2008.06.17 9条を守る運動をさらに強めよう
「声なき声の会」が48回目の6・15集会

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

  誰でも入れる反戦・平和の会「声なき声の会」の集会が、6月15日午後2時から、東京・池袋の豊島区勤労福祉会館で開かれた。毎年この日に開かれてきた集会も今年で48回目。毎回、その年の政治状況や反戦市民運動の課題が話し合われてきたが、今年は、憲法第9条をめぐる状況への発言が目立ち、「改憲勢力は改憲をあきらめていない。改憲を許さないために、9条を守り、実現させる運動をいっそう強めよう」と訴える声が相次いだ。

「声なき声の会」は、1960年の日米安保条約反対運動の中で生まれた。
  日米安保条が結ばれたのは1951年だが、当時の岸信介内閣は条約改定を急ぎ、60年に改定された安保条約(新安保条約)の承認案件を国会に提出した。野党の社会党・共産党や労働組合、平和団体などが「改定により日本が戦争に巻き込まれる危険性が増す」と安保改定阻止の運動を起こすと、岸内閣と自民党は5月19日、衆院で承認案件を強行採決。このため、その日から、これに抗議するデモが連日、国会に押しかけた。

  デモの中心は労組員だった。それを見た千葉県柏市在住の画家だった小林トミさん(当時30歳)が「普通のおばさんも気軽に参加できるデモをやってみよう」と思い立ち、6月4日、知人とともに「誰デモ入れる声なき声の会 皆さんおはいり下さい」と書いた横幕を掲げ、東京・虎ノ門から国会に向けて歩き始めた。
  横幕に「声なき声の会」と書き入れたのは、岸首相が国会包囲の抗議デモに対し「私は『声なき声』にも耳を傾けなければならぬと思う。いまのは『声ある声』だけだ」と記者会見で述べたからだった。
  デモには、沿道にいた一般市民が次々と入ってきて、解散時には300人にふくれあがっていた。小林さん提唱のデモはその後も続けられ、参加者は毎回、500人から600人にのぼった。この人たちによって「声なき声の会」が結成された。
  6月15日には、全学連主流派の学生たちが国会構内に突入、これを阻止しようとした警官隊と衝突、その混乱中で東大生の樺美智子さんが死亡。抗議の声が渦巻く中で、6月23日、新安保条約は自然承認となった。

 翌年の6月15日、小林さんは国会南門へ行ってみた。前年は、樺さんの死を悼む人並みとおびただしい花束で埋まっていたが、1年後は閑散としていた。「日本人はなんと熱しやすく冷めやすいことか」と衝撃を受けた小林さんは「日米安保問題と樺さんの死を忘れまい」と心に誓い、毎年6月15日に声なき声の会の人たちとともに花束をもってここを訪れるようになった。
 その後も、この日を記念する声なき声の会による6・15集会と国会南門での献花は1年も欠かさず延々と続き、2003年に小林さんが病気で亡くなってからは、柳下弘壽さんが世話人となって続いている。

2008.05.11 「いじめに加担」は情けないぞ!
暴論珍説メモ(37)  

田畑光永 (ジャーナリスト)


