する、とある。
A: 岩手南端 宮城 山形南東半 福島 栃木 茨城 埼玉東端 静岡市北部 福井市 三重南端 愛媛西部 福岡南端 佐賀 長崎 熊本 宮崎 鹿児島 沖縄
最も恵まれているのは、以下のD地域出身者。限られた単語についてのみ注意が必要。
D: 北海道 東北北半 関東西部・南部 新潟 長野 山梨 静岡 愛知 岐阜 中国 大分
あちゃあ、やっぱし鹿児島は最悪のグループに入っている!え、音感に乏しい?ウーム、そういえば思いあたるフシもある。鹿児島出身の私は歌を覚えるのに、いつも普通の人の数十倍努力しているような気がする。以前、荻窪のカラオケ教室に1ヶ月通って、野中彩央里(のなか さおり)の『雪国恋人形』をやっと習得したというのに、東京出身のN女史などは私の歌うのをニ、三回聴いただけで簡単にマスターしたもんね。私が音感に乏しいのは子供時代を鹿児島で過ごしたのも原因のひとつなのかな?
歌曲とことばのアクセントは密接な関係にある。たとえば、演歌は歌詞が先にでき、作曲家がその歌詞にふさわしい曲を作る。その際、ことばのアクセントにも留意しながら高低のメロディを創作するという。八代亜紀の『雨の慕情』で、「雨、雨ふれふれ、もっとふれ」の雨(あめ)を同じ音程にして「あめ」などにすれば、東京人には、まるで天から飴が降ってくるような変な気がするに違いない。
最も恵まれている地域は、北海道 ... 大分。北海道には方言がないというから、北海道はわかる。でも大分はどうして?同じ九州なのに、どうして大分は最も恵まれた地域なのか。大分や福岡東部は、瀬戸内海を通して四国・中国・近畿地方と文化的に(言語的に)つながっているということなのかな?
頭高型: 春(はる)、秋(あき)、雨(あめ)、雲(くも)、みかん、ラジオ、テレビ、カメラ、カラス、カマキリ、こうもり、めがね、ネクタイ、タクシー。
また、私の兄や姉妹もすべて頭高になる。松野(まつの)、翠(みどり)、睦子(むつこ)、好子(よしこ)、明子(あきこ)、洋子(よーこ)、清子(きよこ)、伸子(のぶこ)。
偶然とはいえ、私の苗字や兄や姉妹の名前がすべて頭高型だった。その理由だけでもないのだろうが、上京してまもない頃、私は東京語のアクセントはほぼすべて頭高と独り合点していた。これはもちろん誤りであるが、それほどまでに強烈な印象を植え込まれ、アクセントの不明な語は手当たり次第、だれかれかまわず、私は頭高で発音していた。夏(なつ)2、冬(ふゆ)2、風(かぜ)0、柿(かき)0、時計(とけい)0、町夫(まちお)0などの語を頭高で発音していたので、東京の人は皆、驚いたことだろう。そういえばあの頃、よく外国人と勘違いされていた。私は日本人ですよと何回、言っても信じてもらえなかった。おかしな日本語をしゃべる青年。そんな人物を日本人とは思わない人がいても不思議ではない。今から思えばそういうことだが、当時はしかし憤慨した。アクセントが違うだけなのに、と相手がうらめしかった。
日本語のアクセント辞典は種類が少ない。特にデジタル版のアクセント辞典は非常に少ない。一般的な国語辞典には通常、アクセント表示はない。しかし、『大辞林 第二版』にはアクセント表示があるので重宝する。さらに嬉しいことに、この辞典はインターネット版が無償で使用可能。Yahoo!辞書 http://dic.yahoo.co.jp/ の中に組み込まれている。
『大辞林』のアクセント表示は単純明快だ。
日本語のアクセントは、単語を発音するさいに、その単語の中に含まれる個々の「拍」を高く発音するか低く発音するかによって決まる。拍とは日本語の音の長さの単位をいい、「キャ・シュ・チョ」などの拗音はカナ2字で1拍である。要約すると、単語はアクセントのあるもの(起伏式)と、ないもの(平板式)に大別できる。アクセントのないものは「0」、アクセントが1拍目にあるものは「1」、2拍目であれば [2]、3拍目であれば [3]… のように数値で示す。その位置が語中にあるものを「中高型」、語末にあるものを「尾高型」と言う。「頭高型」「中高型」「尾高型」を総称して「起伏式」と言う。
