2017.02.17 日本の核兵器廃絶運動のあり方を批判
     「ラロック証言」の元米海軍提督が死去

岩垂 弘 (ジャーナリスト)


 1月11日付の「しんぶん赤旗」に載った訃報が目を引いた。そこには、元米海軍提督で、ミサイル巡洋艦プロビデンスの艦長を務めたジーン・ラロック氏が昨年10月31日に98歳で死去したとあった。「米艦船は日本に核兵器を持ち込んでいる」というラロック氏の証言は日本の各界に衝撃を与えたが、私はこのこととは別のことでも同氏に関心を持ち続けてきた。というのは、同氏が日本の核兵器廃絶運動のあり方に対し一つの疑問を呈していたからである。

 ラロック氏の証言とは、1974年9月10日、米国議会の上下両院合同原子力委員会軍事利用小委員会が開いた、核拡散の危険をめぐる公聴会で述べたものである。ラロック氏は当時、元海軍少将で、国防問題に関するシンクタンク「国防情報センター」の所長を務めていた。当時、共同通信ワシントン支局にいた佐藤信行氏によれば、証言の内容は次のようなものだったという(2009年8月の日本記者クラブ会報に掲載された「ラロック証言のいま―『核なき世界』へ」による)。

 「私の経験によれば、核兵器を積み込める艦船はいずれも核兵器を積み込んでいる。これらの艦船は日本や他の国々の港に入るに当たって、核兵器を降ろすことはない。核兵器を積み込める場合には、艦船がオーバーホールないし大規模な修理を受けるための寄港の場合を除いて、通常はいつでもこれらの核兵器を艦船内に積み込んだままである。これらの核兵器の一つをうっかり使ってしまうかもしれないという現実の危険性がある」

 この発言は日本国内に大きな反響を巻き起こしたが、日本政府は「米国がいかなる形にせよ、日本に核を持ち込む場合は日本政府との事前協議の対象になる」として、米艦船による日本への核兵器持ち込みを否定し続けた。しかし、いまでは、日米安保条約の改定時に日米両国政府間で「核持ち込みの密約」があったことが明らかになっている。

 ラロック氏の訃報に接した瞬間、私の脳裏に甦ってきたことがあった。平和運動家であった故熊倉啓安氏(1927~1995年)から聞いたエピソードだ。
 熊倉氏は日本平和委員会の専従活動家で、事務局長、副理事長、代表理事、顧問を歴任した。この間、原水爆禁止運動、基地反対闘争、日中・日ソ国交回復運動、日韓条約反対運動、反安保闘争、ベトナム人民支援運動、沖縄返還運動などに関わった。

 1978年5月には、米国に渡航した。この時期、ニューヨークの国連本部で第1回国連軍縮特別総会(SSDⅠ)が開かれたためだ。
 SSDⅠに対し、日本の原水禁運動団体、労働団体、市民団体、宗教団体は「国連に核兵器完全禁止を要請する署名運動推進連絡会議」を結成し、全国で署名運動を展開、署名は1869万筆に達した。この署名簿をたずさえた「国連に核兵器完全禁止を要請する日本国民(NGO)代表団」の502人がニューヨークに向かい、署名簿を国連事務次長に手渡した。熊倉氏もこの代表団に加わった。
 その後、代表団は12の班に分かれて各国政府や軍縮関係機関を訪れ、核兵器完全禁止に向けての努力を要請した。

 熊倉氏は第3班に加わり、ワシントンの「国防情報センター」にいたラロック氏を訪ねた。熊倉氏によると、班のメンバーの要請に「きみたちは来るところを間違えた。核兵器反対を言うなら、むしろ日本政府に向かって言うべきだ」と述べたという。「米国の『核の傘』のもとに安住していて反核を叫ぶことの矛盾を見事に突かれた思いでした。ショックでした」。帰国後、同氏が私にもらした述懐である。

 核兵器の拡散を恐れるラロック氏としては、核兵器の拡散を防ぐためには、まず各国の国民がそれぞれの国の政府に核兵器の製造や持ち込みをやめるよう働きかけるべきだ、と考えていたのだろう。が、それまでの日本の核兵器廃絶運動は、専ら、核兵器の禁止を国際社会に訴えるもので、米国の「核の傘」に頼って日本の安全保障を図ろうという歴代の自民党政権に対して「それを止めよ」と要求する運動は弱かった。それだけに、熊倉氏にとっては虚を突かれた思いだったのだろう。

 熊倉氏が、その後、ラロック氏の指摘を日本の運動にどのように活かしたらいいのかと考えていたのかどうかは私は知らない。が、同氏を通じて知ったラロック氏の指摘は、私にとって日本の核兵器廃絶運動を考える上で重要な視点となった。だから、日本の核兵器廃絶運動のあり方について意見を求められれば、ラロック氏の指摘を頭の隅に置きながら、意見を述べてきた。

 例えば、「週刊金曜日」1998年8月4日号に発表した『米国の「核の傘」の下で反核を叫ぶ矛盾』である。
 私はそこで、日本で開かれた反核集会に参加した海外代表が「米国の『核の傘』から抜け出さないと、日本は核軍縮で指導的役割は果たせない」「米国の『核の傘』の下にいることが日本の外交政策を制約している。日本は、米国の『核の傘』から脱却を」などと発言していることを紹介しながら、「日本の運動がこれまで掲げてきた最大にして最優先の課題は一貫して『核兵器完全禁止』または『核兵器廃絶』だった。ほとんどこれ一本やりだったといってよく、一部の団体はともかく、『米国の核の傘からの脱却』を運動の全面に明確に掲げたことは、運動全体としてはなかった」と書いた。   

 ところで、日本の原水禁運動団体、消費者団体、青年団体、婦人団体、宗教団体などは今、3月から国連で始まる、核兵器禁止条約締結に向けた会議に向けて、被爆者の団体である日本原水爆被害者団体協議会提唱の「ヒバクシャ国際署名」に取り組んでいる。「核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶようすべての国に求める」署名だ。
 ところが、日本政府はこの条約の締結に反対している。としたら、日本の運動としてはこぞって「被爆国の政府が核兵器禁止条約に反対するのはおかしい」と、日本政府に迫る運動も起こしてもらいたい。そう思わずにはいられない。一部の運動団体は「日本政府は核兵器禁止条約へ行動を」とのスローガンを掲げて活動しているが、まだ運動全体のものとなっていない。

