2018.03.16 子どもたちが「香害」で苦しんでいます(下)
 シリーズ「香害」第6回    
              
岡田幹治 (フリーライター)

 前回、「香害」に苦しむ二人の小学生を紹介しました。実はこの国の子どもは、生まれた直後から香りつき商品を使用されているのです。そして深刻な被害者は高校生にも、教師にもいます。

◆生後2日から香りつき沐浴剤
 いま多くの赤ちゃんが、生後2日目くらいに始める沐浴(乳児が感染症にかからないように配慮した水浴)で「香りつきの沐浴剤やボディソープ」を使われています。「赤ちゃんの気持ちをリラックスさせる、ほのかなオレンジの香り」などと宣伝する商品が多数、市販されているからです。
 哺乳瓶洗いも、かつては一般的だった煮沸消毒が減り、いまは洗剤(除菌剤)を使った薬剤除菌が主流になっています。赤ちゃん用衣類の洗剤・柔軟剤がたくさん売り出されており、中には「ひだまりフラワーの香り」(どんな香りなのでしょう?)をうたう商品もあります。

◆柔軟剤のニオイがきつい幼稚園も
 子どもが3歳くらいから通う幼稚園や保育園にも、ニオイの強いところが少なくありません。千葉県のある市に住む2児の母・Cさん(30歳代)は、その香害を実感した一人です。
 Cさんは独身時代から柔軟剤を愛用し、桃の香りのハンドクリームなどもよく買っていました。25歳ごろから、雨の日などに肩こりや頭痛がするようになり、妊娠中は悪阻がひどかった。
 症状はだんだん悪化し、昨年の夏ごろにはとても疲れやすくなり、さらに柔軟剤を使うと鼻が痛くなっていました。
 そして11月、長女(4歳)の幼稚園の保育参観に参加したところ、隣のお母さんの強い柔軟剤臭で激しい頭痛に襲われました。頭痛と体のだるさが4日経っても治らないため、アレルギー科クリニックを受診、化学物質過敏症(MCS)と診断されました
 Cさんはその後、合成洗剤などをすべて処分し回復に努めていますが、気になるのは長女のことです。長女が帰宅すると、髪の毛にも衣服にも体操着にも柔軟剤などのニオイがべったりついており、健康に悪影響はないか、心配でなりません。

◆中高校では制汗スプレーで被害
 中学、高校と学年が進むと、消臭除菌スプレーや制汗スプレーを使う生徒が増えます。札幌市の私立高2年のDさん(女性、17歳)は、その被害者の一人です。
 Dさんは中学入学のころから、香水・洗剤・タバコ・排ガスなどが苦手になりました。なんとか通学して卒業。私立高に進み、周囲で使用される制汗スプレーにさらされてから、頭痛・吐き気におそわれるようになり、次第に全身倦怠感・めまい・発熱・関節痛・食欲不振が加わって、通学が困難になりました。
 事情を話すと、自分のクラスでは協力が得られましたが、他のクラスでは得られませんでした。体育会系の部活動が盛んで、汗臭さを消すために制汗スプレーを使う生徒が多いのです。
 Dさんは防塵マスクを着けて通学していましたが、校舎の新築・学校祭での農薬散布などもあって症状はさらに悪化し、いまはほぼ休学の状態。大学進学をめざし、環境のよいところはないか、探していますが。

◆教師も被害者に
 校内の香害は、教師も襲います。
 埼玉県のある市に住む女性の臨時教員・Eさん(40歳代)は3年前、あるマンションに引っ越したとたんにシックハウス症候群(SHS)と思われる体調不良になりました。転居すると、ややおさまったので勤めを続けてきましたが、一昨年6月に勤務し始めた都立の特別支援学校で、強い柔軟剤臭のする生徒たちの指導が困難になりました。
 1クラス5~6人ですが、生徒の着替えやトイレ介助などで体を密着することが多い。校舎外での歩行訓練では一斉に虫よけスプレーをかけられますが、これが耐えられません。勤務1か月後に右股関節が激痛で2日間歩けなくなったこともありました。
 SHSからMCSに悪化した可能性があると管理職に訴え、生徒たちと接触しない仕事に変えてもらいましたが、間もなく教員の柔軟剤や整髪剤にも反応するようになり、更衣室にも職員室にもいられなくなりました。
 昨年2月に東京の専門クリニックでMCSの診断を受けたころには、食べたり歩いたりする力さえなくなり、任期を2週間残して退職しました。
 いまは回復に努める日々。小中高校と特別支援学校の教員免許を持っているので、臨時教員を務めてほしいとの申し出は絶えません。しかし、香害のある職場では勤務できないと断り続けています。

◆校内は香りつき製品を原則禁止に
 Dさんを診察したのは、札幌市の開業医・渡辺一彦医師(渡辺一彦小児科医院院長)だ。1000人を超すMCS患者を診察してきた渡辺医師は、学校が香害対策に消極的な背景をこう説明し、早急な対策が必要だと訴えています――。
 文部科学省の「学校環境衛生基準」が、ホルムアルデヒドなど6種類の揮発性有機化合物(VOC)を基準値以下にするよう定めているため、教育現場では、6種類のVOCが基準値以下なら、SHSは発生しないという誤解がいまだにまかり通っている(注1)。
 この結果、近年急増している柔軟剤・化粧品や消臭・制汗スプレーなど、香害による健康被害が軽視される。しかも、香り商品を使うかどうかは個人の好みの問題で、口出しできないという考えだから、MCSなどになった児童・生徒への配慮を指導できない。
 しかし、教育現場の香害はもはや放置できない状況だ。香害はタバコでいえば「受動喫煙」に当たるが、受動喫煙防止対策として厚労省は「学校は原則、敷地内禁煙」にする方針だ。同様の対策を香り製品についても早急に取るべきではないか。
 注1 学校が原因のSHSは「シックスクール症候群」と呼ばれることもある。
2018.03.14 啓蟄(けいちつ)をくわえて雀とびにけり(茅舎)  春が来た
  韓国通信NO550

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 本当のことを知りたいと誰もが思う。しかし政治の世界は嘘を真実と強弁する人たちで溢れている。3月3日、財務省国税庁に出かけて「嘘つくなーっ」と叫んだ。 テレビの前で怒った人たちがじっとしていられなくなってそのまま集まった感じ。すごいエネルギーだった。
 佐川長官、安倍首相、財務省が完全に追い詰められたのを実感した。ボクシングで言うならさしずめ「TKO」。将棋なら「詰み」である。「アキエサン、コッカイカンモン カモン カモン」とラップ調のコールに笑った。手作りのポスターをまた使うので「デモが終わったら返して」と言われて感動した。

 6日、電撃的に北朝鮮と韓国の首脳会談開催が発表された。9日には米朝トップ会談が発表された。
 濃厚だった戦争の気配から一転して戦争回避。「よかったなあ」と僕なんかは単純に喜んでしまうのだが、世の中はそんな単純ではないようで、歓迎どころか警戒を強めているようにも見える。
 日清戦争、日露戦争で朝鮮半島をめぐって日本と清国、ロシアがしのぎを削った。1世紀過ぎた現在、日米中露の思惑で「統一」さえも当事者が決められない状況になっている。
 日本政府の立場は中・露を意識したアメリカの尻馬に乗った露骨な対決姿勢。戦争の選択までアメリカにまかせる対米従属と、国民より米軍基地を優先する姿勢も明らかとなっている。朝鮮半島の危機、とりわけ危険な北朝鮮の存在を奇貨とした国民締め付けの意図もはっきりした。
 南北の関係改善の兆しを多くの海外メディアは核戦争回避として伝えたが、一旦米朝戦争が起きれば大被害を蒙るはずの日本は「信用できない」「微笑みに誤魔化されるな」と、あてが外れて「愚図って」いるように見える。
 
 連日、テレビ報道は「電撃的」ニュースは伝えるが、北朝鮮の狙いをミサイル製造、核開発のための時間稼ぎと報じるばかりで、ニュースキャスターやコメンテーターたちは「北朝鮮は嘘つき国家」と口を揃える。そのいい例が「天安号事件」を持ち出して北朝鮮を「テロ国家」と言い切ったコメンテーターがいたことだ。「嘘つき」、「テロ国家」と断定するようでは北朝鮮への国民の不信は増幅するばかり。2010年、韓国哨戒艦「天安(チョナン)」が沈没し、46人の海軍兵士が死亡した事件。李明博政府は北朝鮮の魚雷による沈没と発表。もちろん北朝鮮側は否定した。後に韓国の軍民合同調査団の専門委員が「暗礁と衝突した」、また他の専門家は「自軍の機雷による沈没」説を発表して政府見解と対立した。真相はいまだに明らかではない。
 「ウソばかり言う北朝鮮」という発言も一方的だ。どのような約束が反故にされたか客観的な事実を説明すべきだ。韓国政府の発表、米国政府の主張、日本政府は嘘をついたことはなかったのか。北朝鮮側の主張とともに精査する必要がある。
 日本が韓国・北朝鮮とともに核禁止条約に加盟をする時が来た。自民党政権が北と共同発表した「平壌宣言」(2002)の再確認、非核化と国交正常化、拉致問題の解決も近づく。なにもトランプ大統領にすがって「お願い」することはない。

