2017.03.22 口封じのためか、事実解明につながるかー森友学園「疑惑」は「疑獄事件」へと発展しつつある

広原盛明(関西在住、都市計画・まちづくり研究者)


森友学園「疑惑」はいまや森友学園「疑獄事件」へと発展しつつある、籠池理事長の証人喚問は「口封じ」のためか、それとも事態解明につながるのか、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(16)

 3月16日の参院予算委員会の森友学園現地調査で、「なにか面白いことが起るかもしれないよ」と大阪の友人が教えてくれた。その意味が分からない私に対して、友人は「何が起こるか分からないところが面白いのじゃないか」と回答をはぐらかしたが、まさか、それが「安倍首相が100万円を寄付した」という籠池理事長の爆弾発言になるとは思わなかった。

 籠池発言の真偽は別として、首相を名指ししての発言は安倍政権にも衝撃を与えたらしく、菅官房長官は即刻記者会見を開き、首相も夫人も第三者を通じても寄付した事実はないと否定した。しかし、それだけでは収まらなかったのか、これまで参考人招致でさえ拒否してきた自公与党の国対委員長が、3月23日に急転直下「証人喚問」に踏み切ることが判明した。驚くべき事態の急変ではないか。

 世間相場では、参考人招致の方が証人喚問よりも通常「ゆるい」と思われている。参考人招致だと出席を断ることもできるし(現に籠池理事長は大阪府議会の参考人招致を断った)、参考人が事実と異なることを言っても罰せられることはない。籠池理事長のような鉄面皮の人物には、参考人招致など痛くも痒くもないのである。しかし、証人喚問の方は正当な理由なくして出席を断ることはできないし、事実と違うことを言えば偽証罪で訴えられる。これまで国会で証人喚問がなかなか実現しなかったのは、事実の解明を恐れる政治勢力がそれを阻んできたからである。

 ところが摩訶不思議なことに、自公与党がかねてから警戒してきた「何を言い出すかわからない」籠池理事長のような人物を一転して証人喚問することに踏み切った。竹下自民党衆院国対委員長は「首相が侮辱されたことを看過することはできない」などと言っているが、本当のところは籠池理事長にこれ以上の発言をさせないための「口封じ」に出たのではないかと私は思っている。偽証罪を口実にして籠池理事長に発言を委縮させる、あるいは些細な発言ミスを引き出して起訴に持ち込み、本人を拘留して物理的に発言を封じる。そうすれば、一連の騒動に終止符を打てるとでも踏んでいるのだろう。

 だが、こんな考え方は甘いのではないか。安倍夫妻や稲田防衛相と籠池理事長やその妻との関係は、日本会議などの右翼人脈を通して想像以上に密接なものがあったのであり、いまやその関係はテレビ番組や週刊誌などのメディアによって広く国民全体に知れわたっている。また、森友学園幼稚園にみられるような戦前教育への回帰が、安倍首相の「お薦め」「お好み」であり、昭恵夫人が認可予定の小学校の名誉校長に就任したのもその教育理念に「共鳴」したからであることも、国民はよく知っている。だから、多少の「口封じ」を講じたところで、今度は籠池夫人がそれを上回る(大)スピーカーとなって大阪中あるいは日本中に触れ回ることになれば、事態がもっと拡散していくことに違いない。

 いま国民が何よりも知りたいのは、なぜ国有地がかくも法外な安値と異常なスピードで森友学園に払い下げられたのか、なぜ財務省にその経過を記した記録がないのかという、通常は「あり得ない」事態の解明である。この深刻な疑惑が解明されない限り、安倍政権がどのように関係者の「口封じ」をしても、またどのように「疑惑の蓋」をしても国民の疑いは晴れず、安倍内閣の支持率は遅かれ早かれ低下していくことは避けられない。また思わぬところから真実が暴露されて、それが安倍政権と財務省を貫く「疑獄事件」であることが判明すれば、安倍内閣はもとより自公与党体制そのものが崩壊する恐れすらある。

 加えて、森友学園疑惑には松井知事をはじめ「維新の会」が相当絡んでいることも疑惑を二重三重に深めている。松井知事はもっぱら国(財務省)が率先してこの話を持ち掛けてきたと目下「火の粉」を振り払うのに懸命であるが、このほど大阪府が近畿財務局と協議した記録を「残していない」ことが府の内部資料からも判明した(毎日新聞、2017年3月16日)。これは、財務省理財局が交渉記録を一切残していない(破棄した)ことと同じ構図であり、事態を隠蔽するものだと疑われても仕方がない。関係記録を隠蔽するこのような構図は、それが残しては困るような胡散臭い協議(交渉)記録であったことを示す以外の何物でもなく、「どこかからか出てくる」ようなことでもない限り国民の疑惑は永久に解消しないのである。

 安倍政権は、もはやこれだけの国民的関心事になった疑惑を自分たちの思惑で幕引きできるなどと思わないことだ。事態は、もはや隠せば隠すほど国民の疑惑は大きくなるという「負のスパイラル」状況に入っているのであり、どこかでそれを断ち切らない限り、政治生命を維持することができないところまで来ている。だが「安倍1強体制」はそんな自覚もなければ、「身を切る覚悟」も示すことができない。「行き着くところまで行くほかはない」のが、安倍政権の運命なのだろう。(つづく)

2017.03.16 森友学園:新聞・通信・NHK世論調査
国有地払下げ不適切:80%以上
政府説明不十分:70%:以上


広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

森友学園疑惑究明はいまや国民の声となった、これ以上の籠池隠しは内閣支持率の低下に拍車をかけるだろう、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(15)

 3月10日から12日にかけてマスメディアの世論調査が相次いで行われた。中心テーマは、言わずと知れた「森友学園疑惑」である。3月14日現在、結果が判明している共同通信、朝日新聞、毎日新聞、NHKの4社についてその傾向を分析してみたい。

各社の質問の数や文章形式はそれぞれ異なるが、質問項目としては以下の4項目に分類できる。
(1)国有地が森友学園に格安で払い下げられたことを適切(妥当)だと思うか。
  ・共同通信、「適切だ」7%、「適切でない」87%
  ・朝日新聞、「妥当だ」6%、「妥当でない」81%
  
(2)政府が払い下げの経緯を十分に説明していると思うか(納得できるか)。
  ・共同通信、「説明していると思う」5%、「説明していると思わない」88%
  ・朝日新聞、「納得できる」12%、「納得できない」71%
  ・毎日新聞、「納得している」6%、「納得していない」75%
  ・NHK、 「大いに納得できる」2%、「ある程度納得できる」10%、
   「あまり納得できない」31%、「全く納得できない」49%