2017.02.16  「本日休載」

  今日02月16日(木)は休載します。

  リベラル21編集委員会


2017.02.15  アメリカ社会とトランプ政権の移民政策
          映画『ブルックリン』から考える

小川 洋 (大学非常勤教師)

 選挙中に違法移民の排除を掲げていたトランプ政権だが、政権発足後にさっそく大統領令を出し、いくつかのアラブ諸国からの入国禁止、メキシコとの国境の壁建設を指示するなど、実行に乗り出した。しかし入国禁止については、司法側から直後に無効判断が出されるなど、現場では混乱が続いている。
 ネットではツイッターで、アメリカ先住民がトランプ氏に向かって「マジかよ。で、お前はいつ出ていくんだ!」と叫んでいる画像が投稿されていたりして、笑わせてくれるのだが、正当なビザやグリーンカードをもっている人物までが、現実に空港で拘束される事態が発生すると笑いごとでは済まなくなる。

 トランプ氏も当然、移民の子孫である。祖父がドイツから渡米した。その際に、苗字のDrumpfをTrumpにしたと言われる。母親はスコットランド最北のルイス島出身である。トランプ氏の顔は角ばっていて、どちらかと言えばゲルマン系というよりはケルト系の特徴が強くみられるから、母親似なのかもしれない。

 アメリカのケルト系としてはアイルランド移民が典型だが、最近もアイルランド移民をテーマとする映画作品があった。2015年に公開された映画『ブルックリン』は1952年の舞台設定で、アイルランドの若い女性が単身で、第二次大戦後の好況に沸くニューヨークに移り住む話である。ヒロインのエイリシュ・レイシーを演じたアイルランド系アメリカ女優のシアーシャ・ローナンはアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされ、映画も全編にわたって無駄な映像の一つもない名作である。アメリカに移住した人々がどのような経験をしながらアメリカ人となったのかを振り返るため、しばらく映画のストーリーを紹介しよう。

 それぞれの場面の映像はじつに多弁である。例えば、彼女がエリス島(54年まで使われていた)の移民局の入国審査の列に緊張して並んでいると、審査官のデスクの向こう側を家族連れのシルエットが横切る。入国を拒否されて送還される人々である。彼女は無事に入国を許可され、担当官に「青いドアから出るように」と言われる。彼女がドアを開けると眩いばかりの光に包まれ、彼女が祝福を受けているような印象を与える。

 しかし実際に生活が始まれば、孤独感や民族的差別のなかで強烈なホームシックに襲われる。昼食をとったカフェでもアイルランド訛りを指摘され、嫌な思いをさせられる。高級デパートの店員としての仕事を始めても、接客はぎこちない。上司の注意に対して「努力します」と答えると、上司は「下着を着ける時に努力する?同じように意識しなくてもできなければ。」と冷たく言い放つ。

 優秀な成績で中等教育を修了したエイリシュはアイルランドの田舎町では能力に相応しい仕事もなく、病弱な姉と母親の生活を支えるために性格の悪い女主人の経営する雑貨屋の店員をしている。その姉がカトリックの司祭に頼んで妹のためにアメリカへの移住と就職の機会を作った。ブルックリン地区の司祭は彼女に会計士の資格取得を勧める。学費は教会の寄付金である。向上心の強い彼女は、手始めに夜間の簿記クラスの履修を始める。

 と前後して、アイルランド系移民の集まる教会で週末に開かれるダンスパーティに出たエイリシュは、アイルランド女性が好みだというイタリア系男性(トニー)とめぐり会う。彼女は、堅実な働き者でありエイリシュに敬意にも似た姿勢で接するトニーと付き合いを深めていく。徐々にホームシックを克服しながら明るく振る舞うようになったエイリシュに対し、それまで彼女に冷笑的ともいえる態度をとっていた同じアイルランド系の先輩女性たちは、惜しみなく応援するようになる。交際相手がイタリア系と聞くと、「彼の話は、どうせ野球と母親のことばかりでしょ」と冷ややかに言う(当時のイタリア系男性のステレオタイプであった)。ところがトニーは聞き上手でもあり、自分がドジャースのファンであることも母親のことも話をしたことがなかった。エイリシュが否定すると、“Keep it”(日本語の字幕では「それは当たりよ」と訳されている)と、交際を深めるようにアドバイスされる。さらに、エイリシュがトニーの家に食事に招かれたと聞くと、スパゲッティの食べ方を指導してくれる(イタリア料理がアメリカで市民権を得るようになったのは、この時期のことだという)。また、当時ニューヨーク市民の手近なリゾートとなっていたコニーアイランドに二人で出かけると聞くと、水着の選び方からムダ毛の処理の仕方まで丁寧に教えてくれる。なお、ここで選ばれる水着の淡いグリーンはアイルランドのシンボルカラーでもある。

 多くのアメリカ移民は、このエイリシュと同じように、孤独と差別に苦しみながらも、同じ民族系の仲間たちの善意に支えられ、多様な民族と交流しながらアメリカ社会の中で、新しい生活を築いてきた。映画は、姉の急死の報に接して故郷に戻ったエイリシュのアメリカとアイルランドのいずれを選ぶか迷う様子を描きながら、結局はアメリカに戻る場面で終わる。

 アメリカへの帰途の船中でエイリシュは、アメリカに初めて向かう若い女性に先輩として様々なアドバイスをする側になる。「ブルックリンはアイルランド人が多く、故郷のようなところだ」と安心させる。また入国審査の際には「靴を磨いておく、目を見張ってアメリカ人のように自信ある態度でいる、そして絶対に咳をしてはならない(結核患者は強制送還)」などである。さらにエイリシュは続けるが、それはいつの間にか、自分自身に言い聞かせるモノローグになっている。「孤独に苦しむだろうが、ホームシックで死ぬことはない。それまで知ることのなかった人との出会いがあり、そこに生活の足場ができる。」と続ける。最後は再会したトニーと抱き合う場面で終わり、二人で家庭を築いていく未来が示されるのである。