 2001年8月、ピースボートで北朝鮮を訪問した時の思い出はつきないが、鮮明に記憶に残ったことがある。ツアーのバス乗降口で小学生くらいの少女が案内に立った。一行の数人がその子に質問をした。「日本についてどう思うか」。即座に「嫌いです(シルスムニダ)」という返事。親善目的で来た日本人に、「仲良くなればいいです」くらいの返事を期待していたので驚いて理由を聞いた。「歴史問題。過去の歴史に対する反省がないから」という返事に私たちは頭をかかえた。
 その翌年の平壌宣言以降、日本社会は拉致問題で北朝鮮に対する憎悪を燃やし続けてきた。不幸な日朝関係を克服することは容易ではない。来年は3.1独立運動から100年目の年である。100年の歴史に日本人としてどう向き合うか。また16年前の平壌宣言とどう向き合うかが北朝鮮との将来を考えるうえで欠かせない。「嘘ばっかり」などと云わないで克服するしかない。

 東京テレビの『カンブリア宮殿』で生活クラブ生協がとりあげられた。安心・安全な食品を求める購買者のニーズに応えて変貌する生産者。消費者の声(力)が市場経済を変え、本来の「人間経済」に変えていく取り組みが紹介されて感動的だった。
 那須のパスチャライズ牛乳は消費者のニーズが生みだしたもの。津波の大被害を受けた宮古の重茂漁協の活動を支えた生協組合員たち。組合員の国産鶏へのこだわりに応える養鶏業者。トマト100%のケチャップ製造に至るまでの苦労話や主婦たちが生き生きと参加(起業)する活動例など、これまで食品会社に依存してきた市場が生協組合員たちの努力によって変貌していく様子が紹介された。生産者との共生、福祉的活動まで視野に入れた生協活動は将来の社会のあり方を予感させるものだった。

 丸山茂樹さんはこの生活クラブ生協の草分け時代からかかわってきた。実践にもとづく生協の本質に関する理論化を踏まえ、共生社会のデザインを発表してきた。韓国留学を終えると韓国聖公会大学で協同組合論の講師として教壇にも立った。市民主体の「社会的連帯経済」を国際規模に広げようとする朴元淳ソウル市長の呼びかけに応えてGSEF(グローバル社会的経済フォーラム)の結成に参加、日本側の主要メンバーとして活躍している。A.グラムシ、K.ポランニーの研究に始まり、日本と世界各国で試みられている事例を紹介した近著『共生と共歓の世界を創る』が注目される。深刻な格差社会を克服するための新たな取り組みが提唱されている。同志であるソウル市長からの自筆日本語の推薦文も素晴らしい。一読をすすめたい。(社会評論社2200円+税)

「社会的連帯経済」を語る夕べのご案内 主催 社会的連帯経済研究会
第一部 3月24日14時から17時まで
 『共生と共歓の世界を創る』(丸山茂樹著)と『「日本語人」のまなざし』(井上良一著)を
 巡って
 会場明治大学駿河台キャンパス研究棟4階第二会議室 参加費無料
第二部 同日17時30分から19時30分まで
出版記念・懇親会 会場明治大学駿河台・アカデミーコモン1階カフェ・パンセ 
参加費3千円
                       

2018.03.10 子どもたちが「香害」で苦しんでいます(上)
     シリーズ「香害」第5回    
               
岡田幹治 (フリーライター)

各地の学校で、少なくない児童・生徒が「香害」に苦しんでいます。
仲間の子どもたちや教師が放散する柔軟剤の成分や、塗り替えられたペンキから放散される成分で、「化学物質過敏症(MCS)」や「シックハウス症候群(SHS)」を発症したり、悪化させたりする子どもたちです(注1)。
中には、登校できず、自室に閉じこもりきりの小学校6年生、校舎に入ることができず、異常寒波が襲ったこの冬、校庭の片隅に机と椅子を持ち出して個別指導を受けた小学校2年生もいます。
幼い香害被害者たちの実態を上・下に分けて報告します。
注1 MCSは、(多くの人が何も感じないほど)微量の化学物質にさらされると、頭痛・思考力の低下・目のかすみ・息苦しさなどの症状が出る病気。重症になると日常生活も仕事も続けられなくなる。SHSは、建物内の空気汚染が原因でMCSと似た症状になる病気。その建物を離れると、症状は和らぐ。

◆柔軟剤のニオイが満ちた授業参観日
南関東のある市の市立小6年のAくん(12歳)は、化学物質に敏感で、幼稚園児のころ近所の医師にSHSの可能性があると言われたことがあります。
軽いMCSの症状がある父母が、無垢材と漆喰づくりの自宅を新築。Aくんは幼稚園年長組のころからそこで暮らしてきました。
異変が起きたのは小2のときです。給食当番が着る給食着のニオイが気になるようになり、給食着がくさくて給食が食べられないこともありました。給食着は当番の子が週末に持ち帰って洗濯し、翌週の当番に引継ぐのですが、香りが長続きする高残香型柔軟剤を使う家庭が少なくないのです。
校内には児童や教師の衣服から放散される柔軟剤などのニオイが漂い、Aくんはそれを吸い込み続けたとみられます。柔軟剤臭は衣服などに移りますから、帰宅後、すぐに着替えなければなりません。
症状は徐々に悪化し、小5になると、体がいつもだるく、朝、なかなか起きられないようになりました。帰宅すると、すぐに横たわってしまいます。
そんな体調で迎えた4月下旬の授業参観日。教室内は子どもたちと参観する父母たちでいっぱいになり、柔軟剤のニオイが立ち込めました。Aくんの母は活性炭マスクをして参加しましたが、頭がくらくらし、壁を支えにやっと立っているほどだったそうです。
Aくんの体調はさらに悪化し、その日を境に登校できなくなりました。

◆自室に閉じこもって1年4か月
教育委員会の勧めもあり、自宅から車で10分ほどの小規模校に転校。9月に通学を始めると、他の学年に柔軟剤臭の強い子がおり、近づくと反応が起きます。夏休み中に校内でワックスがけが行われたことも影響しました。
校庭の片隅に机と椅子を出し、アシスタントティーチャーから個別指導を受けるようになったのですが、近くの農家がゴミなどを焼く煙が流れてきて、反応します。学習の場を図書室に移して間もなく、Aくんは突然、手足がマヒして動けなくなり、父が迎えに行く騒ぎになりました。以来、登校していません。
Aくんは嗅覚過敏が進み、ほとんどのものに反応するようになりました。自宅の周辺は柔軟剤などのニオイが漂っているので、外出もできない。反応の出ないパジャマを着て自室に閉じこもり、パソコンに向き合う日々がもう1年4か月も続いています(注2)。
注2 両親はAくんを東京の専門クリニックまで安全に連れていく自信がなく、まだ確定診断は受けていない。

◆校内のペンキ塗り替え後に発症
暑い夏も寒い冬も、校庭の片隅で個別指導を受けているのが、大阪府堺市の市立小2年のBくん(8歳)です。
Bくんは4歳のとき、母の実家で衣料用防虫剤がタンスにたっぷり置かれた部屋で寝た翌朝、まぶたが腫れあがり、全身に蕁麻疹(じんましん)が出て救急病院で手当てを受けたことがあり、やがてMCSになりました。
母が入学前にMCS児のための特別支援学級(病弱・身体虚弱教室)を設置してほしいと要請したところ「診断書が必要」と言われ、あちこち探した結果、ようやく入学式当日に高知市の病院の予約が取れました。母と子は入学式を欠席し、決死の覚悟で高知市へ飛び、診断書を書いてもらって提出しましたが、要請は聞き入れられませんでした。
洗剤・柔軟剤などのニオイに悩まされながら、普通学級で学んでいたBくんは、1年の3学期(昨年1月)に授業で紙粘土(樹脂粘土)を使った影響で、40度もの熱を出し、しばらく微熱が続きました。
春休み中に回復して4月に登校したとたん、春休み中に塗り替えられたペンキに反応して発熱や体調不良が続くようになりました。京都市のクリニックでSHSと診断され、「入ることのできる教室での個別指導、一時的な転校などの配慮も必要と考える」との診断書を提出しました。

◆校庭の片隅で個別指導
そこで始まったのが、校庭の片隅での個別指導です。普段はスクールサポーターが指導し、先生は時間の空いたときに見てくれるだけ。担任の先生に1週間も会わないこともありました。テント張りは禁じられており、降雨や強風のときは休まざるをえません(注3)。
注3 母は(Bくんが通学する)指定校の変更を考え、8~12月に3校を見学したが、それぞれ難点があったうえ、市の教育委員会から「指定校を変更するなら、一切のサポートを受けない一般児童として教室に入ること」などの条件をつけられ、あきらめた。

