2021.07.31 東京で〝感染爆発〟過去最多3865人、全国でも感染者数1万人を超える、
   「元栓」を全開しながら「蛇口」をいくら閉めても「漏水」は止まらない
              
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

 新型コロナウイルスの感染拡大がいよいよ全国的に本格化してきた。東京では3日連続で「過去最多」を記録、7月29日には3865人に達した。新型コロナウイルス感染者は東京五輪開催中の首都圏で爆発的に広がり、神奈川1164人(過去最多)、埼玉864人(過去2番目)、千葉576人(同)となった。首都圏(1都3県)全体では6469人となり、全国1万693人の60.5%を占める。

 首都圏と結びつきの強い西日本での感染拡大も凄まじい。大阪932人、福岡366人、沖縄392人(過去最多)と、先週に比較して1.5倍前後も増えている。これまでの予想では、東京で3000人を超えるのは8月3日ごろだとされてきた。しかし、インド株の変異ウイルスの感染力が強いこともあって、感染拡大のスピードは著しく速い。西浦京大教授の予測では、前週比1.5倍で感染が続くと、都内の1日新規感染者数は8月中旬以降1日1万人前後、同1.3倍でも5000人になるとの試算が出されている(NHKニュース7月29日)。

 政府は7月30日にも新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言(8月2~31日)を神奈川、埼玉、千葉、大阪の4府県に出す方針だという。また、これに合わせて東京、沖縄の緊急事態宣言を8月31日まで延長する。だが、問題は「緊急事態宣言」が感染拡大防止の「決め手」になりうるかどうかということだ。現に、東京では4回目の緊急事態宣言(7月12日)が発令されてから2週間以上も経つのに、その効果はまったくあらわれていない。逆に過去最多の〝感染爆発〟状態が発生しているのである。

 原因は明らかだろう。菅政権が国民の反対を押し切って五輪開催を強行し、根拠のない「安心・安全神話」を振りまいてきたことが、国民の間に新型コロナウイルスへの「楽観バイアス」を生み出し、それが「自粛ムード」の低下につながっているためだ。この間の事情を毎日新聞(2021年7月30日)は、次のように分析している。

 「東京都に4回目の緊急事態宣言が発令されてから2週間(7月12~25日)の人出は、過去3回の宣言時と比べて大幅に増えている。若者が集う東京・渋谷では初めて宣言が発令された2020年4月の3倍に迫る人出となっている。(略)度重なる宣言の発令に閉口する人は多く、五輪が自粛の雰囲気をかき消す」
 「4回目の宣言について、筑波大の原田隆之教授(臨床心理学)は人々が宣誓に慣れたことや、五輪開催と自粛要請という矛盾するメッセージが併存する点を指摘し、効果を疑問視する。『人間は矛盾を感じて不安定な心理状態になると、自分の都合の良いことだけを受け入れる傾向がある。五輪の熱狂に共感しても、自粛要請は受け流している人が多い』と語る。その上で『1回目の宣言から変わらず、外出自粛を求めるスローガンを繰り返しているだけ。高速道路料金や鉄道運賃を倍増させるなど、国や自治体は実効性を高める対策を早急に検討すべきだ』と提言する」

 この分析には同感するところが多い。原田教授の指摘も的を射ている。しかし、毎日新聞にとっては「五輪中止」を掲げることはタブーなのか、そこまでは踏み込んでいない。政党の間でも「五輪中止」を主張しているのは共産党だけで、立憲民主党は「五輪中止は却って混乱を大きくする」(枝野代表発言、時事通信7月29日)との立場だ。また、何が何でも五輪開催にこだわるIOCは、アダムス広報部長が7月29日の記者会見で、新型コロナの感染拡大について「パラレルワールド(並行世界)みたいなものだ。私たちから東京に対して感染を広げていることはない」と述べ、東京五輪開催と感染拡大は無関係との認識を示したという。すでに大会関係者の陽性者は7月29日現在198人に達し、29日には1日当たり最大の24人の陽性者が発生しているというのに―、である(毎日7月30日)。

 私は、「楽観バイアス」にとらわれているのは日本国民ではなく、菅政権とIOCだと思う。正確に言えば、彼らは「楽観バイアスにとらわれている」のでなく、「楽観バイアスを振りまいている」のである。菅政権にとっては政権維持のために、IOCは利権確保のために、いまや「五輪続行」が至上命題になっており、「五輪中止」は彼らの命運を断つ恐れがあるからである。

 拙ブログのサブタイトルにも掲げたように、「元栓」を全開しながら「蛇口」をいくら閉めても「漏水」は止まらない。東京五輪と感染拡大の関係は、IOCが言うような「並行世界」ではなく、両者は緊密に結ばれた「共存世界」なのである。「元栓=五輪開催」を閉めない限り、「蛇口=自粛」をいくら閉めても「漏水=感染拡大」は止まらない。この自明の法則は、パラリンピック開催時までに証明されるだろう。それは、パラリンピック中止という大事件に発展するかもしれない。
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