  中国の胡錦濤国家主席が6日来日し、7日に福田首相と会談した後、共同声明が発表された。中国主席の訪日は1998年の江沢民以来10年ぶり、共同声明もその時の小渕首相との共同声明以来である。
  この10年の間には01年から06年までの小泉首相時代があり、靖国神社問題で両国の政治関係は冷え切った。その後、06年秋の安部訪中(破氷の旅)、07年春の温家宝訪日(融氷の旅)、同年末の福田訪中と首脳往来を重ねて、今回の胡錦濤の「暖春の旅」となった。ともあれ両国の政治関係の正常化が定着したといえる。
  10年を経て共同声明の内容も様変わりした。その変化の最大のものはいわゆる歴史認識についての記述である。10年前には「日本側は、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、深い反省を表明した」とあったのが、今回は「双方は歴史を直視し、未来に向かい、日中の『戦略的互恵関係』の新たな局面を絶えず切り開くことを決意し、・・・」とあるだけである。
  新しい声明が出たからといって、以前の声明が帳消しになるわけではないから、前と同じことを書く必要はないとも言えるが、10年前の江沢民は声明の記述に不満で、「謝罪」を書き込むことを要求し、小渕首相が口頭で謝罪したのにも満足せず、旅行中機会あるごとに「歴史」を振りかざし、すっかり日本国民に嫌われたことを思えば、中国側の態度の変化は明らかである。
また今回の声明では「中国側は、日本が平和国家としての歩みを堅持し、平和的手段により世界の平和と安定に貢献していることを積極的に評価し」と言い、さらに「中国側は、日本の国連での地位と役割を重視し、日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望んでいる」とまで踏み込んだ。
2008.05.05 憲法9条世界会議、参加者あふれる
―場外でも演説、異例の幕開け―

岩垂 弘 (ジャーナリスト)


 予想外の幕開けとなった。4日に千葉県幕張メッセで開幕した「9条世界会議」である。主催者の予想をはるかに上回る参加者が全国から駆けつけ、おびただしい数の人々が会場に入れず、やむなく近くの公園で主催者の弁明と一部外国代表のスピーチに耳を傾けるという異例の事態となったからだ。遠方から来たのに会議に参加できず途方に暮れる人もいたが、こうした“異常事態”は、見方によっては日本人の間で日本国憲法第9条を守ろうという人々が増えつつあることの表れとも言えるわけで、これからの護憲運動に影響を与えそうだ。

 「9条世界会議」は、ピースボート、日本国際法律家協会、GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)ジャパンなどが中心となった実行委員会が1年がかりで準備を進めてきた。呼びかけ人には、浅井基文(広島平和研究所所長)、池田香代子(翻訳家)有馬頼底(臨済宗相国寺派管長、金閣寺・銀閣寺住職)伊藤真(伊藤塾塾長)、井上ひさし(作家・劇作家)、加藤登紀子(歌手)、香山リカ(精神科医)、品川正治(経済同友会終身幹事)、辻井喬(詩人・作家)、新倉修(日本国際法律家協会会長)、水島朝穂(早稲田大学教授)、ジャン・ユンカーマン(映画監督)、湯川れい子(作詞家・音楽評論家)、吉岡達也(ピースボート共同代表)の各氏ら各界の著名人88人が名を連ねる。

 狙いは、戦争放棄と戦力不保持をうたった日本国憲法第9条を世界に広げることにある。9条世界会議のプログラムには、こうある。
 「世界中紛争が絶えず、武器が次々と作られています。地球環境の変化が人々を脅かし、貧困は広がっています。そんな世界でいま人々が注目し始めているのが、日本の憲法9条です。『武力によらず平和をつくる』この9条の考え方を、いま、世界で生かしたい。戦争のない世界のために。一人ひとりが、平和に生きられる未来のために」
 つまり、世界会議開催の狙いは憲法9条の世界化、国際化にあるというのだ。これまで日本で開かれてきた世界会議といえば、専ら「原水爆禁止」のためのものだった。そのうえ、これまで、日本における「9条擁護」の運動はどちらかというと内向きの傾向が強かっただけに、今回の世界会議は初めての試みといえる。

世界会議


      (あふれた参加者を前にスピーチするマイレッド・C・マグワイアさん
        =左端の白いスーツ姿)
2008.05.01 「改憲反対」が多数派に- 9条を守る運動の成果か
岩垂 弘 (ジャーナリスト)