 アメリカは嫌いだがアメリカ人は好きだという日本人は多い。日本人だけではないだろう。この映画が描いたように、次々と移住してくる様々な民族が、助け合い、また混じり合いながら社会が形成されてきた特有な社会形成の過程が、多くのアメリカ人の性格を形作っているからだと思う。しかしトランプ大統領は、難民や移住希望者たちに対して、高くて厚い壁を築こうとしている。移民の流入を停止することは、このようなアメリカ社会の成り立ちそのものを否定することである。アメリカ社会は外から新しい人々を受け入れることで活力を維持してきた。トランプ氏による移民の拒否はアメリカ社会の衰退を意味するはずだ。

 なおまたエイリッシュを援助したカトリック教会は、近年のアメリカでは、セックス・スキャンダルなどで社会的信頼を著しく損なっている。国家・政府の手の届かない福祉や教育などの面で重要な役割を果たしてきた教会そのものも、社会的地位を低下させている。ハイウエイなどのインフラの劣化が問題となっているが、アメリカ社会を支えていた目に見えないインフラも衰えつつある。アメリカは自ら確実に、その活力を喪失する過程に入っているように見える。
なお残念ながら、この映画はカナダ、フランス、アイルランドの合作であり、アメリカ映画ではない。
2017.02.14  日米同盟は戦争へ向かうのか
          ―共同声明に「安保第五条」を入れる愚行―

半澤健市 (元金融機関勤務)

 2017年2月10日に行われた安倍首相・トランプ米大統領会談について、すかさず多くの同人が、適切な論評を続けている。
私も、念のため、日米合意にある「尖閣条項」の読み方をファクトに基づき書いておく。結論から言うと、共同声明に「尖閣列島は安保第五条の対象」と書くのは、愚かしく、日米同盟の不安定化の表現だということである。

《二つの重要なファクト》
 主な事実として次の二つを読んでほしい。
■日米安保条約の第五条
各条約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することを宣言する。(以下略)
■日米防衛協力のためのガイドライン(2015年4月日米で合意)の一節
 ・陸上攻撃に対処するための作戦
自衛隊及び米軍は、日本に対する陸上攻撃に対処するため、陸、海、空又は水陸両用部隊を用いて、共同作戦を実施する。
自衛隊は、島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。(中略)
米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

《この文章を読み解くと》
 二つの小難しい文章を読み解こう。
「安保第五条」は、米軍が当然に日本を守るとは書いてない。「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処する」と書いてある。米国では、戦争を始めるには連邦議会の議決が必要だ。日中両国が、無人の岩石「尖閣諸島」を巡って戦闘を開始したとしよう。米国が、自国の若者の命を犠牲にする参戦をするだろうか。しない。議会は否決するだろう。

 「ガイドライン」には、自衛隊と米軍は「共同作戦を実施する」と書いてあるが、同時に「自衛隊は作戦を主体的に実施する」、「米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する」と書いてあるのだ。
「主体的」部分の英文は、The Self-Defense Forces will have primary responsibility for conducting operations to prevent and repel ground attacks, including those against islands.である。
primary responsibility は、主語「自衛隊」の動詞は「作戦を主体的に実施する」のではない。「第一の責任を有する」のである。「自衛隊が全部やるべし」と訳してもいいくらいだ。米軍の役目は自衛隊への「支援と補完」に過ぎない。

《専門家が批判してきたテキスト誤読》
 この読み解きは私のものではない。専門家の解釈である。
「第五条」については元外交官の孫崎享氏(まごさき・うける)が、「ガイドライン」については軍事評論家の田岡俊次氏(たおか・しゅんじ)が、繰り返し主張していることである。しかしこれらの辛口コメントは、大手メディアに載ることが少なく、人々の共通認識になっていない。

 日米首脳会談を報ずる政府もメディアも、共同声明を「大成功」いっている。五条確認を共同宣言に載せるのが何が成功なのか。成功どころではない。日米同盟関係は、戦争への道に向かって、大きく揺らいでいる証拠である。一市井人のこの結論は、ファクトと専門家の説得力から、導き出したものである。(2017/02/12)
2017.02.13  本番はゴルフ会談か
          異常なワンマン政権、したたかな「狂人戦略」

金子敦郎(国際ジャーナリスト、元共同通信ワシントン支局長)          

「にこやかなトランプ」
 世界に広がったトランプ・パニックの中で最も慌てたのが安倍首相。当選直後の次期大統領への「面通し」にトランプ・タワーに一番乗り。就任後のホワイトハウス詣でも「特別な関係」のメイ英国首相を別格とすれば、ここでも一番乗り。それが報われた。安倍首相を迎えたのは「こわもて」ではなく「にこやか」なトランプ大統領だった。中国にらみの安保問題では、安倍首相が欲しかったものをそのまま出してくれた。だが、経済・貿易問題はさらりと流したという感じだ。大統領職と不動産ビジネスを一緒くたにする「トランプ不動産」のフロリダのリゾートで、両首脳は夫人も連れてゴルフを楽しみながら2泊の「プライベート」の時間を過ごした。ここで何が話し合われたのだろうか。
 外交と内政は絡み合っている。保守派の「フェイク・キャンペーン」に乗せられて「EU離脱」を選び、孤立の道にはまり込んでしまった英国。欧州と米国の橋渡し役という「存在意義」を果たせなくなるとすれば、メイ英首相は真っ先に駆け付けて支持を訴えなければならなかった。アベノミクスの「偽装」が剥げ落ち、もたもたの閣僚たちが取り巻きの人材不足を露呈しているとき、長期政権・憲法改正の野心を抱く安倍首相にとって「外交の基軸」とする米新政権の後ろ盾が不可欠の条件だ。「ご祝儀抜き」の暗いスタートを切ったトランプ大統領も何か得点が欲しいところだった。
 新政権の就任時の支持率と不支持率はともに史上最悪、就任式に集まった観客は25∼50万人と、オバマ政権発足のときの180万人に比べるとあまりにもさびしい数字。翌日には女性・人種差別に抗議する50万人ものデモがワシントンを埋め、全米各地や世界各地に広がった連帯デモは80カ国、670 カ所、470万人におよんだ(主催団体)。そしてテロ対策を理由にイスラム諸国からの入国を一時禁止した大統領令に内外から猛反対を受けて、裁判闘争でも完敗した。「虚偽発言」の数々をいくら批判されても絶対に頭を下げなかったトランプ氏も、さすがにこたえていたのかもしれない。