(3)森友学園理事長を国会に招致して説明を求めることに賛成か(必要か)。
  ・共同通信、「賛成」75%、「反対」15%
  ・朝日新聞、「必要だ」70%、「必要ではない」18%
  ・NHK、 「必要だ」55%、「必要ではない」11%

(4)安倍首相と首相夫人の森友学園との関係について。
  ・共同通信、安倍首相の森友学園との関係に関する説明について
   「納得できる」31%、「納得できない」58%
  ・毎日新聞、安倍首相夫人が名誉校長を辞任したことについて。
   「辞任したので問題ない」23%、「辞任したが問題は残る」58%、

 また、安倍内閣の支持率が前回(カッコ内数字)と比べてどう変化したかも最大の関心事だ。
  ・共同通信、「支持する」56%(62%)、「支持しない」31%(27%)
  ・朝日新聞、「支持する」49%(52%)、「支持しない」28%(25%)
  ・毎日新聞、「支持する」50%(55%)、「支持しない」31%(27%)
  ・NHK、 「支持する」51%(58%)、「支持しない」31%(23%)

 注目されるのは、共同通信調査を分析した京都新聞(3月13日付)の解説記事である。以下はその概要である。
(1)森友学園への国有地払い下げ問題で、安倍首相が自身や昭恵夫人らの関与を否定した説明に対して「納得できない」とする回答は、自民党支持層46%、公明党支持層59%、民進党支持層89%、支持政党なし64%に達した。
(2)国有地の評価額から大半に当たる8億円余りが差し引かれた売買に関しては、「適切だとは思わない」とする回答が、自民党支持層83%、その他政党でも大半を占める。
(3)政府による経緯の説明についても、安倍内閣を支持する人の87%が不十分だと回答した。
(4)森友学園の籠池理事長を国会に招致して説明を求めることについては、民進党支持層90%、自民党支持層72%が賛成した。

 これらの結果からまず言えることは、政党支持に関わりなく(保革、無党派層を問わず)森友学園への国有地払い下げは不適切であり、かつ政府の説明は不十分なので、籠池理事長を国会に呼んで説明させるべき、というのが国民の圧倒的な声になっていることだ。とりわけ注目されるのは、自民党支持層から強い疑念の声が出ていることであり、これはこれまで安倍内閣を支持してきた保守層がこの問題に対して明快な説明を求めており、曖昧な幕引きがされるときは一気に「反安倍勢力」に転化する可能性を示している。

 このことは、森友学園疑惑が今回の世論調査ではまだ内閣支持率の大幅な低下につながっていないことの説明にもなる。というのは、これまで安倍内閣を支持してきた保守層やその周辺は、現時点ではまだ内閣不支持までには踏み切っていない。前回調査に比べて支持率の低下は数パーセントの小幅な動きにとどまっているのが、その証拠である。だからといって、安倍政権が今回の内閣支持率下落を軽視していいことにはならない。籠池理事長が「何を言うかわからない」という理由だけで隠し通せるほど、この問題の底は浅くないのである。

 大阪府議会の動きも気になる。松井大阪府知事は、森友学園疑惑が維新の会へ向うことを防ぐため、国民の目を国会に集中させることに腐心している。国会が籠池理事長を承知して説明させるべきだというのである。目下のところその策動はある程度成功しているともいえるが、大阪府議会で籠池理事長の参考人招致が実現すると、そこから火種が国会に飛び火しないとも限らない。しかし、籠池理事長が参考人拒否をいつまでも続けるという事態になると、当然のことながら百条委員会による証人喚問の必要性が高まってくる。松井知事としては頭が痛い問題だが、この対応を誤るとこれを契機に大阪府民の批判が一斉に維新の会に向かうことになり、間近に迫っている堺市長選への影響が避けられなくなる。

 森友学園疑惑は、いまや今後の政局の行方を左右する「時限爆弾」ともいえるほどの大問題に発展しつつある。東京では都議会の百条委員会で豊洲問題をめぐる暗闇の一端が明らかになりつつあるが、大阪の森友学園問題もそれに劣らない破壊力を秘めている。これからも注視していきたい。(つづく)

2017.03.11  関西在住・広原盛明のつれづれ日記・転載
          なぜ安倍政権は隠ぺいするのか

広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

なぜかくも、安倍政権は総力を挙げて事態を隠蔽するのか、「森友(アベ友)学園疑惑」隠しは却って安倍政権の命取りになる可能性が大きい、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(14)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その45)

 トランプ大統領当選から金正男暗殺事件へ、この間、国際問題を中心に回ってきた朝昼のトークショーが最近は一転して森友学園疑惑に向かっている(森友学園のことを関西では「アベ友学園」と呼んでいる)。しかも国会は開会中、国会審議を通して毎日新しいネタが次から次へと提供されるので、報道側にとっても視聴者側にとっても一番面白い展開になっているのである。事態の推移は興味津々の有様で、「アベサマのNHK」に愛想を尽かした視聴者が、民放テレビに連日クギづけになるのも無理はない。

 3月6日午前の参院予算委員会審議の模様が面白かった。冒頭、与党側から質問に立った西田議員(京都区選出)は、「森友学園問題は冤罪だ!」「安倍夫妻は利用されただけだ!」「国有地売却と安倍夫妻は何の関係もない!」と声を張り上げて安倍首相を擁護した。通常、質問者は政府側答弁者の方に向かって質問するのだが、この日の西田氏はもっぱら野党席側に向かって「横向き」に質問するなど、質問の方向が違った。おかげで安倍首相は冒頭に一言二言、「私は関係ありません」と言っただけで、後は西田氏の独演にまかせて座っているだけとなった。

 西田氏といえば、知る人ぞ知るウルトラ右翼。夫婦別姓問題などには命を懸けて反対する極め付きの国家主義者だ。だから彼が質問に立つということは、自民党のこの問題に対する態度を知るうえで大いに参考になる。予想通り、西田氏は攻撃の的を野党と報道機関に絞り、森友学園疑惑に関する野党質問は安倍夫妻を「冤罪」にも陥れかねない不当な内容であり、それを大げさに報道するマスメディアは「フェイクニュース」(偽情報)を拡げているだけだと非難した。

 私はときおり映し出される安倍首相の顔を見ていたが、彼は頷くこともできず喜ぶこともできず、終始複雑な表情を浮かべて黙ったままだった。だが、内心では「迷惑至極」とまではいわないまでも、かなり困っていたに違いない。なぜなら、西田議員が躍起になって安倍首相を弁護すればするほど、視聴者の気持ちが自分から離れていくのを知っているからだ。「贔屓の引き倒し」とはまさにこんなことをいうのだろう。もっとも彼自身がいきり立って答弁に立ち、質問者に対して「そんな発言は犯罪者扱いだ!」「印象操作だ!」などと言うときには、我を忘れているので視聴者の反応などまったく気にしていない。きっと激しやすい人物なのだろう。

