2024.04.12  スロバキアに権威主義の大統領誕生とか
        ・・・ますます分からなくなる世界

田畑光永 (ジャーナリスト)

 昨9日、朝刊を見て驚いた。中欧のスロバキアに親ロ派の大統領が誕生したそうで、見出しには「欧州、権威主義勢力に勢い」(『日経』)とある。
 記事によれば、同国で6日に投開票が行われた大統領選挙で、「親ロシアの強権的な現政権が推す候補が勝利した」そうで、親欧米のコルチョク元外務・欧州問題相を降して、ペレグリニ元首相が当選、大統領に就任するそうである。
 確かにこのところ、欧州に限らず世界的に強権的、あるいは権威主義的と言われる政権が増えてきた。それには2年前からのロシアのウクライナ侵攻が影響していることは間違いない。スロバキアの選挙で敗れたコルチョク氏は敗北の原因を「決定的だったのは(戦争への)恐怖と憎しみの広がりだった」とのべているそうである。(同)
 正当な理由なしで他国に武力攻撃を仕掛け、領土を奪おうという行為がまかり通るとするならば、戦って勝ち目がなければ、強い相手には刃向かわず、文句をいう自国民は強権で黙らせて、相手に屈しよう、というのは分かりやすい道理である。
 ロシアの攻撃に抵抗するウクライナを最も強力に援護してきたのは米国であるが、その米国は今、議会野党の一部が強力に反対しているために、ここへきて政府が決めたウクライナ支援策が実施できないという状況にある。ウクライナに同情する立場から見れば、米国の民主主義はなんとももどかしいが、これはこれで民主主義の弱さでもあれば強さでもあると、冷静に受け止めなければなるまいと思う。
 話をスロバキアに戻すと、われわれ世代にはすでに半世紀以上も前のことではあるが、1968年のロシア軍の侵攻による悲劇を思い出さずにはいられない。スロバキアは当時、チェコと一緒に「チェコスロバキア」を形成していたが、1968年春、ドプチェク共産党第一書記が主導して「プラハの春」と呼ばれた民主化運動が広がった。
 これに対して、ソ連(当時)のブレジネフ政権はそれを「社会主義体制を否定するもの」として介入に踏み切り、同8月20日、ワルシャワ条約機構(ソ連を中心とした軍事同盟)の5か国軍、15万が国境を越えて首都プラハを占領、ドプチェク第一書記らは逮捕されてて、運動は敗北に終わった。
 この4年前、東京では前回のオリンピックが開かれ、そこに登場した同国のベラ・チャスラフスカという女子体操選手が大変魅力的だった記憶がまだ新しかったこともあって、日本でもこの国の運命に大いに関心が集まったものであった。
 その後、時は移り、ソ連も共産主義を捨ててロシアにもどり、東西対立はすでに過去のものとなったかに見えた。私も冷戦後の東欧を旅して、プラハ(チェコ)にもブラチスラバ(スロバキア)にも足を伸ばしたが、いずれでもこちらから水を向ければ人々は「プラハの春」を語ってくれたが、表向きはすべては過去になったかに見えた。
 しかし、今回のスロバキアでの親ロ派大統領の誕生が、ウクライナ戦争によって、かつての対ロシア恐怖心が、無視できない影響を及ぼしたとすれば、歴史の重みを改めて感じさせられる。
 1968年、ワルシャワ条約軍に逮捕されたドプチェク第一書記らが連行された先は、当時、ソ連領であったウクライナのKGB(国家保安委員会)監獄であったという。
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 ところで、報道によれば、「欧州各国では昨年来、権威主義的な右派勢力の台頭も続いている」(同)という。
ポルトガルでは新興の極右政党が総選挙で議席を4倍に増やし、全体の2割を占め、オランダの下院選では反移民や反イスラムを掲げる自由党が第一党に躍進。ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢」が支持率で2位に上昇、など。また6月の欧州議会選挙でも各国の極右政党が躍進すれば、初めて極右勢力が多数派を占める可能性があるという。
 こうした諸政党がそれぞれどういう主張を掲げているのか、ウクライナやガザの事態への対応はどうか、私は不勉強で分からないが、プーチン、ネタニヤフのウクライナやガザに対する人間業とは思えない敵意、憎悪が、今の世界になにを生み出し、どんな後遺症を人類に残すのか考えれば恐ろしい。強権をもって民の口を封じ、ひたすらより大きな強権に道を譲るような政治家がはびこる世界になることだけはご免蒙りたいものだ。
 われわれは何を試されて」いるのだろうか。
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