2022.07.12 改憲4党圧勝でも望み無きにしもあらず
           護憲派にまだチャンスはある
                               
岩垂 弘 (ジャーナリスト)


 「改憲4党」の圧勝だった。7月10日に行われた参院選挙。この結果、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の改憲4党は衆参両院で3分の2以上の議席を占めることになり、衆参両院で憲法改正を発議し、これを国民投票にかけることが可能になった。日本国憲法の施行から75年。改憲がいよいよ現実味を帯びてきたわけで、日本は引き続き現行憲法を堅持すべきだと主張してきた護憲派はピンチに陥った形だが、絶望するのはまだ早い。来たるべき国民投票で護憲派が勝利する可能性が残されているからだ。

 改憲4党のうち、改憲の主導権を握っているのは自民党だ。その自民党の改憲案は4項目である。具体的には①自衛隊明記(条文の新設)②緊急事態対応(条文新設)③参院の合区解消(条文拡充)④教育充実(条文拡充)といったものだ。4項目にしぼってはいるが、同党の改憲案の最大の眼目が①の自衛隊明記、つまり憲法9条(戦争の放棄・軍備および交戦権の否認)の改正にあるのは言うまでもない。

 憲法96条には「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とある。
 衆院はすでに改憲4党が三分の二を占めている。加えて、今度の参院選で改憲4党が93議席を獲得、非改選の84議席を加えて177議席となり、参院議席(248)の3分の2以上を占めるに至った。
 このため、岸田首相(自民党総裁)と自民党は、これから先、改憲に向けた作業を加速させることになるだろう。岸田首相も10日の文化放送番組で、改憲について「できるだけ早く発議し、国民投票に結びつけていく」と語った。

 でも、護憲派は「もうダメだ」と落胆するには及ばない。なぜなら、国民投票で9条改正を阻止できるかも知れないからだ。というのは、憲法改正に関する国民投票の流れを規定した憲法改正国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)で「憲法を改正するところが複数ある場合、憲法改正案は、内容において関連する事項ごとに提案され、それぞれの改正案ごとに一人一票を投じることになる」とされているからだ。
 となると、自民党の改憲案(4項目)が国会で発議された場合、国民投票では4項目を一括して投票に付すことはできず、4項目それぞれについて賛否の投票が行われることになる。

 朝日新聞社が5月3日に発表した憲法に関する全国世論調査では、いまの憲法を「変える必要がある」と答えた人は56%(昨年調査は45%)で、「変える必要はない」と答えた人は37%(同44%)だった。しかし、「9条を変えたほうがよいと思いますか」という問いには、「変えないほうがよい」が59%に及び、「変えるほうがよい」は33%にとどまった。
 要するに、国民の中で改憲派が増えつつあるものの、9条に関しては、有権者の約6割が改正反対派なのだ。このことは、注目すべき事実と言える。

 そればかりでない。この調査では「国会での憲法改正の議論を、急ぐ必要があると思いますか。急ぐ必要はないと思いますか」との問いを設けているが、これに対する回答は「急ぐ必要がある」40%、「急ぐ必要はない」54%だ。
 また、この調査には、「あなたが政治にもっとも優先的に取り組んでほしいものはどれですか」という問いがあったが、憲法(改憲または護憲)を挙げた人はなんと2%に過ぎなかった。それに対し、景気・雇用、年金・医療・介護、教育・子育て支援を挙げた人は計68%にのぼつた。
 つまり、国民は早急な憲法改正など望んでいない。それよりも、命と暮らしを守ってほしいと政府に望んでいるのだ。

 であれば、護憲派が国民投票に向けて護憲の大運動を展開すれば、国民投票で9条を守ることができるのではないか。

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