昨年12月でサポーターは打ち切りになり、今年1月からは特別支援学級の介護補助員と手の空いている教師(担任、支援学級などの教師、教頭・校長など)が指導する体制になっています。
寒い冬の間、Bくんは、綿のトレーナーにセーターやダウンコートを重ね着し、マフラー・手袋・ひざ掛け・使い捨てカイロを身につけて個別指導を受けています。

◆教育現場の配慮は不十分
Bくんを診察したのは、国立病院機構高知病院で2005年からMCS患者の診察を続ける小倉英郎医師です。定年退職し、現在は非常勤の小倉医師は、こう話しています――。
統計は取っていないが、MCSを発症する子どもたちが徐々に増えている印象がある。保育園や学校に通うようになり、合成洗剤や柔軟剤を使う家庭の子どもたちと接触したことがきっかけになる場合が多い。高知県では、MCSの児童は専用の特別支援学級に入って担任から個別指導を受けている。しかし、こうした配慮をしている地域は非常に少ないと聞いている。

◆岡田の3月の講演予定
▽生活のなかの化学物質
  第1部 広がる「香害」 岡田幹治
  第2部 化学物質過敏とつきあう 宮田幹夫
  3月18日(日)午後1時30分~4時20分
  ウィルあいち(愛知県女性総合センター)大会議室(名古屋市)
  問い合わせ:化学物質過敏症あいちReの会(fax 052-938-3557)

2018.02.28 納税者の乱
     韓国通信NO549

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 韓国なら安倍政権はとっくに潰れている。野党がダラシナイ、マスコミの追及が甘いなどと「評論家」みたいなことを言わないで、怒りを声にするしかない。
 冬季オリンピックを見て選手たちの真摯さと誠実さ、謙虚さに心洗われた人も多いはず。それにひきかえ日本社会に蔓延する「ウソ」や「権謀術数」には呆れかえるばかりだ。北朝鮮の参加と応援団をくさす一方で、「ニッポン、ニッポン」を絶叫するアナウンサーのおかげで安倍首相の支持率が上がるなんて信じがたい。首相が金メダリストたちに祝辞を述べるテレビ映像にはシラケた。スポーツは勝敗を争うものだが、憎しみや嘘がないのがいい。

<物を言う市民たち>
 確定申告が始まった。安倍首相夫人をかばった財務省前理財局長佐川氏を国税庁長官に栄転させたことに納税者たちが怒りを爆発させた。上司をおもんばかった茶坊主の出世。しかし佐川氏が辞任して済む話ではない。国政の私物化が疑われたら「首相も議員もやめる」と断言した以上、政府が佐川氏の国会喚問に応じないなら「国政の私物」を認めたことになりはしないか。
今年も確定申告をすませた。低所得者に厳しく高所得者優遇の税制にあらためて向き合い、医療費負担の多さ、復興特別所得税(21%)にため息が出る。歯止めを失った「国防費」のために税金は払いたくない。
 封筒の表面に「 国税庁長官就任!!」と大きく書いて税務署に提出した。税務署の職員が、「評判の悪い長官の就任を喜んでいる納税者がいます」と上司に報告する可能性もないわけではない。 冗談じゃない。麻生財務大臣と佐川氏を除いて本気にする人はいないはずだ。

モリ・カケ追及デモ第2弾・納税者一揆の爆発だ!

3月3日(土)13:30 日比谷公園西幸門集合(図書館隣)
13:40 財務省・国税庁包囲行動
14:30 デモ出発 銀座・有楽町の繁華街を行進
安倍・麻生・佐川を追放しよう!検察は財務省を強制捜査せよ!
安倍昭恵・佐川は証人喚問に応ぜよ!
主催:「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」
                   代表:醍醐 聡(東大名誉教授)


<再び東海第二原発>
 現在稼働中の原発は川内原発と高浜原発の3基だけ。これを多いと考えるか、少ないと考えるか評価はマチマチだが、状況は再稼働待ちの原発が目白押しの状態である。「風化」どころか深刻さを増す被害に対して警鐘を鳴らす報道が年を追うごとに少なくなった。全国各地で粘り強い再稼働反対の運動が繰り広げられているが報道もされない。首相官邸・国会前の反原発抗議デモはすでに280回を超えた。
 前回紹介した我孫子市議会に東海第二原発廃炉を求める請願が26日提出された。友人たちと始めた請願運動に1056名の請願者が集まった。これほど反響があることは想像もしなかった。中学生・高校生、子供を持つ母親、外国人、市外の近隣住民も参加した。
 40年を超えるポンコツ原発、それも事故続きで、2011年3月11日の震災では外部電源喪失にもかかわらず爆発事故を起こさなかったのは「単なる幸運」(『国会事故調』180p)と指摘された札つきの原発である。東海村から85キロにある我孫子のみならず事故が起きれば首都圏は壊滅する。東海第二の再稼働を認めたら全国一斉、なだれをうつように再稼働が予想される。まさにこれこそわが国にとって「存立危機事態」である。

<私のスピーチ>
 我孫子市では請願者は市議会の委員会で趣旨説明が認められている。たった5分だが議員たちに直接訴える機会である。原発の廃炉を求めるのは「共産党か立憲民主党にそそのかされた」という市議も出てくるかもしれないが、全会一致の採択を目指している。委員会では質疑応答があるので不安が頭をもたげる。「原発は地球温暖化に貢献する」「経済性に優れている」「規制委員会の審査にパスすれば問題はないはず」という意見も予想される。
 巷に流布されているこのような原発擁護の「理屈」には、
①世界は自然エネルギー(太陽光・風力)が主力になりつつあること。化石燃料エネルギー、危険な原発は過去のものになりつつある。
②自然エネルギーのコストが原発や化石燃料に比べ安いことは立証ずみだ。日本のコストが高いのは政府が原子力ムラの圧力に屈して「高く」していることに問題がある。低コストの自然エネルギーを取り入れなければ日本の経済力は立ち行かなくなる。
③規制委員会は国際的にも厳しい基準で審査していると政府は「持ちあげる」が、規制委員会は事故が起きないと保証はしない。事故を予想しても政府も規制委員会も責任をとらない、などと
具体的にわかりやすく反論したい思っている。
 また「東海第二原発が日本一危険な原発という根拠を示せ」などという質問に対しては資料をそろえて万全を期している。
 原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)が「原発ゼロ基本法案」を1月10日に発表した。これに対して1月14日、産経新聞が社説で「これでは国が立ちゆかぬ」と噛みついた。これに対する原自連の吉原毅会長(前城南信金理事長)の反論文を読んだ。具体的で冷静な説得力のある内容である。(詳しくは、原自連のメールマガジンhttp://genjiren.com/mailmagazine.html参照)
 そこでは「我が国の美しき国土、国家を守るという保守の立場こそ、原発即時ゼロを主張すべき」と述べ、産経新聞に対しては「利権にまみれ、富を誇れども、社稷(しゃしょく)※を思う心なき原子力ムラ」を指弾すべきで、「原発ゼロでなければ国は立ち行かぬ」ことを主張するよう求めている。
※社稷 国土という意味。経済的利益を求めて国を亡ぼす原子力ムラを批判している(筆者註)。
赤恥をかいた産経新聞から反論はなく沈黙したままだ。安倍首相も原子力ムラも産経新聞も世界の潮流から完全に取り残された。「原発セ゛ロ」は理想ではなく現実的な最良の選択だ。私の持論に通じるところがあって心強い。

2018.02.07  三匹の子ブタが駅前で出会った
          韓国通信NO547

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 2月3日の「全国統一行動日」。千葉県・我孫子駅前で三人のオジサンが「スタンディングデモ」をした。最近名前を知り合った仲間だ。ふだんは別々に活動をしているが、たまたま先月に続いて三人が駅前でそろって「立ちんぼ」をした。
三人だと目立つようで話しかけてくる人が多い。地域の新聞で紹介したいので写真を撮らせてほしいと頼まれた。どんな団体なのか聞いてくる人もいた。三人ともまぎれもない「無所属」だ。
「一匹オオカミなのね」。オオカミと言われて咄嗟に、「三匹の子ブタです」とやりかえす。
 ジャージを着た中学生たちが「アベセイジヲユルサナイー」と大声で通りすぎていった。土曜日の午後、立春の前日にしては温かく、駅前は賑やかだった。

三匹の子ブタが駅前で出会った

<東海第二原発の廃炉を求めて>
前日の2日、雪が降った日の夕刻、我孫子市議会に提出する東海第二原発の廃炉を求める請願の打ち合わせをした。状況は楽観を許さないものの、県外では、既に茨城県内の17自治体が再稼働反対の決議を行ったし、栃木県益子町の婦人たちが1600人の署名を集め、町議会を「圧倒」、全会一致で決議が行われた。
千葉県では一番バッターを目指して我孫子市民が後に続く。原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)が提唱する国民運動や伊方原発の運転中止の動きに合わせた東海第二原発の包囲網がさらに広がれば、再稼働を阻止できる展望が十分見えてきた。