「ドナルド・シンゾウ」関係
 安倍首相は常々、外交では相手国の首脳との間に信頼関係を築くことが重要と言ってきた。トランプ大統領が安倍首相を抱きかかえるようにして迎えた映像は、世界に繰り返し流されている。ホワイトハウスが明らかにした会談後の共同記者会見のやり取りの記録では、安倍首相は3回「ドナルド」と大統領のファーストネームを口にした。トランプ大統領の「シンゾウ」という発言はなかったが、これは大したことではあるまい。安倍首相はプーチン・ロシア大統領と親密な関係を築いたことが自慢だった。だが、故郷・山口県の温泉に招待して北方領土返還の突破口を開こうとしたが、進展は得られなかった。外交の上で首脳同士の信頼関係を構築することは悪いことではないが、難問がそれで解決できるわけではない。
 トランプ大統領と信頼関係ができたといって帰国したメイ英首相を迎えた英国世論は冷ややかだった。メイ首相の招待でトランプ大統領は英国を訪問することになったが、これに反対する署名運動が起こり、たちまち20万件を超して増え続けている。下院のバーカウ下院議長は公に、トランプ大統領が下院で演説することに反対を表明した。メイ首相もイスラム諸国からの入国禁止の大統領令に反対を言わざるを得なくなった。ドイツ、フランスなど主要な国の首脳も反対を隠してはいない。安倍首相は口を閉ざしている。安倍首相とホワイトハウス詣での先を争っているという話は伝ってこない。

「硬も軟も」
 不動産ビジネスで産をなしたトランプ氏は、「大きく吹っかける」交渉術が成功のカギだと著書で自讃している。その成功の傍らでこれまでに3,000件もの訴訟を起こされ、今も2,000件を抱えている。「危うい成功」のように思える。大統領選挙戦で世界中にあからさまになった暴言、虚偽発言、非難中傷などの言動をみれば、大抵の国は超大国の大統領に座ったトランプ氏には「何をされるかわからない」という恐れを抱くだろう。
 冷戦のさなかに世界を振り回したニクソン米大統領は、自分の外交戦略を「ニクソンは狂人だから何をされるかわからない」と怖がらせる「狂人」戦略と側近に語っている。トランプ大統領をニクソンに例える報道も出ている。
 トランプ大統領は台湾の蔡総統に電話して、中国の「一つの中国」にはとらわれないと述べて中国の姿勢を硬化させた。習近平中国主席からの大統領就任の祝電に対する返礼も遅らせてきたが、ホワイトハウスは8日、「相互利益になる建設的関係を発展させるために主席との協力を楽しみにしている」とする返礼の親書を送ったと発表。続いて9日にトランプ大統領は習近平主席に電話し、一転して「『一つの中国』政策に同意する」と伝えた。日本の新聞は11日朝刊でこの電話会談を大きく報道、同じ紙面には安倍首相がワシントン入りするという記事が並んでいた。トランプ大統領が中国を怒らせたうえで、さっと政策転換を図ったこの動きは、安倍首相が時間をかけて対応できないよう、日米首脳会談にタイミングを合わせたことは明らかだろう。「大きく吹っかけ」て脅しをかけるだけではない。
 さっと身をかわす。したかである。「友人」も安心してはいけない。
 トランプ氏は、選挙戦で対立候補も世論も振り回された「ツイート攻撃」を大統領になっても続けている。側近の中から「無用の混乱」を引き起こしているとして、止めるよう忠告も出たといわれるが、受け入れる気配はない。中東からの入国禁止令もそのひとつだった。

「主要省庁の幹部は空席」
 トランプ氏は極端な自信家、すさまじい自己顕示欲の持ち主、そして癇癪持ちである。不動産ビジネスも大統領職も「オレ流」でやれると自負しているようにみえる。毎日早朝から新聞やテレビのニュースを細かくチェックして、さっと反応して「ツイート」する。それがトランプ政権の政策になる。異常なワンマン大統領である。
 新政権は白人至上主義者も含めた極右グループが中枢に座り、選挙戦で散々罵倒したウォールストリートの巨額資産を持つ金融マン、軍部のエリートからは外れた元将軍、共和党の一部の極右勢力をかき集めてやっとできた。しかし数千人にも上る各省庁の実務を率いる副長官、次官、次官補といった幹部のポストの多くは政権が任命する。これがほとんど埋まっていない。国務省など一部の省庁ではキャリアの有力幹部がトランプ政権のもとで働くのは「潔よしとせず」と退官している。
 通常の民主、共和両党の政権交代であれば、それぞれの党の系列下に多くのシンクタンク研究員、大学の教員・研究者などが「出番」を待っているから、こんな事態は起こらない。トランプ政権が普通の政権の形を整えられるのか疑問がある。西欧諸国など多くの国は当分、模様見を続けるのではないかと思う。
2017.02.12  日米首脳会談、世界に見せた大統領と安倍首相との“いちゃつき”

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ大統領と安倍首相の日米首脳会談が終わった。会談は約1時間、半分は通訳が約30分だから、二人の実質的な会談は約30分。会談後、二人の記者会見とおそらく日本側の高官たちの説明によると、実質的な合意内容は(1)安全保障関係では、双方が同盟関係の強化に努力。尖閣諸島は安保条約第5条の適用範囲と確認。沖縄普天間基地の辺野古へ移転を確認(2)自動車や為替など経済関係はすべてペンス副大統領と麻生副総理の会談で協議するーなどだった。

 閣については、オバマ前政権下でも「日本の施政権下のすべての場所に」安保条約は適用されるという表現だったから、実質的には同じことだが、今回、日本側は「尖閣」の固有名詞を入れることに強くこだわり、「尖閣に安保」を会談前から会談後の共同声明にいたるまで、繰り返し記者団に強調した。いうまでもなく、日本国民へのPRだ。
 国家間の首脳会談は短時間で、実質的な重要協議は、政府間の事前事後の協議で、同行する大臣や局長間で行われることに不思議はない。しかし、今回のように、難しい外交、経済問題が山積しており、日本国内では政府側の発言やリーク(意図的な情報漏出)でメディアの報道がやかましかったのに、首脳会談が短時間で終わった例は少ないかもしれない。そして、会談、記者会見の後、すぐ両首脳は大統領専用機でフロリダのトランプの別荘に飛び、夕食2回とゴルフを楽しみながら、親しく話し合うと首相は誇った。

