2021.12.14 バッジの物語
韓国通信NO684

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

 国会議員のバッジからは特権意識と、胡散臭さが漂う。
 バッジがないと夜も日も明けない国会議員たちにくらべ、バッジをつける学生やサラリーマンが少なくなった。所属を意識させるバッジは窮屈なせいだろうか。何年も放ったらかしていた社員バッジの返却を求められ、退職時に生まれて初めて「始末書」を書かされたことを思い出す。

<興味深いバッジの歴史>
 最近、顔写真付きIDカードを紐に着けた姿を見かける。物扱いと言ったら失礼かも知れない。管理社会を象徴するカードをぶら下げて、本人たちはどんな気持ちなのだろうか。
 JRの前身、国鉄の労働組合員が組合バッジを着けて処分されたことがある。当局による組合に対する不当介入。団結破壊の意図は明らかだった。
 バッジを「つけろ」「外せ」という話題は絶えなかった。職場で赤い羽根はかまわないのに、革新都政の青空バッジは何故ダメかという職場論議もあった。
 子どもから大人まで、好みでつけるバッジやリボンにはデザインが素晴らしいイッピンも多い。着けた本人にとっても、社会にとっても時代を映す貴重な財産になるかもしれない。
 東日本大震災の「絆」のリボンは、『花は咲く』の歌とともに街にあふれ、そして忘れられた。
 3年後の2014年に起きたセウォル号沈没事件の真相究明を求める黄色いリボンはローソクデモと合流して韓国社会を一変させる原動力になった。
 SDGs(国連の持続可能な開発目標)のバッジが静かなブームになっている。訴えは地球温暖化、貧困問題、不平等社会の解消、平和、福祉社会の実現など17項目と多岐にわたる。ブラックな政治家、財界人まで着けている。不思議なバッジの世界である。
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(写真/私のお気に入り/ニキ・ド・サンファルのバッジ 縦4㎝横3㎝)

<ブルーバッジから見えたこと>
 北朝鮮による拉致が明らかになってから20年がたつ。被害者救出を真っ先に掲げた安倍政権は北朝鮮との対決姿勢を強めただけで何もしなかった。「やってるふり」は安倍・菅政権のキーワード。ブルーバッジもそのひとつだった。
 来日したトランプ大統領(当時)にバッジを着けさせる演出までした。「当事者で話し合ったら」と、もっともな助言が効いたのか、「条件を付けずに金正恩と会う」と言い出してみたものの時すでに遅く、万事休す。何もかも行き詰まって健康問題を理由に政権を投げ出したのは周知のとおりだ。
 言い訳のバッジに変化が生まれた。バッジ組の異常繁殖。それを拉致問題解決の意思表示と素直に受け止める人は少ない。
バッジを着けた理由は本人たちに聞くほかないが、改憲を声高に主張し中国と南北朝鮮に対して強硬路線をとり続ける安倍首相の同志としての意思表明に見えた。驚いたのは外務省の高級官僚までがバッジを着けるようになったことだ。
 新首相も見てのとおりのバッジ姿。安倍元首相への忖度、同調姿勢は明らかだ。
 国民民主党の玉木代表もいつの間にかバッジ姿になっていた。民主党から民進党、希望の党、立憲民主党とは一線を画して国民民主党党首へ。バッジを通して安倍山脈に連なる政治家への変身。やはりと言うべきか、選挙後、日本維新の会とともに改憲への積極姿勢を明らかにした。

 立憲民主党の代表に泉健太氏が選ばれた。私が立憲民主党候補に投票したのは野党四党合意による候補の一本化を支持したから。個人的には自民党の党首選びも立憲民主党の党首選びに関心はなく、誰でもよかった。
 だが青いバッジ姿の立憲民主党の泉健太氏の登場には心底驚いた。
 早速、日本共産党との選挙協力を白紙に戻すと表明して自民党を喜ばせた。安保法制の強行採決を始め数々の治安立法制定に血道をあげた安倍元首相とバッジで繋がった。
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 三党首お揃いのバッジ姿から翼賛政治の恐怖感さえ抱いた。立憲民主党の行く末が心配だ。
 野党第一党の代表として自民党政権と対決する気迫も姿勢も乏しい。護憲姿勢も怪しい。大企業には及び腰、原発再稼働も基本的に受け入れる姿勢。玉木代表とは希望の党へなだれ込んだ経歴はそっくりだが、国民、立憲に分かれたものの着地点は同じ。枝野氏が保守二大政党の出現を食い止めた努力は一体何だったのか。

<政治に新しい流れを>
 政治に対する国民の根強い不信感と不満はそっくり残ったままだ。立憲の低調な党内論争を聞いていると、今さらながら低投票率の原因が野党側にあったと気づかされるほどだ。有権者が政治に期待が持てないのは当然だ。
 富める者はますます富み、貧しき者が増え続ける社会。飽くなき利益追求社会が地球と人類を滅亡させようとしている。資本主義は限界に近づきつつある。行き詰まりを見せる資本主義社会から生まれた自国優先、極右排他的潮流が世界に拡がりをみせている。世界の共生を否定する自己中心の狂信的な主張だ。一方、欧米の若者たちを中心に社会主義が希望として公然と語られている。ロシアや中国とは異なる、正義と公正と共生をもとめ、資本主義から脱皮とようする新しいうねりだ。
 立憲民主党よ、恐れることは何もない。全有権者の2割にも満たない絶対得票率の自民党こそ存亡の危機にある。富める者、既得権にあぐらをかく者たちの批判や票など気にする必要はない。中途半端なリベラル中道に未来はないことを心に銘じるべきだ。まずはブルーバッジの連鎖を断ち切ることを強く求めたい。

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