 一方、西田議員の質問に対して答弁に立ったのは財務省理財局長だった。こちらの方は準備通り「先生の仰せの通り」を連発し、従来行ってきた説明を長々と繰り返す役割に徹した。「説明不足」とは説明する時間の長短ではなく、中身があるかどうかのことを言うのだが、この局長答弁は永田町や霞が関の模範となる官僚答弁そのもので、意味のない相槌を打つことで西田議員の独演(大立ち回り)を盛り立てた。太鼓持ちとはこんな人物のことをいうのだろう。

 おそらく二人は安倍首相の前で点数を稼いだなどと思っているのだろうが、視聴者の方はもはや官僚答弁の内容などを気にしていない。その表情や口ぶりから事態の本質を感じ取っているのである。その点、理財局長の能面のような表情と白々しい答弁は権力者の言いなりになる(官僚の矜持を失った)役人の本質を余すところなく物語っていて、森友学園疑惑に加担してきた官僚機構の腐臭を振りまくに十分だった。森友学園疑惑に関する国会審議は、いまや安倍政権関係者の疑惑隠しを益々際立たせる段階にまで到達したのだといえよう。

 これを裏書きするのが、政治学者の御厨貴氏が司会進行を務める3月5日(日)早朝のTBS番組「時事放談」だった。今回の放談者は二階自民党幹事長と漆原公明党幹部の二人、まさに言い放しの放談会でまるで狐と狸の芝居を見ているような錯覚に襲われた。今回の「時事放談」は司会者が一切反論しない。司会者が用意してきた質問を淡々と読み上げると、その度に二階氏がなにかしらぼそぼそと呟き、漆原氏が調子よく合わせて「はい、次の質問どうぞ」となる。
 
 だが、この一問一答形式の放談会は非常に面白かった。例えば、森友学園疑惑に関して自民党は何か調査でもするのかとの質問に対しては、二階幹事長は「そんなことをやっている暇はない。大事な要務に支障が生じて仕事が滞る」と一蹴し、漆原氏は大きく頷いて「いま会計検査院が調査をしているから」と引き取る。見事な連係プレーだ。自民・公明の国会裏の連係プレーを目の当たりにしているようで、両党が森友学園疑惑をどう覆い隠すか、どう終止符を打とうとしているかがよくわかった。要するに合理的な説明は一切放棄して、事態を徹底的に隠蔽して幕引きを図ろうというものだ。

 3月7日、参院自民党は森友学園疑惑の中心人物、籠池理事長の参考人招致を拒否した。証人喚問ではなく参考人招致でさえ応じられないというのである。「籠池隠し」が国民の批判を招くことはよく分かっているが、それでも隠さなければならないほどの大きな暗闇が背後に横たわっているのだろう。いまや国民は一連のいきさつを通して、どす黒い暗闇が安倍政権を取り巻いているのがよく分かるようになったのである。それとともに安倍首相の人物像に対する評価も釣瓶落としに下がっていくだろう。何しろ籠池氏は大阪では「天性の詐欺師」と称されている人物なのである。こんな人物に一国の首相夫妻が引っかかるなんて情けない限りだが、それが現実のものになったところに、国民は「地球儀外交」を掲げる一国の宰相の器の大きさを知ったのである。(つづく)

2017.03.07  石原慎太郎はオトコじゃない
伊藤力司 (ジャーナリスト)

「座して死を待つつもりはない」「果し合いに出かける侍のつもり」とか、もっともらしいせりふを吐いて3月3日の記者会見に臨んだ石原慎太郎元都知事の発言は、記者団やその背後の読者・視聴者を唖然とさせるほど無責任なものだった。

曰く、豊洲移転は既定路線として決まっていたもので契約交渉は部下に任せていた。最終的には専門家、都議会も賛同してみんなで決定したもので、自分ひとりが決めたものではない。ハンコも自分で押したか記憶にない。瑕疵担保責任の件も全くわからないまま契約書に押印した云々。

老朽化した築地市場の代わりに、豊洲の東京ガス工場の跡地に新市場を建設して移転するという計画を進めた東京都の最高責任者は、1999年から2012年まで東京都知事の座にあった石原氏である。

その石原氏が、豊洲市場問題の最終責任を言い逃れしようというのだから「オトコがすたる」という以外にない。2011年の都知事選挙で石原氏に敗れた東国原英夫元宮崎県知事にテレビ番組で「(侍)だったら腹を切らんかい!」とからかわれても文句も返せまい。

石原氏は都知事在任中都庁に出勤するのは週に2、3日だけ、側近の浜渦武生副知事に実務を任せていたという。それなのに都知事の給与はまるまるもらい、公用車は使い放題。贅沢な外遊費用など不適切な公務出費をとがめられて辞職に追い込まれた舛添要一前都知事の出費なぞ、石原都知事時代の浪費に比べればかわいらしいものだったという。

それでも石原都知事に対する批判が盛り上がらなかったのは、石原氏の日頃の大言壮語ぶりから、東京都に何か問題が起これば都知事が最終責任は取ってくれるだろうという暗黙の期待が都民の間に広がっていたからであろう。今回、その期待は完全に裏切られた。

都市ガスを製造するための有毒物質を大量に使った工場跡地に、生鮮食料品を扱う市場を建設する計画については、当初から疑問や反対の声が高かった。しかし石原都政は遮二無二豊洲計画に突っ走った。

その結果、豊洲市場は膨大な汚染処理費と建築費を費やして十数年ぶりに完成した。昨年11月には築地から豊洲へ、都民の台所を賄う一大生鮮市場が移転するはずだった。ところが有害物質を除去するために地下に盛り土工事をする計画だったのに盛り土がなされていないことが発覚。しかも地下に水が溜まっているのが発見され、さらに環境基準の79倍もの有毒ベンゼンが見つかった。

昨年夏の都知事選挙で大勝した小池百合子新知事は、こうした事態を受けて豊洲への移転を凍結。今後の衛生検査の結果や、盛り土をしなかった設計変更の影響などを検証しながら移転の時期や是非を探る構えである。

石原慎太郎と言えば、一橋大学在学中の1956年1月に小説「太陽の季節」で芥川賞を受賞。その作品が、アプレゲール(戦後派)の裕福な若者たちの無軌道な生活を通じて感情を物質化する新世代を描いた作品として注目を集めた。以来作家・政治家として日本一級の著名人であり、どちらかと言えば世間を騒がしてきた存在である。

