2021.09.20 野党は「格差なき社会」の旗を振れ
――八ヶ岳山麓から(344)――

阿部治平 (もと高校教師)

 次期衆院総選挙で野党共闘は一時勝利の兆しが見えたが、新しく選ばれる総裁を担ぎまわる自民党に敗れるのは確実のようだ。せめて惨敗だけは避けてほしい。
 安倍・菅政権は悪政と失政続きだったのに、自民党総裁候補の岸田文雄氏も河野太郎氏も本来の主張を曲げて安倍参りをやった。高市早苗氏はもともと自民党の中でも右翼だから、だれがやっても日本は新自由主義・改憲・原発再開・男系天皇がつづく。
もう面白くもなんともないのにメディアは大騒ぎをし、作られた騒ぎに野党は埋没している。
 
 気を取り直して、9月8日発表の野党共闘の共通政策6項目を見よう。
1,憲法に基づく政治の回復。
2、科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化。
3、格差と貧困を是正する。
4、地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行。
5、ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現。
6、権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する。
 それぞれの項目の中身を読むと、もっともなことばかりである。安保法制の廃止や非正規雇用の解消は当然として、とくに原発のない脱炭素社会の主張には、元地理教師としては強い共感を覚える。さらに立憲民主党も共産党もそれぞれ独自の政策を出している。ところが、ひとくちで「これだ!」と有権者の胸に響くものになっていない。

 NHKの8月の世論調査によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は先月より4ポイント下がって29%で、去年9月の内閣発足以来最低を更新した。一方、「支持しない」と答えた人は、6ポイント上がって52%で、発足以降もっとも高くなった。
 ところが政党別の支持者を見ると、読売新聞の9月6日の緊急全国世論調査で、自民党支持率は依然36%もある。立憲民主党はわずか7%、共産党にいたっては3%だった。
 自民党支持率が高く自民党内閣の支持率が低いのは、おおまかには自民党支持者の菅内閣離れがもたらしたものであろう。それとは別に、野党各党の支持率は軒並み1割未満である。
 そして調査のたびに支持政党なしの「無党派層」が40~50%もある。この7年有余の自民党の政治に不満を持ちながら野党にも魅力を感じない人々、これに政治に無関心な人々を加えた「無党派層」がいわば第一党として存在しているのである。
 この人々が日本の政治に果たしている役割は何か。私は学者ではないし、せいぜいネット・新聞・テレビからのニュースで判断するだけだが、つぎのように考える。
 投票行動についていうと、30%強を占める自民支持の右派部分は、日米安保堅持・改憲・新自由主義・格差是認といった明確な政治的信条をもつ人々だから、国政選挙では断然投票率は高い。

 一方、「無党派層」は「支持政党なし」であるがゆえに、その投票率はなはだ低い。これが投票率全体を48.8%というアメリカ並みの低さにしている。とくに2019年参院選では、30歳以下の若者の投票率は30%台にとどまった。
「無党派層」による低い投票率が自民党の得票効果を高め、比例代表の得票率を39%近くにおしあげた。これが自民党政権を支える結果をもたらしているのである。
 「無党派層」は、自民党もだめなら野党にも魅力を感じないという人々だが、この中には年金があてにならないとか、非正規雇用だとか、教育費が高いとか、深刻な生活問題を抱え、政治に不満を持つ人はかなりいるはずである。だとすればこの人々の要求や不満にこたえる政党がなかったということになる。
 ちなみに信濃毎日新聞による長野県の最新調査では、「次期衆院選で野党の勢力伸長や政権交代を望む」声は58%、「自公の勢力維持、伸長を望む」のは28%であった。さらに次期衆院選比例代表の投票先は、自民25%に対し立民が28%とトップ。共産10%、公明3%であった。ところが政党支持率では自民26%、立民18%、共産7%、「無党派層」は42%である。長野県でも「無党派層」の存在は大きい(信濃毎日2021・9・7)。

 最大政党ともいうべきこの「無党派層」の存在、ここに問題を解く鍵がある
 立憲民主党の枝野幸男代表は、ことあるごとに「保守本流」をとなえ、日米安保条約や天皇制に関して共産党との違いを強調してきた。みたところ氏は、アメリカの民主・共和の2大政党対抗関係を構想しているようだ。
 だが、思い出してほしい。2017年総選挙の直前、民進党が解党して小池百合子氏の「希望の党」に合流しようというとき、小池氏は民進党内のリベラル派の「排除」を明言した。彼らが行き場を失って立往生したとき、枝野幸男氏が中心となって立憲民主党を立ち上げた。直後の総選挙では「希望の党」ではなく、急ごしらえの立憲民主党が共産党の協力を得て、野党第1党の地位を占めることができた。
 このとき有権者のかなりの部分は、自民党と「希望の党」の保守2政党ではなく、革新的でリベラルな政党を求めたのである。いまもこれに変りはない。だから立憲民主党は、「連合」にいつも気を使うような、また自民党リベラル派の政策をちょっといじったような程度の第二保守政党になってはならない。
 いまや立憲民主党は、革新・リベラルの旗幟を鮮明にし「無党派層」の感情と要求に応えた政策を前面に立てるべきである。

 野党共闘では社民党がいまにも消えそうだから、共産党は日本で唯一の左翼政党である。この党は独善性と閉鎖性が問題だが、少数ながら国政選挙では底力を発揮してきた。ところが、若者の入党がまれで党員の老化がすすみ、いまや活動は衰弱ぎみである。
 また、元中央委員会議長不破哲三氏は91歳の現在も常任幹部会員だ。志位和夫委員長(67)も書記局長に就任以来30年余も幹部をやり続けている。こういう人事ではどんな組織でも沈滞はまぬがれない。
 また中国共産党と同じ「共産党」という名前に有権者の大半は嫌悪感を持っている。若者をひきつけ組織を維持するためには党名は変えねばならないが、共産党にはその気がない。破局は迫っている。

 最後に一言。冒頭の野党共通政策はとりあえずこれでやれるとは思うが、人はあれこれ細かくは読まない。だから問題はこれをどうアピールするかである。ここはひとつ、池田勇人の“所得倍増計画”、田中角栄の“列島改造”、小泉純一郎の“自民党をぶっ壊す”に負けないくらいの、ひとくちでドーンと胸に響くキャッチフレーズが必要である。
 「めざせ、格差のない社会」とか、「高度の社会福祉国家を」とかを思いつくが、我ながらあまりインパクトはない。皆様はどうお考えだろうか。

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