30キロ圏内に100万近い住民が住み、事故が起きたら首都圏壊滅は「想定内」である。40年過ぎた原発は廃炉と決まっているのに、特例でさらに20年も使うという「ムシのよい話」に怒らない人はいない。それも事故続きの危険な原発である。東海第二原発の廃炉を求める署名活動をしながら安倍政権が進める原発依存、再稼働路線に反対する人がこんなにも多いことを知った。ひとりで署名集めをしていたら、100名集めるだけでも大変なのに500名も集まった。地元の人や「通信」の読者からも署名が届いた。署名活動への期待は重い。
東海村から85キロにある我孫子市の議会が「NO」といえば、東海第二の再稼働路線に痛打になるはずだ。原発の是非は国会の与野党対立の構図のなかで理解されがちだが、市民の命と生活の安全に与党も野党もない。保守系議員が多い市議会で全会一致の採択を目指している。3月12日の環境委員会で請願者代表が5分スピーチを行うことになっている。今月25日が署名の締め切り日。皆さんの応援「弾」署名をお願いしたい。
2018.02.02  まずは事実を共有して――相次ぐ米軍機事故
宮里政充 (元高校教師)

またしても米軍機不時着
今年に入って1月6日にうるま市伊計島にUHIヘリが、8日には読谷村の廃棄処分場にAHIZ攻撃ヘリが不時着陸した。沖縄県議会の議員団は22日に在沖縄海兵隊政務外交部長のダリン・クラーク大佐に相次ぐ米軍機の事故などにたいして抗議。その時、大佐は「事故の数は減っているし、車だって故障はする。未然にチェックするのは難しい」などと述べていた。また、宜野湾市議会では23日の午前、抗議決議と意見書を全会一致で可決し、第3海兵遠征軍司令官と駐日米国大使に抗議決議文を、安倍首相、防衛省、沖縄防衛局長に意見書を送った。
まさにその日の午後8時ごろ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のAHIZ攻撃ヘリコプター1機が渡名喜島(渡名喜村)の急患搬送用ヘリポートに不時着したのである。新聞報道によれば、油圧系統の異常を知らせる警告灯が点灯し、着陸したものらしい。乗員2人にけがはないという。県には同日午後9時10分すぎに防衛省沖縄防衛局から「8時ごろ渡名喜村にAHIZヘリが予防着陸した」との連絡があった。渡名喜島における米軍ヘリの不時着は1999年以降今回で8回目である。

まずは事実を共有して――相次ぐ米軍機事故
以下、この事故に対する新聞報道を列記する。

翁長知事―「米軍全体がクレイジー」
沖縄県渡名喜村の村営ヘリポートに米軍普天間飛行場所属のAHIZ攻撃ヘリコプターが不時着陸したことを受けて、翁長雄志知事は24日、「まさしく、米軍全体がクレイジーだ」と憤った。翁長知事は、米軍機の事故やトラブルが相次いでいることに「米軍は管理、監督が全くできないようになっている。全く改善する兆しがない」と問題視。国の当事者能力のなさも批判した。その上で、「今の米軍のやり方はふに落ちない。どうにもならない感じなのでしっかりとやり方を考えてみたいと思う」と述べた(1.27沖縄タイムス+プラス ニュース)。

ネラー司令官―「不時着で良かった」
米海兵隊のネラー司令官は25日、ワシントンでのシンポジウムで、沖縄県で米軍ヘリコプターの不時着が相次いでいることを念頭に「海外で起きた不時着のニュースが流れているが、非常に率直に言って不時着で良かった」と述べた(1.26西日本新聞)。
ネラー氏は今後の対策として、部品不足を解消し、機体の整備体制を立て直して飛行可能な航空機数を増やし、飛行訓練の時間を増加させることでパイロットの技能向上を図り、即応体制の回復を目指すと説明し、訓練環境の改善に取り組む考えを示した。(中略)統合参謀本部のマッケンジー事務局長(中将)は同日、国防総省での記者会見で、渡名喜村での不時着について、「細心の注意を払うために取った行動だ」と述べ、「訓練が沖縄の人々の懸念を高めていたとしても、われわれが日米安全保障条約の義務を果たしていくならば、訓練を続ける必要がある」と訓練継続の必要性を強調した(1.28沖縄タイムス・プラス)。

小野寺防衛相―「あまりに多い」
小野寺五典防衛相は24日午前、防衛省内で記者団に対し、「(米軍ヘリの不時着が)繰り返されている。あまりに多い」と指摘したうえで「極めて遺憾」と述べた。不時着した機体と同型機のAHIZの飛行停止を米軍側に要請したことを明らかにした。防衛省は同日、状況などを把握するため、沖縄県警と防衛省の職員を陸上自衛隊のヘリで現地に派遣した。小野寺氏は「夜間に突然米軍ヘリが着陸し、住民は大変不安を持っていると思う」と述べた(1.24朝日新聞DIGITAL)。

RBC(琉球放送)ニュース(1.26 19:01)
渡名喜村議会では25日、事故に対する抗議決議を可決していて、26日、桃原村長と村議会の議員らが沖縄防衛局の中嶋局長に抗議しました。この中で村長らは普天間基地所属のすべての航空機の飛行と訓練を中止するよう求めました。「不時着したことにすごく不安を感じている中、その日の夕方にはフライトして、次の日にもフライトして、その辺が我々からすると理解ができないというか、まるで傷口に塩を塗り込まれたぐらいの、すごい、あらわしようのない気持ちですね」(渡名喜村・桃原優村長)。中嶋局長は「トラブルが続いていることは重く受け止めている。政府をあげて様々な取り組みを行っていく」と述べるにとどめました。

松本文明内閣府副大臣―「それで何人死んだんだ」-あっけない辞職
さて、米軍機によるトラブル(昨年の不時着・墜落炎上事故も含めて)について、25日の衆院本会議において共産党の志位委員長が代表質問をした際、「それで何人死んだんだ」とヤジった議員がいた。自民党の松本文明内閣府副大臣である。彼は26日夕方、安倍晋三首相と首相官邸で面会し、ヤジを飛ばした責任をとり、辞表を提出し、受理された。稲田元防衛大臣の度重なる重大な失言をかばい続けた安倍首相としてはあまりにもそっけなくアンバランスな対応である。
松本氏は首相との面会後、記者団に「不規則発言で、人が亡くならなければいいのかというような誤解を招いた。沖縄県民、国民の皆さんに迷惑をかけた」と謝罪した。首相からは「この国が大変な時期なので緊張感をもって対応してもらわないと困る」と注意されたという。名護市長選への影響を恐れた政権幹部は「背筋が凍った」。安倍晋三首相と菅官房長官は瞬時に更迭を決めたという(1.27朝日新聞DIGITAL)。
翁長知事は27日、名護市で記者団の質問に「あの一言でびっくりするようなものではない。沖縄担当の副大臣をされているときも、沖縄に対する認識は全くなかった」と強い不快感を示した(1.28沖縄タイムス)。

無事に不時着した。だから何?
軍用機が飛行続行困難という非常事態に陥った時に、墜落などの最悪事態を避けるためヘリポートあるいはそれ以外の場所へ緊急着陸するのは当然のことである。「不時着」と言おうが「予防着陸」と言おうが同じことだ。その際、飛行士は自分自身や地上にいる人に損害を与えないためのギリギリの努力と技術が要求される。今回の場合はたまたま死者もけが人も出なかった。それは不幸中の幸いであって、喜ぶべきことである。そして米軍関係者のコメントはそこでとどまっている。だから反省しないばかりか更に訓練を増加させようと考える。だが、「けが人も死人もなく無事に着陸したのだからいいじゃないか。何で大騒ぎするんだ」(インターネットはそういうコメントで満ち溢れている)という反応に笑顔でうなずくわけにはいかない。沖縄の人々は不時着や墜落事故が多発する状況を何とかしろ、と言っているのである。当然のことではないか。
と、ここまで書いて、我ながら恥ずかしくなる。「それで何人死んだんだ?」とヤジる人の思考経路には沖縄という島が70余年にわたって背負わされてきた軍事的な負担に対する想像力がまるで欠落している。翁長知事が不快感を示したのは当たり前のことである。松本氏のような人物が日本の政治をつかさどる中枢部に存在すること自体が恥ずかしい。しかも彼がかつて沖縄担当の副大臣であったという事実は語るもおぞましい。そういうネトウヨ顔負けの人物を内閣府の副大臣に任命したのは誰だ? 任命したにもかかわらず名護市長選に不利と見るや「瞬時に」クビを切った姑息な奴は誰だ?(2018.01.28)
2018.01.19  沖縄の現実に向き合うこと
宮里政充 (もと高校教員)

