2022.02.17  韓国も大変だぁ~
        韓国通信NO689

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 韓国政府が国民にソーシャルディスタンスの延長措置を決めた去る4日、新規感染者は2万7千人を超え、自宅療養者も10万人を超えた。感染者数は今月末には1日、13万人~17万人に達する見込み(中央対策本部発表7日)だという。
 オミクロン株登場まではコロナ対策の優等生だった韓国が医療崩壊寸前とは驚くほかない。徹底したPCR検査、2回のワクチン接種率は80%、3回目の接種率も54%を越えた。
 コロナ禍のさなか、海外では政権交代が(日本を例外にして)相次ぐ。社会的弱者が不満を募らせ爆発させた。来月9日の韓国の大統領選挙もコロナと無関係ではありえない。

<韓国の大統領選挙>
 大統領選挙が熾烈さを増している。直接投票制で任期は5年。元朴正熙大統領は憲法を変えて17年間にわたる軍事独裁を敷いた。その反省から生まれた憲法では再任は認められない。大統領制と内閣制についてはさまざまな議論があるがここでは触れない。
 『大韓民国憲法』を読んだ。第69条に「憲法を順守し、国家を守り祖国の平和的統一と国民の自由と福利の増進及び民族文化の育成涵養に努力し大統領としての職責を誠実に遂行する」ことを大統領に宣誓させることを知った。
 アメリカの大統領が就任式で聖書を前にして憲法の維持と保護、擁護を誓う姿も見慣れた光景だ。 
 立憲民主国家なら驚くことはないが、日本はどうだ。憲法の順守どころか、変えるのが使命と発言する首相に慣れた私には憲法69条は新鮮だった。

小原 韓国通信
               <写真提供ハンギョレ新聞>
 韓国の大統領選の争点は何か。
主な候補者は写真左から与党「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)、保守野党「国民の力」尹錫悦(ユン・ソギョル)、中道野党「国民の党」安哲秀(アン・チョルス)、革新野党「正義党」沈 相奵(シム・サンジョン)の四人。うち李在明と尹錫悦による熾烈なトップ争いと尹錫悦候補の優勢が伝えられているが、金大中、廬武鉉の例もあり予断は許さない。
 大まかに言って李明博・朴槿恵元大統領の流れを組む保守候補と文在寅の後継である民主派との争いだが、注目は5年前に息絶えたと思われた守旧勢力が猛烈な勢いで息を吹き返していることだ。揺らぐ韓国の民主化路線。5年前のローソクデモは一体何だったのかと首をかしげるほどだが、それほどに現在の韓国社会の未来が描きにくく、国民の不満と不安が大きいということなのかも知れない。
 現政権の支持低下は若者たちの政権離れが決定的といわれる。曹国(チョ・グク)の法務部長官の就任をめぐって露見した家族の財テクと子女の不正入学事件は、朴槿恵時代と少しも変わらない権力者たちの腐敗ぶりを印象付けた。高騰を続ける住宅は、持たざる庶民から夢を奪い、土地開発に関わった政治家、高級官僚たちの不正もひんしゅくを買った。
 「左派(アカ)政権」「北朝鮮寄り」「反日政権」と扇動的な批判を続ける保守系報道が眠っていた国民の反共意識を呼び起こし、政権交代への大きな流れを作った。

<暗闇を照らしたローソクは消えるのか>
 新自由主義経済が支配的な世界の中で、韓国だけが公正な経済を実現できるとは考え難いが、所得格差の是正の公約、非正規雇用者対策、女性の処遇改善に夢を託した国民は政府への不満を募らせる。
 北朝鮮との対話は国民の期待を集めたが、二人の米国大統領の思惑に振り回されたあげく北朝鮮の相次ぐミサイル発射で政権末期を迎えることになった。対北、対米、対日、対中関係も行き詰まり感が否めない。なかでも日韓関係は交渉を拒む安倍首相の嫌韓の壁の前で立ち往生した。安倍は国政の私物化を批判して大統領になった文在寅を避けた。
 支持基盤だった市民たちの失望も大きい。財閥、大資本に対する政府の弱腰姿勢。棚晒しの脱原発公約。廬武鉉政権時代から懸案だった国家保安法の廃止も手つかずのままだ。
 「積弊清算」を掲げ、過去の政治的・経済的不正の克服に取り組んだが壁はあまりにも大きすぎた。
 朴槿恵大統領弾劾の端緒となった崔順実ゲート事件の捜査を担当して検事総長に抜擢された尹錫悦が野党候補として現政権と真っ向対決する構図は理解しがたい。

<どうなる日韓関係>
 日本にとって隣国の大統領選挙は大きな関心事である。選挙まで一か月足らず、わが国にも有力候補者をめぐり、日韓関係に関する論評と憶測がさまざまに飛び交っている。
 日韓関係を悪化させたのは、文在寅大統領だと断言する日本政府と同じ視点に立つなら、「国民の力」の尹錫悦候補に期待する声が優勢なのは仕方がないのかもしれない。
 現政権の継続を訴える与党の李在民候補に対して、尹錫悦候補は北朝鮮、中国脅威論をふりかざし、日米韓軍事同盟の強化を訴え、原発推進、さらには文在寅に対する「報復」を口にする強気ぶりである。
 政権交代を望む世論を背景にローソクデモに至った民主主義の歩みまで否定し、韓半島を再び冷戦時代に戻す顕著な動きに対しては「クーデター」にも等しいと懸念する声も上がっている。
 尹錫悦が大統領になれば、日本側はまたもや「日韓新時代」の到来と歓迎するに違いないが、見込み違いも甚だしい。
 徴用工問題、慰安婦問題にくわえ、ユネスコ世界遺産問題の根っこは同じ。佐渡の金山で朝鮮人が強制労働された歴史的事実を「戦いで変える」と、天に向かい唾を吐くかのような日本側の挑発は驚くばかりだ。日本政治の右傾化とともに韓国の変化にも注目したい。

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