 日本国憲法は5月3日で施行61年を迎える。それを前にして、読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査の結果が、憲法に関心をもつ人たちの関心を集めている。憲法改正反対派が改正賛成派を上回ったからである。この世論調査で「改憲反対」が「改憲賛成」を上回ったのは15年ぶりのことだそうで、ここには憲法に関する国民意識の変化が明確に読みとれる。ここ数年、各分野で進められてきた「9条守れ」「9条実現」を目指す運動がようやく具体的な成果を生みつつあるとみていいだろう。
 読売新聞社の憲法に関する全国世論調査(面接方式)は1981年から実施している。今年は3月15、16両日に行われた。対象者は全国の有権者3000人。うち1786人が回答した。回収率は59・5%。
 4月8日付の同紙によると、「あなたは、今の憲法を、改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか」との問いに「改正する方がよい」と答えた人が42・5%、「改正しない方がよい」と答えた人が43・1%、答えないが14・4%だった。
 これについて、同紙は「1981年から実施している『憲法』世論調査では93年以降、一貫して改正派が非改正派を上回っていた。しかし、今回は改正派が昨年より3・7ポイント減る一方、非改正派が4・0ポイント増え、これが逆転した」「改正派は4年連続の減少だ」と述べていた。
 これは、憲法をめぐる論議での画期的な変化と言っていいだろう。


2008.03.23 今年も「9条実現」の新聞意見広告
賛同金の送付を訴え

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 新聞への意見広告掲載を通じて「憲法第9条実現」を訴えている「市民意見広告運動」(事務局、東京都渋谷区)が、来る5月3日(憲法記念日)付の全国紙と地方紙に意見広告を載せようと、賛同を呼びかけている。

 新聞への意見広告掲載を通じて「憲法9条実現」の世論を盛り上げようというこの市民運動は2003年から始まった。一般市民から賛同金を募り、それで憲法記念日の新聞に「憲法9条を実現させよう」「憲法改悪反対」といった意見を広告の形で載せる運動だ。
 2003年は毎日新聞に掲載。2004年は2回にわたる掲載となり、まず朝日新聞と北海道新聞に、次いで毎日新聞と東奥日報、河北新報に掲載。2005年は朝日新聞と毎日新聞、2006年は読売新聞、沖縄タイムス、琉球新報にそれぞれ掲載した。2007年は9980人から3095万2470円が寄せられ、これで朝日新聞、中日新聞、東京新聞に掲載した。
2008.03.08 正気か!舛添厚労相の「50兆円ファンド」
「暴論珍説メモ」(36)

田畑光永 (ジャーナリスト)

 舛添厚労相が六日、自民党の「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」に出席して、「公的年金の積立金百五十兆円の三分の一の五十兆円をまずファンドなどの形で運用してみることは国民にも納得を得られる」と発言した。具体的には、今後、民間のヘッジファンドや与党が設立を検討する日本版政府系ファンドに積立金を配分することを考えるということらしい。
 同相は「短期間で欠損が出ることがあるかもしれないが、上手なファンドの組み方をすれば、五−十年単位で見ると損は出ない」と語ったという。
 冗談ではない。どうしてそんなことが言えるのか。「利益を上げる年もあるかもしれないが、いつ大損するかわからない」のが金融世界の現状ではないか。そんなところへ国民の虎の子の公的年金の積立金の三分の一もつぎ込んで、大きく損を出したら誰がどう責任をとるというのか。現に昨年の十−十二月期には積立金の市場運用部分で一兆五千億円の損失を出したばかりではないか。まさか「五千万人分の行方不明台帳」ですっかり信用を落とした年金制度をこれで名誉挽回などと考えているわけではあるまい。
 大体「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」などというのもまことに胡散臭い。サブプライム・ローン問題でアメリカの大手金融機関が軒並み巨額の損失を出し、資本不足に陥りそうなところへ中東や中国の政府ファンドが高利で出資したのを見て、「そんな儲け話があるなら、日本も一口」と欲の皮を突っ張らせた動きである。
2008.03.05 「せんたく議連」?!
「暴論珍説メモ」(35)

田畑光永 (ジャーナリスト)

