2022.07.22 沖縄県民は「経済」より「反基地」を選んだ
         参院選の結果を分析する
 
宮里政充 (元高校教師)


 7月10日の参院選で沖縄では激戦が繰り広げられた。伊波洋一候補(無所属、オール沖縄推薦)が27,4235票、古謝玄太候補(自民党公認)が27,1347票を獲得。わずか2,888票差で伊波候補が2選を果たした。

 この結果に少なからぬ影響を与えたのが、河野禎史・参政党(22,585票)、・山本圭・NHK党(11,034票)、金城竜郎・諸派(5,644票)の各候補である。特に、河野候補はその政策からみると自民党右派に近く、自民党票に食い込んで古謝候補の得票数を減らした可能性がある。参政党は2023年の統一地方選では全国で10,000人規模の候補者を擁立する意欲を見せており、同党の影響力は沖縄だけにとどまらないであろう。
 ただ、今回の沖縄参院選では伊波候補が辺野古新基地建設にはっきりと異議を唱え、古謝候補が基地容認の立場を明らかにしていた。11日午前、玉城デニー知事は県庁内で記者団の取材に応じ、「辺野古移設は止めるべき」という政策が明確に支持されたと語った。

 今年1月16日に行われた名護市長選では、自民・公明推薦の渡久地武豊候補は辺野古新基地建設問題に関しては「国と県の係争が決着を見るまで、推移を見守る」という立場を貫き通し、直接基地問題には触れず、給食費や子どもの医療費の無償化などの子育て支援の実績を強調して当選した。
 沖縄では選挙のたびに、「基地か経済か・理想か現実か」という問題が争点になる。そして、政権与党につながる保守派は経済を重視し、革新系は米軍基地によるさまざまな問題の打開を基本に据える。そして今回の参院選では、この構図がはっきりと前面に出てきた。おそらく、その背景には、プーチンのウクライナ侵略、それに伴う日本の反応、特に防衛費の増強や核共有論の台頭、沖縄の米軍基地の果たす役割への危機感などがあったのではなかろうか。

 私は戦争中、沖縄北部の山や森を逃げ回り、自然の洞窟(ガマ)に隠れて生き延びた世代の人間である。米軍に背後から撃たれて即死した祖父のこと、収容所でマラリアにかかり、両のてのひらに入るほど小さくなって死んだ祖母の死に水をとった記憶などは80歳を超えた今でもなくなりはしない。私には、国家権力というものはそう簡単に受け入れてはならないのだ、という皮膚感覚が沁みついている。
 「ムヌクイシヌドゥ ワーウスー(物を恵んでくださるお方こそが私のご主人様だ)」という諺が沖縄にはある。これは苦しい歴史の中から生まれてきた事大主義であり、沖縄が生き延びるための知恵であったことは確かであるが、そこから抜け出すのは容易なことではない。しかし抜け出さなければならない。

 9月には知事選が待っている。選挙戦は、玉城デニー知事と再度出馬する佐喜眞淳・前宜野湾市長、7月13日に立候補を表明した下地幹郎・前衆議院議員の三つ巴になる予定である。佐喜眞淳氏は前回辺野古移設の是非には触れず、普天間の早期返還を強調する戦術をとったが、今回その戦術を変えるのかどうか。下地氏はこれまで自民党・国民新党・日本維新の会と所属政党を変えてきており、沖縄開発政務次官や経済産業大臣政務官などの経歴を持っている。今回立候補に際して彼が掲げた政策は、辺野古埋め立ての中止、基地負担の軽減、経済政策の推進、教育無償化、防衛費増額ではなく交渉力と行動力による解決など、玉城デニー氏や佐喜眞淳氏と重なる部分が多い。玉城氏には「オール沖縄」という支持基盤があるとは言うものの、下地氏にも一部財界の支持がある。その点で下地氏は佐喜眞陣営にとっても悩ましい存在である。有権者がどう判断するか、予断を許さない。

 現在、北朝鮮によるミサイルやロケット砲の度重なる発射、中国の南シナ海や尖閣列島周辺における不穏な動き、台湾問題など、日本や沖縄を取り巻く国際情勢は緊迫の度を強めている。それに加えて本土政権のこれまでにない急速な右傾化への流れ。
 米軍基地の7割を抱えている沖縄は苦しみながらも、「反基地」の道を選んだ。とはいえ、2021年10月に行われた衆議院選挙では自民党が圧勝した現実がある(自民党4、社民党1、共産党1)。沖縄の有権者の判断は大きく揺れているのである。ただ私としては、今回の参院選の流れを引き継ぎ、知事選では玉城デニー氏が再選されることを心から願っている。                         (2022.07.15記す)

 
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