2021.12.20 〝政治対決の弁証法=支配勢力と共産党との攻防プロセス〟の角度からの分析では総選挙敗北を総括できない
野党共闘の展望も開けない

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 今回の衆院選で共産と協力したことが立憲の議席減につながった――とする意見が立憲民主党の内外で強まっている。先日行われた立憲代表選挙においてもこの点が事実上の争点となり、共産との共闘のあり方を見直す方針を掲げた泉健太氏が(大差で)代表に選出された。泉健太氏は、12月8日から始まった衆院代表質問では「政策立案型」政党への脱皮を強調し、自民とも共産とも距離を取る「穏健中道路線」をめざす方向を明らかにした。代表質問の内容も政権批判を封印し、与党張りの政策提案に力点を置いた。政権との対立軸を示さなければならない野党第一党の代表質問とは思えない弱腰ぶりで、森友学園問題の再調査や日本学術会議の会員任命拒否問題への追及もなかった(毎日社説12月9日)。

 同じく12月8日のこの日、立憲民主党は共産や社民など野党各党と国会運営で連携するために開いてきた「野党国会対策委員長会談」の定例開催をやめることを決めた。泉代表が共産との共闘のあり方を見直す方針を掲げているので、続ける意義が薄いと判断したからだという。これで、これからの野党間の国会運営はバラバラになるかもしれない。(朝日、同)。

 また就任以来、激しい野党共闘批判を続けている連合芳野会長は日経新聞のインタビューの中で、「共産との選挙協力は一貫してありえない」「立民と国民が選挙協力すべきだ」「自公両党には是々非々で臨む、敵対する必要はない」「維新との関係はこれから判断する」などと反共主義全開の発言を重ねている。自公両党には是々非々で取引する一方、共産に対しては徹底的な攻撃を加え、立憲と国民を「責任ある野党」に育てて現体制を支えるという〝体制内労組〟の面目躍如だ。非大企業労組出身の女性会長だから、神津前会長の反共路線を少しでも変えるかと思っていたら、「ガラスの天井」を打ち破ると称して「反共ハンマー」を振るう――これがジェンダーフリーの現実だとしたら恐ろしい。以下は、そのインタビュー発言である(日経12月11日)。
 ――立民は衆院選で議席を減らしました。
 「政権批判が強く映ってしまった。どういう国、社会を目指すのかが非常にわかるづらかった。もう少しわかりやすく打ち出してほしい」
 ――共産党との共闘で連合の組合員が離れることがありましたか。
 「あったと判断している。共産党が協力に絡むのは一貫してありえない。現場が混乱する」
 ――参院選の1人区はどう対処すべきですか。
 「立民と国民で協力してもらえればと思う」
 ――両党の合流を求めると呼びかけましたが。
 「国民、立民が協力して戦うという意味での合流だ。政党がくっつくということではない。それは政党が考えるべきで連合が介入すべきことではない」
 ――自民、公明両党との関係はどう考えますか。
 「連合の考え方に近い部分があれば政策実現の観点から是々非々だ。敵対する必要はない」
 ――選挙で自民党を応援する可能性は。
 「それはない」
 ――日本維新の会とは協力しますか。
 「維新との関係に非常に慎重な地方組織もある。現場の意見を聞きながらこれから判断する」

 遠藤自民選挙対策委員長は、吉野連合会長の功績を称えて次のようなコメントをしている(朝日12月13日)。
 「(10月末投開票の)衆院選は絶対安定多数の261議席をとらせていただきましたが、決して楽な選挙ではありませんでした。むしろ敵失と言うと変ですが、相手方(野党)の色々な混乱があって、また連合の会長(芳野友子氏)が共産党(との共闘は)ダメよと、そんな話をしていたこともあって勝たせていただいた」