 もかく、今回の日米首脳会談が全く異例だったのは、二人が恥ずかしげもなく見せた、ベタベタとしか言いようのない親しさだ。見せたというより、本心からと言うべきかもしれない。トランプは、中東・アフリカ七か国のパスポート保持者入国拒否(一時的停止というが実際には無期限)の大統領令を出し、即時実施した。しかし世界各国からも、米国民からも強く反対され、州政府から人種差別を禁止した憲法違反として提訴された。裁判は地裁が違憲として大統領令の執行停止を命令、7か国パスポート保持者の入国が再開。控訴裁でも政権側が敗訴した。米国でも前例が稀な事例。それ以外でも、米日主導で実施寸前だったTPPから脱退し、TPP交渉そのものが崩壊。総工費総額216億ドルと推計されるメキシコ国境の壁を大統領令で建設しようとして、メキシコ大統領から費用分担を拒絶され、首脳会談そのものがつぶれた。最初の首脳会談となった英国のメイ首相も、会談そのものは友好的におわったが、メイ首相は帰国後、トランプ政権の7か国民入国拒否を差別として厳しく批判する始末だった。

 のように、新任大統領として最悪の醜態を米国民と世界に見せ続けた時点での、日米首脳会談だった。各国首脳のなかで、就任前に渡米して、“ごますり”に精を出した安倍首相にトランプは、異常ともいえる親近感を見せたのだろう。首相の方も、都知事選での敗北、TPPの破たん、国会での大臣たちの答弁ミスが重なるなど、過半数与党らしくないごたごたが続いていたなかでの訪米だった。こちらも、大げさな、おそらく本心からの親近感を見せた。双方とも満面に笑顔で、肩を抱き合い、手をにぎり続け、「気が合う」とメディアに漏らした。
 だが、大統領にも、首相にも見逃してはならない事態が起こっている。米下院でジェロルド・ネイドラー議員(民主党)が、トランプ大統領の利権関係の憲法違反すべてにわたり、関係当局に捜査を求める決議案を提出したのだ。下院ですぐ決議案が可決されることはないだろうが、アメリカの信頼できる電子ニュース「Common Dreams」は10日の報道で「弾劾へのステップ・ワンか?」の見出しで報じている。
 トランプ弾劾の可能性については、来年の上下両院選挙の前にすべきだという主張、動きがすでに始まっている。議会への決議案はこのネイドラー決議案が初めてだ。(了)
2017.02.11  ■短信■
        ドキュメンタリー映画2本をお勧めします
          「抗い」と「まなぶ」

 優れたドキュメンタリー映画2本の鑑賞をお勧めします。

★『抗い――記録作家 林えいだい』(100分)
 「福岡県筑豊には炭鉱のいろんな傷跡が今も残っている。ボタ山、炭住、坑口、アリラン峠、朝鮮人墓地・・・・・・その歴史の闇から時代を探り当てようと、もがき苦しみ続けた一人の記録作家がいる。林えいだい。82歳。カメラを抱えペンを握って、戦争、エネルギー資源、高度成長に翻弄される『民』を記録し続けた。そして、戦争危機を再び迎えたいま、彼は警告する。
 記録されなかったことは、なかったことにされてしまう。国家権力の前に沈黙せざるを得なかった民衆の声は、いま忘却の彼方に追いやられようとしているのだ。重い病と闘いながら、作家人生の集大成として取り組むのは旧日本軍の特攻作戦。若い兵士に死を強要した権力への抗(あらが)いは、今も続いている」(映画のチラシから)
 林えいだいさんは、その執筆活動により、2007年に第13回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞している。

監督:西嶋真司
出演:林えいだい
朗読:田中泯
制作・配給:グループ現代
製作・著作:RKB毎日放送
上映館:シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷駅から徒歩5分。03-5766-0114)
上映時間:2月11日(土)より、1日1回(午前11時~)連日上映(3週間予定)
地方上映予定:名古屋 シネマスコーレ(2月25日~3月10日)、大阪 第七藝術劇場(今春公開予定)、福岡 KBCシネマ(3月4日~5日)
お問い合わせ:グループ現代(03-3341-2863 )

 ★『まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えて』(92分)
「東京都千代田区立神田一橋中学校通信教育課程。大都会の片隅に戦中・戦後の混乱期、義務教育を受けられなかった高齢者たちが、青春を取り戻しにくる学び舎がある。人生の終盤を迎えてもなお、人はなぜ学ぼうとするのか。その意味を探して、5年の歳月を追った」(映画のチラシから)。この作品については、2016年11月23日付の当ブログで詳しく紹介されている。

撮影・監督・語り:太田直子
 太田さんは、2010年に発表した、埼玉県立浦和商業高校定時制の授業と生徒たちを記録した『月あかりの下で~ある定時制高校の記憶』で文化庁文化記録映画優秀賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞荒井なみ子賞などを受賞している。
製作・著作:グループ現代
上映館:新宿K’s cinema(JR新宿駅東南口下車、03-3352-2471)
上映日と時間:3月25日(土)から連日10時30分モーニングロードショー
お問い合わせ:グループ現代(03-3341-2863 )
(岩)
2017.02.10  韓国を信頼できない78%
          韓国通信NO216

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が先月28、29日に実施した世論調査によると「韓国を信頼できない」という回答が77.9%に達したという。韓国の政治空白がもたらした釜山の慰安婦像設置や竹島問題が影響を及ぼしたという。さらに一昨年12月の日韓合意については86.4%が韓国側は守らないのではないかと懸念を示し、大使等を帰国させた日本政府の対抗措置については8割が理解を示したという。
微妙な時期の微妙な世論調査だが、「好きか嫌いか」ではなく「信頼できるかできないか」という設問は意味ありげである。反韓・嫌韓気分に外交問題が上乗せされた格好だ。竹島(独島)の問題は別にして、気になるのは、一昨年末の従軍慰安婦問題の「政府間決着」と平和の少女像をめぐって新たな軋轢が生まれていることだ。

電撃的な決着と思われたが、1年経過した今、この問題で日韓関係はむしろ悪化した。韓国内では6割以上の人が「再交渉」「破棄」を求め、わが国でも産経の世論調査に表れたように8割近い人が韓国側に不信感を抱いている。もっとも日本人の印象としては「解決した」と思っていたのに裏切られたということかも知れないが。
この食い違いはどこから生じたのか。振り返ってみたい。

