2022.01.01 今こそ「護憲・軍縮・共生」に向けて力を合わせよう
2022年の年頭にあたって

岩垂 弘 (リベラル21運営委員会)

 私たち、マスメディアの動向に関心を持つ者有志がブログ「リベラル21」を立ち上げたのは2007年3月でした。それ以来、今年で15回目の新年を迎えることができました。硬派のブログがこんなにも長く、それも1日も休まず(ただし日曜日は休載)続いてきた例は珍しく、これも、この間、私どもや寄稿者の原稿をずっと読み続けてくださった読者の皆様の支持があったからだと考えています。改めて皆様に御礼を申し上げます。

 私たちがブログを開始するにあたって掲げたのは「護憲・軍縮・共生」でした。「護憲」「軍縮」については今さら説明の必要がありませんが、「共生」という文字に私たちが込めた思いは「人間同士の協同・連帯を強めよう」と、「自然との共生を図ろう」というものでした。
 ともあれ、私たちが求める社会は「護憲・軍縮・共生」をキーワードとするリベラルな社会なのだから、そうした社会の実現を目指して、幅広い人たちによるさまざまな意見や主張、情報をブログで発してゆこう――と考えたわけです。それから15年。世界と日本は果たして「護憲・軍縮・共生」の実現に向けて前進したでしょうか。私には、むしろ15年前より後退しているように思えてなりません。
 
  まず、「護憲」ですが、2012年以降の自民党・安倍晋三政権は憲法9条の改定に意欲を燃やしたものの、国民の抵抗にあって明文改憲を達成できず、やむなく憲法9条の解釈を変えて集団的自衛権の行使に道を開く安保関連法案を反対を押し切って成立させました。これにより、自衛隊が米軍とともに戦うことが可能になりました。
 自民党はその後、明文改憲のための改憲案を決定。改憲項目として「自衛隊の明記」「緊急事態条項の新設」「参議院の合区解消」「教育環境の充実」の4つを盛り込みました。改憲の主眼が自衛隊の明記、つまり9条改定にあるのは言うまでもありません。 

  昨年秋の総選挙で議席を増やした自民党、日本維新の会、国民民主党は俄然、改憲に意欲を見せ、今年7月に予定されている参院選で改憲勢力が3分の2以上を占めれば、いよいよ国会で改憲を発議し、国民投票にかけたい、としています。とりわけ自民党は、これまでの「憲法改正推進本部」を「憲法改正実現本部」に改称、各都道府県にも実現本部を設置するという熱の入れようです。岸田文雄首相は12月21日に開かれた実現本部の総会に出席し、改憲への意欲を示しましたが、首相が党の憲法組織に出席するのは異例、との報道がありました。

 どうやら、護憲派にとって今年が護憲運動の正念場となりそうです。 国民1人ひとりが「護憲か、改憲か」の選択を迫られる重大な年になるかもしれません。

 次いで「軍縮」問題はどうなっているでしょうか。ストックホルム国際平和研究所によれば、世界の軍事費は1990年代から毎年、上昇を続けており、2019年には総額1兆9170億米ドル(約199兆円)にのぼります。その38%が米国、14%が中国で、この2国で52%を占めます。つまり、世界は依然として軍拡の時代なのです。
 日本も防衛費が10年連続で増えています。政府の2022年度当初予算案では5兆4005億円で過去最大を更新。が、暮れの臨時国会で成立した21年度補正予算7738億円と合わせると6兆1744億円になり、初めて6兆円の大台に乗りました。対国内総生産(GDP) 比で1・09%になりますが、自民党は「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」(総選挙での公約)としています。まさに大軍拡への宣言です。

 「核軍縮」の面でも事態は好転するどころか悪化しています。核軍縮が進むどころか、核軍拡が進んでいるからです。
 1987年に米ソ首脳が中距離核ミサイル(INF)全廃条約に調印した時は世界の人びとに希望を与えました。これを機に軍縮が進展するだろうと思われたからです。しかし、米ロ間の核軍縮交渉は遅々として進まず、2018 年にトランプ米大統領がこの条約の破棄を発表、世界に衝撃を与えました。そればかりではありません。2020年には、米国防総省が「潜水艦に低出力の核弾頭を実戦配備した」と発表したことが、多くの人びとを恐怖に陥れました。「低出力の核弾頭」とは小型核爆弾 のことです。核兵器が実際に使用される危険性が一段と高まった、と受け取られたのです。一方、中国は中距離核ミサイルの増強に力を入れている、とされています。
 
  核戦争が勃発するのでは、と恐れた非同盟諸国や世界の非政府組織(NGO)の奔走で、2017年に核兵器禁止条約が国連で採択され、昨年発効、今年3月には第1回条約締結国会議が開かれます。しかし、核兵器保有国と米国の「核の傘」に依存している日本政府などは、これにそっぽを向いています。世界で唯一の戦争被爆国の国民が日本政府の態度を変えることができるかどうか、世界が注目しています。

 そして「共生」の面でも、私たちは今、極めて深刻な後退を余儀なくされています。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行) が、その決定的要因です。
 2年間にわたるパンデミックで、世界でも日本でも人間社会が分断され、人びとは孤立化させられつつあります。なにしろ、「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するには3密を避けるのが一番」というわけですから、人が集まること自体が“悪”とされる世の中になってしまった。これでは、労働現場や地域における人と人との関係は疎遠、希薄になるばかりです。

 一番その影響を受けているのは社会運動です。社会運動とは、特定の目的なり要求なりを実現するために、同じ目的、要求をもった人たちが共同して展開する行動を言います。多くの場合、その行動は集会、デモ行進、署名活動といった形をとり、その規模が大きければ大きいほど世論形成の上で効果が期待できるとされています。 大勢の人が集まれば集まるほど、社会運動にとっては好ましいというわけです。

 ところが、人は密集してはいけないというわけですから、この2年間、日本では、人びとが一堂に会する大規模な社会運動は影を潜めました。その代わり、社会運動団体はオンラインで集会、講演会、シンポジウムなどに挑戦しています。
 しかし、このやり方にはどうしても限界があり、大勢の市民を集めることはできない。このまま推移すると、日本の社会運動は衰退してしまうのでは、と私の懸念は増すばかりです。

 「人間同士の協同・連帯」を取り戻すために、従来の集会・デモ、それにオンラインに代わる方策は他にないものか。人間の絆を強めるような手段は他にないものか。社会運動関係者をはじめ「リベラル21」の読者の皆さんに今こそ知恵をしぼっていただきたい。それが 新年を迎えた私の願いです。

 併せて読者の皆様が今年も引き続き「リベラル21」をご愛読くださいますようお願いします。

Comment
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack