2008.01.30 リケンとセイケンと
「暴論珍説メモ」33

田畑光永 (ジャーナリスト)

 前回、揮発油税などの暫定税率を今後さらに十年間も維持しようとする政府・与党が温暖化問題を持ち出してその理由とする身勝手なご都合主義を批判したが、彼らは是が非でも目的を達しようと、現行の暫定税率を五月末まで延長するといういわゆる「つなぎ法案」を二十九日、国会に提出した。
 狙いは言うまでもなく、提出法案が衆院通過後、参院で否決されるか、あるいは六十日間採決されなかった場合、衆院が三分の二の多数で再可決すれば成立するという憲法五十九条の「六十日ルール」を使って、安全に目的を達成するためである。しかも、「手続き法案」であるという理由で、議論抜きで一月中に採決して参院に送り、これ自体も三月末に「六十日ルール」で再可決しようというのだから、念が入っている。
 こういうことをしてはいけない。なにゆえ衆参両院が存在するのか。一院だけの決定では危険だから、両院で審議して法律を制定するというのが二院制である。そのためには衆参両院の議員がなるべく違った形で選ばれることが望ましいが、残念ながら現在の議員先生がたは似たような人達で、それぞれの独自色が発揮されているとは言いがたい。しかし、制度は制度である。両院が是としないものは法律としてはならないのである。
 ただそれでは場合によっては国の運営ができなくなる恐れがあるというので、例外規定として予算と条約は衆議院の議決が優先されることになっている。これ自体が二院制の建前からすればすでに例外的な措置である。しかし、憲法はさらにその上になお例外措置を決めていて、それがこの「六十日ルール」である。したがってこれを使うことはよほどの場合に限られなければならない。
2008.01.21 「温暖化」を都合よく使うな!
「暴論珍説メモ」32

田畑光永 (ジャーナリスト)

 通常国会が始まった。今年は衆目のみるところ「解散・総選挙の年」だそうだから、これから与野党ともに国民の顔色をうかがいながら、すこしでも自分の方に好感を持ってもらおうと色目を使う日々が続くことになるのだろう。
 そしてこの通常国会は「ガソリン国会」だという。道路特定財源のガソリン税の暫定税率が今年度で期限切れとなるが、自民党はさっさとその「暫定」を今後十年間は維持すると決めているのに対して、民主党は衆参のねじれをたてにそれを認めず、年度末で「暫定切れ」に持ち込み、ガソリン1リットル当たり25円ほどの値下げを実現しようとしている。
 なにしろ原油の価格は去年一年で急騰した。それが末端のガソリンスタンドでの小売値段にもろに響いて、1リットル100円前後だったのが150円以上にまで上がってしまった。今の生活はあらゆる面でガソリン、あるいは石油に依存しているから、生活諸物資の値段も上がり始めた。ここで最近のガソリン値上がりの半分ほどが帳消しにできるなら、それにこしたことはないというのが、大方の実感だろう。
 野党がそれをふりかざすのは、かなりの程度ご都合主義だが、当然である。そもそも「暫定」が何十年も続いたことが異常なのに、さらに十年も続けようというのはいかにも常識に反する。しかし、自民党は暫定税率分2.7兆円の税収が消えてしまっては大変だから、いろいろ理由をつけてそれを維持しようとしている。たとえば、2.7兆円のうち0.9兆円は地方に配分される分だが、それがなくなると、一般経費を削って道路整備に当てなければならないから、その分、文教予算や福祉予算が削られると言った議論である。風が吹けば桶屋が儲かる式の牽強付会の論理である。
 しかし、それだけではまだ足りないと持ち出してきたのが、ガソリンの値段を下げるのは温暖化抑制に反するという暴論である。
 町村官房長官は十九日、千葉県市原市での講演で「ガソリンの値段を下げればそれだけで日本の環境問題はそんな程度の取り組みなんだということになる。そのマイナス効果は計り知れないものがある」とのべた。また、高村外相も十九日、山口市で講演し、(洞爺湖サミットで)「地球温暖化でリーダーシップを発揮しようとしている時、『ガソリン税を下げました。もっとガソリンを使いましょう』という態度でいいのか」とのべたという。(『日経』『朝日』などによる)
2008.01.20 原水禁のリーダー相次いで逝く
関口和氏と池山重朗氏

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 わが国の原水爆禁止運動における二大勢力の一つ、原水爆禁止日本国民会議(原水禁=旧総評系)のリーダーだった二人が相次いで亡くなった。事務局長だった関口和氏(七九歳)と、事務局次長だった池山重朗氏(七六歳)。私が両氏に接したのはもっぱら新聞記者としての立場からだったが、両氏が原水爆禁止運動に残した足跡はまことに大きく、改めて敬意を表したい。 
 
 一月十七日、寒風が吹きすさぶ東京都昭島市の龍田寺で、関口氏の葬儀があった。同十三日に死去。参列者には旧国鉄の退職者が目立った。焼香台のわきには、生花を寄せた団体として原水禁のほか、国鉄労働組合、鉄道退職者の会全国連合会、社民党全国連合、第五福竜丸平和協会、在日本朝鮮人総連合会などの名前が掲示されていた。
 関口氏は北海道函館市の生まれ。幼いころ、父と死別し、母と一緒に昭島市に移ってきた。戦時下だったから、陸軍少年航空兵に志願し、訓練を受けたのち青森に配属されたが、まもなく敗戦を迎えた。
 昭島市に帰ると、旧国鉄に就職し、電気機関車の運転士となった。立川機関区に所属し、主に貨物列車の運転に従事。が、まもなく労働運動に飛び込み、国労の八王子支部、東京地方本部、中央本部の役員を歴任。中央本部では政治部長を務めた。この間、立川基地拡張反対闘争(砂川闘争)、安保反対闘争などに取り組んだ。
 当時、日本の労働運動をリードしていたのは総評(日本労働組合総評議会、連合の前身)で、その中核が国労だった。関口氏はその政治部長だったわけだから、労働界や、対社会党(社民党の前身)といった関係ではかなりの実力者だったとみていいだろう。風貌も、いかにも押しの強さを感じさせる労組指導者タイプだった。
2007.12.18 内閣支持率は順調に下がっているが・・・
「暴論珍説メモ」29

田畑光永 (ジャーナリスト)

福田内閣の支持率が政権発足三ヶ月目にして急落している。今月の報道各社の世論調査の数字を見ると・・・
『毎日新聞』(12月15,16日調査)
   支持 33%  (10月調査 46%)
  不支持 44%  (10月調査 30%)
『日本経済新聞』( 同 14〜16日調査)
   支持 43%  (11月調査 55%)
  不支持 46%  (11月調査 33%)
『共同通信社』( 同 15,16日調査)
   支持 35.3%  (11月調査 47%)
  不支持 47.6%  (11月調査 36.6%)
 世論調査の個々の数字はともかく、流れははっきりしている。福田内閣の発足当初は軒並み50%を越えた支持率が、月を追って下降線をたどり、発足三ヶ月目にして今月は早くも不支持が支持を逆転したということだ。
 政権発足当初の高支持率は、安倍前首相の最後があまりにもひどすぎたのでその反動と、この人が短期間で一気に自民党内の多数の支持を取り付けたことから生まれたそこはかとない期待感があってのことだったと思われる。
 しかし、この人にはもともと日本の政治をどうしようという具体的な意欲があったようには見えない。そこが「美しい国」だの「戦後レジームからの脱却」だの、はては「憲法改正」だのと、危なっかしい言葉を連発した前任者より安定感があると受け取られたのだが、いくら安定感があっても「なにもない」のはやはりむなしい。
2007.12.02 石原(都知事)がたくらむ野望を許すな!
「暴論珍説メモ」28

田畑光永 (ジャーナリスト)

 ちょっと古い話になるが、11月27日『朝日新聞』30面の「石原知事発言から」の欄に「皇太子ご夫妻を代表に」という見出しの記事が載っていた。なにかと思ったら、オリンピックを日本に招致するために皇太子夫妻を代表にしようというのである。
 曰く「私ねえ、これはみなさん声をそろえていただきたいんだけど、ナショナルイベントですから、招致運動そのものも。私はやっぱり代表として誰が一番ふさわしいかと言ったら皇太子殿下夫妻だと思いますよ」「宮内庁あたりでですね、負けた時にどうするとかぐちゃぐちゃ言っているらしいけれどね、これ勝敗は兵家の常ですからね、つまり負けた時を考えたら何もできないんでね、これはやっぱり国民の声がそろってですねえ、ひとつぜひ皇太子殿下ご夫妻をね、英語も堪能だし、代表になってね、このコンペティションでね、日本を引っ張って戦ってもらいたいってのは当然の要求だし、それは皇室のためにもプラスになると思いますよ。日本人の一人としてねえ、ご夫妻にはがんばってもらいたい」
 以上が記事のほとんどだが、末尾に(21日、オリンピック招致がテーマの「東京ビッグトーク・石原知事と議論する会」で)とある。
 石原知事は「当然の要求」と言うけれど、いったいなぜ皇太子夫妻が招致運動の代表にふさわしいと考えるのか。発言では「ナショナルイベントですから」と「英語も堪能だし」としか言っていない。あえて数えれば、「皇室のためにもプラスになると思いますよ」とも言っているが、それだけである。
2007.11.28 守屋(前防衛次官)を居座らせたのは誰だ!?
暴論珍説メモ(27)