ここのところ沖縄米軍機のトラブルが絶えない。東京新聞1月9日付の記事と「沖縄タイムス+ニュース」などを参考にしながら、沖縄における最近の米軍機事故のあとをたどってみる。

2013年5月 28日、沖縄県国頭村沖に米軍嘉手納基地のF15戦闘機が墜落。30日、31日に
      は同型機が連続して緊急着陸(米軍は緊急着陸ではなく予防着陸であるとし
      た)。エンジン・トラブルとみられる。原因が明らかにならないまま訓練を再
      開した米軍に対し、沖縄市、嘉手納町、北谷(ちゃたん)町の各市町議会は
      同31日、相次いで抗議決議と意見書を可決。県議員団は6月6日、嘉手納基
      地第18航空団司令部と沖縄防衛局を訪れ、事故原因の徹底究明や原因が
      分かるまで飛行を中止するよう求めた。要請議員団によると、同司令部は
      事故原因の調査結果が30~90日でまとまるとの見通しを示した上で、「ちゃ
      んと公表できる分はやる」と説明したという。議員団はその後沖縄防衛局と
      外務省沖縄事務所にも同様に要請した。
   8月 5日、キャンプ・ハンセン(宜野座村など)でHH60救難ヘリ2機がキャンプ
      ・ハンセン内の山火事の消火活動中に墜落。乗員4人のうち3人が脱出、1人
      が死亡。
15年 8月 12日、うるま市沖で陸軍ヘリH60が米艦船の甲板に墜落。同乗の陸上自衛隊
      員2人を含む7人負傷。25日、県議会の代表が沖縄防衛局を訪れ、原因究明や
      再発防止などを求めた。県議員団はアメリカ総領事館などにも要請を行った。
16年12月 13日、名護市沖で輸送機オスプレイが夜間の空中給油訓練中に不時着し大破、
      2人負傷。同じ日に別の機体が米軍普天間飛行場(宜野湾市)で胴体着陸。稲
      田朋美防衛相は14日未明、マルチネス在日米軍司令官に対し原因究明や安全
      が確認されるまでの飛行停止について、電話で申し入れを行った。米政府は
      「困難な気象条件下でのパイロットの操縦ミスが原因」という最終報告書をま
      とめた。22日、この事故に抗議する大規模な緊急集会が名護市の屋内運動場
      で開かれ約4200人が参加。主催は翁長知事を支える「オール沖縄」。しか
      し、日本政府は6日後の米軍の飛行を容認。
17年 1月 20日、うるま市の伊計(いけい)島の農道にHI攻撃ヘリ不時着。米軍側は
      「警告灯が点灯したために予防着陸をした」と説明。現場は島南部の住宅街に
      近く、最も近い住宅までは約130メートル、農道までは約60メートルの距離
      だった。
    6月 6日、伊江村の米軍伊江島補助飛行場にオスプレイ緊急着陸。米軍は操縦席の
      警告灯が点灯したため「予防着陸」したと説明。米軍の乗員4人や地元住民に
      けがはなかった。県は沖縄防衛局と在沖米海兵隊に口頭で抗議し、原因究明
      までのオスプレイの飛行中止、再発防止策と安全管理の徹底を求めた。小野寺
      五典防衛相は30日、記者団に「しっかりとした安全の確保をした上で、飛行
      していただきたい」と述べた。なお、同型機は8月28日には岩国基地で白煙を
      上げて離陸不能に陥り、翌29日には大分空港でも緊急着陸し、エンジン付近
      から炎が上がったのが確認されている。
   10月 11日、東村の牧草地で普天間飛行場のCH53E大型輸送ヘリ不時着、炎上、
      大破。消防や米軍が消火に当たった。住民や乗組員にけがはなかった。同型
      のヘリは2004年8月に米軍普天間飛行場近くの沖縄国際大学に墜落する事故
      を起こしている。米海兵隊は「飛行中に火災が発生し、緊急着陸した」と発
      表。翁長知事は那覇市内で「昨年のオスプレイが大破した事故から1年も経
      たないうちに、再び県内で事故を起こしたことに強い憤りを感じる。基地があ
      るゆえの事故。事故原因の徹底的な究明と早急な公表、原因が究明される
      までの同型機の飛行中止を強く要請する」と記者団に語った。事故現場を訪
      れた東村の伊集盛久(いじゅせいきゅう)村長は「起きてはいけない事態。
      遺憾だ。関係機関に強く抗議したい」と話した。
 12月 7日、普天間飛行場近くの保育園で米軍ヘリ部品と同一の落下物見つかる。
      この報道に対し、幼稚園に「自作自演だろ」という電話があった。12日には
      東京MXテレビのネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に出演した作家
      百田尚樹氏が、米軍ヘリの部品が屋根に落下したとみられる緑が丘保育園
      の事故について「調べていくと全部うそだった」「誰かがどっかから取り出し
      てきて屋根の上に置いた可能性が高い」と述べた。同園には「でっちあげて、
      よくそんな暇あるな」などと連日、中傷の電話やメールが続いた。
 12月 13日、普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校運動場にCH53E大型ヘリ
      の窓落下。米軍はその事実を認めたにもかかわらず、小学校に「やらせだろ」
      「基地のそばに造ったのはあんたたちじゃないか」などの誹謗・中傷の電話が
      相次ぎ、さらに教育委員会に対しては「学校を移転しろ」という電話があり、
      「土地がない」と答えると「住宅地をつぶせ」と返してきた。市教委の担当者
      は「やらせなどとんでもない話。移転や学校ができた経緯についても、事実
      関係をちゃんと調べてほしい。学校職員の精神的負担になっている」と話し
      た。 小学校と教育委員会に対する中傷は22日までに31件に及んだ。
18年 1月 6日、伊計島の砂浜にUHIヘリ不時着。河野外務大臣は、訪問先のモルディブ
      で記者団に対し、「被害の情報は入ってきていないが、さまざま情報の収集を
      しているところだ。安全運航は、沖縄県民の安全もそうだし、実際ヘリを飛ば
      してる米軍にとっても大事なことだ。しっかりと安全運航できるように心がけ
      てもらいたいし、申し入れはしていきたい」と述べた。また、沖縄県の謝花知
      事公室長は県庁で記者団に対し、「アメリカ軍の軍用機の整備に対し、県民
      は大きな不信感を持っている。アメリカはもっと真摯に考えるべきだ。連休明
      けに、外務省と沖縄防衛局の担当者を呼んで厳重に抗議する」と述べた。うる
      ま市は11日午前、臨時市議会を開き、普天間飛行場に所属する全機種の飛行
      停止と整備点検など安全管理の徹底を求める抗議決議と意見書の両案を全会
      一致で可決。同日午後に沖縄防衛局を訪れ、意見書を手渡した。このほか、
      全軍用機の住民居住地域上空での飛行の全面禁止、原因の徹底究明と再発防止
      策の実施、在沖米海兵隊の整理・縮小、日米地位協定の抜本的改定を要求し
      た。
   1月 8日、読谷村の廃棄物処分場にAHI攻撃ヘリ不時着。警告灯が点滅したため
      沖縄県は9日、6日に不時着したヘリとともに原因究明まで同型機の飛行中止
      を要請したが、9日にはUHI、AHIと同型機の飛行が確認されている。防
      衛省はマルティネス在日米軍司令官(空軍中将)に、在日米軍が運用する
      すべての航空機の整備、点検の徹底を要請した。翁長知事は県庁で記者会見
      し、「日本国民である沖縄県民がこのように日常的に危険にさらされても何も
      抗議もできない。当事者能力がないということについて恥ずかしさを感じて
      もらいたい」と政府を批判した。また小野寺五典防衛相は9日午前(日本時間
      10日午前)、米ハワイを訪問し、ハリス米太平洋軍司令官とキャンプ・スミ
      スで会談した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のヘリコプターが
      同県で相次いで不時着した事態を受け、小野寺氏は「住民の安心のため安全
      な航行をお願いしたい」と述べ、再発防止を徹底するよう求めた。ハリス氏は
      遺憾の意を伝えた。

さらに遡ると、復帰前の1959年に石川市(現うるま市)の宮森小学校に戦闘機が墜落し、児童11人を含む18人が死亡、210人が重軽傷を負った事故があり、2004年には沖縄国際大の本館建物にヘリが接触、墜落し、炎上した事故があった。沖縄県知事公室基地対策課の統計によれば、1972年5月15日の沖縄返還から2016年末までに県内で発生した米軍機関連の事故は709件で、墜落事故は47件である。

