2024.05.10 改憲論議は急ぐ必要はない
 
       新聞社の世論調査にみる国民意識の動向
       
岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 5月3日は78回目の憲法記念日だった。各党はその日を前にして談話を発表したが、自民党のそれは「国会での議論と国民の理解を両輪としながら憲法議論を進め、改正の早期実現に全力で取り組む」というもので、「自らの総裁任期中に改憲を目指す」と言明してはばからない岸田首相も3日に開かれた改憲派の集会に「憲法改正は先送りの出来ない重要な課題だ。国民に選択肢を示すことは政治の責任だ」というビデオメッセージを寄せ、早期改憲への意欲を示した。しかし、この日発表された、いくつかの新聞社・通信社の恒例の憲法に関する全国世論調査の結果をみると、国民の多くは「改憲論議は急ぐ必要はない」と考えているようだ。

改憲派が多数
 日本国憲法が施行されてから、今年の5月3日で77年たった。いわば喜寿を迎えたわけである。で、今の日本国民は、いまだ一度も改変したことのないこの憲法をどう考えているのだろうか。
 朝日新聞社の世論調査には、「いまの憲法を変える必要がある思いますか。変える必要はないと思いますか」という設問があったが、それに対する回答はこうだった。
  「変える必要がある」53%
  「変える必要はない」39%
 
 読売新聞社の世論調査にも「あなたは、今の憲法を、改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか」という設問があったが、そこでは次のような回答があった。
  「改正する方がよい」63%
  「改正しない方がよい」35%
  「答えない」2%

 こうした調査結果からみると、国民の間では、改憲派が多数派、ということだろう。

第9条の改変には反対
 だが、憲法第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)に関する設問となると、回答が一変する調査があった。例えば、朝日新聞社の調査には「憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがいいとよいと思いますか」という設問があり、それへの回答は「変えるほうがよい」32%、「変えないほうがよい」61%だった。
 「改憲には賛成だが、9条だけは守りたい」という人が多いということか。
 共同通信社の調査では、「9条改正の必要性はある」が51%、「9条改正の必要性はない」が46%で、賛否が拮抗していた。

改憲機運は高まっていない
 国民の間では改憲派が多数であることは既に述べたが、その人たちも改憲を急いでいないことか各社の世論調査で明らかになった。まず、共同通信社の世論調査結果から。
 岸田首相が意欲を示す総裁任期中(9月まで)の憲法改正国会論議についての質問では、「急ぐ必要がある」は33%にとどまり、「急ぐ必要はない」の65%を大きく下回った。改憲に前向きな自民と日本維新の会を支持する層でも、「急ぐ必要がある」との回答はいずれも46%と半数に届かなかったという。
 改憲の進め方に関する質問では、「慎重な政党も含め幅広い合意形成を優先するべきだ」が72%で、「前向きな政党で条文案の作成に入るべきだ」は24%だった。
 「国民の間で改憲の機運は高まっているかどうか」との質問への回答は、「高まっている」との回答が「どちらかかといえば」と合わせて31%、「高まっていない」は「どちらかといえば」を含めて67%だった。

 こうした傾向は朝日新聞社の世論調査結果でも見られた。
 「国民の間で、憲法を変える機運が、どの程度高まっていると思いますか」という設問への回答は次の通りだった。
 ∇大いに高まっている4%∇ある程度高まっている24%∇あまり高まっていない55%∇まったく高まっていない15%
 要するに「高まっていない」が70%に達しており、同紙は「憲法改正が必要だと思う人や自民支持層でも機運は『高まっていない』という回答がそれぞれ63%、64%と目立つ」と書く。

しぼむ改憲世論
 毎日新聞社の世論調査結果にも、共同と朝日のそれに通ずるものがあった。
 同社の憲法に関する質問は3問だか、その1つが「憲法改正についてお尋ねします。岸田首相の在任中に憲法改正を行うことに賛成ですか」だった。
 それに対する回答は「賛成」27%、「反対」52%、「わからない」20%。
 これについて、同紙は「2022年4月の調査は『賛成』が44%、『反対』は31%と賛成が上回っていたが、23年4月の調査では『賛成』」が35%、『反対』は45%と賛否が逆転している。2年連続で『賛成』が減少する一方、『反対』が増加した。首相は自民党総裁任期中に憲法改正を目指すと発言しているが、世論の機運は高まっていない」とコメントしている。

 こうした世論の現状に対し、改憲を急ぐ勢力はどう対応するか注目したい。

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