田畑光永 (ジャーナリスト)


 守屋前防衛次官の所業は「暴論珍説」と槍玉に上げるのも憚られる、意地汚いとしか言いようのないもので、なかなか取り上げる気分になれなかった。とはいえ、年間予算約5兆円、アジアで最精強といわれる武装集団を管理する事務方のトップが、武器装備を売り込む業者からずるずると八年にもわたって三百回もゴルフ、酒食の接待を受けていたとなれば、これは日本の行政機構そのものの病いの深刻さを明らかにした事件として、しっかりと歴史に書き残されなければならないだろう。
 守屋氏(まだ逮捕されていないので、こう呼ばざるをえない)は衆議院の証人喚問で、防衛省職員には業者とのゴルフを禁じておきながら、自らそれを破り続けたことについて、「なかなか止められなかった」とのべた。断る理由はいくらでもあるのに、「止められなかった」から続けたとは、いかに誘惑に弱い人間であるかを白状したに等しい。とすれば、きっとほかの誘惑にも弱かったにちがいない。
 一方で守屋氏を接待漬けにしながら、山田洋行なる会社、あるいは宮崎容疑者なる人物が何をしていたか、何を得ていたかは、過大請求、見積もり書改ざんなど、おいおい明らかになりつつあるが、もっと大きなものがおそらく出てくるであろう。それはこれからの検察当局の捜査に期待しよう。
 ただ、それとは別にどうにも分からないことがある。それはなぜこの守屋という人物が四年間も事務次官の座におさまっていられたかである。役所の事務次官というのは、通常は一年、長くて二年で、四年というのは異例の長さだ。なぜなのだ。
「防衛庁生え抜きで最初の次官だから」とか、「防衛庁の省昇格を控えていたから」などと言われるが、いずれもなるほどと頷けるほどの理由ではない。この間の長官、あるいは大臣は次の各氏である。石破茂(〇四年九月まで)、大野功統(〇五年十月まで)、額賀福四郎(〇六年九月まで)、久間章生(〇七年7月まで)、小池百合子(〇七年八月まで)。このうち守屋氏を更迭した小池氏を除く四氏は、いずれも任命権者でありながら同氏の居座りを容認した。メディアはこの四氏にその理由を問いただしてほしい。四氏にはそれに答える義務があるはずだ。とくに大野、額賀、久間の三氏は守屋次官交代を当然考えなければならない立場にいたはずなのに、それをしなかった理由を明らかにすべきだ。
2007.11.21 宇宙開発はあくまでも「非軍事」で
宇宙基本法案で平和七人委がアピール

 世界平和アピール七人委員会は11月19日夕、文部科学省の科学技術記者クラブで記者会見し、「宇宙基本法案の再検討を求めるアピール」を発表した。これに先立ち、同委員会の代表は各政党、衆参両院の内閣委員会委員長を訪れ、アピールを手渡した。
 記者会見したのは小沼通二(慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙物理学者・総合研究大学院大学教授)、池田香代子(作家・翻訳家)の3委員。
 3氏によると、日本における宇宙の開発と利用は、1969年に衆参両院で採択された全会一致の決議で、平和目的(非軍事)に限るとされてきた。ところが、今国会で審議中の宇宙基本法案は、「非軍事」をやめて、宇宙を軍事の場とする道を拓く第一歩となる内容を含んでいるという。そこで、世界平和アピール七人委員会としては、こうした内容の法案に重大な危惧を抱き、かつての衆参両院の決議に即した宇宙基本法の制定を目指すべきだ、としている。
 アピールの全文は以下の通り。
2007.11.17 「大連立」は国民を忘れ、国益に反した行為である
早房長治 ((地球市民ジャーナリスト工房代表)