上記の度重なる事故に対する沖縄住民の反応は当然のことながら、恐怖・基地に対する反感・基地撤去の要求になり、沖縄県当局としても県民の安全な生活を保障することが中心となる。米軍にしてみれば、事故多発は軍に対する信頼を損なわせるばかりでなく、軍の任務遂行に著しい支障をきたす結果となる。特に傷害・死亡事故となれば、県民の反基地運動に火が付く。上記の事故に対する米軍側の対応をみてもその戸惑いぶりが伺える。特に2016年12月13日の名護市沖におけるオスプレイの不時着・炎上事故に関して、ニコルソン四軍調整官が「住民に被害がなかったのは感謝されるべきだ」と発言したという報道がなされ、一気に米軍批判がたかまった。ただ、調整官の真意が「誰も死ななかったんだからお前ら感謝しろ」というのではなく、「けが人も死亡者もなかったことを神に感謝している」というものだったと私は受け止めたい。さもなければ、ベトナムやイラン・イラクで戦死した何万もの兵士たち、ベトナム戦争のとき基地の町コザで毎晩飲んだくれて死の恐怖を振り切ろうとした兵士たち、キューバ危機の際、核兵器を積んで沖縄から飛び立つことになっていた兵士たち、そして戦争が終わって母国へ帰ってから自殺していった多くの兵士たち、それらの兵士たちの上に立つ軍人としてあまりにも理不尽ではないか。それとも、そう受け止める私が甘すぎるのか。
日本政府の対応はいずれも事務的・形式的にみえる。本気で取り組んでいるとは思えない。それは日米地位協定を含む日米の安全保障関係が主従関係にあり、日本としてはどうすることもできないからであろう。

上記に列挙した事故・事件あるいは基地反対運動に関する報道は日本本土では極めて不十分であるうえに、本土で生活する者にとって遠く離れた小島の「できごと」は生きていく上での課題とはなりにくい。その半面、沖縄の米軍基地問題に関する沖縄県民の反応や現地報道に対して中傷・誹謗する勢力があり、その勢力が広く沖縄問題を解決する上で大きな障害になっている。その勢力は地元マスメディアや基地反対運動を攻撃し、デマを拡散させ、多くの人に誤解や偏見を植え付ける。
その結果、仮に沖縄の人々が米軍基地に関連する問題に一切文句を言わず、地元新聞が潰れ、本土の保守的な新聞にとって代わられたとしたら、私はどういう日本をイメージすればいいのだろうか。私がうっすらと想像できるのは日本がもはや民主主義国家ではなく、ある特定の価値観・イデオロギーのもとに統制された管理的な国家主義国家になっているだろうということである。そして(あえて飛躍を恐れずに言えば)安倍総理大臣はひたすらそういう国家の実現を目指し、着実にそのための手を打ってきたしこれからも打ち続けるであろうということである。
そこでここはひとまず、沖縄の置かれている現実に向き合い、沖縄の人々の声に耳を傾けてほしい。米軍機が自分の庭や学校に墜落した時のことを想像するだけでもいい。日本にはそういう心の豊かさを尊ぶ伝統があるはずだ。(2018.1.11)
2018.01.12  9条改憲に強い懸念と危機感
  2018年の年賀状にみる国民意識

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 2018年になった。友人、知人から来た年賀状を読んでいてひときわ印象に残ったことがあった。安倍首相と自民党が推進する憲法改定、とりわけ「9条改憲」に対する強い懸念や危機感を表明した年賀状が目立ったことだった。

 私はこれまで毎年、多くの友人、知人と年賀状の交換をしてきたが、これまでの年賀状の文面といえば、「明けましておめでとうございます」とか「謹賀新年」とか「賀正」といった、いわば新年を言寿ぐ決まり文句や、自分や家族の消息や近況を伝える文面が大半であった。
 が、ここ数年、内外の政治・社会状況や世相への感想や主張を表明した年賀状が増えてきたように思う。以前は、年賀状では政治的なことへの発言は控えるというのが一般的な慣習だったが、年賀状でも政治的なことに意見をはっきり述べる人が増えてきたということだろう。

 今年は、日本国憲法に関する文面が目立った。例えば――

 「昨年は、非正規雇用者が人間扱いされない社会や、9条改憲の策動などに憤怒する日常でした」(埼玉県熊谷市・会社員)
 「昨年の衆院選で改憲勢力が3分の2以上を獲得したことで、安倍政権の暴走が止まりません」(神奈川県伊勢原市・元高校教員)
 「今年は年初よりトランプの朝鮮民主主義人民共和国への挑発と武力威嚇による核戦争の危機、それに追従する安倍の策動と改憲の動きの加速が予測されます」(長野県諏訪市・大工)
「いよいよ改憲が目前に迫り、安倍政権の横暴さを何とかしたいと思う年始めです」(東京都中野区・元生協職員)
 「平和憲法の危機 正念場の年です 『戦争をする国』に逆行させない 訴えつづけます」(東京都品川区・ジャーナリスト)
 「沖縄、原発、そして憲法改悪、腹の立つことばかりです。平和憲法を護る、9条を変えることを許さない!」(東京都品川区・元国会議員秘書)
 
  「安倍政権は、北朝鮮の脅威の名の下に長距離巡航ミサイル導入を検討、日本の防衛の基本方針である専守防衛を逸脱し、憲法を蔑ろにして軍国化が進められています。自衛隊を、憲法に基づいたものにするのではなく、軍隊と化した自衛隊に合わせて、憲法を変えようと本末転倒の流れを断ち切るために、今年も声をあげてまいります」(東京都立川市・女性)
  「寒さ厳しくとも、冬の花は彩りを増し、子どもたちの瞳は澄み、輝いています。日々にこそ、平和あり。戦争をさせない。自衛隊の人たちの命を危険にさらさせない。私たちは憲法を変えることに反対します」(東京都国分寺市・弁護士とその妻)
  「現政権は、自衛隊を明記して、専守防衛に徹するとかなんとか言って、平和憲法を装いながら、緊急事態条項を争点にしないように滑り込ませ、憲法を停止して、戦争を始めることができるような憲法にしたいのではと心配しています。緊急事態条項の無い今の憲法の方が、不備な点があったとしても、私たち国民にとって、はるかに安全であると思います」(東京都町田市・男性)
  「武力では、守りは出来ぬ 世の平和 9条こそが平和を守る」(長野県諏訪市・元会社役員)
 
 これも印象に残ったことだが、9条改憲に対する懸念、危機感は戦前生まれの人にひときわ強いようだ。
 横浜市在住の元新聞記者は「1947年に新しい教育制度が発足し、社会科という教科も誕生して、その教科書『あたらしい憲法のはなし』には、武力による威嚇で屈服を迫る国にはならないとありました。新制中学1期生は、夢に賭けます」と書いてきた。
 やはり元新聞記者(東京都東久留米市)から来た賀状には、こうあった。
 「私の父は名古屋の下町で医院を開業して間もなく召集され、中国大陸へ軍医として三年間派遣されました。除隊後、医院を再開……それも三年ほどで終わり、今度は沖縄に派遣されて戦死しました。四十歳になる直前でした。まだ生まれない末子を含めて六人の子と妻を置いて、どんな思いだったか、涙なしには語り得ません」「父をはじめ先の戦争で犠牲になった多くの命と引き換えに戦後日本が得た平和憲法が今、弊履のような扱いをされることに耐えかねる思いです。未来を生きる子供たちのためにも何とか九条改憲は止めたいものと願っています」

 では、どうしたらいいか。具体的な提案もあった。
 「憲法九条と平和を守るため 国会だけに任せず 世論と運動を広げましょう」(愛知県豊田市・平和運動家)
 「安倍極右政権は今年を『世界の至宝』たる平和憲法の改悪を具体化させる年にしようとしています。しかしどの世論調査でも、9条改憲に反対する声は常に過半数を超えています。『安倍9条改憲を阻止する3000万署名運動』を成功させ、孫子の代に平和憲法を引き継ぎましょう」(東京都練馬区・ジャーナリスト)
 『安倍9条改憲を阻止する3000万署名運動』とは、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけている「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」のことで、4月末に第2次集約、5月末に第3次集約を目指している。

 新年早々、改憲をめぐる注目すべき動きや報道があった。1つは、安倍首相が1月4日の年頭記者会見で「今年こそ新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示する」と述べ、自民党の憲法改正原案を早期に国会に提示することに強い意欲を示したことだ。これにより、安倍政権による改憲作業が一層加速することが予想される。
 一方、注目すべき報道とは、1月3日付の東京新聞の記事である。それは、同社加盟の日本世論調査会が12月9、10の両日に行った憲法に関する世論調査の結果で、それによると、戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法9条の改定について「必要はない」が53%、「必要がある」は41%で、「必要がない」が過半数を占めた。安倍首相が加速を促す改憲の国会論議には、67%が「急ぐ必要はない」と答えたという。
 これが世論とするなら、9条擁護派にとって前途は「望みなきにしもあらず」ということか。
2018.01.11 「香害」の一因である消臭除菌スプレー、その除菌成分に新たな毒性が明らかに
  シリーズ「香害」第4回
          
岡田幹治(フリーライター)