彼は昭和7(1932)年生まれで今年84歳。1945年の終戦を多感な旧制中学1年生で迎え、それまでの軍国主義教育から民主主義教育に大転換、教科書に墨塗りをした世代である。
この世代は民主化第1期生で、それまでの皇民化・軍国主義教育の矛盾を教えられ、思想的には左翼化した人が多い。「なんでも見てやろう」で一世を風靡した同年の小田実がこの世代の象徴的人物だ。

石原慎太郎も高校時代は左翼かぶれだったというが、芥川賞作家として著名人になって以来戦前の右翼路線に本卦還りしたらしい。自民党衆議院議員時代には青嵐会という若手右翼グループに属して暴れていたこともあった。

都知事時代の2012年4月、彼は訪米してワシントンのヘリテージ財団で講演して、東京都で尖閣諸島を買い取りたいとの計画を発表した。これが回り回って時の野田内閣による尖閣諸島国有化が実行され、日中関係の破局を招いた。

中国のことをわざわざ、今では蔑称の「支那」と呼びたがる右翼、石原慎太郎も老いた。3月20日には東京都議会の100条委員会に豊洲問題の証人として喚問されているが、3日の記者会見の発言以上の内容を語るとは思えない。一世のスターも老残の身をさらすことになりそうだ。
2017.03.02  軍人、右派、石油色濃いトランプ政権の安全保障中枢
坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ米政権が発足してから1か月余り。政権の安全保障政策の中枢、司令塔となる国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーがやっとそろった。プリーパス共和党前全国委員長を国家安全保障会議の首席補佐官、右派メディア「プライバート」の会長だったバノンを大統領首席戦略官、マクマスター陸軍中将(退役)を安全保障担当大統領補佐官、マティス海兵隊大将を国防長官、石油最大手エクソン・モービルの元会長ティラーソンを国務長官。ホワイトハウス大統領補佐官のクシュナーも常任メンバー並みに加わるという。
 従来の政権から常任メンバーだった統合参謀本部議長と国家情報長官は、常任から外された。
 トランプ政権が、対中東をはじめどのような外交・軍事政策と行動を、実行していくのか。中枢スタッフの顔ぶれと発言、政権発足以来さっそく発令したイスラム7か国からの入国拒否の大統領令(裁判所の決定で執行停止)、イランへの経済制裁追加、ネタニヤフ・イスラエル首相との会談での「2国共存解決」の変更などから、その危険な全容が見えてきた。
 NSCのトップ首席補佐官は、かってキッシンジャーが務めて、その権限、役割を思う存分発揮できた重要ポスト。プリーパスは共和党の穏健な政治家で、共和党とのパイプ役をトランプは期待しているという。それ以上の発言力があるのは、トランプと最も親しいバノン。大手メディアに対してきわめて攻撃的で、「プライバート」は、しばしば偽情報をニュースとして流してきた。トランプは、首席戦略官・上級顧問として民間からバノンを登用した。首席戦略官という肩書で、バノンを権威づけしたのだろう。
 国家安全保障会議の首席補佐官は、国家の再重要ポストの一つ。トランプは政権発足とともに、フリン(陸軍中将、元国防情報局長官)を任命したが、ロシア側との接触を先走ったとしてわずか3週間で辞任させられた。トランプ政権の補佐官、閣僚選びは歴代政権とは全く比較にならないほど、難航した。
 最後にやっと決まった、マクマスター補佐官は陸軍中将で退役。湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争を戦い、軍指導者として優秀だとの評価の高い軍人。
 マティス国防長官は海兵隊大将。イラク戦争を第一海兵隊師団長として戦い、中東全域をカバーする中央軍司令官を務めて退役。「マッド・ドック(狂犬)」のあだ名がある軍人。
 ティラーソンはエクソン・モービルの会長を2006年から務めた、石油業界の超大物。サウジアラビアなど大産油国のお近づきだ。
 大統領に最も近い場所にいるホワイトハウスの大統領補佐官クシュナーは36歳。選挙運動中も、当選後も、トランプの親密な側近、秘書役を務め、大統領就任直後からホワイトハウスで外国首脳との電話会談のアレンジをはじめ活動を全開した。
 クシュナーは、トランプの娘でファースト・レディ役を務めるイヴァンカさんの夫。頑強な保守的ユダヤ教徒で、イヴァンカさんもユダヤ教に改宗している。祖母は第二次大戦中、ポーランドでナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)の犠牲となった。クシュナーは1998年、イスラエルのネタニヤフ首相が、アウシュビッツに十代の若者を数千人、世界各国から集めた集会に参加。以来、ネタニヤフを崇拝し、何回も会い、しだいに親しい関係を作ってきたという。トランプのイスラム嫌い、親イスラエルは選挙運動中、世界に知れ渡った。トランプ自身、ユダヤ教の宗教家や資産家、事業家と接触が多いが、クシュナーからの影響もあるに違いない。ニューヨーク・タイムズ紙は、クシュナーを紹介する長文の記事の中で「36歳の彼は、いまや大統領に対する、中東問題の首席助言者だ」と書いている。大統領は就任後さっそく、中東と北アフリアのイスラム教徒が多い国7か国の人々の入国を大統領令で拒否したが、憲法違反とする州政府の提訴で敗北し、実施停止となった。これが、トランプの“イスラム嫌い”を示すとともに、政権の中東政策を示す最初の行動だった。
 1月29日、トランプはイスラエル以外の中東諸国の元首では初めて、サウジアラビアのサルマン国王と電話会談、イランを厳しく非難したうえ、武力行使の可能性を示唆したという。2月初め、トランプ政権は、イランが12月以来、散発的に行っている弾道ミサイルの発射実験に対して、米国だけが継続している経済制裁を強化した。新任のマティス国防長官は「イランは最大のテロ支援国だ」と改めて非難した。
 トランプは2月15日、訪米したネタニヤフ・イスラエル首相との会談で、「2国家方式による解決にこだわらない」と、米政府と国際社会が一貫して維持し来た、パレスチナ紛争解決への大前提を掘り崩す発言を表明した。
 イスラエルに大使館を置く各国はすべて、第二の都市テルアビブに大使館を置いている。
 パレスチナ紛争の解決方式については、1947年の国連決議で、パレスチナをアラブ国家、ユダヤ国家に分割し、エルサレムを国際管理に置く分割案を決定。48年、イスラエルは建国宣言直後に始まった第1次戦争で、国連分割案より広い土地とエルサレムの西半分を占領して、首都宣言。さらに67年の第3次戦争でエルサレムの東半分も占領、東西合わせたエルサレムを「永遠の首都」と宣言した。しかし、どの国もそれを認めず、1947年国連決議の2国家による解決方式を、米国を含め堅持してきた。大使館をエルサレムに移転しないのはそのためだ。
2017.02.25   大学・研究機関等の軍事化に反対する
     世界平和アピール七人委が訴え

