2023.03.28 苦戦するロシアのウクライナ侵略戦争

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)


 大規模な兵力・火力を注ぎ込んでいるロシアのウクライナ侵略戦争。昨年2月24日に、第2次侵略(第1次侵略は14年3月にクリミア半島占領)を両国国境(ウクライナ北東部から南東部)で開始、最大150kmほどの国境沿いを占領した。しかし、ウクライナ軍の厳しい抵抗で占領地拡大が行き詰まり、現在は国境地帯の中都市バクムートの攻防が一つの焦点になっているが、ここでもロシア軍は苦戦しているようだ。3月25日のBBCウクライナ現地報道を紹介しよう。
 
 ロシアが数カ月かけて攻略を試みたウクライナの都市バクムートの戦いは「安定しつつある」と、ウクライナの司令官が述べた。

 今月初め、西側当局者は、昨年の夏以降、バクムートで2万人から3万人のロシア軍が死傷したと推定した。

 軍事アナリストのザルジーニ中将は、ウクライナ軍の「多大な努力」がロシアを抑えている、と述べた。 モスクワは、最近大きな利益を得ることができなかったため、勝利を熱望している。
 にもかかわらず、同中将は、バクムートには戦略的価値はほとんどなく、街の重要性はもはや象徴的なものだと考えている。
 同中将はFacebookで、ウクライナの前線の状況は「バクムート方面が最も厳しいが、ウクライナ防衛軍の多大な努力により、何とか状況を安定させることができる」と述べた。
 同中将は、英国の国防参謀長であるトニー・ラダキン提督とウクライナの状況について話した後に投稿した。
 彼のコメントは、バクムートの長い戦いに関するウクライナ当局からの最新の肯定的な信号である。
 23日、ウクライナの地上軍司令官アレクサンドロ・シルスキー氏は、ロシア軍がバクムート付近で「疲弊」していると述べた。
 シルスキー氏は、ロシアは「人員と装備の損失にもかかわらず、何としてもバクムートを奪取する望みを捨てていない。彼らは著しく力を失っている」と付け加えた。
 シルスキー氏は、「キエフ、ハリコフ、バラクリヤ、クピアンスクで行ったように、まもなくこの機会を利用するだろう」と述べ、昨年のウクライナの反攻作戦の成功に言及した。

 そして今週初め、ウクライナのゼレンスキー大統領は、12月に最後に訪れたバクムート近郊の前線を、改めて訪問した。
 大統領府が公開した映像には、古い倉庫で「英雄」と呼ばれる兵士たちに勲章を授与するゼレンスキー大統領の姿が映っていた。
 大統領府は水曜日、バクムートの西側でウクライナ軍の反撃があり、バクムートへの補給路の圧力が緩和されそうだとし、ロシアのバクムートへの攻撃は「限られた勢い」を失いつつある可能性があると述べた。
 しかし、同声明は「ウクライナの防衛は依然として北と南からの包囲のリスクにさらされている」と付け加えた。
 バクムートには侵攻前に約7万人が住んでいたが、現在は数千人しか残っていない。
 同市を占領すれば、昨年9月にロシアが不法に併合したウクライナ東部・南部の4地域のうちの1つであるドネツク州全域の支配に、ロシアがわずかに近づけることになる。
(了)
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