「香害」とは、香りつき商品の成分で健康被害を受ける人たちが急増している、新しい公害のこと。被害を受けると、「化学物質過敏症(MCS)」「喘息」「香料アレルギー」を発症したり悪化させたりする可能性があります。
喘息は、気管支が狭くなって吸い込んだ空気が通りにくくなり、発作を繰り返す病気。原因物質(ダニ・ハウスダストなど)がはっきりしているアレルギー性喘息と、原因物質が特定できない非アレルギー性喘息があります。前者は小児に多く、悪化すると生命にかかわるアナフィラキシーショック起こすこともあります。後者は成人に多く、難治化することが多い。
香料アレルギーは、香料成分が原因物質になって、皮膚炎・咳・くしゃみなどのアレルギー症状を起こす病気です(MCSについては第1回で説明しました)。
シリーズ第4回は、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンの「ファブリーズ」をはじめとする消臭除菌スプレーが香害の一因であること、その除菌成分に新たな毒性が次々に判明していることをお伝えします(注1)。

「香料」には喘息やアレルギーを起こす成分がある
ファブリーズは、何にでもスプレーすれば嫌なニオイが消えると宣伝している商品で、衣類・カーテン・ソファ・枕・布団などに使う「布用」や、玄関・靴箱・台所・洗面所・居間などに置く「置き型」、さらには車のエアコンに取りつける「車用」などがあります。
「瞬間お洗濯! 99.9%除菌・消臭」「嫌なニオイを徹底消臭&爽やかな香り」などと宣伝していますが、一体どんな仕組みで消臭・除菌しているのでしょうか。
同社のサイトを見ると、「ファブリーズの主な成分は?」という項目が立てられ、「成分」と「働き」が以下のように記載されています。

▽トウモロコシ由来消臭成分=トウモロコシ生まれの有効成分で、ニオイのもとの分子を取り込み、消臭します。
▽除菌成分(有機系)=Quat(クウォット)。特定の除菌成分の総称です。このタイプの除菌成分の安全性は広く認められており、化粧品や薬用石けんなどに広く使用されています。(中略)
▽香料=布からさわやかな香りを感じる。(以下略)

以上のうち、トウモロコシ由来の消臭成分は、「シクロデキストリン」という、でん粉の一種です。シクロデキストリンは空洞の多い構造をしていて、ニオイのもとの分子を取り込む効果はありますが、消臭力はあまり強くありません。
そこで、「香料」を配合し、消しきれないニオイをごまかしているのです。
香料は香りのもとになる物質で、ほとんどが天然の香りに似せて合成した化学物質です。世界には約3000の物資(成分)があり、これらは普通、複数(ときには数十種も)の物質をブレンドした混合物として商品に使用されます。ただ、具体的な物質名は企業秘密として公表されず、「香料」と表示されるだけです。
香料の安全性は、世界の主要香料企業が加盟する「国際香粧品香料協会(IFRA)」傘下の「香粧品香料原料安全性研究所(RIFM)」で審査されており、安全性が確認されたものだけが流通しているとIFRAは説明しています。しかし、安全性試験の内容はほとんどが未公開です。
アメリカのNGO「地球のための女性の声」がIFRA公開の約3000物質を調べたところ、1000以上が国際機関などの公式リストで「懸念ある化学物質」とされていました。190物質は国際機関で「危険」とされ、7物質は国際がん研究機関(IARC)が「人に対する発がん性が疑われる」(グループ2B)に分類していました(注2)。
また在野の研究者・渡部和男氏は、香料にはアレルゲン(アレルギーの原因物質)となる成分や喘息を誘発・悪化させる作用を持つ成分が少なくないことを明らかにしています(注3)。
しかも「香料」とまとめて表記されるものには、香り成分を強めたり長続きさせたりする物質も含まれており、そちらの害も大きい。「いい香り」は、部屋の空気を汚染する「揮発性の有機化合物(VOC)」でもあるのです。

繁殖力が落ち、先天性異常の出生が増加
次に、ニオイのもとになる雑菌を減らす「除菌成分」=Quatを取り上げます。
Quatとは、「第4級アンモニウム化合物」と呼ばれる化学物質グループのこと(注4)。ファブリーズは、それらのうち界面活性剤として商業利用されている「塩化ベンザルコニウム」など2種類を含むことが研究者によって明らかにされています。
第4級アンモニウムは細菌の細胞膜を不安定にして細胞を殺す性質をもっており、このため殺菌剤をはじめ抗菌剤・消毒薬、洗浄剤(洗剤やシャンプー)、食品保存剤などに広く使用されています。
ヒトの細胞膜も不安定にしますから、健康被害をもたらすことがあります。殺菌力が強い「逆性石けん(薬用石けん)」を多用する医療従事者は皮膚炎を起こし、喘息の原因にもなります(注5)。またアレルギーを起こしやすいため、医薬部外品に使うときは必ず表示しなければなりません。
この物質はコンタクトレンズ用品に防腐剤として含まれ、角膜障害を起こすことがあるし、麻酔時の筋弛緩剤として使われてアナフィラキシーショックの原因にもなっています。
中でも塩化ベンザルコニウムはヒトの眼・皮膚・気道への刺激性が非常に強く、国際化学物質安全性カード(IPCS)で「環境中に放出しないよう強く勧告する」とされています(注6)。
以上のような作用を持つQuatについて近年、新たな毒性が次々に明らかになっています。
たとえば国内では、ファブリーズの原液を希釈し、生まれたばかりの仔マウスに投与したところ、死亡率が高まったとの研究結果が公表されています(注7)。これはソファやぬいぐるみに残ったファブリーズの成分を乳幼児がなめる場合などを想定した研究です。
アメリカ・バージニア工科大学のテリー・フルベック教授らの研究はもっと衝撃的です。
教授によると、研究室の飼育かごの洗浄剤をQuat含有のものに変更したとたんにマウスの出産率が低下しました。驚いた教授らははまず生殖毒性について調べ、Quatに曝露したメスマウスは出産数が少ないことを2014年に発表。15年には、Quatに曝露したマウスでは、オスの精子が減少し、メスの排卵が少なくなるなど繁殖力が落ちることを報告しています。
続いて今年7月、Quatに曝露させたマウスから生まれた仔マウスは、二分脊椎症や無脳症といった「先天性異常(欠損)」(注8)が多いと発表しました(注9)。
教授らは、塩化ベンザルコニウムなど2種類のQuatを用い、それらを「餌に入れて食べさせる」「チューブを通じて服用させる」「それらを含む消毒薬を飼育室で使う」という三つの方法で曝露させた結果、次のことがわかりました――。
▽曝露されたオスとメスのマウスから生まれた仔は先天性異常の比率が高く、その現象は曝露をやめた後、2世代にわたって引き継がれた。▽オスだけに曝露させ、メスには曝露させなかった場合でも、仔の先天性異常の割合は高かった。▽Quat含有の消毒薬を飼育室で使った場合でも同じ現象が見られ、先天性異常の発生率は別の消毒薬では0.1%なのに、Quat含有の消毒薬では15%にもなった。
あくまでマウスを使った実験の段階ですが、教授は「動物実験はヒトへの影響を予測する確固とした基準」であると強調し、「次の研究ではQUATとヒトとの関連を検証する」と言っています。

ファブリーズはいらない!
以上をまとめると、ファブリーズのような消臭除菌スプレーは「香料でニオイをごまかし、次々に毒性が判明している危険な物資で除菌する商品」ということになります。
「瞬間お洗濯!」と宣伝していますが、実際には洗濯でなく除菌しているだけですから、汚れは落ちません。またすぐに菌は繁殖します。そこで毎日のようにスプレーをしなければならないのです。
こんなものを室内でスプレーしてよいわけはありません。とくに乳幼児や妊婦のいるところでは絶対に使わないようにしましょう。車のエアコンにつけて車内に成分を充満させるのも、とても危険です。
部屋がにおうようなら、まず部屋の空気を入れ替える。そしてニオイの発生源をなくすことです。腐ったものは捨て、湿った場所に貯まったごみは掃除します。カーテン類はときどき洗濯し、ソファやカーペットは掃除機をかけ、布団類は外に干して日光に当てます。
化学物質を使いたいのであれば、「重曹」と「クエン酸」が清掃用に使える比較的安全な化学物質だと渡部和男氏は言っています(注5)。布か紙の袋に入れた重曹を靴の中に入れておくと、重曹がニオイを吸着します。またアンモニア臭や魚臭を消すためには、1~2%のクエン酸液を発生源にスプレーするとよいそうです。