当日発表された両国外相の共同声明から検証したい。以下、外務省のホームページの概略である。
岸田外務大臣は「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と述べ、安倍首相の言葉として「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明した」と発表した。さらに後段では「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した」とも述べている。
一方、尹(ユン)外交部長官は両国の合意を受けて、この問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認し、日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と述べた。

安倍首相のもとでは解決は絶望視されていたが、韓国側が合意したのは、大幅な譲歩を日本側から引き出したと判断したこと、さらに両国の背景に北朝鮮包囲を急ぐアメリカの積極的な要請があったとされる。従軍慰安婦の存在さえ認めなかった首相が「軍の関与の下に多数の慰安婦の方の『名誉と尊厳』を傷つけことに心からの「おわびと反省」を述べたことは確かに画期的ではあった。

 「和解合意」が生んだ深い対立
解決したかに見えた従軍慰安婦問題だが、最近の日本では韓国政府の約束「不履行」を「振り込め詐欺」、韓国は「10億円を返すべき」という声まであがっている。
一体何が問題だったのか。
まず確認しておきたいのことは、被害者が元従軍慰安婦のハルモニ(おばあさん)であり、加害者は日本だということである。見た通り、12.23の共同記者会見で日本政府自らが認めたことだ。

問題点を探ってみた。
1) 政府間の外交交渉であっても当事者を抜きにした解決には無理があったこと。
2) 「謝罪」「反省」の気持ちを手紙をとおして被害者に表明することについて安倍首相がそのつもりは「毛頭ない」と一蹴した(衆議院予算委員会2016/10/3)ことが話をこじらせる原因となった。これでは共同会見は単なる「リップサービス」であり、真意ではないと韓国側では受け止められた。本当に解決する気ならば韓国に出かけて直接謝罪してもいいくらいだが、文書ひとつ渡せないと頑張る首相の態度は理解できない。
3) 「癒し」事業に使う10億円は慰謝料でも損害賠償でもないというのが日本政府の立場だ。「おわび」とは無縁な金は受け取れないと主張する被害者の気持ちを日本政府は理解すべきだった。
4) 10億円を払えば平和の少女像は撤去されると多くの日本人が理解したようだが、共同会見ではそのような約束はしていない。「解決に努力する約束」はしたが、政府が勝手に撤去ができない以上当然だ。
「平和の少女像」は、戦争が惹き起した少女たちの苦しみを二度と繰り返してはならないという平和への祈りを込めて市民たちが建てた。毎水曜日に大使館前で開かれる集会に出かけてみたらよい。屈辱的な解決に走った朴槿恵大統領と不誠実な安倍首相への糾弾の声は聞かれても決して「反日」ではない。日本が再び戦争をする国になることを心配するハルモニたちのスピーチに感動するはずだ。日本が撤去にこだわれば市民たちの平和への思いを逆なですることになりかねない。「反核平和の折り鶴」を原爆を落としたアメリカからやめて欲しいと言われるようなものだ。
5) 金ですべて解決できると考えた日本政府は不遜である。「最終的不可逆的に解決した」という文言にもよく現れている。日韓両政府が急いだばかりに、それそれの国が抱えてきた問題が一挙に表面化したように見える。被害者をかかえる韓国政府の見通しの甘さは明らかだ。次期大統領候補には日韓合意を引き継ぐ人はいない。新大統領が誰になっても合意は撤回、または再交渉は確実だ。

日本は韓国政府を批判する立場かも知れないが、振り出しに戻ることになれば日韓関係を悪化させた政治責任は免れない。破棄・再交渉となれば10億円はどうなるのか。返してもらうとしても前代未聞の大失態である。
韓国政府の「不履行」に抗議して日本は大使と領事を引き揚げ、日韓スワップ協定協議の中断を決めた。韓国へ強い姿勢を示すことで安倍内閣が支持率が上がった。韓国のマスコミもそのような指摘をしている。「信頼できない8割」の分析は簡単ではないが、隣国ヘイトをにじませた日本側の対応を8割近い人が支持したとも読める。北朝鮮に小泉首相とともに平壌にでかけ平壌宣言の実績をあげ、拉致問題が明らかになると北朝鮮敵視政策によって首相にのぼりつめた安倍首相。彼はトランプ米国大統領顔負けの「自国ファースト」主義者である。ただスケールが違う。アメリカに従属しながら、アジアで「エラソウ」にしている「小トランプ」である。

春だ 出かけよう
 立春といっても寒い日が続きます。家に引き籠もっていては免疫力が落ちるばかり。
 去る3日、全国各地一斉行動日に駅頭でアピール行動。バス待ちの中学生二人から話しかけられた。「何をしてるんですか」「憲法を変えて戦争するアベに抗議してるんだ」「アベって安倍晋三?」「そう」「僕たちもがんばります」。彼らは高校入試の願書受付に来たらしい。「受験生ガンバレ!!」
 元気が出たついでに国会前の反原発デモに参加。少なくなりました。700人くらいでした。「韓国通信NO497」で取り上げた90才を越えた元都立戸山高校の先生だった武藤徹さんに会った。耳が遠いようなので耳元で「風邪ひかないでね」と挨拶したら、うれしそうに頷いてくれた。節分の夜。会場では豆まきをした。「原発アウト!安倍アウト!」

 福島原発事故から6年目。さまざまな行動が予定されている。寒さを吹き飛ばそう。春は近い。
   2月19日 貧困格差にNO! 2.19総がかり行動        1時半~日比谷野音
   3月11日 柏崎刈羽原発再稼働許すな東電本社包囲   2時~4時まで東電本社前
   3月18日 福島県民集会  郡山開成山陸上競技場    13時10分開会
   3月20日 フマシマ忘れない さよなら原発全国集会    1時半~ 代々木公園
2017.02.09  アベノミクスと属国民族主義
盛田常夫 (在ブダペスト、経済学者)

 世界の先進諸国で、ポピュリズム(大衆迎合主義)と民族主義が幅を利かせるようになっている。西欧のポピュリズムやトランプ政権を批判する前に、日本のポピュリズムと民族主義を問題にすべきだろう。なぜなら、日本の安倍政権こそ、典型的なポピュリズムと偏頗な民族主義を二本柱にする政権だからだ。

