2022.04.20 韓国は何処へ ~新大統領就任をひかえて~
韓国通信NO694

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

 尹錫悦(ユン・ソギョル)の大統領就任まで一か月たらず。「ローソク革命」を成し遂げた市民たちの熱気と圧倒的支持を背景に登場した文大統領とは対照的にして冷ややかなシラケ就任式が予想される。
 歴史的な僅少差(0.7% 25万票余)で政権交代を果たした尹錫悦側はいまだに政権構想を打ち出せないでいる。
 文政権に「反対」の立場だけでは展望のある政策は望むべくもない。
 辛勝だっただけに「国民融和」、元検事らしく「公正、法治主義」、保守政権だから「親米、反北朝鮮」の姿勢だけは明確になった。具体的な政策は政権発足を待たなければならないが、朴槿恵元大統領の捜査に当たった尹錫悦がし14月2日、大邱の朴槿恵の自宅を訪れ、逮捕に結びついた捜査について「面目ない」と謝罪、就任式に出席を依頼したという話。また対立候補の李在明を逮捕する可能性も否定しないという日本人には理解しがたい話も伝わってくる。政治家としても人間としても理解不能な要注意人物というのが私の感想だ。

<衝撃! 安倍元首相と朝日新聞の癒着>
 カーラジオから「週刊ダイヤモンド」「朝日新聞」「安倍元首相」が聞こえたが事情が呑み込めず、助手席の妻に聞いた。運転に集中していたせいか、耳が遠くなったせいか意外な内容で理解できなかった。
 翌8日の新聞で、安倍元首相の依頼を受けた朝日新聞の峯村健司編集委員が週刊誌の記事に圧力をかけた事件の概要を知った。新聞各社の報道もほぼ同じ内容の記事で、朝日新聞社の発表をそのまま記事にしたものだった。

 安倍首相時代、新聞社とテレビ局への圧力は目に余るものがあった。報道各社の幹部との会食は「森友」「加計」「桜を見る会」の疑惑のさなかに常態化した。報道の公正が歪められた疑いは濃厚だ。首相の進退がかかった重大案件の疑惑がベールに包まれたまま残った。国会で野党側の追及が不十分だったのも確かだが、メディアの怠慢も明らかだ。皮肉なことに今回韓国の大統領になる尹錫悦のような検事が日本にいたらどうなったのか。韓国では国政の私物化によって大統領が刑務所送りになった。

 テレビ報道の現場では報道ステーションのコメンテータ-から古賀茂明が追われ、NHKのクローズアップ現代から国谷裕子が消える一方、NHKの岩田明子政治部記者の露骨な政府忖度報道が突出した。権力へ厳しい発言を続けてきた評論家の佐高信もいつの間にかテレビから消えた。東京新聞の望月衣塑子記者、元NHK記者の相澤冬樹記者の発言から報道現場の実態を垣間見ることができるが、全体の報道がどのように歪められたか知る由は無い。

 朝日も堕ちるところまで落ちたという印象が強い。公正さと権力に遠慮しないことで信頼を得てきた朝日新聞の幹部記者が安倍元首相の使い走り、太鼓持ちとなった。
 一人の例外的な行動で朝日新聞全体を批判するのは「木を見て森を見ず」と叱られそうだが、編集委員本人が処分を「不公正」と主張したことにくわえ、1か月の停職処分でお茶を濁す経営者の姿勢からは事件の重大さを本人も経営者も理解しているとは思えない。
 衝撃を受けたのは私だけだったのか。どの新聞もベタ記事扱い、テレビで取り上げられた痕跡はない。同業他社の不祥事は取り上げ難いのか。この程度の「お手伝い」は常態化しているなら報道機関はすべて共犯といえる。あらためてジャーナリズム全体の在り方が問われる。

 取材のために権力者に近づくことは記者の才覚と言われることがある。安倍首相が検事総長にしたかった東京高検の黒川弘務検事長と賭け麻雀をした記者の一人も朝日新聞の記者だった。記者に慎重さを求める声もあるが、馴れ合いから得た特ダネにどれほどの価値があるのか。馴れ合って失うものがどれほど多いか。権力と闘うことがジャーナリズムの使命のはずだ。そのことを忘れては困る。

<権力にすり寄る労働組合>
 堕落は報道機関だけではない。
 わが国の労働団体最大のナショナルセンター「連合」(日本労働組合総連合 加盟組合員700万人 会長芳野知子)の堕落ぶりはどうだ。表向きは「ウクライナに恒久平和を」「雇用」「コロナウィルス対策」「環境問題」「春闘勝利」といったスローガンを掲げているが実態は賃金抑制、長時間労働、非正規雇用労働者の増大を経営者と一体になってやってきた。連合は百害あって一利なし。

 この数年間、連合は賃上げさえも自粛する体たらくだった。労働者の実質賃金の低下が指摘されると、連合に代わり政府が経営者団体に賃上げ要請するという珍現象さえ生まれた。700万人の組合員は政府に組合費を払ったほうがいい。
 労働団体と政府の協調体制は、戦前の日本にもあった。最近の労働団体は政府にすり寄ったあげく、政権交代を求める野党に日本共産党を除けと注文をつけて自民党を喜ばせている。今や落ち目の自民党にとって玉木国民民主党とともに連合は救世主。会長はマドンナになった。

<面目ない>
 面目ないとは期待にそぐわず申し訳ない時に使われる言葉だ。残念さと恥ずかしさがにじむ。
 韓国ドラマや映画でもよく耳にする。韓国語で面目ない(ミョンモギ オプタ)と尹錫悦が朴槿恵に謝罪したことは既に述べたが、民主化運動を真っ向から否定した発言だ。ローソクデモの渦中で貴女を逮捕したのは面目ない。間違いだったと…。
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「面目ない」と朴槿恵(左)謝罪した尹錫悦

 朝日新聞記者の記事介入事件が発覚して朝日は面目を失ったが、本人も会社も面目ないとは思っていないふしがある。連合の面目は社会的には潰れっぱなしだが、そこには面目という自覚さえない。面目とは何か、考え始めると混乱するばかりだが、今回は表裏一体の面目と厚顔の話題を取り上げた。
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面目という自覚のない連合芳野友子会長

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