『大辞林』のアクセント表示:
0 = アクセントがない(平板式): 「まぐろ」、「はまち」、「さば」、「いか」、「こはだ」、「おとな」
1 = アクセントが1拍目(頭高型): 「あじ」、「とろ」、「うに」、「たこ」、「しゃこ」
2 = アクセントが2拍目: 「あかがい」、「あまえび」
3 = アクセントが3拍目: 「おとこが」(男) 例: 男が悪い
注記:
「大人が悪い」: 「大人(おとな)」はアクセントがない(おとな = 0)。「おとなが」にもアクセントが全然出てこない。
「男が悪い」: 「男(おとこ)」はアクセントが3拍目(おとこ = 3)。「おとこ」だけのときは平板調でアクセントが出てこない。しかし「おとこが」と4拍目(助詞など)を含む場合は、「こ」を高く「が」を低く発音する。つまり、3拍目「こ」のアクセントが顕在化する。
アクセントは言語により異なる。日本語は前述の通り、高低アクセント(pitch accent)を使用する。英語は、アクセントのある母音を強く発音する強弱アクセント(stress accent)を使用する。強弱と高低の両方を用いる言語もあるそうな。また、これら以外の音的特徴をもつ言語もある。たとえば、中国語。中国語は、たとえば北京語の四声のように、1音節の内部の音程変化を広範囲に利用する。チェコ語は、あらゆる単語の第1音節が常に強い。スワヒリ語は最後から2番目の音節が常に高い、などなど。
アクセントは訓練により矯正出来るものらしい。
詳しくは東京発音アクセント教室 http://www5a.biglobe.ne.jp/~accent/index.html を参照してください。
それによると、小学生時代をどこで過ごしたかにより、アクセントの訓練内容や期間が異なるという。以下のA地域出身者は一般にアクセント感覚(音感)に乏しいらしい。高低感覚を養うための訓練を十分に行い、自分の声を自由に操れるようにする必要がある。その後標準アクセントのパターンを身につけるため、くり返し練習しコツを学習する、とある。
A: 岩手南端 宮城 山形南東半 福島 栃木 茨城 埼玉東端 静岡市北部 福井市 三重南端 愛媛西部 福岡南端 佐賀 長崎 熊本 宮崎 鹿児島 沖縄
最も恵まれているのは、以下のD地域出身者。限られた単語についてのみ注意が必要。
D: 北海道 東北北半 関東西部・南部 新潟 長野 山梨 静岡 愛知 岐阜 中国 大分
あちゃあ、やっぱし鹿児島は最悪のグループに入っている!え、音感に乏しい?ウーム、そういえば思いあたるフシもある。鹿児島出身の私は歌を覚えるのに、いつも普通の人の数十倍努力しているような気がする。以前、荻窪のカラオケ教室に1ヶ月通って、野中彩央里(のなか さおり)の『雪国恋人形』をやっと習得したというのに、東京出身のN女史などは私の歌うのをニ、三回聴いただけで簡単にマスターしたもんね。私が音感に乏しいのは子供時代を鹿児島で過ごしたのも原因のひとつなのかな?
歌曲とことばのアクセントは密接な関係にある。たとえば、演歌は歌詞が先にでき、作曲家がその歌詞にふさわしい曲を作る。その際、ことばのアクセントにも留意しながら高低のメロディを創作するという。八代亜紀の『雨の慕情』で、「雨、雨ふれふれ、もっとふれ」の雨(あめ)を同じ音程にして「あめ」などにすれば、東京人には、まるで天から飴が降ってくるような変な気がするに違いない。
最も恵まれている地域は、北海道 ... 大分。北海道には方言がないというから、北海道はわかる。でも大分はどうして?同じ九州なのに、どうして大分は最も恵まれた地域なのか。大分や福岡東部は、瀬戸内海を通して四国・中国・近畿地方と文化的に(言語的に)つながっているということなのかな?
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