アベノミクスは典型的なポピュリズム
 「灯台下暗し」で、日本国民は安倍政権がポピュリズムと民族主義を二本柱にしていることを意識できない。まさに、無意識のうちに嵌ることこそが、大衆迎合のポピュリズムと民族主義の社会現象である。トランプ政権の民族主義的政策を心配する前に、日本の行く末を心配したほうが良い。
 アベノミクスとは、「高度成長をもう一度」という根拠のない経済スローガン=経済イデオロギーにすぎない。景気が悪いより景気が良いほうがいいに決まっているから、右も左も、景気刺激政策に正面切って反対できない。「大胆な金融緩和政策で景気が良くなります」と言われ、株式相場が上昇し、円安が進行して一部の輸出産業が大儲けすると、なんとなく、アベノミクスは正しいと思ってしまう。
日銀が資金を垂れ流して円安を誘導し、株や債券購入を行って相場を支え、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も国民資産を株式に投資して相場を上げる官製相場は、いずれ将来、日本社会に大きな災禍をもたらす。しかし、少し遠い将来のことに政治家も国民も無関心だ。国民は一時的な株式相場の上昇に一喜一憂して、将来のことなど考えない。まさに、国民大衆の短期的な損得を考える思考に迎合した政策が、アベノミクスなのだ。政治家も国民も、目先の短期的な利益だけに目が奪われている。大衆迎合主義が蔓延(はびこ)る温床だ。
官製相場が崩れた時の責任追及など、後の祭りだ。誰も責任を取らないし、取れない。一時的な「目くらまし」にあって、政治家にだまされた国民が馬鹿だったということにしかならない。政治家の詐欺に引っかかったようなものだが、それがポピュリズム政策の結末だ。

日本は属国民族主義
 安倍政権が巧妙なのは、アノベミクスの成果が見えなくなると、今度は中国や韓国にたいする偏狭な民族主義を鼓舞して、国民の目を隣国との対立に向けさせ、自らの政権基盤を崩さないようにしていることだ。国民はそういう政策にも、すぐに引っかかってしまう。
 尖閣・竹島にしても慰安婦問題にしても、昨日今日の問題ではなく、関係諸国との長い歴史のなかの問題だ。しかし、政治家は歴史認識の問題を隠して、隣国の不寛容さや偏屈さを批判すれば国民の支持が得られる。近代の歴史において、日本は朝鮮や中国を侵略した歴史はあっても、中国や朝鮮が日本を侵略した歴史はない。多くの国民は100年以上にわたる問題の歴史的経緯に関心などなく、たんに日本の国益が隣国によって阻害されているという単純な感情でこの問題を受け止める。政治家にとって、これほど安上がりな政権安定化の政策はない。隣国に対して強い態度で対処しておけば、政権基盤が崩れることはないのだから。
 興味深いのは、ここ最近の日本における民族主義は、きわめて偏頗(へんぱ)で片端(かたわ)な民族主義であることだ。隣国の中国や朝鮮にたいして強い態度をとるのに、アメリカにたいしてはそれができない。戦前から日本社会の底流に流れている中国や朝鮮への蔑視が今も根強く残っていて、それが時として、隣国への高圧的な態度や反発となって現れている。ところが、政治家も国民も、アメリカにたいしては日本の軍事的外交的な自立と独立を主張することができない。なぜなら、政治家も国民も、日本が軍事的外交的にアメリカに従属している属国的な立場にあることすら意識できないほど、アメリカの支配の術中に嵌っているからだ。それこそ、軍事占領から始まった70年にわたるアメリカの長期的軍事支配によってもたらされた換骨奪胎の結末である。
70年も軍事的な支配が続いていると「支配されている」という意識すらなくなり、防衛庁長官を経験した石破茂でさえ、「沖縄で騒いでいる奴らの後ろに誰かがいる」というバカな言動しかできなくなる。戦後一貫して、アメリカは日本の軍事基地をアジアおよび中東世界の軍事戦略基地として機能させてきた。日本を守るというのは付随的な役割に過ぎない。日本防衛という口実で軍事占領が続く沖縄の現状を固定化し、あまつさえ新しい基地を作ってアメリカの軍事政策に奉仕することが、民族主義にも劣ることだということが分からない。軍事占領の延長を容認する民族主義などありえない。偽の民族主義だ。
白井聡氏は日本を「属国民主主義」(白井聡・内田樹『属国民主主義論』東洋経済新報社、2016年)と性格付けしているが、属国民主主義というより「属国民族主義」と性格付けした方がより適切だ。旧植民地国への侮蔑を込めた偏狭な民族主義と大国アメリカへの卑屈な従属的民族主義という二つの矛盾した民族主義が併存しているところに、今日の日本の偏頗な民族主義がある。それが属国民族主義だ。だから、「虎の威」を借りて、アメリカに「尖閣の安全保障を担保してもらえば、他の件では譲歩します」という朝貢外交が生まれる。そのために、国民の年金資産をアメリカのインフラ投資に利用する案すら用意されている。アメリカの原発関連企業に騙され、倒産寸前になっている東芝を見るが良い。トランプにとって、安倍ほど利用しやすい政治家はいない。日本から搾り取れるだけ絞り取る。そんな魂胆も分からず、一緒にゴルフできることに喜喜としている馬鹿な宰相をいただくと、国が滅びてしまう。世界の笑いものだ。これこそ典型的な売国政治家ではないか。
2017.02.08 知覚動詞の構文
知覚動詞+目的語+補語(do/doing)、that節、 wh節

松野町夫 (翻訳家)

知覚動詞は「意志」の有無を基準にして、次のように状態動詞 [S] と動作動詞 [D] に分類できる。

■状態動詞 (stative verbs) → 通例進行形にしない
see, hear, smell, feel, notice (非意志的行為=偶然にまたは自然に知覚する)
■動作動詞 (dynamic verbs) → 進行形にできる
look at, watch,listen to (意志にもとづく動作=注意して見たり聞いたりする))

知覚は本来、感覚器官を通して対象を把握することなので、知覚動詞には視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感動詞(see, hear, feel, taste, smell)をすべて含めてもよさそうなものだが、英文法ではふつう taste を知覚動詞に含めない。理由は以下の構文(SVOC)をとらないから。ただし smell は、原形不定詞を補語にとることはないが、現在分詞(doing)はとれるのでここでは知覚動詞として扱う。

