2022.03.07 韓国は何処へ――その2
              韓国通信NO691

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)


 前回に引き続き、韓国の友人からの手紙を紹介したい。
 手紙をくれた金君は、釜山在住。地方公務員として働く、一人の子どもを持つシングルファーザーである。私の韓国の友人のなかでは一番若い。彼は成均館大学を卒業後、10年ほど前に政治学(平和構築構学)を学ぶために日本にやってきた。ソウル大学で韓国語をともに学んだスティーブン君というアメリカ人から、「面倒見て」と頼まれて付き合うようになった。私の友人たちと反原発集会に参加するために福島まででかけたこともある。 
 将来、国連で平和活動をするのが夢だったが果たせず、結婚した奥さんとも別れた。
 今回の金君の手紙は前回ご紹介した鄭周河さんとは少し趣を異にして、若者らしい率直な社会批判が特徴となっている。
 日本では競馬の予想みたいな興味本位の選挙報道が伝えられるが、大統領に誰がなっても波乱含み、東アジアの政治、日韓関係にも大きな影響を与える。マスコミで報じられることのあまりない市民のナマの声が韓国理解の一助になればうれしい。

 韓国からの手紙  <3月2日受信メール全文>
 お元気ですか。メールを今頃やっと読みました。
 私は只今育児休職中です。今日は娘の小学校の入学式があるのでメールを書き終わったら娘を起こして学校へ行く準備をしなければなりません。
 コロナ禍をどのようにお過ごしなのか心配していましたが、お元気そうで何よりです。
 お尋ねの大統領選挙のことです。まず今回の選挙ほど好ましい候補者が不在の選挙はありません。
 与党候補の李在明(イ・ジェミョン)は典型的なポピュリスト。状況に応じて意見を変える。嘘があまりにも多すぎて信用できない人物です。
 テジャンドン疑惑(城南市長在任中の土地開発にからむ疑惑)をはじめ、多くの事件に関わり、京畿道、城南市を自分の所有物のように振る舞った犯罪行為は明らかです。嫌悪感を抱きます。
 一方の有力野党候補尹錫悦(ユン・ソギョル)は私には韓国の平均的な人物に見えます。勿論、彼を支持していません。
 「法曹界出身の政治家がのさばると国は滅ぶ」という言葉があります(韓国の国会議員のうち16%が法曹界出身―廬武鉉も文在寅も弁護士出身、さらに李在明も弁護士、尹錫悦候補は元検事総長出身―訳者註)。元検事、弁護士による政治は弊害が多すぎます(ちなみに日本は5%程度)。
 日本との外交に関する尹錫悦の発言は与党民主党を意識しただけの「親日」発言です。国にとって大切なことなら日本と対立することも主張すべきです。与党にしても野党にしても、真剣に外交について考える人が少ないのが実情でとても残念です。
 文在寅政権になって民主主義と自由に対する価値が損なわれてきたと考えています。最も民主的でなければいけない人たちが以前より権威主義的で腐敗したように感じられます。ローソク精神というより市民団体の腐敗、堕落ぶりが見えてきた感じです。曹国、尹美香(元挺対協代表。現国会議員―訳者註)等々市民団体出身者たちが私欲のためにどのように振る舞ってきたか、多くの人が知ることになりました。
 このような腐敗と無能ぶりと嘘が、尹錫悦を有力な大統領候補に押し上げる一番の原動力になったのです。
 今度の選挙ではおそらく、多くの人たちは「より嫌いでない」候補者を選ぶしかないと推測しています。韓国の日常は政治嫌悪が溢れ、大部分の人は政治にあまり関心を持たない。どうしたら金持ちになれるのか、金儲けができるのか、不動産の価格ばかり考えるようになってしまいました。
 PS/ お尋ねの沈相奵は候補者の中で正論を多く語り、もっとも論理的な人物と思いますが、相変わらず支持が少なく、支持率も下がり続けています。どうしてそうなのか私もよくわからないのです。

                   ◆
 
 
 有力視される二人の候補者のうち「より嫌いでない」人物が当選するという話は金君だけでなく多くの友人たちからも聞いた。
 やはり日本留学時代に知り合い、現在も家族ぐるみで付き合っている李さんは「尹錫悦は裏切り者、嘘つき」「李在明は庶民の生活が分かっていない」と手厳しい。それでも李在明に投票するのは尹錫悦に勝たせないためだと胸の内を明かす。
 釜山大学で教える金女史も尹錫悦の出世欲と金銭疑惑にふれ「彼は検事としても失格。大統領の器ではない」。さらに「尹錫悦を検事総長に抜擢した文在寅は人を見る目がなかった」と批判は現政権にまで及ぶ。
 鄭周河さんも心配していたことだ。韓国はいつのまにかモノとカネばかりに関心を持つ社会になってしまった。金君も同じ指摘をした。
 多様化する価値観と、先が見えない不安な時代の大統領選挙によって韓国社会の分断が一層深まると予想される。本日(3月3日)、国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補が尹錫悦候補との電撃的な候補一本化合意を発表した。これまでリベラル派と目されてきた安哲秀氏の守旧派との合流で醜い権力争いが一層露骨になった。野合に見える一本化に有権者たちはどう答えるのか。混とんの極み。韓国は何処へ行くのか。

 ところで、ウクライナ情勢について一言。
ロシアのウクライナ侵略に 抗議する
だが 人殺しは ウクライナだけではない
今も ミャンマーで、アフリカ各地で、そして中東ガザで 
かつて 今のロシアがしているように ベトナムで イラクで アフガンで 戦争があったことを
忘れない
殺すな! 

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