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 世界平和アピール七人委員会は2月24日、「大学・研究機関等の軍事化の危険性を、国民、科学者・技術者、大学研究機関等、ならびに日本学術会議に訴える」と題するアピールを発表した。
  同七人委は、1955年、世界連邦建設同盟理事長で平凡社社長の下中弥三郎の提唱により、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならないを原則に、日本国憲法の擁護、核兵器禁止、世界平和などについて内外に向けアピールを発表してきた。今回のアピールは123回目。
 現在の委員は、武者小路公秀(国際政治学者)、土山秀夫(元長崎大学学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(慶應義塾大学名誉教授)、池内了(総合研究大学院大学名誉教授)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)の7氏。

 アピールは、まず、安倍内閣によって「学術を軍事研究に積極的に動員する動きが公然と進められている」とし、これは、安倍内閣が「平和主義・民主主義・基本的人権尊重など日本国憲法に則った精神を踏みにじり、国の将来を危機に陥れかねない法律制定や閣議決定をかさね、軍国主義への道をひた走っている動きの一環である」としている。
 こうした現状認識に立ち、アピールは国民に対し「これが戦争を放棄した憲法の下での日本の姿であってよいのか」と問い、「国民一人一人が判断し声をあげよう」と訴える。
 さらに、科学者・技術者には「制約や秘密を伴う研究はいかなるものであっても受けるべきでない」、大学・研究機関等には「毅然たる規定を作り、内外の軍機関からの資金は受け入れないように」、学術団体、学協会には「国内外を問わず、軍隊、自衛隊からの援助を受けず、その他一切の協力関係を持たないでいただきたい」と訴える。
 日本学術会議とその会員には「これまでの『軍事研究をしない』などの声明を継承すべきだ」と訴えている。
 アピールの全文は次の通り。

大学・研究機関等の軍事化の危険性を、
国民、科学者・技術者、大学研究機関等、ならびに日本学術会議に訴える

             世界平和アピール七人委員会
 内閣府が“専門家”による国家安全保障と科学技術の検討会を発足させることにしたと、報じられている。国の科学技術政策を決めて予算に反映させる総合科学技術・イノベーション会議(議長:安倍首相)における軍民両用技術の研究推進政策の具体化に向けて、早急に作業するというのである。
 これは2012年の第二次安倍内閣の発足以来、特定秘密保護法成立と防衛大綱・中期防衛力整備計画の閣議決定、「防衛装備移転3原則」の閣議決定による武器輸出の解禁、「防衛生産・技術基盤戦略」の公表、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法の成立、共謀罪の企みなど、平和主義・民主主義・基本的人権尊重など日本国憲法に則った精神を踏みにじり、国の将来を危機に陥れかねない法律制定や閣議決定をかさね、軍国主義への道をひた走っている動きの一環である。
 この動きの中に、2016年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画に記載された「国家安全保障上の諸課題への対応」があり、学術を軍事研究に積極的に動員する動きが公然と進められている。
 安全保障関連法の成立によって発足した防衛省の防衛装備庁は、重要課題の第1に「諸外国との防衛装備・技術協力の強化」、第2に「厳しさを増す安全保障環境を踏まえた技術的優位の確保」を挙げている。そして「装備品の構想から研究・開発、量産取得、運用・維持整備、廃棄といったライフサイクルの各段階を通じた、一元的かつ一貫した管理が必要」なので、プロジェクト管理部に、文官、自衛官を配置し、プロジェクトマネージャーの下、性能やコスト、期間といった要素を把握して、効果的かつ効率的に行っていくための方針や、計画を作成し、必要な調整を行うと述べている。
 この方式は、米国国防総省の国防高等研究開発局(DARPA)方式の踏襲であって、自由な研究の成果が民生にも軍事にも利用できるというデュアルユースではなく、目標を決め、そのために事前に何をしなければならないかを選定し、これを繰り返して最初に手をつけなければならない課題を選び出す。最初の課題だけを見れば、民生にも軍事にも応用できるテーマに見えるが、上で見たように“防衛装備”という「武器あるいは武器に関する技術」の開発の第1段階であって、軍事に支障のない範囲だけが民生用に提供されることになる。

 このような情勢の下で、2004年に開始された防衛省と大学・研究機関を含む民間との共同研究協定が2014年度から急増し、2015年度からは「安全保障技術研究推進制度」による大学・研究機関等への委託研究費が、年3億円、6億円、110億円と拡大されている。
 さらに米国の軍機関から日本の大学・研究機関等に長年にわたり研究資金が提供されてきたことも、報道機関の調査によって2017年2月に明らかにされた。

 私たち世界平和アピール七人委員会は、国民一人一人が判断し声をあげるよう訴える:日本の科学・技術の成果が、武器あるいはその部品として諸外国に輸出され、米国やイスラエルなど海外との武器の共同開発によって実際に戦闘に使われ、殺戮に手を貸すことになってよいのか。諸外国より優れた“防衛装備”の開発を公然と唱えることによって世界の軍拡を促しているのではないか。「敵基地攻撃の装備を持つ方がよいという議論がある」と政権党の副総裁がいう。これが戦争を放棄した憲法の下での日本の姿であってよいのか。

 科学者・技術者に訴える:全体像が隠されて、最初の基礎や萌芽的な段階だけを見せられて、平和にも役立つといった素朴な感覚で防衛省の予算を受け、海外の軍資金を受けてよいのか。私たちは、制約や秘密を伴う研究はいかなるものであっても受けるべきでないと考える。

 大学・研究機関等に訴える:軍機関からの資金導入の場合の注意などといった生ぬるい感覚でよいのか。私たちは、構成員の間で広く議論を重ね、毅然たる規定を作り、内外の軍機関からの資金は受け入れず、大学・研究機関等の内部では企業との間でも、制約や秘密を伴う研究は避けることを求める。そのためにも一定規模以上のすべての外部資金の実態が公開されることを求める。

 学術団体、学協会に訴える:軍資金であっても直接の兵器開発研究でなければ問題ないといった感覚は支持できない。国内外を問わず、軍隊、自衛隊からの援助を受けず、その他一切の協力関係を持たないでいただきたい。