注1 消臭除菌スプレーはP&Gジャパンのほか花王・ライオンも発売しており、2社は「除菌成分」について次のように説明している。
▽花王「リセッシュ 除菌EX 消臭ストロング」
「成分」という項目に「両面界面活性剤、緑茶エキス、除菌剤、香料、エタノール」と記しているだけ。除菌剤の物質名は全くわからない(塩化ベンザルコニウムなどだと推定されている)。
▽ライオン「HYGIA衣類・布製品の除菌・消臭スプレー」
「成分情報」に「界面活性剤・除菌剤」という項目を立て、「ジアルキルジメチルアンモニウム塩」と明記。これは第4級アンモニウムの一つで、毒性は塩化ベンザルコニウムより低いとされている(殺菌力も弱い)。
各社の表示があいまいなのは、消臭除菌スプレーが「家庭用品品質表示法」の対象になっていないからだ。同法の対象を大幅に増やす必要がある。
注2 ブライアン・ジョセフ「“香り”は我々を病気にしているのか」(安間武・訳が化学物質問題市民研究会のサイトに掲載)
注3 渡部和男「香料の健康影響」(同氏のサイト)。香料の成分には発がん性を持つ物質やホルモン攪乱作用(環境ホルモン作用)を持つ物質もある。
注4 英語ではquaternary ammonium compounds。窒素原子(N)に水素原子(H)が四つついた「アンモニウムイオン」の水素が他の有機物質に置き代わった化学物質。「陽イオン界面活性剤」でもある。
注5 渡部和男「消臭剤―第4級アンモニウムの恐ろしさ」(化学物質過敏症支援センター『CS支援』89号)
注6 国際化学物質安全性カード(ICSC)は、化学物質の健康や安全に関する重要な情報の概要をまとめたもの。欧州委員会や各国の協力で作成されている。
注7 藤谷知子ら「市販家庭用消臭除菌剤に配合される4級アンモニウム化合物のマウス新生仔および成獣における一般毒性指標に及ぼす影響」(『東京都健康安全研究センター年報』61号・2010年)
注8 二分脊椎症は、脊椎の骨が脊髄の神経組織を覆っていない症状。神経組織が正常に働かず、下肢の運動障害などが起きる。無脳症は、脳が十分に形成されず、多くは流産や死産となる。いずれも神経管(脊髄や脳など中枢神経系のもと)の閉鎖障害によって起きる先天性異常。
注9 論文はhttp://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bdr2.1064/abstract。ブライアン・ビエンコウスキーによる解説「清潔への代償 消毒薬・第4級アンモニウム化合物はマウスの仔に先天性欠損を引き起こす」の安間武・訳が化学物質問題市民研究会のサイトに掲載されている。

◆岡田の1、2月の講演予定
▽広がる「香害」~柔軟剤や消臭スプレーはこんなに怖い!~
  1月28日(日)午後1時30分~3時30分
  千葉県印西市コミュニティセンター サザンプラザ 2階多目的室
  問い合わせ:印西 水と暮らしを守る会 竹内(090-3907-8355)
▽香害、あなたならどうする!
  2月6日(火)午前10時30分~12時30分
  大田区立消費者生活センター 2階講座室(JR蒲田駅東口5分)
  問い合わせ:23区南生活クラブ生協(℡03-3426-9914)


2018.01.04  やっぱり原発はイラナイ
   韓国通信NO543

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

原発がなくても電気は足りた。この厳粛な事実にもかかわらず、いまだに原発は必要だという人がいる。福島の事故は無かったことにする「事実の改ざん」も腹立たしい。
あれからからもうすぐ7年。事故は決して「風化」していない。風化させようとする原子力ムラとマスコミの悪あがきにもかかわらず、原発に反対する声は着実に広がっている。原子力規制委員会を隠れ蓑にして原発を推進する仕組みも明かになった。

 <地震の多い日本に住んで>
地震が起きるたびに日本に暮らす宿命のようなものを感じる。日本列島はまるごと火山みたいなもの。プレートは複雑に絡み合い、ゆがみ、ぶつかる。原発ごっこはまるで「油のなかの火遊び」のようなもの。私のイメージでは伊方原発3号機(愛媛)をストップさせた広島高裁判決は当然すぎるくらい当然だ。いつ起きるかわからない地震だから原発を止める必要はないという人の気が知れない。
 
 <世界を席巻する脱炭素の潮流>
関西電力の大飯原発1、2号機が廃炉に追い込まれた。採算があわないからだ。安全のためにはお金がかかるというのだからあきれる。福島事故から得た教訓は安全な原発は採算がとれないということ。原発をベースロード電源とする政府のエネルギー政策は破綻した。
今、世界では石化燃料と原発依存から自然エネルギーへと雪崩のような大転換が始まっている。地球の生き残りをかけた「脱炭素革命」「安全」「経済性」を求める巨大マネーが環境ビジネスへ怒涛のように向かっている。自国の利益を優先させ、パリ協定離脱を宣言したトランプ大統領は世界の趨勢から孤立している。トランプに寄り添う安倍首相も原発に執着して世界の潮流から立ち遅れたことに気づかない。中国の「エコ文明」宣言、韓国の「脱原発」も自然エネルギーへのシフトを鮮明にした。

 <東海第二原発の再稼働の衝撃>
 2018年11月に運転期限を迎える東海第二原発が20年の延長の申請を行った。原発の先駆け、日本原電が保有する原発は全部で4基。東海第一は廃炉解体中、敦賀1号機も廃炉決定、2号機は活断層の上にあるため再稼働は難しい。残る唯一の原発を動かすことに社運を賭ける。老朽原発を稼働させるのを聞きつけた人たちが2017年8月に東海村に集まり抗議した。事故が多いことで知られ、経営基盤の弱い日本原電に原発を動かす資格はない。参加者は「即時廃炉」を求めた。
避難区域30キロ圏には水戸市を含む約100万人が住む。首都圏に最も近い原発だ。原発事故「国会事故調報告書」は3.11地震による外部電源の喪失にもかかわらず大事故にならなかったのは「幸運」以外の何物でもなかったと指摘した。
 東海第二の再稼働は悪夢のようなもの。原子力規制委員会が認めれば2018年から稼働する。
 我孫子市は東海第二原発から85キロにある。チェルノブイリ原発事故をあてはめるなら関東・東北は死の町になるはずだ。
落ちるはずのない北朝鮮のミサイルにJアラートで住民を避難させた政府が、原発には何故こうも甘いのか、地震に対して楽観的なのかわからない。
30キロ圏内の住民たちの避難計画は困難といわれているが、避難計画ができれば稼働してもいいという話ではない。福島第一原発から120キロの我孫子は福島県白河市並みの放射能に見舞われ一時期パニック状態になった。
 爆発事故の翌日の北風に乗って降り注いだ放射能で柏、我孫子、松戸地区では避難する人もいた。狭山の茶も葛飾区の金町の浄水場も汚染された。東海第二が事故を起こせば、東風なら栃木県全域、北風なら首都圏、山梨に、南風なら東北全域に被害は及ぶ。茨城県内の多くの市町村が反対の声をあげ、栃木県(益子町町議会は住民の声に動かされ反対声明)でも再稼働を危ぶむ声が広がっている。
我孫子市でも東海第二原発の廃炉をもとめる決議を市議会にもとめる運動が始まった。2018年3月の定例議会で採択されると、政府、規制委員会、茨城県に「意見書」が提出される。署名は市外の住民、未成年者、外国人も可能だ。通信の読者にも署名をお願いしたい。署名用紙は「通信」の「初荷」としてお送りしたい。我孫子市の廃炉要求は東海村周辺で進められている脱原発の運動に大きな励みになるはずだ。
東海第二原発再稼働反対の運動は絶対に負けられない。

 <野垂れ死にを覚悟して>
8月に体の異常を医者から指摘され、人生の「手じまい」を強く意識した。健康が唯一取り柄の人間が毎朝8種類の薬を飲む羽目になった。人間は死ぬはずなのに今回ばかりはさすがに落ち込んだ。落ち込むのが早ければ立ち上がるのも早いのは愚かな「天性」なのかもしれない。
「長生きして、自分たちをこんな目に遭わせたものにリベンジする」と語り続けた医師肥田舜太郎の言葉に打たれた。肥田氏は100歳まで核廃絶の執念を燃やし続け2017年3月に亡くなった。このままでは死ねないという私の思いと肥田の「リベンジ」という言葉と重なった。
88才の俳優坂本長利は千回を超すひとり舞台を続けている。自分自身の成長と宮本常一の「土佐源氏」の完成まで100才まで芝居を続けるという。老いてなお燃やし続ける執念に圧倒された。才能もなく努力もしないで安易に「手じまい」を急いだ愚かさに気づかされた。凡人なりにやれることはまだたくさんある。
「戦争により命を落とされた方々の尊い犠牲の上に、今私たちが享受する平和と繁栄がある」。2017年の戦没者慰霊祭で安倍首相が語った言葉だ。この嘘を放置したまま死ねないと思った。
彼は政治を玩具にして、平和を語りながら戦争を肯定して戦死者たちを貶めた。その偽りが見破られないことに我慢ができない。「手じまい」どころではない。野垂れ死にを覚悟で抗うのが、私にはふさわしいのかも知れない。「古人も多く旅に死せるあり」<奥の細道 芭蕉>
「行き行きて倒れ伏すとも萩の原」<曾良>