2022.03.22 戦い続けるウクライナ BBCの最新現地報道から

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 一方的に侵略を開始した(2月24日)強大なロシア軍と頑強に戦い続ける、人口4千3百万余、国土面積60万平方キロ余の国ウクライナ。本稿を書いている19日朝には、ウクライナ東南端のロシアとの国境地帯の都市マリウポリ(人口約50万人)の中心部までロシア軍が突入し、ウクライナ側との戦闘が続いている。
 開戦以来6人の記者とカメラマンをウクライナ現地に送り込んで、全世界に向け報道を続ける英BBC。3月18日には、ロシア軍が包囲攻撃を続ける東部国境沿いの同国第2の都市ハリコフ(人口143万人)に記者とカメラマンを送り込んだ。日本時間3月18日朝、現地からの第1報が全世界に報道された。以下に、英語原文に沿って抜粋を紹介します。

 かつては裏口として使われていた入口から民家に入る。いまは凍てつくような風に毛布が、はためくだけだ。ハリコフ北部の豊かな農地を見渡すことができたはずだが、その面影もない。
 ガレージには、放置されたスケートボードの横に、世界最高級の対戦車兵器の空の梱包ケースが10数個並んでいる。その前には、ロシア兵の死体がうつぶせに倒れている。
 この家は前線基地と化しており、使用済みのケースは、ウクライナの独立のために兵士たちが命がけの戦いをしたことを表している。
 3週間にわたる激戦の末、ロシア軍によるウクライナ第2の都市ハリコフの攻略を阻止しているため、私たちはハリコフを堅守するウクライナ軍に取材することができた。
 ウクライナ軍第2機動歩兵大隊のユーリは、ロシア軍の装甲兵員輸送車2台と、粉々になった戦車2両の残骸を指さしながら「もっと先に進みたいか」と問いかけた。同大隊は2014年にロシア軍がクリミア半島に侵攻し、占領した後に、再編成された。
 「彼らは、ドローン、航空機、攻撃ヘリなどを動員した。頭上をロシア軍の砲弾が響き、近くの道路やアパートを破壊した」「ロシア軍は、何度も撃退された。その当時も140万人の人々が住んでいた。その仕返しに、ロシア軍は昼夜を問わず爆撃をしているのだ」
 いま、ロシア軍によって地面は搔きまわされ、厚い泥がブーツに吸い付く。後ろを振り返ると、先ほど通った家並みが廃墟と化している。
 「最初の3日間が最もひどかった。雨が降って、歩くと泥まみれになり、まるで豚のようだった」と近くにいたオレクサンダーさん(44)は云った。
 破壊された兵員輸送車のそばには、大きなクレーターがある。ロシア軍侵攻初日の2月24日、ロシア軍の攻撃で6人のウクライナ兵が死亡した。その後、多くの兵士がここで亡くなったが、公式な数字は発表されていない。
 クレーターの淵には緑色の軍用ブーツが置かれ、その先にロシア兵の死体がある。その近くには、ロシア軍の砲撃の音にも動じず、カラスが停まっていた。
 ウクライナ空軍のパイロットだったコンスタンティさん(58)は、退職後ジャーナリストになった。今は前線に戻り、足を引きずりながら、壊れたほうきの柄を支えにして歩いている。ロシア軍の榴散弾で足を負傷したが、前線から離れることを拒否している。「この道はロシアからハリコフ中心部まで続いている。ここを突破されたら、ハリコフに入られてしまう」と彼は云った。 
(中略)
 ブーンという音がして、ワイヤー誘導ミサイルが私たちの頭上を通過している。道端に落ち、ガス・パイプラインが燃え上がった。帰り際、空中で何かをキャッチする。何マイルにも伸びている銅線だ。それは、私たちの頭上を通過したロシアのミサイルを誘導するために使われたものだった。
 私たちが拠点に帰ると、待っていたのは近くに住むオレクサンダーさん(44)だった。彼はこの地方の守備部隊に属し、ドンバスで戦った経験がある。私が彼になぜ戦うのかと尋ねると、彼は笑って答えたー「自由なウクライナのため、家族のため、そしてあなた方のためです。独立と平和のためです」
 指揮官のユーリが、まだ人が住んでいる集合住宅まで車で送ってくれた。ロシアはウクライナを非武装化するために来たというが、ここでは、それが市民にとって何を意味するかを見ることができる。20階建ての団地が、ロシアの爆撃でまだ煙を上げている。ユーリによると、それは2日前だった。
 ハリコフでは3月16日、一般市民の死者が234人(うち子供14人)と発表された。この数日間は罰当たりだったと、市民たちは思い知らされた。ロシア軍のグラッド・ミサイル弾が飛んできたのだった。
 ハリコフ在住のスヴィトラーナさん(72)と夫は爆撃で破壊されたアパートで、一晩に2時間しか眠れない。もう何週間もだれとも話していない、と言いながら。私たちを家に入れてくれた。「あなた方が来てくれてうれしいわ」と彼女は言った。彼らの住む建物は被災し、裏の窓はなくなり、中央の部屋でソファーに座って寝ている。
 彼女に、「プーチン大統領にメッセージはありますか?」と尋ねると、「いいえ」ときっぱり。「この男は、すでに正気を失い、明確な考えを持たなくなっているように、私には見えます。まともな人間なら、老人や子供、幼稚園、学校、病院を爆撃するようなことは出来ないでしょうから。彼は、わたしのいうことを理解できないでしょう」
 その後、彼女の家から近いところで街を守っている人たちたちのことを尋ねると、彼女は涙を流して云ったー「そう、祖国を守ってくれている彼らに、私はとても感謝しています」「私たちはいつも応援しています。彼らはとても勇敢です」―後略
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