 日本学術会議とその会員に訴える:2016年6月以来、毎月公開で議論を重ねてきた「安全保障と学術に関する検討委員会」は2017年2月の委員会で「中間とりまとめ」を確認した。多様な意見が存在する組織の共通の見解として、理想的でないにしても、委員会の努力を評価したい。ただ3月の最終回委員会でさらに詰めるべき点が残されているし、幹事会、4月総会でどのように扱われるか、状況は予断を許さない。
 政府が判断を誤り、情報操作によって国民に真実を知らせない中で、戦争に全面的に協力した科学者の反省から、第2次世界大戦終結から3年半後の日本学術会議第1回総会で行った「日本学術会議の発足にあたって科学者としての決意表明」、翌1950年4月の声明「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、1967年5月の会長見解と10月の「軍事目的の科学研究を行わない声明」を名目だけでなく継承し、総会が国民の信頼を損なうことのない判断をされることを期待する。さらに、風化・空洞化を防ぐために繰り返し広く科学者の中での討議を重ねていくことを期待する。
2017.02.14  日米同盟は戦争へ向かうのか
          ―共同声明に「安保第五条」を入れる愚行―

半澤健市 (元金融機関勤務)

 2017年2月10日に行われた安倍首相・トランプ米大統領会談について、すかさず多くの同人が、適切な論評を続けている。
私も、念のため、日米合意にある「尖閣条項」の読み方をファクトに基づき書いておく。結論から言うと、共同声明に「尖閣列島は安保第五条の対象」と書くのは、愚かしく、日米同盟の不安定化の表現だということである。

《二つの重要なファクト》
 主な事実として次の二つを読んでほしい。
■日米安保条約の第五条
各条約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することを宣言する。(以下略)
■日米防衛協力のためのガイドライン(2015年4月日米で合意)の一節
 ・陸上攻撃に対処するための作戦
自衛隊及び米軍は、日本に対する陸上攻撃に対処するため、陸、海、空又は水陸両用部隊を用いて、共同作戦を実施する。
自衛隊は、島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。(中略)
米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

《この文章を読み解くと》
 二つの小難しい文章を読み解こう。
「安保第五条」は、米軍が当然に日本を守るとは書いてない。「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処する」と書いてある。米国では、戦争を始めるには連邦議会の議決が必要だ。日中両国が、無人の岩石「尖閣諸島」を巡って戦闘を開始したとしよう。米国が、自国の若者の命を犠牲にする参戦をするだろうか。しない。議会は否決するだろう。

 「ガイドライン」には、自衛隊と米軍は「共同作戦を実施する」と書いてあるが、同時に「自衛隊は作戦を主体的に実施する」、「米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する」と書いてあるのだ。
「主体的」部分の英文は、The Self-Defense Forces will have primary responsibility for conducting operations to prevent and repel ground attacks, including those against islands.である。
primary responsibility は、主語「自衛隊」の動詞は「作戦を主体的に実施する」のではない。「第一の責任を有する」のである。「自衛隊が全部やるべし」と訳してもいいくらいだ。米軍の役目は自衛隊への「支援と補完」に過ぎない。

《専門家が批判してきたテキスト誤読》
 この読み解きは私のものではない。専門家の解釈である。
「第五条」については元外交官の孫崎享氏(まごさき・うける)が、「ガイドライン」については軍事評論家の田岡俊次氏(たおか・しゅんじ)が、繰り返し主張していることである。しかしこれらの辛口コメントは、大手メディアに載ることが少なく、人々の共通認識になっていない。

 日米首脳会談を報ずる政府もメディアも、共同声明を「大成功」いっている。五条確認を共同宣言に載せるのが何が成功なのか。成功どころではない。日米同盟関係は、戦争への道に向かって、大きく揺らいでいる証拠である。一市井人のこの結論は、ファクトと専門家の説得力から、導き出したものである。(2017/02/12)
2017.02.12  日米首脳会談、世界に見せた大統領と安倍首相との“いちゃつき”

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ大統領と安倍首相の日米首脳会談が終わった。会談は約1時間、半分は通訳が約30分だから、二人の実質的な会談は約30分。会談後、二人の記者会見とおそらく日本側の高官たちの説明によると、実質的な合意内容は(1)安全保障関係では、双方が同盟関係の強化に努力。尖閣諸島は安保条約第5条の適用範囲と確認。沖縄普天間基地の辺野古へ移転を確認(2)自動車や為替など経済関係はすべてペンス副大統領と麻生副総理の会談で協議するーなどだった。

 閣については、オバマ前政権下でも「日本の施政権下のすべての場所に」安保条約は適用されるという表現だったから、実質的には同じことだが、今回、日本側は「尖閣」の固有名詞を入れることに強くこだわり、「尖閣に安保」を会談前から会談後の共同声明にいたるまで、繰り返し記者団に強調した。いうまでもなく、日本国民へのPRだ。
 国家間の首脳会談は短時間で、実質的な重要協議は、政府間の事前事後の協議で、同行する大臣や局長間で行われることに不思議はない。しかし、今回のように、難しい外交、経済問題が山積しており、日本国内では政府側の発言やリーク(意図的な情報漏出)でメディアの報道がやかましかったのに、首脳会談が短時間で終わった例は少ないかもしれない。そして、会談、記者会見の後、すぐ両首脳は大統領専用機でフロリダのトランプの別荘に飛び、夕食2回とゴルフを楽しみながら、親しく話し合うと首相は誇った。

 もかく、今回の日米首脳会談が全く異例だったのは、二人が恥ずかしげもなく見せた、ベタベタとしか言いようのない親しさだ。見せたというより、本心からと言うべきかもしれない。トランプは、中東・アフリカ七か国のパスポート保持者入国拒否(一時的停止というが実際には無期限)の大統領令を出し、即時実施した。しかし世界各国からも、米国民からも強く反対され、州政府から人種差別を禁止した憲法違反として提訴された。裁判は地裁が違憲として大統領令の執行停止を命令、7か国パスポート保持者の入国が再開。控訴裁でも政権側が敗訴した。米国でも前例が稀な事例。それ以外でも、米日主導で実施寸前だったTPPから脱退し、TPP交渉そのものが崩壊。総工費総額216億ドルと推計されるメキシコ国境の壁を大統領令で建設しようとして、メキシコ大統領から費用分担を拒絶され、首脳会談そのものがつぶれた。最初の首脳会談となった英国のメイ首相も、会談そのものは友好的におわったが、メイ首相は帰国後、トランプ政権の7か国民入国拒否を差別として厳しく批判する始末だった。

 のように、新任大統領として最悪の醜態を米国民と世界に見せ続けた時点での、日米首脳会談だった。各国首脳のなかで、就任前に渡米して、“ごますり”に精を出した安倍首相にトランプは、異常ともいえる親近感を見せたのだろう。首相の方も、都知事選での敗北、TPPの破たん、国会での大臣たちの答弁ミスが重なるなど、過半数与党らしくないごたごたが続いていたなかでの訪米だった。こちらも、大げさな、おそらく本心からの親近感を見せた。双方とも満面に笑顔で、肩を抱き合い、手をにぎり続け、「気が合う」とメディアに漏らした。
 だが、大統領にも、首相にも見逃してはならない事態が起こっている。米下院でジェロルド・ネイドラー議員(民主党)が、トランプ大統領の利権関係の憲法違反すべてにわたり、関係当局に捜査を求める決議案を提出したのだ。下院ですぐ決議案が可決されることはないだろうが、アメリカの信頼できる電子ニュース「Common Dreams」は10日の報道で「弾劾へのステップ・ワンか?」の見出しで報じている。
 トランプ弾劾の可能性については、来年の上下両院選挙の前にすべきだという主張、動きがすでに始まっている。議会への決議案はこのネイドラー決議案が初めてだ。(了)
2017.02.10  韓国を信頼できない78%
          韓国通信NO216