 こうした報道が相次いでいるせいか、12月3~5日に実施された読売新聞世論調査では、立憲民主党が今後も共産党と協力して政権交代を目指すのがよいと思うかとの質問には、「思わない」63%(前回57%)、「思う」24%(同30%)と否定的回答が大勢を占めた。この傾向は、野党支持層でも「思わない」58%(同51%)とほとんど変わらないのだから驚く(読売12月6日)。世論の3分の2近くが今回の野党共闘に「ダメ」を出しているとなると、立憲が動揺するのは無理もない。泉氏が大差で代表に選ばれたのは、こんな世論を反映しているのだろう。

 これら一連の報道から感じることは、立憲の共産との共闘見直し路線がもはや既成事実となり、「共産包囲網」ともいうべき世論状況が大きく形成されていることだ。これに対して、共産はどのように反論しているのだろうか。志位委員長の第4回中央委員会総会における報告は、以下のようなものだ(しんぶん赤旗11月29日)。
 (1)今回の選挙戦を支配勢力(自民・公明と補完勢力)と、野党共闘・共産との攻防プロセス、すなわち〝政治対決の弁証法〟という角度からとらえることが重要だ。
 (2)その場合の重要なポイントは、①野党が初めて本格的な共闘の態勢(共通政策、政権協力、選挙協力)を作って総選挙に臨んだこと。②こうした展開は、支配勢力に日本の歴史でも初めての共産党が協力する政権が生まれる恐れを抱かせたこと。③危機感にかられた支配勢力が一部メディアも総動員し、必死の野党共闘攻撃、共産党攻撃を行ったこと――を総括の視点に据えることだ。
 (3)言い換えれば、野党共闘と共産党が支配勢力に攻め込み、追い詰めたからこそ相手も必死の反撃を加えてきたのであって、野党共闘そのものが間違っていたわけではない。ただ、準備の遅れもあり、支配勢力の激しい共闘攻撃に対して野党が力を合わせて反撃できなかったことは認めなければならない。

 しかし、この〝政治対決の弁証法〟の論法は、「我々が強くなればなるほど敵も強くなる」という、これまで繰り返してきた共産党の「強がり」の主張をそのまま言い換えたものにすぎない。これでは、これまで以上に頑張らなければ選挙戦に勝てないということになり、「ガンバリズム=特攻精神」を発揮する以外に方法が見つからなくなる。我が陣営の作戦は「あくまでも正しい」という司令官の大号令が前提になり、彼我の戦力を冷静に比較分析することなく作戦を組み立てたミスが見過ごされている。このような日本帝国陸軍の『失敗の本質』が飽くことなく繰り返されるのは、司令官1強体制のもとで共産の組織が硬直しており、多面的な議論が行われなくなっていることの反映だろう。

 とはいえ、立憲泉代表の「政策立案型」「穏健中道路線」が世論の支持を得ているとも思えない。先の読売新聞世論調査においても、立憲民主党の新代表に選ばれた泉健太氏に「期待する」との回答は34%にとどまり、「期待しない」は46%だった。支持政党別にみると、立憲支持層では「期待する」が約7割を占めたが、無党派層では「期待する」30%で、「期待しない」42%を下回った。政党支持率では、与党側の自民41%(前回39%)、公明3%(同4%)、維新8%(同10%)に対して、野党側は立憲7%(同11%)、共産2%(同2%)、れいわ1%(同2%)、社民0%(1%)と相変わらず振るわない。支持政党なしの無党派層は32%(同26%)でむしろ前回よりも増えているのである。要するに、立憲は新しい代表を選んで方針転換したにもかかわらず、意図した結果は得られていないということだ。

 すでに、泉代表に対しては「軽量級」で存在感がない、国会代表質問は野党第一党としての迫力がない、これでは与党とも野党とも区別がつかないなどなど、多くの批判が出ている。この間隙を縫って維新が躍進するようなことになれば、事態は急転する。参院選の前に方針転換が行われるのか、それともこのまま「提案型中道路線」を続けるのか、立憲の行方が注目される。(つづく)

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