 「せんたく議連」なるものが3月2日に発足した。日本を「洗濯する」のと「選択する」のとを引っ掛けた命名だそうだが、なんとこれに自民、民主、公明、国民新の各党から合わせて107人もの議員が参加したという。
 超党派の議員連盟そのものは珍しくない。政党所属議員の政治活動は政党の枠に縛られるものだが、特定の問題に関心を持つ議員が「日中友好議連」といったふうに党派を越えて活動するための組織を作ることは昔からあった。
 しかし、この「せんたく議連」はちょっと様子がちがう。「洗濯」とか「選択」とか言っても抽象的で、それにどんな意味を託すかは人それぞれでさまざまであろう。もともとは北川正恭前三重県知事らが結成した「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合(せんたく)」というものがあり、それと連携して「マニフェスト(政権公約)」の定着を目指すのだそうであるが、いまひとつ分からない。
 共同代表の民主党・野田佳彦氏は「次期衆院選を歴史的な政権選択の選挙にするのが大目的」と強調したそうだが、衆院選は常に政権選択の選挙であったわけで、これまでも政権公約はどの党も掲げてきた。それに「マニフェスト」という片仮名文字をつけるようになったのは比較的最近のことだが、それによって選挙がなにか変わったかといえば、特段の変化は見えない。
 だから「マニフェスト」が定着すれば、「歴史的な政権選択の選挙」になるという論理がぴんと来ないのだが、それに100人を越える議員が参加したというのは考えるに値する問題である。自民党からの参加者は51人、その中には共同代表の河村元文科相をはじめ多数の閣僚経験者が含まれているし、民主党からの47人の中には岡田、前原といった党代表経験者の顔も見える。
2008.02.11 もう専門家にはまかせておけない―新しい保護主義を!
暴論珍説メモ(34)

田畑光永 (ジャーナリスト)

 九日、東京でG7諸国の財務相・中央銀行総裁会議が開かれた。アメリカのサブプライム問題の暗雲が世界経済をおおっている時だけに、この会議でどんな方策が打ち出されるのか、玄人ならずともそれなりの関心をもって、共同声明を待った。
 しかし、新聞に出た要旨(『日本経済新聞』による)を見る限り、はっきりしたのは財務相とか中央銀行総裁とかいっても、これといって別に特段の知恵はない、したがって集まってはみたものの、どうしようという結論も出なかったということだ。
 ちょっとだけ内容を覗いてみよう。
 冒頭、「昨年十月のG7会合に比べ、世界はより挑戦的で不確実な環境に直面しているが、世界経済全体のファンダメンタルズ(基礎的条件)は引き続き堅固である」という。「挑戦的で不確実な環境」であることは誰の目にも明らかだが、後段についてはファンダメンタルズの何がどう「引き続き堅固」なのかは説明がない。こういう情勢だからこそ、世界を安心させるためには、その説明が必要なはずなのに。
 続くアメリカのくだりも同じような文章である。「米国では生産と雇用の伸びが大幅に減速し、リスクは一層下方に傾いているが、長期的な基礎条件は健全で、二○○八年も成長が続くと見込む」のだそうである。それではなにも心配はないのか。
 ところが、次の記述を見ると、これら後段の文章はいずれもただの気休めに過ぎないことがわかる。「世界的な経済・金融の動向を反映して、七カ国すべてで程度の差はあるが、成長は短期的にやや減速すると見込まれる。新興市場国はやや減速しつつも、底堅い、成長を続ける」
 要するに先進国も新興国もおしなべて経済は減速するのだ。「程度の差はあれ」とか「やや」とかオブラートに包んでいるが、世界中にいっせいにブレーキがかかるというのは大変なことのはずだ。ただ「大変だ」とは言いたくないので、なるべくさりげなく書こうとしたのだろう。
 でも当面の心配事には触れないわけにはいかない。そこで「我々は、依然として下方リスクが存在していることに留意した。下方リスクには米住宅市場のさらなる悪化、金融市場の混乱の長期化による貸し出しの厳格化、原油や一次産品の価格高騰、いくつかの国におけるインフレ期待の高まりなどを含む」という文章が続く。
2008.01.30 リケンとセイケンと
「暴論珍説メモ」33

田畑光永 (ジャーナリスト)