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が先月28、29日に実施した世論調査によると「韓国を信頼できない」という回答が77.9%に達したという。韓国の政治空白がもたらした釜山の慰安婦像設置や竹島問題が影響を及ぼしたという。さらに一昨年12月の日韓合意については86.4%が韓国側は守らないのではないかと懸念を示し、大使等を帰国させた日本政府の対抗措置については8割が理解を示したという。
微妙な時期の微妙な世論調査だが、「好きか嫌いか」ではなく「信頼できるかできないか」という設問は意味ありげである。反韓・嫌韓気分に外交問題が上乗せされた格好だ。竹島(独島)の問題は別にして、気になるのは、一昨年末の従軍慰安婦問題の「政府間決着」と平和の少女像をめぐって新たな軋轢が生まれていることだ。

電撃的な決着と思われたが、1年経過した今、この問題で日韓関係はむしろ悪化した。韓国内では6割以上の人が「再交渉」「破棄」を求め、わが国でも産経の世論調査に表れたように8割近い人が韓国側に不信感を抱いている。もっとも日本人の印象としては「解決した」と思っていたのに裏切られたということかも知れないが。
この食い違いはどこから生じたのか。振り返ってみたい。

当日発表された両国外相の共同声明から検証したい。以下、外務省のホームページの概略である。
岸田外務大臣は「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と述べ、安倍首相の言葉として「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明した」と発表した。さらに後段では「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した」とも述べている。
一方、尹(ユン)外交部長官は両国の合意を受けて、この問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認し、日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と述べた。

安倍首相のもとでは解決は絶望視されていたが、韓国側が合意したのは、大幅な譲歩を日本側から引き出したと判断したこと、さらに両国の背景に北朝鮮包囲を急ぐアメリカの積極的な要請があったとされる。従軍慰安婦の存在さえ認めなかった首相が「軍の関与の下に多数の慰安婦の方の『名誉と尊厳』を傷つけことに心からの「おわびと反省」を述べたことは確かに画期的ではあった。

 「和解合意」が生んだ深い対立
解決したかに見えた従軍慰安婦問題だが、最近の日本では韓国政府の約束「不履行」を「振り込め詐欺」、韓国は「10億円を返すべき」という声まであがっている。
一体何が問題だったのか。
まず確認しておきたいのことは、被害者が元従軍慰安婦のハルモニ(おばあさん)であり、加害者は日本だということである。見た通り、12.23の共同記者会見で日本政府自らが認めたことだ。

問題点を探ってみた。
1) 政府間の外交交渉であっても当事者を抜きにした解決には無理があったこと。
2) 「謝罪」「反省」の気持ちを手紙をとおして被害者に表明することについて安倍首相がそのつもりは「毛頭ない」と一蹴した(衆議院予算委員会2016/10/3)ことが話をこじらせる原因となった。これでは共同会見は単なる「リップサービス」であり、真意ではないと韓国側では受け止められた。本当に解決する気ならば韓国に出かけて直接謝罪してもいいくらいだが、文書ひとつ渡せないと頑張る首相の態度は理解できない。
3) 「癒し」事業に使う10億円は慰謝料でも損害賠償でもないというのが日本政府の立場だ。「おわび」とは無縁な金は受け取れないと主張する被害者の気持ちを日本政府は理解すべきだった。
4) 10億円を払えば平和の少女像は撤去されると多くの日本人が理解したようだが、共同会見ではそのような約束はしていない。「解決に努力する約束」はしたが、政府が勝手に撤去ができない以上当然だ。
「平和の少女像」は、戦争が惹き起した少女たちの苦しみを二度と繰り返してはならないという平和への祈りを込めて市民たちが建てた。毎水曜日に大使館前で開かれる集会に出かけてみたらよい。屈辱的な解決に走った朴槿恵大統領と不誠実な安倍首相への糾弾の声は聞かれても決して「反日」ではない。日本が再び戦争をする国になることを心配するハルモニたちのスピーチに感動するはずだ。日本が撤去にこだわれば市民たちの平和への思いを逆なですることになりかねない。「反核平和の折り鶴」を原爆を落としたアメリカからやめて欲しいと言われるようなものだ。
5) 金ですべて解決できると考えた日本政府は不遜である。「最終的不可逆的に解決した」という文言にもよく現れている。日韓両政府が急いだばかりに、それそれの国が抱えてきた問題が一挙に表面化したように見える。被害者をかかえる韓国政府の見通しの甘さは明らかだ。次期大統領候補には日韓合意を引き継ぐ人はいない。新大統領が誰になっても合意は撤回、または再交渉は確実だ。

日本は韓国政府を批判する立場かも知れないが、振り出しに戻ることになれば日韓関係を悪化させた政治責任は免れない。破棄・再交渉となれば10億円はどうなるのか。返してもらうとしても前代未聞の大失態である。
韓国政府の「不履行」に抗議して日本は大使と領事を引き揚げ、日韓スワップ協定協議の中断を決めた。韓国へ強い姿勢を示すことで安倍内閣が支持率が上がった。韓国のマスコミもそのような指摘をしている。「信頼できない8割」の分析は簡単ではないが、隣国ヘイトをにじませた日本側の対応を8割近い人が支持したとも読める。北朝鮮に小泉首相とともに平壌にでかけ平壌宣言の実績をあげ、拉致問題が明らかになると北朝鮮敵視政策によって首相にのぼりつめた安倍首相。彼はトランプ米国大統領顔負けの「自国ファースト」主義者である。ただスケールが違う。アメリカに従属しながら、アジアで「エラソウ」にしている「小トランプ」である。

春だ 出かけよう
 立春といっても寒い日が続きます。家に引き籠もっていては免疫力が落ちるばかり。
 去る3日、全国各地一斉行動日に駅頭でアピール行動。バス待ちの中学生二人から話しかけられた。「何をしてるんですか」「憲法を変えて戦争するアベに抗議してるんだ」「アベって安倍晋三?」「そう」「僕たちもがんばります」。彼らは高校入試の願書受付に来たらしい。「受験生ガンバレ!!」
 元気が出たついでに国会前の反原発デモに参加。少なくなりました。700人くらいでした。「韓国通信NO497」で取り上げた90才を越えた元都立戸山高校の先生だった武藤徹さんに会った。耳が遠いようなので耳元で「風邪ひかないでね」と挨拶したら、うれしそうに頷いてくれた。節分の夜。会場では豆まきをした。「原発アウト!安倍アウト!」

