2022.05.24 参院選公示まで1カ月、自民にすり寄る国民民主、分裂を促進する連合、進まぬ野党共闘
                 
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)
               
 2020年参院選公示まで1カ月、日経新聞(5月22日)は「1人区、野党競合3分の2」「調整不調、維新も台頭」との見出しのもとに、次のような情勢を伝えた。
 ――参院選の公示日となる見通しの6月22日まで1カ月に迫った。全国32ある改選定数1の「1人区」のおよそ3分の2で複数の野党系候補が出馬する見通しだ。1人区全てで野党候補が競合しなかった2019年の前回選挙までと状況が変わった。

 5月21日時点の日経新聞の集計によると、複数の野党系候補が競合しているのは21選挙区(うち3選挙区は立民・国民がともに公認候補擁立)、競合していないのは11選挙区(うち2選挙区は共産のみ)となっている。競合区が多いのは、立憲民主、共産、国民民主の間で候補者調整が進まなかったこと、維新が7人の候補を擁立していること(前回はゼロ)、などである。

 野党系候補は1人区で2016年は11勝、2019年は10勝を挙げたが、今回はこれらの選挙区でも競合する選挙区が多い。2019年に勝利した10選挙区のうち6選挙区で競合。前回、前々回ともに野党が半数以上の選挙区を制した東北地方でも、宮城、秋田、山形では競合する見込みだという(日経新聞5月22日)。

 本予算で賛成票を投じ、補正予算でも賛成予定の国民民主は、いまや〝与党寄り路線〟へまっしぐらというところだ。5月20日に発表した選挙公約でも、総合的な安全保障政策を推進するとして、「自分の国は自分で守る」項目には、「自衛のための打撃力(反撃力)の整備」「専守防衛に徹しつつ、必要な防衛費を増額」「安全基準を満たした原発の再稼働および次世代炉への建て替え」など、自民の公約かと見紛うような軍備・エネルギー増強政策の満載だ(毎日新聞5月21日)。

 「与党寄り」の政治行動を繰り返し、自公連立政権入りを模索しているのではとの憶測も呼ぶ国民民主党・玉木代表は、朝日新聞のインタビューに対して次のように語っている(5月12日)。
 ――昨秋の衆院選を機に、国民民主の動きが変わった。
 「対決より解決」を訴えて議席を増やした。解決策を求める民意が野党にも向けられていると強く実感した。その民意に沿う判断として政府予算に賛成した。
 ――野党の立場と言いつつ与党と連携するのは、有権者も理解しにくいのでは。
 そこは発想を変えてほしい。有権者は「与党・野党」で政党を選ばなくなっていると思う。有権者は与党か野党ではなく、「何をやろうとしているのか」に関心が向いている。政権交代の可能性が低いなかで、訴えるべきことは「政策実現のリアル」。野党第1党は色々言うが、何も実現していない。スピード感をもって具体的な成果を示していかないと、既存の支援者さえつなぎとめることができない。
 ――野党が一つの塊となって、選挙で与党に挑むべきという考えもある。
 野党が一緒になって選挙に勝てるのであればいいが、勝てないのに一緒になっても有権者から選択肢を奪うだけだ。戦術的な連携は否定しないが、どれほどそんな選挙区があるのか疑問だ。

 ここまで国民民主の与党寄り路線がはっきりしてくると、さすがの連合も立憲民主との候補者調整は諦めざるを得ない。というよりは、立憲民主を国民民主の側の労使協調路線に引き寄せ、自民とも仲良くやっていくというのが連合の基本姿勢だから、5月19日の中央執行委員会は、立憲民主、国民民主両党の候補者が改選数1の「1人区」(32選挙区)では、「比例票の底上げを念頭に、1人区で両党の候補者を支持・支援するとの(地方組織の)判断を理解する」と明記し、両党の競合を容認することを決定したのである(毎日新聞5月20日)。

 要するにこのことは、連合にとっては立憲民主と国民民主の政策の違いなどはどうでもよく、自民とさえ仲良くやっていれば大企業労組の利益を維持できるとの思惑を露骨に示すものだ。国民民主を先遣隊として立憲民主も労使協調路線に引きずり込み、政治的には「対決より解決」のスローガンの下に野党を無力化して翼賛体制を完成させる――これが連合に与えられた政治的役割であり、その操り人形として起用されたのが芳野会長だったというわけだ。

 一方、立憲民主と共産の関係はどうなっているのか。両党は5月9日、全国32の1人区で野党候補の勝利が見込まれる選挙区を優先して候補者調整を進める方針を確認したが、各党首が署名する形での「政策合意」は見送られることになったという(各紙5月10日)。しかし、これでは「野党共闘」は単なる〝口約束〟でしかないことになり、有権者には「野党共闘はこの程度のものか」との印象を与えることになる。

 京都選挙区(改選数2)の激戦を伝えた共産の機関紙赤旗(5月12日)は、京都選挙区での国民民主と維新の選挙協力を、「『非自民・非共産』や改憲など『共通の価値観』は強調するものの、政策協定などは交わさないとしており、『野合』そのものです」と批判している。しかし、その直前の5月9日の立憲民主と共産の話し合いにおいて、党首署名の政策協定が見送られたことについては一言も触れていない。これは明白なダブルスタンダードであり、「天に唾する」行為だと思われても仕方がない。

 昨年9月8日、総選挙を前に市民連合と立憲民主、共産、社会民主、れいわ各党の党首が一堂に会して野党共通政策に合意し、署名調印した。共産はこの選挙を「党の歴史で初めて、政権交代、新しい政権の実現に挑戦する選挙」と位置づけ、全党に決起を呼び掛けた(赤旗2021年9月9日)。それから1年も経たない現在、「野党共闘」は立憲民主と共産の単なる〝口約束〟に化してしまったのである。その彼我の差は余りにも大きく、有権者は付いていけず激しい政治不信に陥っている。この間の事情を丁寧に説明することなく、百年一日の如く票集めに駆り立てるだけの野党各党は、昨年総選挙にも増して厳しい有権者の審判を受けることになる。(つづく)

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