 前回、揮発油税などの暫定税率を今後さらに十年間も維持しようとする政府・与党が温暖化問題を持ち出してその理由とする身勝手なご都合主義を批判したが、彼らは是が非でも目的を達しようと、現行の暫定税率を五月末まで延長するといういわゆる「つなぎ法案」を二十九日、国会に提出した。
 狙いは言うまでもなく、提出法案が衆院通過後、参院で否決されるか、あるいは六十日間採決されなかった場合、衆院が三分の二の多数で再可決すれば成立するという憲法五十九条の「六十日ルール」を使って、安全に目的を達成するためである。しかも、「手続き法案」であるという理由で、議論抜きで一月中に採決して参院に送り、これ自体も三月末に「六十日ルール」で再可決しようというのだから、念が入っている。
 こういうことをしてはいけない。なにゆえ衆参両院が存在するのか。一院だけの決定では危険だから、両院で審議して法律を制定するというのが二院制である。そのためには衆参両院の議員がなるべく違った形で選ばれることが望ましいが、残念ながら現在の議員先生がたは似たような人達で、それぞれの独自色が発揮されているとは言いがたい。しかし、制度は制度である。両院が是としないものは法律としてはならないのである。
 ただそれでは場合によっては国の運営ができなくなる恐れがあるというので、例外規定として予算と条約は衆議院の議決が優先されることになっている。これ自体が二院制の建前からすればすでに例外的な措置である。しかし、憲法はさらにその上になお例外措置を決めていて、それがこの「六十日ルール」である。したがってこれを使うことはよほどの場合に限られなければならない。
2008.01.21 「温暖化」を都合よく使うな!
「暴論珍説メモ」32

田畑光永 (ジャーナリスト)

 通常国会が始まった。今年は衆目のみるところ「解散・総選挙の年」だそうだから、これから与野党ともに国民の顔色をうかがいながら、すこしでも自分の方に好感を持ってもらおうと色目を使う日々が続くことになるのだろう。
 そしてこの通常国会は「ガソリン国会」だという。道路特定財源のガソリン税の暫定税率が今年度で期限切れとなるが、自民党はさっさとその「暫定」を今後十年間は維持すると決めているのに対して、民主党は衆参のねじれをたてにそれを認めず、年度末で「暫定切れ」に持ち込み、ガソリン1リットル当たり25円ほどの値下げを実現しようとしている。
 なにしろ原油の価格は去年一年で急騰した。それが末端のガソリンスタンドでの小売値段にもろに響いて、1リットル100円前後だったのが150円以上にまで上がってしまった。今の生活はあらゆる面でガソリン、あるいは石油に依存しているから、生活諸物資の値段も上がり始めた。ここで最近のガソリン値上がりの半分ほどが帳消しにできるなら、それにこしたことはないというのが、大方の実感だろう。
 野党がそれをふりかざすのは、かなりの程度ご都合主義だが、当然である。そもそも「暫定」が何十年も続いたことが異常なのに、さらに十年も続けようというのはいかにも常識に反する。しかし、自民党は暫定税率分2.7兆円の税収が消えてしまっては大変だから、いろいろ理由をつけてそれを維持しようとしている。たとえば、2.7兆円のうち0.9兆円は地方に配分される分だが、それがなくなると、一般経費を削って道路整備に当てなければならないから、その分、文教予算や福祉予算が削られると言った議論である。風が吹けば桶屋が儲かる式の牽強付会の論理である。
 しかし、それだけではまだ足りないと持ち出してきたのが、ガソリンの値段を下げるのは温暖化抑制に反するという暴論である。
 町村官房長官は十九日、千葉県市原市での講演で「ガソリンの値段を下げればそれだけで日本の環境問題はそんな程度の取り組みなんだということになる。そのマイナス効果は計り知れないものがある」とのべた。また、高村外相も十九日、山口市で講演し、(洞爺湖サミットで)「地球温暖化でリーダーシップを発揮しようとしている時、『ガソリン税を下げました。もっとガソリンを使いましょう』という態度でいいのか」とのべたという。(『日経』『朝日』などによる)