2007.07.11
環境問題に本格的の取り組み始めた広東省
早房長治
(地球市民ジャーナリスト工房代表)
(地球市民ジャーナリスト工房代表)
高度成長との両立は可能か 規制厳格化がカギ
広東省は、上海市、浙江省などとともに、中国の高度成長の主要エンジンの一つである。
私(早房長治)は、このほど、広東省の広州、深セン(センは土偏に川)、珠海の三市を中心に約1週間、滞在し、環境と環境政策の現状を中心に取材した。その結果を、いささかスケッチ的ではあるが、報告する。現状を、一口でいえば、「地方政府は高度成長政策を捨てていないが、中央の指令に従って、本格的な環境対策に、やっと取り組み始めた」ということである。
深セン市は、中国最初の経済特区に指定されたことから、30年前の人口1000人以下の寒村から、現在、人口1200万超の東京並みの大都市に奇跡的な急成長を遂げた。しかし、白地の上に計画的に都市を建設したため、道路は広く、緑も多く、整然としている。
同市は1980年代以降、年10〜15%(実質)の経済成長を続けてきた。これに伴って、環境悪化が進んだのはいうまでもない。同市は都市計画が行き届いているせいか、大気は高度成長期の東京ほど汚染されていないが、90年代以降、水と大気の汚染を中心として、環境問題は、市民の健康面からも無視できなくなっている。市当局は2005年から環境問題を本格化させた。
陳応春・副市長(環境問題担当)によると、当面の主な環境対策は次の通りである。
(1) 自動車の排気ガス対策――新車とガソリンについて、今年初めから欧州連合(EU)並みの基準に改めた。小型車、ハイブリッド車、電気自動車を増やす。地下鉄など、公共交通機関を積極的に建設する
(2) その他の排気ガス対策――発電所に脱硫装置を備えるとともに、燃料を石油から天然ガスに転換する。原子力発電所を増やす。エネルギー消費型産業を減らす
(3) 廃水処理対策――今後5〜7年間で産業排水、生活排水とも、処理が完全にできるようにする。(陳氏は、市内は90%,周辺は30数%廃水処理をしていると言明したが、この数字には疑問を呈する市民もある)
(4) その他の環境対策――工業用地の拡大を抑制する。GDP当りのエネルギー消費量を少なくとも年10%削減する。公害型産業を市外に移す。ゴミを再利用するなど、循環型経済を目指す
広東省の省都、広州市の陳明徳・副市長(環境問題担当)が示した環境対策も、深セン市と大差はない。経済発展で深セン市に後れを取った広州市は、現在、トヨタ自動車を招致するなど、南砂地区の大開発を進めている。広州市の環境対策の特徴は次の3点である。
(1) 環境規制を厳しくし、企業に対策費用を増加させる。増加できない企業は倒産することもやむをえない
(2) 広東省随一の大河で、広州市を貫流する珠江の水質を2010年までに20年前の水準に戻す。そのために、上流から下流に至る関係市町村に省を加えた浄化対策委員会を組織した
(3) 産業構造は一次産業2.3%、二次産業39%、三次産業58%であるが、今後、二次産業を積極的に減らす
共産党中央、環境対策に消極的な地方幹部は登用せず
このように、地方政府の環境問題に対する姿勢が大きく転換したのは、中国共産党中央の環境対策強化についての強い指示によると、広東省の関係筋は述べている。共産党中央は、都市部の10%以上の高度経済成長とともに、環境対策の策定と実行、土地問題を主因とする農民暴動の抑制を厳しく指示しているという。事実上、高度経済成長の達成の一本槍であった地方幹部の評価基準が総合的評価に変わり、環境対策を積極的に推進しない地方幹部は中央に登用しないという人事政策が、効果を発揮し始めたと見ていいだろう。
問題は、高度経済政策と環境改善が両立するかどうかである。私が取材した三市の幹部たちは「日本などからの技術導入と自主開発によって環境技術を高度化させれば、両立は可能」と口を揃えるが、現実は、それほど甘いものではないだろう。
現実的に考えると、中国の環境改善のポイントは、第一に、中央・地方の政府が排ガスと排水に対して厳しい規制を課すこと。第二に、企業が環境設備を導入するためのコストの一部を政府資金ないし外国の援助で賄うシステムをつくることである。日本の場合、環境分野の政府開発援助(ODA)の復活が、中国の環境改善を促進する有力手段となることは、いうまでもない。
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