1. 主語+知覚動詞+目的語+補語(原形不定詞)
「彼がバスに乗った」 + 「私はこれを見た」 = 「私は彼がバスに乗るのを見た」
He got on a bus. + I saw this. = I saw him get on a bus.
I (S), saw (V), him (O), get on a bus (C)

2. 主語+知覚動詞+目的語+補語(現在分詞)
「彼がバスを待っていた」 + 「私はこれを見た」 = 「私は彼がバスを待っているのを見た」
He was waiting for a bus. + I saw this. = I saw him waiting for a bus.
I (S), saw (V), him (O), waiting for a bus (C)

知覚動詞+目的語+原形不定詞(do)
補語が原形不定詞(do)の場合は、動作を始めから終わりまで見るという含みがある。したがって、補語は瞬時に完結する動作、たとえば、「乗る」「置く」「入る」「爆発する」「ウインクする」「ジャンプする」など、いわゆる瞬間動詞(get on, put, enter, explode, wink, jump)になる場合が多い。ちなみに、末尾の [S] は知覚動詞が状態動詞であることを表し、また [D] は動作動詞であることを表す。

I saw you put the key in your pocket. あなたが鍵をポケットに入れるのを(偶然に)見た。[S]
I saw him enter the building. 私は彼がその建物に入るのを見た。[S]
He was seen to enter the building about the time the crime was committed.
彼は犯行時刻の頃にその建物に入るのを目撃されていた。[S] *受身は to 不定詞となる。
We heard the bomb explode. 私たちは爆弾が爆発するのを聞いた。[S]
Did you feel the house shake? 家が揺れるのを感じましたか。[S]
I noticed John wink at Mary. ジョンがメリーにウインクするのに気づいた。[S]

Look at the dolphin jump. イルカがジャンプするのを(注意して)ごらん。[D]
She watched the children play. 彼女は子供たちが遊ぶのをじっと見ていた。[D]
I watched a man run across the yard and climb through an open window into the house.
男が庭を走って横切り、開いた窓をよじ登り、家の中に入っていくのを私は見た。[D]
She liked to listen to children talk. 彼女は子供たちが話すのを聞くのが好きだった。[D]

知覚動詞+目的語+現在分詞(doing)
補語が現在分詞の場合は、動作の途中の一部を示す。したがって、補語はある程度時間のかかる動作、たとえば、「待つ」「ジョギングする」「食べる」「踊る」など、いわゆる継続動詞(wait, jog, eat, dance)になる場合が多い。

We saw Nancy jogging. 私たちはナンシーがジョギングしているのを(偶然に)見た。[S]
I saw you eating in a restaurant. ぼくは君がレストランで食事しているのを見た。[S]
I saw her dancing with John. 私は彼女がジョンと踊っているのを見た。[S]
She was seen running away from the scene of the crime.
彼女は犯行現場から走り去るところを目撃されていた。[S]
We heard Tom playing his guitar. 私たちはトムがギターを弾いているのを偶然耳にした。[S]
I can feel something crawling up my leg. 何かが脚をはい上がっているのがわかる。[S]
I smell something burning. 何か焦げくさいにおいがする。[S]
I noticed him stealing money. 彼がお金を盗んでいるのに気づいた。[S]

He looked at the rain coming down. 彼は雨が降ってくるのを(注意して)眺めた。[D]
She watched the kids playing in the yard. 彼女は子供たちが庭で遊ぶのをじっと見ていた。[D]
I listened to the children talking. 私は子供たちが話すのをじっと聞いた。[D]

上記の2つの構文(SVOC)があまりにも有名なために、知覚動詞はこれ以外の構文、たとえば、that 節や wh節はとれないと勘違いしている人もいる。しかし、もちろんそんなことはない。

知覚動詞+that 節
知覚動詞の構文(SVOC)が対象との直接的接触による直観知、つまり実際に知覚したことを表すのに対して、知覚動詞+that 節は直観知ばかりでなく、知的な思考や推理・判断も表すことができる。とくに see, feel, smell, notice はこの傾向がある。ただし聴覚の hear, listen を除く。 hear+that 節は、話し手自身の判断でなく、人から聞いたことを述べるのに使用し、listen は that 節をとらない。

I saw Linda crying. → 構文(SVOC) = 直観知
リンダが泣いているのを(実際に)見た。
I could see (that) Linda had been crying. → that 節 = 推理・判断
リンダが泣いていたことがわかった。

I could see (that) she was tired. 彼女が疲れていることがわかった。[S]
I hear (that) he has been ill since last month. 彼は先月から病気だそうです。[S]
I was surprised to hear (that) he was married. 彼が結婚していると聞いて私は驚いた。[S]
I feel that some disaster is impending. 何か災難が迫っているような予感がする。[S]
I don't feel that it's a very good plan. それがあまりよい計画とは思わない。[S]
I can smell that this meat is rotten. この肉が腐っているのがにおいでわかる。[S]
I could smell that something was wrong. どこかおかしい気がした。[S]
I noticed that the door was open. ドアが開いているのに気づいた。[S]
I noticed that someone was following me. だれかが私を尾行していることに気がついた。[S]

Look that you don't spill coffee. コーヒーをこぼさないように注意しなさい。[D]
Watch (that) you don't slip. すべらないように注意しなさい。[D]
Watch you don’t get your bag stolen. バッグが盗まれないように注意しなさい。[D]

知覚動詞+wh 節
知覚動詞がwh 節を伴うとき、主節は否定文または疑問文の場合が多い。

I didn't see what happened. 何が起きたのかわからなかった。[S]
Did you see what happened? 何が起きたのか見ましたか。[S]
Did you see who started the confusion? その騒ぎはだれが始めたか見ましたか。[S]
Have you heard when they're coming back? 彼らがいつ戻ってくるか聞いていますか。[S]
We’d better hear what they have to say. 彼らの言い分を聞いたほうがよい。[S]
I can smell when it's going to rain. いつ雨が降りだすかにおいでわかります。[S]
Feel whether it is hot. それが熱いかどうかさわってみてごらん。[S]
I didn’t notice how glad she was. 彼女がどんなに喜んでいるのか気がつかなかった。[S]
I didn't notice whether she was there or not. 彼女がそこにいたかどうか気がつかなかった。[S]