「透明性」は民主主義にとって必須の要素

  10月末から11月上旬にかけて、政界を揺るがした自民、民主両党の大連立騒動とは何だったのか。それは、国民と国益を忘れた、福田康夫首相ら自民党幹部と小沢一郎・民主党代表、それに福田・小沢会談を仲介したマスコミ関係者の妄動だった。小沢氏以外の民主党幹部が大連立構想を拒否したことによって、状況は旧に復した。民主党は今後、迷うことなく、正攻法によって、政権交代への道を前進してほしい。
  政府与党が大連立を歓迎するのは当然である。民主党を筆頭とする野党が参議院で過半数を握る状況の下では、予算案と条約以外の法案は成立させるのが難しい。とりわけ、予算関連法案が参院を通らなければ、予算も事実上執行できない。これは、行政の崩壊といっても過言ではない。政府与党にとって、この破滅的状況を突破するには、民主党を抱き込むしかない。政策協議を頻繁に繰り返す手法もあるが、大連立の方が好都合であることはいうまでもない。
  軽率だったのは小沢氏である。読売新聞グループの総帥、渡辺恒雄氏がフィクサーとして登場し、大連立を実現するための福田・小沢会談を仕組んだシナリオに、民主党の他のリーダーと相談もせずに乗ってしまった。
  小沢氏に、自民党に屈する気は、さらさらなかったであろう。彼自身が説明しているように、「ねじれ国会」の状況下では、参院選で民主党が約束した政策が実現できず、また、現在の民主党の実力では、総選挙で衆院の過半数を獲得するのは難しいと考え、突破口としての大連立に飛びついたことも、理解できないわけではない。彼は、内心、自分ならば、連立内閣を運営する過程で、実質的に自民党を乗っ取ることができる、と信じていたに違いない。
  しかし、小沢氏が考えたような手法は、よしんば成功したとしても、今日の議会制民主主義の下では評価できない。「透明性」は今日の民主主義にとって最も重要な要素である。表向きは「総選挙で衆院の過半数を獲得して、政権交代を実現し、日本の政治を変革する」と繰り返しながら、裏では、福田首相と大連立の密議を凝らすようなやり方は、国民の支持を得ることはできない。このことを理解しない限り、小沢氏は民主党代表の資格はない。

2007.11.09 ねじれ国会 (a divided Diet)
松野町夫(翻訳家)

 最近、「ねじれ国会」ということばをよく耳にするようになった。マスメディアにも頻繁に登場する。「ねじれ国会」とは、衆参両院のいずれかで野党が過半数を占める状況の国会をいうようである。7月の参院選で民主党が大勝したことで、衆議院はこれまでどおり与党が多数を維持しているものの、参議院は野党の民主党が過半数を占めるようになった。政府与党による法案の国会での成立が困難になってきている。国会に「ねじれ」が生じたというわけである。
 「ねじれ国会」という表現は新語のようだ。いったい、誰が最初に使い始めたのだろう。おおかたの辞書や事典にはまだ掲載がない。ジャパンタイムズでは、「ねじれ国会」をa divided Dietと英訳していた。オックスフォード辞典(OALD) ではdividedを以下のように説明している。
  divided: adjective
  (of a group or an organization) split by disagreements or dif  ferent opinions:
  The government is divided on this issue. ・a deeply divided s  ociety

  しかし、この「ねじれ国会」という表現を私は好きになれない。少しおかしいと思う。「ねじれ」には、日本語としてどこか否定的な響きがあるからだ。
  講談社の日本語大辞典第2版によると、
  ねじ・れる【*捩れる・*拗れる・*捻れる】(下一自)
  (1) くねり曲がる。よじれる。twist <用例>ネクタイが〜。
  (2) ひねくれる。become perverse <用例>心が〜・れている。
 あまり、いい意味ではない。特に、「心がねじれている」という用例は気になる。


2007.11.08  小沢留任の茶番に何を見る
暴論珍説メモ(26) 

田畑光永 (ジャーナリスト)


 前回、民主党の小沢党首が辞任するというので、「あいた口がふさがらない」と書いたのだが、この言葉を使うのはちと早すぎたようだ。次の幕では辞めるという小沢氏の袖に、管、鳩山といった民主党の幹部が「辞めないで」とすがりつき、「何というざまだ」とあきれていたら、今度は当の小沢氏が「それなら」と一転「辞めるのやーめた」と留任するというのだから、「あいた口がふさがらない」はここで使うべきだった。
 小沢氏は7日夕の民主党両院議員懇談会で「このたび党首会談をめぐり、国民、民主党の支持者、党員、同僚議員に多大のご迷惑をおかけしたことを心よりおわびする」と口を開いた。国民は失望しただけで、別にご迷惑をかけられた覚えはないから謝ってもらう必要はないけれど、党員や支持者に謝るというなら、それはご随意にどうぞと言うのみである。
 ただ、次に出てきた言葉には驚くと同時になんともやりきれない気持になった。「ご承知の通り、いまだなお、不器用で口下手な東北気質だ。振り返るとそれが今回の混乱の原因では」というのだ。不器用、口下手ですますのか!