 福島原発事故から6年目。さまざまな行動が予定されている。寒さを吹き飛ばそう。春は近い。
   2月19日 貧困格差にNO! 2.19総がかり行動        1時半~日比谷野音
   3月11日 柏崎刈羽原発再稼働許すな東電本社包囲   2時~4時まで東電本社前
   3月18日 福島県民集会  郡山開成山陸上競技場    13時10分開会
   3月20日 フマシマ忘れない さよなら原発全国集会    1時半~ 代々木公園
2017.02.09  アベノミクスと属国民族主義
盛田常夫 (在ブダペスト、経済学者)

 世界の先進諸国で、ポピュリズム(大衆迎合主義)と民族主義が幅を利かせるようになっている。西欧のポピュリズムやトランプ政権を批判する前に、日本のポピュリズムと民族主義を問題にすべきだろう。なぜなら、日本の安倍政権こそ、典型的なポピュリズムと偏頗な民族主義を二本柱にする政権だからだ。

アベノミクスは典型的なポピュリズム
 「灯台下暗し」で、日本国民は安倍政権がポピュリズムと民族主義を二本柱にしていることを意識できない。まさに、無意識のうちに嵌ることこそが、大衆迎合のポピュリズムと民族主義の社会現象である。トランプ政権の民族主義的政策を心配する前に、日本の行く末を心配したほうが良い。
 アベノミクスとは、「高度成長をもう一度」という根拠のない経済スローガン=経済イデオロギーにすぎない。景気が悪いより景気が良いほうがいいに決まっているから、右も左も、景気刺激政策に正面切って反対できない。「大胆な金融緩和政策で景気が良くなります」と言われ、株式相場が上昇し、円安が進行して一部の輸出産業が大儲けすると、なんとなく、アベノミクスは正しいと思ってしまう。
日銀が資金を垂れ流して円安を誘導し、株や債券購入を行って相場を支え、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も国民資産を株式に投資して相場を上げる官製相場は、いずれ将来、日本社会に大きな災禍をもたらす。しかし、少し遠い将来のことに政治家も国民も無関心だ。国民は一時的な株式相場の上昇に一喜一憂して、将来のことなど考えない。まさに、国民大衆の短期的な損得を考える思考に迎合した政策が、アベノミクスなのだ。政治家も国民も、目先の短期的な利益だけに目が奪われている。大衆迎合主義が蔓延(はびこ)る温床だ。
官製相場が崩れた時の責任追及など、後の祭りだ。誰も責任を取らないし、取れない。一時的な「目くらまし」にあって、政治家にだまされた国民が馬鹿だったということにしかならない。政治家の詐欺に引っかかったようなものだが、それがポピュリズム政策の結末だ。

日本は属国民族主義
 安倍政権が巧妙なのは、アノベミクスの成果が見えなくなると、今度は中国や韓国にたいする偏狭な民族主義を鼓舞して、国民の目を隣国との対立に向けさせ、自らの政権基盤を崩さないようにしていることだ。国民はそういう政策にも、すぐに引っかかってしまう。
 尖閣・竹島にしても慰安婦問題にしても、昨日今日の問題ではなく、関係諸国との長い歴史のなかの問題だ。しかし、政治家は歴史認識の問題を隠して、隣国の不寛容さや偏屈さを批判すれば国民の支持が得られる。近代の歴史において、日本は朝鮮や中国を侵略した歴史はあっても、中国や朝鮮が日本を侵略した歴史はない。多くの国民は100年以上にわたる問題の歴史的経緯に関心などなく、たんに日本の国益が隣国によって阻害されているという単純な感情でこの問題を受け止める。政治家にとって、これほど安上がりな政権安定化の政策はない。隣国に対して強い態度で対処しておけば、政権基盤が崩れることはないのだから。
 興味深いのは、ここ最近の日本における民族主義は、きわめて偏頗(へんぱ)で片端(かたわ)な民族主義であることだ。隣国の中国や朝鮮にたいして強い態度をとるのに、アメリカにたいしてはそれができない。戦前から日本社会の底流に流れている中国や朝鮮への蔑視が今も根強く残っていて、それが時として、隣国への高圧的な態度や反発となって現れている。ところが、政治家も国民も、アメリカにたいしては日本の軍事的外交的な自立と独立を主張することができない。なぜなら、政治家も国民も、日本が軍事的外交的にアメリカに従属している属国的な立場にあることすら意識できないほど、アメリカの支配の術中に嵌っているからだ。それこそ、軍事占領から始まった70年にわたるアメリカの長期的軍事支配によってもたらされた換骨奪胎の結末である。
70年も軍事的な支配が続いていると「支配されている」という意識すらなくなり、防衛庁長官を経験した石破茂でさえ、「沖縄で騒いでいる奴らの後ろに誰かがいる」というバカな言動しかできなくなる。戦後一貫して、アメリカは日本の軍事基地をアジアおよび中東世界の軍事戦略基地として機能させてきた。日本を守るというのは付随的な役割に過ぎない。日本防衛という口実で軍事占領が続く沖縄の現状を固定化し、あまつさえ新しい基地を作ってアメリカの軍事政策に奉仕することが、民族主義にも劣ることだということが分からない。軍事占領の延長を容認する民族主義などありえない。偽の民族主義だ。
白井聡氏は日本を「属国民主主義」(白井聡・内田樹『属国民主主義論』東洋経済新報社、2016年)と性格付けしているが、属国民主主義というより「属国民族主義」と性格付けした方がより適切だ。旧植民地国への侮蔑を込めた偏狭な民族主義と大国アメリカへの卑屈な従属的民族主義という二つの矛盾した民族主義が併存しているところに、今日の日本の偏頗な民族主義がある。それが属国民族主義だ。だから、「虎の威」を借りて、アメリカに「尖閣の安全保障を担保してもらえば、他の件では譲歩します」という朝貢外交が生まれる。そのために、国民の年金資産をアメリカのインフラ投資に利用する案すら用意されている。アメリカの原発関連企業に騙され、倒産寸前になっている東芝を見るが良い。トランプにとって、安倍ほど利用しやすい政治家はいない。日本から搾り取れるだけ絞り取る。そんな魂胆も分からず、一緒にゴルフできることに喜喜としている馬鹿な宰相をいただくと、国が滅びてしまう。世界の笑いものだ。これこそ典型的な売国政治家ではないか。